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御手洗さんと

三泊四日の修学旅行を終え新幹線で帰路に就く。

きちんとお土産は買えたと思うけどまだ足りない気がするんだよな。

自分で言うのも何だけど第三の山田だけにやらかしてもおかしくない。

一番はやっぱり碓氷さんと一緒に買ったお揃いのナイフ。

いくらお土産とは言えナイフを所持していれば銃刀法違反で検挙されるかも。

たとえ免られても根掘り葉掘り聞かれることは間違いない。

持っているだけで厄介なものだからな。

うーん。買ったはいいが処分に困る。


「あの…… これは一体? 」

行きのように離れることもなく二人っきりの特別な雰囲気もない。

あの時はたまたま運よくなだけで今回が普通なのだから文句言えないが。

隣に光がいると何かとやりにくいからこれでもいいんだけど。

碓氷さんが本性を出せないから辛いのではと。

彼女はただのハイタッチ好きの女の子じゃない。


「御手洗さんがここへ? 」

確か帰りも二人っきりだったはずだよな?

二人だけの世界を邪魔しようとする困った人。それが御手洗さんだ。

大体彼女の指定席は車両と車両の間だろうなどふざけられない。

今更御手洗さんにどう接しろと言うのか? 

当然彼女にも言い分はある。それは否定しない。ただ否定しないけど……

「飽きたから交代してもらったの。ありがたく思いなさい! 」

誰も求めてないのになぜか図々しく僕の隣に座る困った人。

高く評価してくれるのはありがたいがだったらもう二人の山田で我慢してよ。

気まぐれで周りを巻き込まないで欲しい。

そのせいで愛し合ってる二人が離れ離れになるじゃないか。

どうするんだよ? どうしてくれるんだよ!

いつものように我がままを言えば難なく碓氷さんと二人っきりになれるのに。


「いや…… でも…… 」

せっかくの楽しみを自分勝手に終わらせるなど許されない。

「ほら行きは行き。前のことはどうでもいいでしょう? 」

ついてない。確かに碓氷さんとは少し気まずい部分もあるにはあるが。

それでも御手洗さんを寄越すなんて。お嬢様の気まぐれに振り回されてばかり。


「そうだ。お土産は買ったの? 」

つい馴れ馴れしく。相手はお嬢様で気まぐれ。僕はお嬢様を苦手としている。

どうしよう? このまま無難に対応すればトラブル回避にはなるけど。

それでは碓氷さんと隣同士になれない。ここは腕の見せどころだぞ。

「買う訳ないでしょう! 」

どうやら一般庶民の感覚はないらしい。こんな人と一緒にいないといけないのか。

これなら山田兄弟の方がマシに思えてくる。

今更御手洗さんを攻略しても意味がない。

二人でも手一杯なのに御手洗さんまで入って来たら収拾がつかなくなる。


「ねえキスしようか? 」

突然のことに驚きが隠せない。そう聞こえた。間違いないはずなんだ。

聞き違いだろうと内心分かっていても聞き返さざるを得ない。

「その…… まだ僕たち出会って日が浅い。確かに学校で顔合わせてるけど……」

「何を言ってるの? どう言うこと? 」

「だってキスしたいって…… 」

思いがけない提案に困惑する。でも別にキスってそこまで大げさでもない気も。

ただの挨拶。親しみを込めてハグとのセットが定番だ。

これは碓氷さんの朝のハイタッチと似たようなもの。

うん。そうだよ。驚くことでも拒否するようなことでもない。

たかがキスだ。ビンタを喰らうのとは訳が違う。

「はあ? 何言ってるのこいつ? キスって誰が言ったんだよ! 」

もうお嬢様でも何でもない。素が出てしまっている。

そっちから誘っておいてうやむやにされても困るんですけど。


「やっぱり無理! 早く交代! 」

お嬢様の気まぐれで悲惨な帰りになるとこだったがお嬢様の我がままで元通りに。

ああ助かった。御手洗さんを受け入れてしまったがこれで元通りさ。


交代した碓氷さんも同じく機嫌が悪い。疲れた? 眠いの?

帰りの列車で思い出を振り返る。

「いや面白かったですね」

再びの二人っきり。嬉しいな。僕たちはやはり結ばれているのだろう。

とりあえず不機嫌な彼女をどうにかしないと。


「クイズです。一番きれいな花は? 」

第一の山田から借りたクイズ本を開いてみる。

もう全部覚えたので持っていけと言われたが迷惑なので返却するつもり。

「ちょっと元気ふざけないで! 」

修学旅行の思い出を振り返るつもりがなぜかクイズに。

「ほら早く! 早く答えてくださいよ」

「分かったってってば。桜でしょう? 」

「違いますよ。答えは…… もう少し考えてください」

ここで僕に自信があるなら碓氷さんに決まってると言えるんだが。

さすがに恥ずかしくて面と向かっては言えない。褒めるのは得意じゃない。

かわいいとかきれいなら言えるがそれだって雰囲気がいい時にふざけた感じで。

「もう違うの? でも桜きれいだよ」

「君…… 」

ダメだ。やっぱり恥ずかしくて言えない。そんな度胸僕にはない。


「ちょっと早く! 」

クイズが苦手に見える。元々頭がよくないから。

だからかクイズだと言ってるのに普通に答えてしまう。

アンケートでもあるまいし好きな花を答えられても困る。

「タイムアップ! では次に行きましょうか…… 」

第一の山田から借りたクイズ本は暇つぶしにはちょうどいい。

「待ってよ! 答えを教えてくれないの? 」

そんな風に懇願されるとつい教えたくなる。しかし甘えは許されない。

それではクイズの意味がない。もう少し延ばさないと。

ただのクイズタイムではない。二人が親密になるようにと用意したもの。

惹きつけられたらそれでいい。


「次は…… 」

「もう知らない! 元気のくせに生意気! 」

そんな風に怒ってしまう。ただのクイズなんだらそこまで興奮しなくていいのに。

僕を嫌いになるのは許さない。二人はもう正真正銘の恋人なのだから。

勝手にそう思ってるだけだがその内に真になるさ。

それが男女ってものだろう。


                続く

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