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ごめん華ちゃん!

ミツキちゃんとの秘密の特訓を続ける。

告白の日時も決まった。

場所はたぶん近くのカラオケボックス。

本来だったらもっと静かなところがいいが静か過ぎると逆に緊張してしまうから。

光を誘うにしてもちょうどいいだろう。


準備も整った。後はその日を待つばかり。

ただミツキちゃんは軽く考えてるが告白が成功したらどうするつもりだ?

二人の中にいる一番大好きな人を記憶から追い払う地味な作業。

そして互いが一番に収まる。果たしてそんなにうまく行くかな?

特に碓氷さんの心を奪ってしまうのではないかと恐れている。

何と言ってもその兆候がある。今までの積み重ねが実を結ぶ可能性があるのだ。

いやそれが僕にとってベストなのかもしれないがミツキちゃんには最悪。

ケジメをつけるためにどれだけ危険を冒すのか?

先輩として年上としてごっことは言え兄として止めるべき。

しかしいくら説得しても聞く耳を持たない。

これでは仮に幸せになっても長続きしないぞ。


学校では会長としての役割を果たしている。

「ほら光! お前もきちんと勧誘しろ。あの子興味あるって顔してるじゃないか」

「そうかな? 」

「いいから頼むよ。勧誘はお前の得意分野だろう? 」

女子限定だが両方ダメなこの会長様よりは何とかなる。信じて待つ。

入部希望者か…… 一人と言わず十人ぐらい一気に来てくれると助かる。

でもそれだと部室がパンパンになる。嬉しい悲鳴ってか?

いやそれもやっぱり苦しいよな。嬉しい悲鳴って何だろう?


朝から新入生相手に誘いをかける。

「そんなに無理して勧誘しなくてもいいだろう? 面倒だぜ」

「だったら一人連れて来い! こっちもそうするから」

「おいおい焦り過ぎだって元気! 」

一人やる気がない奴がいると全体の士気が下がる。と言っても部員は三名。

大田原さんだっていない。もう限界なのかもしれないな。


「よし今度は昼休みに頼むぞ! 」

「まだやるのかよ? 勘弁してくれよ! 」

光は嫌々でも付き合ってくれる。親友だから当然かもしれないがありがたい。

ただ残念なことにまだ一人も集まらない。これでは会長の責任問題になる。

だからって責任を取って辞める訳にもいかない。代わりがいない。

代わりの利かない男と言う訳だ。

とにかく最低二名必要。それは僕たちだけでなく後輩の大田原さんのためにも。

四月を終えてゴールデンウイークが過ぎてもまだ集まらない。

こんなことやってるのはうちのサークルぐらいなものさ。


「そうだ。頼んでいた例の奴はまだか? 」

会長命令で作らせていたパンフレット。まだ完成には程遠い。

奴さえ本気を出してくれたら新入生の一人や二人簡単に集まるんだが。

「いつまで続けるんだよ? 」

「新入生が集まるまでだろう? 聞いてなかったのか? 」

「それがいつだと聞いてるんだ? 明日か明後日か? 元気! 」

さすがの光も音を上げる。でもこれは嫌がらせな訳じゃない。

会長として責任がある。推薦しておいて方針に背くつもりか? 従えっての。

「さあな…… 新入生にでも聞いてくれ」

「ふざけるな元気! 」

「おいここでは会長と呼べと言ってるだろう? 舐められる」

「もう分かったよ。それで今日はどうする? 」

「いつも通り昼休みを使って…… 悪い昼休みはこっちに用があるんだった。

一人で頑張ってくれ。サボるなよ」

もうここでは会長と補佐。天と地ほどの差がある。


こうして昼休みは久しぶりに屋上で昼を食べることに。

気分転換もしないと長続きしない。

「よう。久し振り。誰だっけ…… 」

前回一緒になった彼女が笑顔で迎え入れてくれた。

「華枝! 光岡華枝! 」

そうそう。よく考えたら僕って人の名前覚えるの苦手だったんだった。

苦手と言うか記憶にないと言うか。その辺は碓氷さんによく似ている。

決して自慢できないが同じような能力を持っている。

僕たちって本当に大丈夫ですか?


「それで先輩は今日はどうしてここに? 」

「いや天気がいいから屋上で…… 」

あれ…… 曇り空。今にも雨が降って来そうな天気。

これは最低な屋上お弁当日和だな。でも言ったからには突き通すしかない。

「それで前回の続きなんですが…… 先輩はたぶん…… 」

うん? 華ちゃんがモジモジしだしたぞ。

しかし名前さえ忘れてたのに前回話したことなど覚えてるはずないだろう?

いい加減で忘れっぽいのが第三の山田なのだからそんな風に憧れの目で見るなよ。

買い被り過ぎだって。でも思い出さないとまずいよな。

うーん。何だったけ? ヒントぐらいくれないとただ沈黙が流れることになるぞ。

でも恥ずかしがってるからきっとその手の話だろうな。でもしたっけこの話?

どうもミツキちゃんといるとその辺の感覚が鈍るんだよな。


「ごめん。今日は何色だっけ? 」

たぶんこれでいいはずだ。

「はあ? 先輩ってば最低! 」

怒らせてしまった。でも他に思い出せない。まさか初対面でやったのか?

「ごめんごめん。冗談だよ。弁当の色を聞いただけさ。

前回焦がして茶色だったから。今回も同じかなと…… 違った? 」

どうにか思い出せたがこれでいいのかはっきり言って自信がない。


「ほらこれ」

「白か…… うーんつまらない。至って普通だな」

「先輩中身を見たでしょう? 」

「それは見るでしょう? だって確認だよ? どう判断するの? 」

「だからそっちじゃない! スカートの中! 」

恥ずかしいのは分かるが人のせいにしてはいけない。

見るはずないだろう? たとえ見えていても視線を逸らすに決まってる。

そもそもこの角度で見えるのか?

でも僕の見た目では言い訳はできないか。確実にやってそうだもんな。

自覚はあるのさ。何と言っても会長兼第三の山田だからな。


「それで何色なの? 」

「先輩! 」

「ごめんごめん。見ないから確認だけね」

これは早く切り上げねばとんでもない誤解を招くことになるぞ。

会長の地位まで剥奪されかねない由々しき事態。


                続く

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