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限界の金曜日

光の家の近くの公園。たまにここで光とお喋り。

会えるかなとうろついていたらミツキちゃんと遭遇。

つい話が弾んで碓氷さんとのことを嬉しそうに話してしまう。

これはまずいと思ったがもう遅い。

ただスーベニアについて聞いただけなのに。いつの間にか修羅場に。


「元気の彼女は誰? 」

おっと…… 質問形式で来たな。姑息な手を使って。言わないと怒るんだろう?

「もちろんきれいな人全般」

「ああん? 舐めてるの? 」

迫力のある返しで緊張が走る。どうやら冗談は通じないらしい。これはまずいぞ。

でもきれいな人全般は決して間違ってない。所詮男なんてそんなものさ。

とは言えどう答えるのが正しいのかな? 正直に碓氷さんとは言えない。


「ははは…… 冗談だよ。僕の彼女は…… 」

「彼女は? 」

「ミツキちゃんに決まってるだろう。ただそれは僕がそう思ってるだけ…… 

ミツキちゃんがどう思ってるか不安で。そもそもまだ正式には付き合ってない」

逃げ道を作っておく。これも危機回避術。

「だったらもう碓氷さんとは会わない。それでいいよね元気? 」

無理矢理従わせようとする。束縛が強いな。

「それはできない! 悪いなミツキちゃん。分かってくれ」

「はあ? 何でよ? 」

「だって同じクラスで席が近いから。どうやっても毎日会うことになるんだ」

「それはいいの! 個別に会わないって誓いなさいよ! 」

「少し考えさせてくれ。もし今答えれば君と別れることになりかねない」

どっちが先輩で有利かも分からないんだから困るよな。

無理強いはよくない。こっちの好きなようにさせてもらう。


ミツキちゃんだってまだ光のことを諦めてないはずだ。

僕にとってミツキちゃんはどう頑張っても二番目。二番目に大好きな人だ。

そして恐らくミツキちゃんも僕を二番目に好きなはずだ。

すべて知っていながらお互い一番目については触れない。それが僕たちの関係。

中途半端ではっきりしないから嫌だと言うならすぐにでも別れる覚悟はある。

でもミツキちゃんも納得してる。もちろん自分が一番とと願うのは当然のこと。

複雑な関係に見えて意外にも単純。


「ごめん…… 私が間違ってました」

「いやいいんだ。できるなら僕だって君を。でも心には別の人物がいるんだろう?

もし僕を一番に思ってくれるならもっと真剣に付き合うよ」

うわ…… 何言ってるんだ? 血迷ったか? 格好つけようとして下手を打った。

訂正しないと…… でももう無理。そんな雰囲気じゃない。


「もうこの話はこれくらいにしよう」

「だったらほら…… 」

仲直りのキスをせがむ。まだ人がいるんだけどな。

仕方なく望み通りキス。甘やかし過ぎか?

「なあミツキちゃんも三年だろう? 互いに忙しくなるから会うのは最小限に」

大人の対応。これ以上こじらすのはよくない。

対象が碓氷さんに移るのは避けたい。

「うん。分かった元気。会うのを控えましょう」

そう言って別れる。

うん。これでいい。これでいいんだ。

ミツキちゃんには悪いがこれ以上は無理。新しいクラスもあるしサークルだって。

それはミツキちゃんだってそうに違いない。辛いがこれも二人の為さ。


あれだけ言ったのにミツキちゃんは約束を守ろうとしない。

その後も五日連続で会うことに。もちろん彼女の方から無理やりだ。

どうも言動が不一致なんだよな。大丈夫か? あれほど言ったのに。

五日連続なんて初めて。なぜ逆に会う頻度が増えるんだよ?

注意しても聞きやしない。


まだミツキちゃんはいい。忙しくないのに無理して会わなくなるのも変だから。

問題は碓氷さんの方。機嫌が直らないから困っている。

同じクラスになって大喜びしたのに今では嫌われ続けて辛い。

あれほどはっきり嫌われるのは認識され始めた時以来。

あの時は光が隣のクラスだったかどうにかなった。でも今は同じクラス。

無神経だから近づくしこっちが避けても気にしない。

それを見た碓氷さんが嫉妬する。だから男に嫉妬しないでよ。

僕が最初に仕掛けたこととは言え悪い方に悪い方に向かっている。


ショックだな。どうして僕を毛嫌いするのか?

簡単だ。何度も言うように光と仲よくするからだ。

教室で休み時間に一緒に過ごすからな。お昼だって用事がなければ一緒に食べる。

二年の頃は隣のクラスだったのであえて接触しなかった。

放課後に活動がある時一緒になる程度だったのがこの春からずっとだもんな。

いくら僕が何もしなくても好き勝手するのが奴さ。

光は光で僕と碓氷さんが付き合ってると勘違いしてるから変な風に気を遣う。

その結果僕はなぜか碓氷さんと二人っきりで話すことになる。

しかしほぼ恨み言でしかないから聞いてるだけで辛い。

おかしな三角関係。


金曜日。

「なあ碓氷さんに話しかけてやれよ」

どうにか改善しようとするが余計なことをするなと碓氷さんに釘を刺されている。

これでは動きようがない。

「お前の彼女だろう? 親友を裏切るような真似できるかよ」

光の気持ちは嬉しいが気を遣えば気を遣うほど余計に悪化してしまう。

仮に真実を語れば解放されるだろうが最悪の結果を招く。

光が受け入れたらお終いだから。どうして奴はずっと勘違いしたままなんだ? 

この最悪の雰囲気が分からないのか? 

そしてなぜ碓氷さんは僕を目の敵にするんだ?

酷いじゃないか。一体僕が何をしたって言うんだよ? 

第三の山田を脱出して一人の人間として見てもらえるようになったのに。

これでは成長ではなく後退だ。


修学旅行を境に碓氷さんとの関係が悪化。

隣同士で一緒に旅をした仲なのになぜここまでする?

これ以上は堪らないので昼休みは屋上で飯を食べることに。

ふう毎日これ。今日が金曜日だから四日連続で睨みつけられながら飯を食う。

最初はそれでも嬉しかった。でもずっとはさすがに辛い。

まだ無視してくれるならいいがずっと睨みつけてたら飯だって喉に通らない。

光は光で早く仲直りしろよと無茶を言う。お前のせいだろうが?

そう言いたい。言いたいけど鈍い奴にいくら言ったところで意味がない。

でも僕が屋上に逃げれば碓氷さんだって気分が晴れ光とも仲よくなれるだろう。

そうすれば僕とだって再び良好な関係を築けるかもしれない。


あーあ。もう疲れるよ。飯だって…… うん?

屋上には先客が。誰だろう? 見たことがない? と言うことは新入生?

これはもしかすると勧誘のチャンス?


                続く

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