クリショウタイン②
初詣に。
皆で行こうとしたのに気を遣って二人っきりに。
両親公認とは言え僕は別にミツキちゃんとまだ付き合ってる訳ではない。
でもこの状況でいくら説明してもただの言い訳に聞こえる。
ミツキちゃんにも悪いよな。だからそのまま通すけど。
【二者択一】
今年の抱負。
碓氷さんとミツキちゃん。
どちらを選ぶかまだ迷いがある。
最近の碓氷さんはあまり相手してくれなくなった。
きっと光とくっつき過ぎで勝手に勘違いして嫉妬してるんだろうな。
そう仕向けてるのは僕だからこれも仕方ないこと。
ただそろそろ二者択一の答えを出す時だろう。
ミツキちゃんは僕がどうであれ思い続けてくれる稀有な人。
付き合うとなれば相手の気持ちが大事。当たり前のこと。
だから今はミツキちゃんに傾いている。
碓氷さんは僕に関心を示すが好意を持ってくれるまでは至ってない。
ただ彼女のことだからコロッと変わることもあり得る。頭悪いからな。
ミツキちゃんだって僕を本気で愛してるか分かったものじゃない。
恐らく兄の存在がミツキちゃんを苦しめている。
僕は光の代わりはできない。ミツキちゃんが碓氷さんの代わりができないように。
僕って酷い人間だよな。選び切れずに中途半端な態度ばかり。
ミツキちゃんがあそこまで積極的なのに応えてやれてない。
光への想いも多少ある。二人ではなく三人で揺れ動いている。
すべてはミツキちゃんのせい? 光への想いはミツキちゃんが仕掛けたこと。
どうであれ優柔不断で中途半端で気だけは多い最低な第三の山田でした。
自覚しているがそれでも解決には至らない。
「ほら手を繋ごう」
「いや…… 恥ずかしいよ」
家や知らない町ならいざ知らずここは地元。
そんなところで手を繋げば勘違いされるに決まってる。
ミツキちゃんはかわいいがさすがに高校生には見えないもんな。
ここは遠慮しよう。
「何で? 嫌いになった? 」
「うん。嫌いになった」
ミツキちゃんがおかしな質問をするからからかうことに。
「だったら私たちもうお終いね! 」
「うんそうだね。もう限界なのかもしれないな。今が別れ時さ」
「ちょっと元気! 」
「ごめんごめん。そっちが真面目に質問するから正直に答えただけだよ」
「もう元気とは手を繋いであげない! 」
我慢できずに感情的になるミツキちゃん。本当にかわいいんだから。
「冗談です! ミツキちゃんと手を繋ぐのが今年の夢です! 」
「またふざける。もう今すぐ叶ったら意味ないじゃない! 」
そん風にいじけるかわいらしいミツキちゃん。
これが中学生じゃなければな。碓氷さんに思いを寄せてなければ。
光の妹じゃなければ…… それは違うか。きっかけは光だもんな。
「なあいいだろう? 」
「仕方ないんだから」
こうして年初めの喧嘩は回避された。正月早々に喧嘩するものじゃない。
それにしても手袋同士だから温もりを感じずに不満だ。もっと直接。
「どうしたの元気? また嫌らしいこと考えてた? 」
遠慮も配慮もなく思ったことをズバズバ言う。困ったな何て答えればいいか。
「おいおい。そんな格好じゃ何も感じないよ。せめて着物じゃないと」
つい無茶ばかり言って困らせてしまう。
「もう元気は我がままばっかり! 」
「ははは…… そうかな? そう言えば光はどうした? 」
「二人っきりの時はお兄ちゃんの話は禁止だって何度言えばいいの? 」
そんな風にわざとらしくため息を吐く。
来れない理由を聞いただけなんだけど。親友だし招待した訳だから。
「でも会いたかったからさ」
「女のところ。急がしいんだってば」
どうやら光の悪い癖が出たらしい。
こんなにかわいい妹を放って女遊びに夢中とはどうしようもないな。
でもどうも言ってることが信用できない気もする。適当に言ってない?
「それでね…… 」
学校の話に。
どうやら学校でうまく行ってないは光が大げさに言ってただけ。
どっちもどっちだけどシスコンが過ぎますよ光さん。
「よし甘酒を飲んで行こうぜ」
「待ってよ。その前におみくじ」
おみくじは中吉。なぜかミツキちゃんは見せてくれない。どうやら大凶?
しかし正月に大凶も凶も縁起が悪いから出ないようにしてるはずなのに。
「これ見てよ」
何と恋愛成就せずだそう。半年以内に別れると適当に書いてあった。
「気にするなって。さあ甘酒でも飲んで行こう」
「元気がそう言うなら…… 」
「そうだ。まだ元気からお年玉もらってない」
「ははは! 何を子供みたいなことを言ってるの? 」
「だってまだ子供だもん! 」
そんな風に両親に言うのはいいとして僕はまだ高校生だぜ?
「僕たち恋人だろう? あるいは友だちだし…… 」
「ほら元気お兄ちゃん」
「嘘? それを言う? 」
まだまだガキだなとは言えない。
お兄ちゃん攻撃は効果絶大。もはや逃げ切れそうにない。
こうして呑気に正月を過ごした。
現在バレンタイン。
個性的なチョコをもらって困惑中。
早く食べてと圧力をかけて来る。
「感想は? 」
「これって義理? 」
「本命に決まってるでしょう! 」
「そうだよね。じゃあこれくらいで」
まずい。感想は言えない。まずいって言えない。
まずい。まずいぞ。まずい……
「そうだ。これをお兄ちゃんに」
「ごめん。家は一人っ子だわ」
「そうじゃなくて。私のお兄ちゃんに渡しておいて! 」
「はあ…… それでは」
「うん。またね」
早朝に呼び出されたと思ったらチョコ。もう一つを光に。
まあ感想を言わずに済んだからいいか。
チョコは苦いよでは逃げ切れないもんな。これでよかったと思うしかない。
「まったくミツキの奴は何を考えてるんだか」
「さあな。きちんと渡したからな。詳しいことは後で本人に」
危ない危ない。奴に感づかれるところだった。
まあいいか? でもよくないかも。
うわ…… 見られてる気が。
やっぱりこっちを睨みつけてるよ。こんなところにまさかの碓氷さん。
誤解してない? 僕がわざわざ光のためににチョコを作ったと。
しかしそれは大きな間違いだ。違うんですよ碓氷さん!
今すぐに誤解を解かないと面倒な事態に。
修学旅行が悲惨なことになる。
それだけはどうしても避けなければならない。
こうして誤解されたまま修学旅行へ。
続く




