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憧れのシチュエーション

危うく告白が失敗するところだった。

まさか目をつぶって告白するとは……

きちんと相手を見なくてはダメだ。

それだけ追い込まれてるとも言えるがやはり今日は難しいのか?

でも告白してくれないと先に進まない。


「ミツキあのさ…… 」

いつもの鈍感さはどうした?

それから部屋に入ったらきちんとドアを閉める。それが常識。

なぜ僕を含めてどいつもこいつもマナーを守ろうとしないんだ。

ほら隣の部屋から耳障りな絶叫が聞こえて来るじゃないか。

でもそれを指摘することも代わりに閉めることもしない。

仕方ないよな。逃げ道だけでも確保したいからな。


ミツキちゃんが一番奥で突っ立ってる。

歌ってる訳でもないので座ってればいいがさすがにきちんとした告白だから。

そこに光が向かい合う。さあもうさすがに充分だろう。早く告白してしまえ。

これ以上の延長は誰も望んでない。


まったくどうしてこの兄妹はこうも世話が焼けるんだ?

告白はミツキちゃんから光へだろう?

なぜ逆をする。本来光は黙ってるべきなのにあえて自分から話しだすんだから。

ここまでするのはすべて理解した上での行動。

どうにか告白まで持って行かないようにしているのだろう。

鈍感な光も妹の前では心配性の兄に戻るってか?


「どうしたのお兄ちゃん? 」

「そろそろ帰ろうか? 」

カラオケに行って一曲も歌わずに帰ろうとする変人。

そんな奴もいるだろうさ。でも一曲ぐらい歌おうよ。それと何しにここに来た?

僕も言えないけど一曲は歌った。だから今度は二人の番だ。

それに今さっき延長したんですけど。

いつまで掛かるか分からないので念のための延長。

だから後三十分はこの居た堪れない空間に居ねばならない。

それが定めだとすればこれはもう仕方ない。諦める外ない。

ああどうしてこうなった? 元気もミツキちゃんも殻を破って告白に臨めっての。

僕だって月曜日に碓氷さんに告白しようと思ってるんだからさ。


どうする? ここは一曲励ましのエールを贈るか。

マイクに魂を込めてエール。

うん。調子が出て来たぞ。さあマイクを強く握りしめてがなる。

うぎゃあああ!

少々音痴だがそれがどうした? これでいいのさ。これで二人の目が覚めれば。

僕は裏方に徹する。ただ第三の山田だからうまく行くかは定かではないが。


「うわ! 何をしやがる元気! 」

「そうだよ元気。いい加減にしてよ! こっちは真剣なんだからさ」

「だって二人ともずっとそのままだからさ。帰るのも禁止! 」

自然に告白を促す。果たしてうまく行くか?

ミツキちゃんはいいとして光が問題だ。


失敗したか? でもこれでいい。

延長してまた沈黙が流れるなんて堪るか。

「まったく元気の奴め…… 」

「ホラ頑張ってお二人さん! 」


「お兄ちゃん! 」

「ミツキ? 」

ついに真剣に向き合うことに。

少々強引だったけどこれでよかったと思っている。

そうは思ってるが若干後悔もある。これで二人同時に失うかもしれないからだ。

大好きな人に嫌われるのは僕であれミツキちゃんであれ誰であれ嫌だな。

さあ光。今こそ真剣にミツキちゃんと向き合う時だ。

幼き頃から抱えていた悩みや苦しみを一気に解消する時が来たのだ。

想いを受け止めてやれ。それができるのは光お前しかいない。


さあ早く! 時間切れになる前に!

いいか。お前たちの見届け人はこの僕。第三の山田なのさ。

さあ告白するがいい。告白されるがいい。

結果がどうなろうと僕の知ったことじゃない。


「お兄ちゃん…… 」

「だから何だよミツキ? 」

心底嫌そうな顔。よく見えないが貧乏ゆすりをしているよう。

もうすべて分かっていて…… これは受け入れるに違いない。

そうでなければここまでストレスには感じないだろうさ。

すべて僕の勝手な想像だけどきっと光はミツキちゃんを受け入れる。

さあ今だ。光が心変わりする前に急いで告白するんだ。


告白はタイミングと言うがそれは両想いか付き合ってる場合の話。

そうでないならタイミングなどに拘る必要はない。

ただ絶対失敗するだろうが。無駄な努力でただカロリーを消費することになる。

何曲歌ったら消費できるのか?

そんなつまらないことばかり考える。おかしいな? 

これも安心し切ってるからだろう。告白は絶対に成功するってね。


一分ほど沈黙が続いた後にミツキちゃんが再度アタック。

「私お兄ちゃんのことが好き…… 」

ああ…… ついに言ってしまった。意外にもあっさり。

うん。それでいい。


お兄ちゃんが好きか? 照れるな。

これは全男性の憧れのシチュエーション。

でも相手が本当の妹だったらどうなるのか?

大体はお兄ちゃんと呼ぶ昔から仲のよかった近所の女の子。

その子が大人になって再会した時に言うのが一般的。

僕も憧れたな。でも言われる方はいくら憧れても無駄。

その子だって大きくなるうちに好きな人ができお兄ちゃんは忘れられていくから。

でも高校生ぐらいならまだ可能性はある。

それかずっとその疑似兄妹関係が続いていた場合。

女の子が高校生ぐらいになれば思いを伝えるかもしれない。

男はそうだな…… 教師とか? 先生と女子高生の禁断の恋が始まる。


まずいまずい。何一人で妄想の世界に浸ってるんだ。真面目に見守らないとな。

でも僕にはそのお兄ちゃんと呼んでくれるタイプはいなかった訳で。もう遅い。

今度華ちゃんで再現してみるのも悪くない。

ミツキちゃんでは何だかんだ元気としか言ってくれなさそう。

どうしたんだろう? 告白で興奮してるのかな?


うん? おかしいな。光が動じない。そんなタイプだとは思うけどさ……


               続く

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