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喉の渇き

どうしよう? つい反応してしまった。どう言い訳したらいい?

元気のくせに生意気はミツキちゃんの持ちネタと言うか口癖だよ。

それを奪うように碓氷さんが真似するから……

大体修学旅行より前はただ山田君だった。ちなみにもっと前は認識もされてない。

それが山田三兄弟になって区別が面倒になったからっていきなりの元気君呼び。

とっても嬉しいことだけど慣れないのもある。

いつの間にか興奮して元気になっていた。それだってどれだけ嬉しいか。

二人の距離が縮まったのを実感できる。


もう僕たちは恋人かもしれない。いや恋人で何の問題もないだろう。

後は気持ちの問題。この恋をどれだけ二人で温められるかだ。

この恋温めますか? などと浮かれていてはいけない。

真剣に今後の事を考えなくてはならない。ただどうしても悲観的になってしまう。

二人は愛し合ってるのにすれ違って別れるで済まずに互いを傷つけ合うことに。

そんな予感しかしない。大体仮にうまく行ってそれこそミツキちゃんはどうする?

ふう…… 悩みは尽きない。すべては仮定の話だけど。

 

「へえ元気に妹がいたんだ。でも何でちゃんづけ? 」

思いついた疑問を口にする。もしかしてミツキちゃんの正体知ってないか?

いつも光の前で嫌そうな顔して邪魔してくる女の子がミツキちゃんだ。

碓氷さんの認識ではこんな感じだろう。ただ本当に知らない場合もある。

僕を認識できずにいた。だとすればミツキちゃんも認識できないかも。

それは誤解を恐れなければ碓氷さんが馬鹿だから。

人を覚えられない魔法にでもかかっているのだろう。

おっと…… それはいくら何でも言い過ぎか。

でもきれいでかわいくその上誰とでも話せる明るい碓氷さんが馬鹿でも問題ない。

逆に頭がいい方が嫉妬の対象になる。男の僕からしてもうまくやってるなと思う。


「どうしたの元気? 」

「それは…… 」

「それは何? 早く言いなさいよ! 」

教えてとかわいくお願いする訳でもなくただの命令。言いたくなくなるぜ。

でもせっかくの命令だから従うとしよう。ただ実際には妹はいない訳で。

「ほら物凄くかわいくてついちゃんづけしちゃうんです」

もう僕には妹がいた設定にしよう。一人っ子だけどさ。

家族構成知られたら一発でバレるか? でも興味なんかないだろう?

「何だ妹か。つまらない」

危ない危ない。バカで助かった。疑うと言うことを知らないのか?

ははは! ちょろいもんだぜ。

「それより碓氷さん。トイレ行ってきますが飲み物などいかがですか? 」

僕って気が利くでしょう? これくらいしないと振り向いてくれないからな。

「うん。何でもいいから買って来て」

こうして危機を脱した。


邪魔者がいなくなりもはや歯止めが利かない状況。ちなみに邪魔者とは僕のこと。

急いで戻って来ると嫌そうにしてる光としつこく迫る碓氷さん。

こんな現場見たくなかった。ポッキーの思い出も霞むほど。

ああどうして僕ってこうもお人好しで間抜けなのか?

「おい光何をしてるんだ! 」

分かってはいる。でも碓氷さんを咎められない。だから代わりに光を追い詰める。

それは正しいかと言えば違う。でもこれも二人の関係を続けるための処置。

ある程度仕方ない。光だってきっと理解してくれるさ。

「俺かよ? お前の彼女がこっちに絡んでくる。何とかしてくれ元気! 」

悪気がない光は勝手に彼女判定するどうしようもない奴。

僕がいつそんなこと言った? へへへ…… ふざけるなよ。

ついムカっとくる。いや悪くないから実際は笑いがこぼれる。


「違くて…… 」

「違います! ただのクラスメイトです! 」

必死に否定する碓氷さん。ああ見ていて辛いものがある。

どうして僕が彼氏ではダメなんですか? そんなに差はないでしょう?

「何でもいいから元気がなんとかしろ! 」

「僕が…… 」

「もう知らない! 」

おっと…… いきなり怒り出してしまった碓氷さん。

これは我慢の限界? これで光を諦めてくれたらこっちとしてはラッキー。


そうこうしてるうちに間もなく京都だ。

「これコーヒーです」

頼んでいた飲みものを五本ほど。好みがよく分からなかったので多めに。

「バカじゃないの? 」

どうやら苦すぎるとご不満らしい。確かにブラック無糖だからな。

僕だって本当は嫌だったが女子ってそう言うまずい系好むだろう? 偏見だけど。

仕方ないここは僕が処理しよう。


「ではこちらをどうぞ」

紅茶もあるよ。ストレートティーだ。

「ごめんなさい。紅茶飲めないの」

意外にも碓氷さんの苦手なものが知れて逆によかった。プラス思考で行こう。

「でしたら水は? 炭酸水は? おしるこはどうだ! 」

「味がないとちょっと…… まともなドリンク持って来なさいよ! 」

ほぼ全種類網羅したはずなのにどうやら相手は手強い。まさかのお嬢様?


「おしるこじゃないか! 俺もらうぞ」

勝手に人の飲みものを取ろうとする困った奴。

しかし処理に困ってるのは事実。

「じゃあ私はコーヒーを」

タートルさんまで参戦。まあいいか。光に請求すればいいさ。

断ってもミツキちゃんがいるしな。兄の借金の肩代わりに。ひひひ……


「じゃあ私は水でいい」

何と碓氷さんまで…… 嬉しいが凄い甘やかしてる気がしないでもない。

「だとしたら炭酸水は? 」

「自分で処理しろって。紅茶は俺が頂き! 」

何と二本目に手を出す図々しさ。ほら見てください。これが奴の正体ですよ?

憧れるような人物じゃない。決して恋愛感情を抱いてはいけない。

そんな風に必死に心の中で言い続けても決して伝わらない。

口にすればきっと僕は嫌われてしまう。

嫉妬してる度量の小さな男だと思われる。でもそれでいいのかもしれないな。

碓氷さんには僕の強い想いを伝えたい。


<新京都! 間もなく新京都! >

アナウンスがあって新幹線が減速。

そろそろ降りる準備を始めるか。

碓氷さんと二人っきりの幸せな時間はあっという間に過ぎて行った。

名残惜しいが帰りもあるしな。ここは前に進むがいいさ。


               続く

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