二度目のお風呂で……
京都到着!
「おい何をしてるんだ元気? 全然飲んでないじゃないか! 」
そんな風にふざける。きっとからかってるんだろうな。
今開けたばかりのドリンクを全部空けるなんて人間業じゃない。
何だか分かり辛い話だがオープンとバケートの違い。
これが真夏なら…… 真夏の京都は気候もあって暑くてさすがに行きたくない。
大文字焼きは一度生で見たいけど。
ふう…… もう無理。これ以上は飲めない。
誰だよ炭酸水を置いた奴は? 飲めるはずないだろう? でも急がないと……
どうやら他の者はもう飲んでしまったらしい。いやあり得ないか?
「もうほら元気! 飲みものはかばんに入れなさい! そのためのペットボトル。
私を見習ってきちんとやる! 」
珍しい。お姉さんプレーを発動した。
僕がだらしないものだからつい世話を焼きたくなったんだろう。
それとも光の前で素敵な女性を演じる気? いやポッキーでも優しくしてくれた。
これはきっと碓氷さんの素なんだろう。僕にだけ見せる普段とは違う表情。
ああきっと僕たちは結ばれるんだろうな。確信がある。
きっとそう遠くない日に。恐らくあらゆる試練を乗り越えて二人は結ばれる。
それには僕も体を鍛える必要がある。
筋肉質になって多少の攻撃に耐えられる強靭な肉体を手に入れるんだ。
もうただの妄想ではなく現実的なものになっている。
こうして京都へ。
班行動開始!
山田三兄弟と御手洗さんとゴシップクイーンと碓氷さんの六人で。
「なあどこに行く? 」
寺巡り。中学と同じように有名な寺巡りをして一日目は終了。
何と言ってもその手の観光施設は早ければ三時に。遅くても五時には閉館する。
ほぼ回れずにただ外から見たのがほとんど。
明日は清水寺に。二日間は奈良と京都に。残り二日間は大阪で。
三泊四日の旅。
夜はホテルでバイキングを堪能。
ただ食い過ぎてデザートまで手が出せなかったのが悔やまれる。
腹を膨らませ部屋へ。
山田三兄弟で寛ぐことに。
しかしこいつらとはとことん話が合わないからな。何を考えてるのやら。
第一の山田はさっきから寺に関するマニアックな問題を出して困らせる。
第二の山田も迷惑だと言うのに筋トレ。しかもなぜかつき合う羽目に。
また風呂に入ればいいのだろうがはっきり言って付き合いきれないよ。
「悪い。足を押さえてくれ」
「へいへい。平安京! 」
二人の要望になるべく応えてあげようとするがもう腹一杯で眠いよ。
こいつら本当にロクな奴じゃないな。
二人がダメだと僕までどうしようもない奴だと思われる。
これは何とかしないと僕の立場が危うくなる。最優先重要課題。
山田同盟を結んだところでこいつらがこれでは先が思いやられる。
クイズを十問連続で答えたので解放された。
僕って流されやすいんだよな。しかも連続十問だから相当な集中力だ。
できるなら余計なことに時間も頭も使いたくないがこれも山田同盟。
いつか何倍にして返してもらおう。
十問正解したかって? ははは! 僕は第三の山田だよ。
そんな頭よければ修学旅行を京都にする高校に行ってない。今時海外でしょう?
パスポート持ってないけど。大体二年で修学旅行ってのも変な話だよな。
まあここは僕が補欠で入ったところだから仕方がないけどさ。
もちろん学校は楽しいよ。碓氷さんがいるんだから。
彼女がいるだけで…… ハイタッチするだけで心が洗われるよう。
十問答えはしたがそれだけ。全部間違えた。だが適当でもなくきちんと答えた。
だから満足して解放してくれた。第一の山田はどこかへ。
僕もそろそろ寝ようと言う時に第二の山田つき合わされ本日二回目のお風呂に。
大浴場にもう一度って。この辺はもう高校生だから自由。
生徒たちの自主性に任せているようでイチイチうるさく言わない。
ただそろそろ営業終了の時刻なので三十分で済ます必要がある。
うわ…… 臭い。ダメだこれは。明日も穿こう思ったけどパンツは変えないと。
靴下もいつの間にか濡れていて使いものにならない。
明日新しいのを買うか。でももったいないから光のを借りるか?
とりあえず風呂だな。汗だらけの体を何とかしないと。
現在二人っきり。山田家の貸し切り風呂状態となっている。
そこに運よくか悪くか光が姿を見せる。
「あれ…… 元気も遊んでたのか? 」
そんな風に笑う。こいつ何を言ってやがる? 遊んでる暇などない。
ただの付き合いで本日二回目のお風呂に入ってるだけ。
さあ楽しく一緒にお風呂に入りましょうね。
いや待てよ。あまり深く考えてなかったが裸の付き合い。ちょっと恥ずかしいな。
「おい先に行くぞ! もう十分しかないからな」
律儀な第二の山田が知らせてくれる。だからお前に付き合ってるんだって。
流されるまま大浴場まで来てしまった。そこに運命の出会い。光だ。
十分もあればすべて終わるって。へへへ…… 十分あればね。
「なあバイキングどうだった? 」
「それはもちろん最高。ただご飯がちょっと…… 」
拘りがあるようだ。でもそれくらいなら大した問題じゃないさ。
「何か言いたそうだな」
「お前さあ自分とこの班の子をどうにかしろよ。しつこくて困るよ」
どうやら京都に着いてからもしつこくされたらしい。
誰がと聞く必要もない。こんなことするのは碓氷さんぐらいしかいない。
光に夢中だから当然だよな? それにしてもこいつも贅沢だぜ。
「悪い。近づかないように伝えておくよ。でもかわいい子だろう? 」
様子を見る。これでかわいいと言ったらミツキちゃんに報告するしかない。
「いやお前の彼女に興味はないぜ」
どうやら愛情よりも友情を取るらしい。いい奴だな。
友情よりも愛情を優先する僕って最低なのか?
最低最悪なのか? ああ光ごめんよう。
「それで…… 」
さあ今のはあくまで前置き。本当の目的は違う。
せっかく二人っきりになったんだから願いを叶えさせてもらうよ。
続く




