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異変

新入生歓迎を兼ねて近くのファミレスで軽食会。

突然のこともあり大した準備もできずに華ちゃんを退屈させたかな。

会長としてもっと積極的に何でもしてあげたい。

そんな思いを知ってから知らずか大田原さんが伝票を渡す。


「どうしたのかな? 」

「やはりここは会長がお支払いになるのがよろしいかと」

優秀な部員を持つとやり易い反面このような事態に陥ることにも。

「何で? 」

突っぱねてみる。

「ほら元気! 往生際が悪いぞ! 」

光の奴…… しかしここでごねれば華ちゃんを失望させてしまう。

とりあえず会長による立て替えと言うことにしておこう。


「先輩…… 」

「ははは…… 気にしないくれ。それで楽しめたかい? 」

満足な様子の華ちゃんの為にもここはスパッと払おう。

「よしカラオケにでも行こうぜ! 」

おごりだからと興奮してお開きにしてくれない。困った奴ら。

「待て! もう暗い。華ちゃんを引っ張り回すのはよくない」

会長として責任がある。誰も指摘しないなら僕が言うしかない。

もちろん僕だって本音ではもう少し楽しみたいさ。

「そんなこと言って元気は…… 」

「いいから! 」

これ以上はやめて欲しいのもあるが何と言っても告白と被るから行かせられない。

「分かったよ。よしじゃあ解散するか」

どうにか乗り切ったがこれでは部費がいくらあっても足りない。

さあ徴収方法をきちんと考えないとな。


二人っきりの帰り道。

どうも疑ってる気がする。

「あの一年生…… 華ちゃんだっけ? お前の恋人か? 」

つまらない話をするのが好きな光。しかもどう考えても的外れ。苦労するぜ。

ただちょっと昼休みを過ごしただけ。これだから光には近づかせたくない。

華ちゃんが穢れるのもあるが恥ずかしい話をした覚えがあるからな。

彼女は僕に憧れてるので大丈夫だとは思う。

でもあれを話されでもしたら会長の座を剥奪されかねない。


「違うって! 」

「そうか。碓氷さんだもんな。裏切ったら怖そうだからな」

わざとなのか脅しをかける。困った奴だ。

「碓氷さんとは何でもない。ただの願望だよ」

悲しいことにそれが事実。それを決定的にしたのが光だ。

だからこそつまらない話をされるとイライラする。

僕の恋人はお前一人だろうが!

そう言えたならな。でも現実は違う。現実的にはお前の妹が恋人だ。

でもそれを言えばどうなるか。怖いが興味はある。


「何を言ってるんだよ。僕の恋人はミツキちゃんだろう? かわいいんだから」

最近こんな風にふざける時がある。

「はあまだ言ってるのか? しつこいな」

さすがの光もその冗談は受け入れ難い。

しかし事実そうだから正直に言うしかない。

「本当だって。会長は嘘を吐かない」

「いいぜ。それでも。でもミツキが嫌がるだろう? 」

そう言うが本人は喜んでるんだよね。


「そうだ。碓氷さんって言えば今日は来てなかっただろう?

どうも昨日職員室に呼ばれてたから何かあったんじゃないかな」

光の言うように今日は姿を見せなかった。風邪だと思ったが違ったらしい。

考えたくはないが何かしたとしたらきっとこいつの後を付けて咎められたか……

もっと直接的な何かをしたと考えるのがいいだろう。

本人が気づかないならきっと問題ないはず。


「どれどれ。うん大丈夫」

「俺の体がどうしたんだよ? 」

「気にするな。こっちの話だから。それと夜道には充分気を付けろよ」

親友としてアドバイスを送る。これで大丈夫だと思うけど不安は尽きない。


本当に鈍感だよな。

光はまだミツキちゃんとの関係に気づいてないらしい。

相当な間抜けだがそれをいつ言うかずっと迷ってる。

告白してすぐに言うこともあるだろう。

しかしそうなると二人とも振られたことになる。

そうでなければそのまま。光にもクラスメイトにも碓氷さんにさえも言わない。

だってこれは僕とミツキちゃんの二人だけの秘密だから。


両親が把握してるので完全に隠せずに何かの拍子に光に伝わることもあるだろう。

当然その前に決着させて光に例の言葉を伝える。

『お兄さん! 妹さんを下さい! 』

一度言ってみたかったんだよね。

でもいざその立場になると後延ばしにしたくなる。

もしかして土下座必要? 親友にそれはできない。プライドがあるから。


「おいどうしたんだよ元気? ぼうっとしてよ」

「来週の話覚えてるか? 」

「ああ…… サプライズあるようなこと言ってたな」

しまった…… ついアホみたいに。事前に言ったらサプライズじゃない。

これは仕切り直すか? でもこれで光も心の準備ができるはずさ。

優しいよな僕って。親友の心を気遣うんだからさ。


「サプライズは忘れろ! 趣向を変えて実験するんだからさ」

「はあ実験? 理科の実験かよ? 」

「実験と言ったら実験さ。具体的に言えるかよ! 」

まさか衝撃的な告白で奴の心がどうなるかの実験とは悪くて言えない。

これだって僕は反対したんだから。でもミツキちゃんがケジメだからと。

ついでに僕も碓氷さんに振られて来いだもんな。


「確率は四分の一さ」

「おいおい数学? 理科? どっちなんだよ? 」

得意科目は美術と音楽の芸術肌の光は理系には苦手意識がある。

当然僕だってマシと言う程度で苦手にしている。もっと苦手なのは地理だけどね。

「ふふふ…… それは当日のお楽しみさ。お前があっと驚く仕掛けが……

腰を抜かすなよ? 心臓が止まらないようにしろよ。それから…… 」

まずい。これ以上言えばミツキちゃんについて話しかねない。

「おいおいそれは怖いな。行くのよそうかな」

「それは困るが…… こっちとしては助かる」

「言ってることが無茶苦茶だぞ元気? 」

「複雑なのさ。それが大人ってもんだ」

「はあ? 何言ってるの? 」

「いいから来週の土曜日は空けとけよ! フラフラモデル探しも禁止! 」

「分かった。じゃあまた明日」


こうしてついに問題の土曜日を迎えることに。


                続く

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