第三の山田からの卒業
修学旅行を終え僕たちはついに三年生に。
ミツキちゃんも中学三年生になった。
受験もあってあまり会えなくなるかもとミツキちゃんは言うがそれも仕方ない。
放課後はまっすぐ帰りなとアドバイス。
「もう元気のくせに生意気! 知らない! 」
関心を失った? 僕なんかより頭もよく運動もできる格好いい男だっているさ。
ただ格好いい男だけなら道端に腐るほど落ちてるはずだ。
光のこともあるし早く新しい恋を見つけられたらな。
ミツキちゃんの為にもその方が絶対いい。
さすがに僕たちが付き合ってるのは世間的にもよくない。
分かってるんだけどどうしても欲が勝ってしまう。
修学旅行で碓氷さんとの距離が縮まった。
だからははっきり言ってもうミツキちゃんは……
いやいや第三の山田はそこまで最低なクズ男じゃないよ。
元気と慕ってくれるミツキちゃんを裏切れないしできるならキープしたい。
おっと…… 都合のいい願望が漏れてしまった。
僕って本当に最低だな。クズさ。クズだよ。
ただこのままクズをどこまで続けられるか自分でも興味がある。
僕は第三の山田であって麦じゃない。
しかしその第三の山田もどこかへ。行方不明だ。
と言うより卒業だ。新しいクラスには山田は僕だけ。
「なあ放課後どうする? それで白米と麦飯どっちがいい? 」
昼休みになると光が寄って来た。
「さあ。大田原さん次第じゃないの。サボる気? パンで! 」
「違うって! 勧誘するんだろうが! 」
どうやらようやく光もやる気が出たらしい。
さすがに三人だけではいつ活動停止になってもおかしくないからな。
これでサークルのことは光に任せておけばいい。
「それはご苦労様。僕は用事があるから頼んだぞ」
会長としての立場があるので簡単にはサボれない。
ただ恐らく新入生の見込みは薄いだろう。
誰がこんなサークルに興味を持つと言うんだ?
前会長の先輩がこのおかしなサークルを作った。
それを僕の代で潰す。無能だと思われるのは嫌だ。
どうせ歴史も伝統もないからどうでもいいがそれでも何とかしたい。
「おい来るぞ! 」
「まずい! 急がないと」
慌てた様子の光。それを見る碓氷さん。おかしな光景だ。
光と同じクラスになって少しだけ嬉しかった。
仲間外れにも余りものにもならずに済みそう。
毎日が楽しい。だけど当然問題もある。
碓氷さんは常に光を見ている。それが終わると僕を睨みつける。
どうやら教室で必要以上に騒ぐなと。実際は仲よくするなと警告するよう。
そう碓氷さんも同じクラス。これはついてるぞ。
僕たちはやはり切っても切れない運命づけられた関係なのだろう。
三年になり残念なことに朝のハイタッチをやめてしまった。
前のクラスとは勝手が違うのだろう。ある程度仕方ないこと。
それとも単に成長したのかな? 少しだけスカートの丈が短くなった気がする。
「どうしたんです碓氷さん? 」
「気安く話しかけないで! あなたは私の敵なんだから! 」
決めつけが酷い碓氷さん。まさか僕を忘れたのか? それはないよ。
あれほど修学旅行では仲睦まじく過ごしたのに。まるでなかったかのよう。
これでは光じゃないが玉手箱を開けて自分だけ爺になった気分。
ちなみにタートル姫子は別のクラス。残念だな。うん残念だな。
こうして新学期は波乱の幕開けとなった。
ふう疲れた。結局勧誘に時間が取られる。興味を示す者もなく手応えなし。
力尽きたように解散。また明日も今日と変わらないんだろうな。
いつものように光と二人っきり。
「どうしたんだよ元気? 」
相談に乗ってくれそうだがどっちにしろ不適格。
ここは無難にサークルの相談でもするか。
「どうやったら新入部員が集まるかな? 」
ゆっくり歩きながら今後について話し合う。
本来サークルについてはそこまで力を入れてない。
でも会長で三年だからな。そう言えばもうそろそろ受験だっけ。
いやよそう。つまらないことを考えてどうする?
今は碓氷さんのことだけ考えていよう。うわ…… 憂鬱だな。
「それはお前…… きれいな子がいれば自然と…… 」
軽口を叩く困った奴。そんな子がいるなら苦労してない。
もっと現実的になってもらわなくちゃ。僕だってそれくらいの冗談言える。
でもそれで解決しないから困ってる。うーん碓氷さん……
「大田原さんじゃダメかな…… 」
一応は眼鏡美人で通りそうだが。暗いんだよね。あと怖いんだよね。
「それはお前…… 」
どうも結論が出てるのに自分から言わずに僕に言わせようとする姑息な光。
汚い奴だ。しかしそれほどデリケートな問題でもある。
「それはお前? 」
「だからお前はどう思うんだよ? 」
うわ…… こう言われては正直に答えないとな。
「普通かなと」
「おいおい逃げるなって! お前の彼女と比べてどうだ? 」
つまらないことを聞く光。何を考えてるんだか。
「彼女って? ミツキちゃん? 」
つい気が緩んでおかしなことを言ってしまう。しかし奴は鈍いから大丈夫。
大体僕の彼女はミツキちゃんなのさ。両親からの許しもあるし。
碓氷さんはただの願望。自称彼女なだけ。そこだけは履き違えてはいけない。
「はあ? 碓氷さんだろう? 」
ようやく碓氷さんを覚えたか。光の奴興味なさそうだったからな。
だからってそれはそれでふざけるなって思う。勝手だよな僕って。
「碓氷さんと比べたらさすがに悪いよ」
明言を避ける。
「だったらミツキとは? 」
せっかくだからと緊張感のないお兄様。こいつはいつだってそうなんだから。
「うん。ミツキちゃんは物凄くかわいいから。やっぱり悪いよ」
「そうだろうそうだろう。お前正直過ぎるぞ。へへへ…… 」
気分よくなっちゃって。単純な奴。どうも妹を自慢したいらしい。
だけどいつも会ってるから自慢されても困る。
親友の妹を悪く言えないしミツキちゃんは実際かわいいし。僕にはもったいない。
それは碓氷さんだって同じだけどそれでも信じて待っている。
「おいおい話を戻そうぜ。それで大田原さんはどうだ? 」
こいつ! どうにか収まったものを蒸し返しやがって。どう言う神経してるんだ?
うーん。やっぱり答えないとダメ?
続く




