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カジノ見学

清水寺。

「ねえ御手洗さんたちはどこ? 」

「それでしたらちょうど目の前に。もう清水の舞台から飛び降り下を歩いてます。

どうします? 僕たちも飛びましょうか? 」

冗談のつもりだがなぜか首を縦に振るちょっと不思議な碓氷さん。

これはどう言うことだ? 比喩なのに。本当に飛んだら大怪我だぞ。


「碓氷さん…… 」

しかし何も発せずただ手で飛ぶように指示を送る。これは本気らしい。

どうも僕が先に行って大丈夫なら飛ぶようだ。

実験台にされてしまう。ちなみに大丈夫って一体どこまで?

大怪我しなければいいの? それとも怪我でも許されないのか?

だがどう考えてもダメだし飛び降り禁止の看板もある。

ふざけて飛んだらお終いだ。ここはいくら彼女の命令でも聞けない。

それこそ命がいくらあっても足りないだ。


「碓氷さん! 」

「冗談。でも飛んでくれたら面白いなって」

そんな風に笑って見せる彼女の異常性。危うく騙されて飛ぶところだった。

危ない危ない。まったく何考えてるんだよ?

急いで待ち合わせの場所へ。


どうやら二人の山田はうまく告白できなかったらしい。

相手は強敵だからな。筋金入りのお嬢様とゴシップクイーン。

下手に告白すれば訴えられる。笑いのネタになってしまうかも。

碓氷さんはバカだからその辺の心配はない。だから安心。


こうして二日目を終え三日目に。

ついに問題の場所へ。

皆もう忘れてるだろうがカジノ建設が急ピッチで進められついに完成した。

そのスピードったらとても信じられないほどで工期など関係ない。

万博が終了間もないと言うのにこれはギネス認定されてもおかしくない。

その分安全面が心配されたがどうやら今のところ問題ないようだ。

それほど国と政府と自治体が一丸となって取り組んで来た一大プロジェクト。


大阪に入ってから急に雰囲気が変わる。

「これいいですね」

興味もない寺巡りをしていたのでワクワク感がけた違い。

「ここが? 」

そうメインの一つ。班ごとに行き先を選べるのだが僕たちは無難にカジノ見学。

万博を成功させ今勢いに乗っている大阪。

ちょっと特殊な場所でもある。反対派を押し切ってカジノができたのは十二月。

それから数か月経ってプレオープンと言うことで修学旅行生を招待している。


「凄いね。煌びやか」

感想は人それぞれ。山田兄弟はウオーとただ唸るだけ。

僕は新品のマシーンが何台も揃い動いてるだけで感動する。

どれも最新のもので本場ラスベガスと変わらないそう。

それが百台以上。どれだけ興奮するか? ワクワクが止まらない。

「皆さん。ここからは自由行動です。楽しんで来てくださいね」

現地のコーディネーターと言うこともあって楽しみ方を熟知しているプロ。

最初にホテル見せられた時は凄いとは思ったけどただそれだけだった。

やはりプレオープンとは言え疑似体験できるのはありがたい。


本当にパスポートを持って来て正解だったぜ。

と言っても皆パスポートが必須なので当然ある。頑固でもない限り用意するもの。

しかし…… まだ法案が追いついてないからとこの巨大施設を異国扱いするとは。

来年にはきちんと法案が通るはず。それまで行かなければいいが難しい。

観光スポットであり発展の場だから。


バニーガールのお姉さんはまだ発見できないがそれでも本場さながらの再現度。

ただ僕はテレビで見るカジノであって当然一度も行ったこともない。

目を盗んでこっそり行けるような場所でも距離でもない。

この日だけ…… 見学の間は僕は金持ちのギャンブラーだ。

ちょっとだけ大人の真似事をする。これでカジノに嵌ったら誰か責任取ってよね。


まずはルーレットで運試し。ディーラーはやはり外人さんがよく似合う。

しかし当たるはずもなく持っていたチップを全部吸い取られてしまった。

これがカジノと言うかギャンブルの現実なんだろう。

もう二度と行くことはない。たぶん一か月は…… 一週間ぐらい? 

結局最後の一投もまったくかすりもせず通り過ぎて行った。

ああどうして僕ってこう下手なんだろう?

こうして夢のカジノ生活も夢のまた夢。

まあこれくらいで充分だろう。

「あれ…… また迷ったみたい」

「のんびり行きましょう碓氷さん」

もう空っぽ。ではそろそろ戻るか。


カジノ見学を終えてお土産屋で自由行動。

「はい皆。お土産もいいですが買い過ぎには注意しましょうね」

奏子先生が笑顔。どうやらカジノで大当たりでもしたのだろう。

分かりやすいな。でもそれだと嵌ってしまうリスクが高まる。

今日負けるのが結局はトータルで損をしない賢い戦い方。

プレーオープンで仮に大勝ちしても大金は手には入らないしね。

当然僕たち高校生はあくまで雰囲気を味わいに来ただけ。

面白ければそれでいい。たとえ儲からなくても。

いくら大勝ちできても最後に大損したら意味ないからな。


「先生はどうします? 」

「私はまだカジノの続きを…… だから三時間ぐらい自由行動にしたいな」

おかしな願望を語ってみる奏子先生。

いつも昼休みや放課後に聞こえて来るあの夏を感じさせるピアノの音色とは真逆。

ただ情熱的なところは近いのかもしれないが。

奏子先生ってば天然だから生徒からだけでなく教師からも人気が高い。

ただ本性は分からない。男好きのだらしない教師かも。

一度きちんと奏子先生とお話しできれば僕だって少しは心を開くんだけどな。

おっと…… つい奏子先生の笑顔を見て浸ってしまった。

いけない。今は碓氷さん以外のことを考えてはダメだ。

碓氷さんに嫉妬されたらどうしよう?

 

「先生早く行こうよ! 」

奏子先生と一緒に回れる幸運な男。二十人弱から選ばれし勇者たち。

男だけに奏子先生がついた班で。奏子先生を独占できる。

まるで何かのアイドルのイベントみたいだけどこれは救済処置。

初夏の日帰りハイキングでは同じよう男六人による班があった。

まだハイキングだったから男六人で固まっても違和感はなかった。

しかしそれについて来たのは担任だ。ただでさえ男だらけのところに男が増えた。

その名誉ある悲惨なハイキングメンバーに僕たち山田兄弟もエントリー。

あの日を思い出す。


                続く

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