表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/116

修学旅行編

修学旅行編。


「おいまだかよ? 」

明日ついに修学旅行だ。嬉しいような悲しいようなそんな複雑な感じ。

きっといいことばかりじゃないんだろうな。何と言っても第三の山田だから。

そう言う風に運命づけられているのさ。

うちの班には何と碓氷さんが。お近づきになる絶好のチャンス。

絆を深めるにはちょうどいい。これを機にハイタッチ要員から脱却するんだ。


どんな服を着て来るのかな? いやいや制服とジャージか。

でも寝間着や部屋着は見れる訳で。それを見せてくれるかと言えば無理だろう。

悲しいことなのについ一人ではしゃいでしまう。相当浮かれてるんだろうな。

へへへ…… 碓氷さんと楽しい修学旅行になるといいんだけど。


それだけじゃない。僕を誘ってくれたあのゴシップ好きの女の子も。

悪いなと思いつつも名前が思い出せない。まあこのままでもいいでしょう。

第三の山田は碓氷さんと同様に人の名前が覚えられない。そんな情けない人間さ。

もう諦めている。僕にとって碓氷さんだけが大事。

それ以外は碓氷さんとどのような繋がりがあるかで測っている。


当然彼女だけじゃない。もう一人いる。クラスでも人気が高い御手洗さんだ。

どうやら我がままで愛想を尽かされたことで取り巻き連中が消えた。

そのおかげで普段見かけないレアな大物が釣れた。

もちろんそれで終わらない。山田三兄弟までが集結。

とんでもなく間違いやすい状況ながらそれでも第三の山田を通せればと思ってる。


「おいまだかよ光? 早くしろよ! 」

おやつに時間がかかっている。もう高校生だからおやつなどと言っては笑われる。

しかし禁じてない以上好きに持って行くのもあり。没収されなければいい。

「悪い。どれもうまそうで迷ってる」

涎を垂らしそうな勢い。そこまでのこと? 信じられない。

確かにおかしは行き帰りには大事なアイテムだけどさ。

小学生じゃないんだから。こんなとこミツキちゃんが見たら泣くぞ。


選び終え会計に。一緒に買おうと誘ったのは光の方。

いつもは優柔不断なことはないのにどうも修学旅行だと力が入ってるよう。

ガキだな…… でも人のことは言えない。昨日から緊張してあまり眠れてない。

もし明日遅刻するようなことがあればシャレにならない。置いて行かれるかもな。

いや忘れられて置いて行かれるのは間違いない。

点呼したところど無意味。存在感がないから。

この手のことで悲惨な目に遭うのが僕たちみたいな者の宿命。

認識されずに置いて行かれたらシャレにならない。

一人寂しく帰還かその辺をブラブラすることになる。

当然班にも迷惑が掛かることになる。せっかくの修学旅行を台無しにしてしまう。

そうなれば碓氷さんにだって見放されるだろう。


「悪い。よしこれでいいや」

「おいおい早くしようぜ。明日の準備であっておかしは別にいらないだろう? 」

つい強く言ってしまう。でもこれは仕方がない。ミツキちゃんを待たせている。

今夜はミツキちゃん特製の料理を振る舞ってもらうことになっている。

あの料理下手なミツキちゃんが僕たちのために。と言うか僕のためだろうな。

帰ったらすぐ夕飯だ。今晩はこれで修学旅行の前夜祭をするそう。

もう意味が分からない。早く寝たいとはさすがに言えないよな。


ううう……

家に着いてすぐにおかしな臭いが漂ってるのに気づく。

まさか毒殺する気か? どうしたらこんな鼻を摘まむような料理ができる?

チョコの時に懲りてるのにほぼ強制だから。まさかただの嫌がらせか?

それとも味覚障害? いやそれはさすがに言い過ぎか。

ミツキちゃんだって頑張ってるんだから。ここは我慢して食べよう。


「頂きます! 」

味も臭いも見た目も皿さえもおかしい。すべてが最高にイカレている。

こんなものを本気で食わす気か? とても正気の沙汰とは思えない。

でもそれを言えば傷つけてしまう。さすがに可哀想だよな。

ミツキちゃんだって真剣なんだから。それにきちんと言ってやるのは光の仕事。

僕はただ優しくフォローすればいい。


「あのミツキちゃん…… これは何ですか? 」

一応は口に運ぶ。でも実際は臭いを感じないように鼻を止めている。

味も想像より決して悪くない。ただ何だか焦げててどこか芯がある。

うん…… 評価以前の問題だな。失格!

「甘く煮た肉。それから柑橘系をふんだんに使い仕上げにその辺にあった香辛料。

隠し味にカレーを入れて最後に砂糖で味を調えて完成」

どうやら自信作だったらしい。うまく混じって味見もきちんとしていれば。

しかしこれはいい加減な作品となってしまった。

「うん。複雑な味。甘いし辛いし苦い。苦行かな」

つい本音が出てしまうがミツキちゃんは堪えない。少しは堪えてくれよな。

「さあでは次は…… 」

とんでもなく危険なフルコースを堪能する羽目に。

きちんと断っていれば…… 今ちょっとだけ後悔している。


光を真似るか頼るか手伝ってもらうかすればどうにか形になっただろう。

しかし臭いもそうであるように受け入れられるような代物ではない。

料理を振る舞おうとするその気持ちは立派なもの。

しかし明日の修学旅行本番への影響は避けられない。

ああ…… どうするばいいのか?

まずいぞ。まずい…… どうしたら? まずい。

ここは勇気を振り絞ってありのままを伝えよう。


「不合格! それどころか失格! 」

「元気のくせに生意気! 」

そればっかり。気に入ってるんだろうなこのフレーズ。

「それはないよミツキちゃん! 光も何か言ってやってくれよ」

「ははは! 元気がふざけるからだぞ」

「そうだよね。元気が私の料理にケチをつけるからいけないの」

こうして夜は更けて行った。


ついに待ちに待った修学旅行。

さあ思いっきり楽しもう!


               続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ