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新入部員

昼休み。気になる子がいたので久しぶりに屋上へ。

それが華ちゃんだ。今日も屋上で一人寂しくお弁当。

どうも僕を待ってたような…… もしそうならずっと来られなくて悪かったかな。

お弁当の中身などの冗談を言いながら笑い合う。グッと二人の距離が縮まった。


ペットボトルの水をグビグビと飲む姿は晴れていれば絵になる。

僕にも一口とは言えない。つい急ぎ過ぎてドリンクを買い忘れてしまった。

そう言えば何となくここで何度かこんなことをしていたような…… ただの憧れ?

「先輩忘れたんですか? だったら…… 」

「いや大丈夫。苦しくならなければ問題ないから。うう…… 」

詰まらせないようにしようとすればするほど緊張してむせてしまう。

特にご飯がきつい。僕は一体何をしてるんだろう? ケチだと思われてないか?


「もう先輩ったら! これどうぞ」

そう言って飲みかけの水を渡される。いわゆる聖水って奴だ。

勇者は聖水を手に入れレベルアップってね。ははは…… 僕は何を考えてるんだ?

好意は受け取るとしてとりあえず確認だけはしておく。

「これを飲めと? 」

「はい。嫌でなければ…… 」

自然だから受け取ってしまう。しかしいいのか? よくないよな?

「華ちゃんが構わないなら僕は助かるけど本当にいいの? 」

まるで催促したかのよう。

「はい。先輩とこんな風にしたいなと思っていたんです」

いい子だから僕を立てよう立てようとしてくれる。

さすがに第三の山田とこんな罰ゲームみたいなことしたくないよね。

うんうん。分かってるんだって。先輩だからって無理することはないさ。

「ああそれは僕も少し思った。何となく華ちゃんとそんなことしたような気が」

「もう先輩ったら…… 」


なぜか華ちゃんは未来を僕は過去を見ていた。

すると二人は決定的に違う道を歩むのかもしれないな。華ちゃん……

間もなく告白だと言うのに別の女の子に現を抜かしている罪深い第三の山田。

仕方ないさ。我慢したいが第三の山田だって人間だもん。

華ちゃんだって遅れて登場しなければヒロインになれただろう。


碓氷さんにミツキちゃんに華ちゃん。

これからどの道をたどろうとも三人は交わることはない。そう平行線だ。

推測と言うか願いに近い。別に交わったっていい。でも互いを打ち消し合いそう。

特に碓氷さんとミツキちゃん。混ぜるな危険だ。


「華ちゃんはうちのサークルに興味ある? 」

「はい。入部したいと思ってます」

「へえ…… 」

「はい! 」

「へえ…… それで何の話だっけ? 」

「だから入部させてください! 」

「だからどこに? 」

「先輩のサークルでしょう? 」

どうやら華ちゃんは我がサークルに興味があるらしい。

稀有な人だ。ついでに奇特な人だ。

「いや…… ずっと断られたから染みついてさ…… 悪いね」


「本気なの? 」

その場の雰囲気ではなく本気なのかの確認。

気を遣ってくれるのは本当に嬉しいが無理しなくていい。

「はい! 改めて入部を希望します! 」

どうやら冗談ではないらしい。では歓迎するとしよう。

「これから一年間よろしくね華ちゃん」

「はい先輩! 」

こうしてラッキーなことに待望の新入部員ゲット! 粘り勝ちって奴だろうか?


「よし。ではついて来なさい! 紹介しよう」

会長として先輩として振る舞う。ちょっとやり過ぎかな。

でもいいじゃないか。素晴らしいこと。集まるとは正直思ってなかったからな。

当然のように勧誘をサボってる光を引っ張って行き部室へ。

「おいなんだよ元気? サボってないって」

逃げようとする困った奴。それでまずいと思ってるのならそのままにしておくか。


部室には真面目な大田原さんがいた。昼飯をここで食べることも多い。

特に新入生勧誘の時期はずっと詰めてる。頭が下がる思い。

だから昼休みに部室を覗くこともある。しかし嫌がられるんだよね。

一緒に食べようかと言っても断られる。それは去年からだからどうにもならない。

「お揃いで嫌味ですか? 」

どうも大田原さんは真面目過ぎてネガティブに捉える。

僕が…… 僕たちがそんな事する訳ないじゃないか! よく人を見て言ってよね。

それにここで弁当を食べるのは自由だが本来ならこの会長の許可が必要のはず。


「ああごめんなさい」

気づいたらしい。でも光はちっとも気がつかない。

「二人に紹介しようと思って。こちらは…… 華ちゃん」

「はあ? 華ちゃん? どう言う関係で? 」

大田原さんは見逃さない。鋭い視線を向ける。

ただの屋上で寂しく食べていた弁当仲間なんだけどな。


「ほら自己紹介しようね」

「一年の光岡華枝です! 会長に誘われ訳の分からないサークルに入ることに。

どうぞよろしくお願いします! 」

随分な言われよう。訳の分からないサークルって何だよ? やる気あるのか? 

「俺は光ね。分からないことがあっても聞かないでね」

「私は二年の大田原です。どうぞよろしく。

そうだ会長こちらも二名ほど入部希望者がありましたがいかが致しますか? 」

「うん。よくやった! そっちは任せた。

ではさっそく華ちゃんにはこのサークルについて説明するね」

だが会長を引き継いではみたもののいまいち自分でもよく分かっていない。

かなりおかしなサークルだと言うのは自覚している。


「では私から…… 」

どうせ無理だと決めつけたのか代わりに説明する気が利く大田原さん。

結局このサークルって何だっけ?

会長でありながらいまいち理解できてない困った光…… ではなくこの僕だ。

こうして華ちゃんは一週間後に正式に我がサークルの一員となった。

これでどうにかやって行けるだろう。後は大田原さんが捕まえた二人。

うーん。うまくいくといいが。


おっと…… 今はそんなことしてる時じゃない。

光に告白する準備で忙しいんだった。

人の気も知らず馬鹿みたいに笑ってる光。知らないとは可哀想と言うか楽でいい。

ミツキちゃんの世話はなぜか僕がすることに。お前がしろっての。

「どうしたんだよ元気? ブツブツと最近変だぞ」

さすがは親友。異変に気づいている。でもそれがどうした?

今は解決すべきは四人の関係だ。さあどうするかな。


                続く

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