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スーベニアってどこの国?

初夏のハイキングではまだ奏子先生は副担任ではなかった。

だから代わりに担任が。あれはあれで悲惨だったな。

そんな他人事みたいに言うけれど僕はその六人だった。

だって誰からも相手にされず余り者だったから。

そう言えばあの時も山田三兄弟は固まっていたっけ。

まだ当時は山田三兄弟などとオシャレにまとめられていなかった。

だから担任とも行事を通してそれなりに関係が構築できた。

内申点にもプラスに働くだろう。ただちっとも嬉しくないが。


思い出したくもない暗い記憶。バスでやっちまう奴もいたし。

第一の山田だ。バスの中でも勉強してたから体調を崩したらしい。

三半規管を鍛えるのは生半可じゃない。だから仕方ない。

僕はいつも通り前の人の後をついて行くだけ。

その時も碓氷さんの持ち前の明るさに助けられた気がする。

いつだって誰にだって何も考えずに明るくハイタッチして回っていた。

そうそう地元の人が…… 


まずいまずい。修学旅行で去年のハイキングを思い出してどうする?

過去は過去。今を生きなければいけない。

それにしても地獄のエンドレスシックスに価値がつくなんてね。

今では二十人弱で争うことになるんだから奏子先生効果は相当なもの。

僕だって念願の碓氷さんと一緒。座席まで一緒のプレミア付き。

どうしてこうもうまく行くんだろう? 怖いほどだ。

もう嫌われたっていい。積極的に行こう。僕はついてるんだ。そう思いたい。


「ねえ元気! もうとっくに皆行ったよ」

碓氷さんが僕の為に待っていてくれた。いくら荷物持ちでも感動だ。

「はあ…… もうちょっと二人っきりでゆっくりしてましょう」

うーん。夢のよう。どうして僕みたいな人間が碓氷さんを独占できるんだ?

奏子先生独り占めとどう違うのか実験したい。

「急いで! お土産が売り切れる! 」

そんな風に急かすから走ることになる。

「ほら急いで! 迷子にならないでよ」

まるでお姉さんだ。僕がゆっくり歩く者だから歩幅が合わない。

ただ後ろ姿の碓氷さんも悪くない。


急ぎたいがどんどん後ろに抜かれて追いつけない。ついには見失ってしまう。

でもここは人が多いとはいえ迷うことはないだろう。

どこの店でお土産を買うかだけ。

「おい何をやってんだよ元気? 」

そこに現れたのは光。どうやら奴もノロノロしてたせいで置いて行かれたらしい。

情けないな。早く竜宮城に連れてってもらえよな。

こいつさえいなければ…… よそう。現実になったら困る。

僕の大親友の光を悪く言えない。だって本当はとってもいい奴だから。

目障りだとしてもそれは光には全然関係ないこと。こっちの話だから。

友情は友情。愛情は愛情。分けて考えないとおかしな感情を抱くことになる。

これは僕だけでなくミツキちゃんや碓氷さんにも伝えなければならない教訓。


「一緒に巡ろうぜ光! 」

そうんな風に引っ付く悪い癖。どうも浮ついてるんだよな。自分でもよく分かる。

「おいやめろって! お前だって急ぐんだろう? 彼女に叱られるぞ! 」

嫌がる光を見てついふざける。悪いなと思ってもやめられない。そう言うもの。

「お前どうせ逸れたんだろう? このままだと帰れなくなるぞ」

そんな風に脅しをかける光。人が悪い。

まさか嘘だろう? ただ確かにどこの旅館か覚えてないから合流しないと危険。

仮に連絡が取れても会うのは大変。迷うのが趣味の方向音痴で地理が苦手だから。

それは奴も似たようなもの。よくこれで今まで生きて来れたな。

当然地元ではめったなことがない限りあり得ないが見知らぬ土地では普通にある。


「なあ光…… 」

「おい嘘だろう? 」

光は一度断るがそれでもいい奴だから放っておけない。

「ほら早く握れ! どうしてお前はいつも手を繋ごうとするんだよ? 」

そんな風に怒って見せるがただの照れなのだと思う。困った奴だ。

分かってるくせに。手を離せば迷子になる。それは致命傷だ。

一人よりは二人の方が迷った時にまだ何とかなるだろう。

だから絶対にこの手を離さない。他に深い意味などない。


「仕方ないな」

「うん。心強いよ」

こうして手を繋ぐことになった。これで碓氷さんたちを気兼ねなく探せる。

「碓氷さん! どこですか? 」

「ちょっと何? 」

前にいると思っていたがどうやら抜いたらしく後ろから声が掛かる。

「いや逸れたかと思って驚いたよ。なあ光? 」

「俺も多少。じゃあそろそろ」


「それでどうしてあんたたちは手を繋いでる訳? 」

もはや怒りで何も繕えないよう。ただの怒り全開の碓氷さんだ。

「それが光が寂しいからって手を繋ごうと。心細いだったかな?

とにかくようやく見つかってよかった」

本当は僕から頼み込んだが恥ずかしくて言えない。

「俺も仲間が呼んでるから行くわ。彼女と楽しくやれよ」

そう言って手を振るから返すが当然碓氷さんはキレてる。

恐ろしい人だなと思ったのは何回目だろうか?


「あの…… へへへ…… 」

怖くて近づけない。僕だって光じゃなくて碓氷さんと繋ぎたかったよ。

ハイタッチだけでなくもっとゆっくり長く手を繋いでいたい。

それが僕の偽らざる気持ち。汲んでくれたらな。

でもそれを言えば僕が光を蔑ろにしたと捉えられてしまう。

「もう早く行く! 買いたいものがあるからついて来て! 」

うわ…… 恐ろしく不機嫌。僕が何かした? いつになったら収まるんだ?

「これは…… 凶器? 」


お土産屋はたくさんあっても負けないように大体同じものを取り揃えている。

名物。特に大阪は食べ歩きの町。タコ焼きもいいしお好み焼きも捨てがたい。

本場大阪グルメを腹一杯堪能したい。食い倒れたいよね。

そして願わくば碓氷さんと楽しくフウフウアツアツしたい。


「これ買う」

どうやら食べものではない。変わってるな。

箸や櫛などが所狭しと置いてある。油取り紙や金箔なんかもある。

用意がいい。さあどれを買うのかな?

彼女がお土産屋で手にしたのは意外なもの。

普通は買わないだろうがこれも記念になるかな。


                 続く

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