表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/116

シンプルに一言で!

逃げるように出て行った光の後を追うもミツキちゃんに止められてしまう。

さすがにただトイレに行った奴を気にするのは心配のし過ぎか?

潜在的にこの場を離れたいと思っているのかもしれないな。

嫌な予感がするのも虫の知らせではなく単なる精神的なものに違いない。

それだけ僕にはプレッシャーがあるのだろう。


「元気! ちょっとだけでも一緒にいて! 」

甘やかすなと光には言うが自分は結局ミツキちゃんを甘やかしてしまう。

どうしてもダメらしい。まるで本当の妹のように甘えるものだから拒めない。

あーあ僕はどうしていつもこうなのか? 人の告白の邪魔をする気はないんだが。

まずはミツキちゃんを隣に座らせて落ち着かせる。

「どうした? なぜ言えない? もう感情などいらないぞ。ただのケジメとして」

少しは緊張を緩めてやる。これでどうにか。


やはりカラオケボックスは何かとやり辛い。大声を出さないと聞こえない。

告白にも力を込めないといけない。

その返事だって当然大声でなければ伝わらない。

だからどうしても話の流れのまま告白するのには不向き。

ここはきちんとはっきり大きな声で光への想いを伝えるしかない。


「難しく考えないでいい。リラックス! 」

「そんなこと言っても元気…… 」

まだ甘えようとする。自分のことだろう? どうしてこの程度のことができない?

いくら禁断の兄妹愛だとしてもそれがどうした? どうしたって言うんだ?

僕ならいくらだって代わってやれるが僕が言ってもしょうがないだろう?

ああ困った兄妹だ。二人揃ってどうしてこうも情けないのか。

まあそれが人間か。結局僕たち三人は似てるのかもしれないな。

でも光に似てるならなぜ碓氷さんは振り向かない?

ミツキちゃんはこんなに懐いているのに。

いけない…… つい感情的になってしまう。


「お兄ちゃんだと思わないで告白してみよう」

「はあどうやって? 」

「よし暗示をかけよう。君は今から僕の妹。お兄ちゃんは僕だ。

これから入って来るのはカラオケの店員さんだ。実際用があれば繋がるはずさ。

彼は女性人気の高い女好きの店員さんだ。

今すぐに告白しないと魅力的な年上のお姉さんに奪われてしまうぞ。

それは嫌だろ? だから今回勇気を振り絞って告白してみよう」

どうにか絞り出した作戦。暗示をかければ必ずミツキちゃんだって告白できるさ。

そんな告白にどんな意味があるのか知らないがただのケジメなら文句ないだろう。

これできっと告白できる。できるんだ。

告白の環境を整えるのも僕の役目。


「うんお兄ちゃん。やってみる」

「そうだ。それでいい。名前はこの際言わずにただ好きですの一言でいい」

シンプルにすることでより言いやすくなる。

我ながらよく練られたアイディアだな。自分も次の機会に試してみようかな。

さあ準備は整った。後は覚悟を決め切れずウロウロしてる光を待とう。

タイミングも覚悟もあるだろうからここは待つ。ゆっくり待つとしよう。

焦ってはいけない。入ってきたその時を狙う。

光は焦るかもしれないし戸惑うかもしれない。

でもそれでいいんだ。後は返事を待てばいい。

すべては光が決めること。


コンコン

コンコン

律儀にノックをするらしくない光。一体どうしてしまったんだろう?

現実を受け止めきれずに狂ったか? と冷静に分析してられない。

いつでも観客は無責任に騒ぐのさ。僕は今見届け人兼監督兼観客兼第三の山田だ。

ミツキちゃんの心の準備が整ったかの最終確認。

大きく自信たっぷりに頷く。これなら問題ないだろう。

まだ若干震えてるがそれくらいがちょうどいい。

恥ずかしい感情が惹きつけるはずだ。


「どうぞ」

さあもうこれですべてが解決。どうなることやら。

少し開いたドアから男の影が見えた。

だがそれは……

「待って! ミツキ…… 」

ダメだ。中止を訴える前にミツキちゃんが目をつぶって告白してしまう。

せめて告白の相手を見ようよ。それが何者かしっかり見ないと大変なことになる。

まだ人間ならいいが気配だけなら動物や昆虫や爬虫類にも。

そんな人間でもないものに告白するとかどうかしてるぜ。どんな罰ゲームだよ。


「好きです! 」

実にシンプルで声もよく通っている。しかしそれでも成功するとは限らない。

まったくどうしてこうタイミングが悪いのか?

名前も顔も知らない男性に告白することってあるのか?

今回ミツキちゃんが慌てたせいでカラオケ屋のお兄さんに告白してしまった。

これってさっき僕が適当に考えた設定。まさかこんなことってあるのか?

もしかして僕が悪い? 混乱させてしまったか?


その人は見たところ大学生でルックスは悪くない遊び人タイプ。

勝手な偏見だけどミツキちゃんが危険。ただお客相手に無茶はしないはず。

「あの…… 機器の故障で使えず失礼しました。終了時間三十分前となりました。

どう致しましょうか? 延長なさいますか? 」

そんな風になかったことにしてくれた。意外にもいい人かもしれない。

それともミツキちゃんの格好が地味で幼く見えて対象から外れた?

何でもいいけどいい人の印象に変りはない。一応は謝って延長してもらう。


ふう危ない。ミツキちゃんってば人を見ないで告白するんだもんな。

気づいた時には手遅れだった。よくやってくれるよこの子は。

やっぱり僕がいないと何をするか分からない。心配だな。心配。

つい抱き締めたくなる。だが抑える。今はそんな時じゃない。

今兄妹の告白タイム。邪魔はできない。

静かに様子を見守るとしよう。


ようやく長いトイレから戻って来た光。重苦しい雰囲気が漂う。

今さっきの珍事と言うかハプニングを知らせる必要はない。

笑いごとで済むかはこの後の告白の行方次第だからな。

僕の見立てでは半分半分ってところ。でもきっとすべてうまく行くと信じている。


                続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ