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兄妹ごっこ

光とミツキちゃんの禁断の兄妹愛は果たして? 告白は成功するのか?

成功していいものか? 結局どうすべきか? 悩みは尽きない。


ではもう一度。

「お兄ちゃん…… 」

照れる仕草はいつものミツキちゃんからかけ離れている。

かわいい。何て言うかとんでもなく興奮するんだよな。

演技とは言えオドオドしてるミツキちゃんが最高。

「どうしたミツキ? 」

光の代わりを果たしてうまくやれるか?

いつも見てる訳で。それほど難しくない。ただ演技力はないと思ってる。

「ふふふ…… ダメ! 何で笑わせるの? 真面目にやってよ元気! 」

笑顔は決して悪いことじゃない。しかし人の演技に文句つけるのはよくないぞ。

これでも結構真面目にやってるんだって。伝わらないのが悔しい。

「ほらもう一回! 告白するんだろう? 」

「分かってる! でも元気が笑わせるからでしょう? 」

罪の擦り付け合いをする。

まったくミツキちゃんは本当に子供だな。


「お兄ちゃん…… あのね…… 」

ああ…… 言われたい。一度でもいいからそんな風に言われたい。

演技ではなく心から言われたい。どれだけ願っても無理なんだろうな。

一人っ子だから…… お兄ちゃんって頼られたい。その想いが止まらない。

ああどうして僕はミツキちゃんの兄になれないのか? 本気で考える。

もちろん分かってるさ。言われるかどうかはタイプによる。

たぶん僕に妹ができても頼られるのは本当に小さい時だけですぐに生意気に……

まずいまずい。ちっとも集中できないや。


「どうしたんだミツキ? また人の部屋に勝手に入っただろう? 」

アドリブで光っぽいことを言ってみる。

「ちょっと! セリフにないことを言わないで! 先に進まないでしょう? 」

どうやら本気で怒ってるらしい。でもこれくらいでちょうどいいさ。

ミツキちゃんは構え過ぎ。それでは緊張しておかしなことになりかねない。

笑って楽しく。肩の力を抜いて楽にして。そうすれば自然とうまく行くさ。

「ほらもう一度! 」

こうして休憩を挟んで一時間近く稽古に励む。

とは言えこれは舞台稽古でもないので何の為にやってるのか疑問。

やればやるだけ逆効果になったらどうしよう?


「ちょっと元気! 」

嫌がるミツキちゃん。飽きたらしい。仕方なくシチュエーションチェンジ。

次は僕が碓氷さんと結ばれる番。

「お兄ちゃん。あのね…… 」

ついつられてミツキちゃんの真似をしてしまう。

ふざけたのではなくとっさに出ただけ。

「真似しないで! 全然練習にならないでしょう? 」

緊張して全然進まない奴が何を言ってるんだか。


実際僕には練習の必要はないかと。きっとうまく行く。うまく行くに決まってる!

これが初めてでもない。大体僕の場合うまく行く行かないの次元を超えてるんだ。

告白に成功しても次の日にはきれいさっぱり忘れる特異体質の碓氷さん。

要するに存在感がない。あるいは認識されてないからこう言う事が繰り返される。

それで確実に認識されるようになり結ばれるとなったら今度は光のせいで嫌われ。

修学旅行で盛り返しても誤解されてもっと嫌われた。

ミツキちゃんのお陰で少しは改善されたが実は僕の告白に意味がないのではと。

あるいはもっと記憶に刻みつけるようなロマンチックで壮大な告白をすべきか?

しかし今のところ思いつく気配がない。どうしよう?


「朱里さん。好きです! 」

「山田君…… 実は私も…… 最近失恋したんだ」

うまいじゃないか。さすがはミツキちゃんだ。男心をぎゅっと掴む。

「そうなんだ? 初耳」

「うん。初めて言ったから」

「それでいい? 」

「どうぞ。それがあなたの望みならこの身を捧げます! 」

こうして愛の告白は成功。二人は幸せに暮らしたとさ。お終い……

 

本当にこれでいいのだろうか? 凄く軽い気がする。

こんなにうまく行くはずがない。ほぼ感情がないじゃないか。

全然碓氷さんらしくない。もっときちんとやって欲しい。

それが稽古でありお芝居であり演技だろう?


「ミツキちゃん! 勝手に成功させないで! 」

つい不満を爆発させる。ああどうしてこういい加減なのか。

「いいからほらキス! 二人は幸せになったんだよ? 」

ただキスをしたかっただけらしい。迷惑だな。これじゃ全然練習にならないよ。

もう時間もないのに。ふざけ過ぎてちっとも先に進まない。

「やり直し! ではミツキちゃんから頼む」


「どうしたの山田君? 」

「ぼ…… 僕…… ああもう堪りません! 」

「大丈夫山田君? 頭打った? 」

適当に進めるように指示したが意外にもきちんとやってる。

「好きなんです! 」

「私もよ元気! 」

「違うんだって! そうじゃないだろう? 途中までよかったのに」

「元気はいいんでしょう? 」

「それは修学旅行で三人の山田がいたからできたことで普段は言わないと思う」

「じゃあもう一回! 」

どうやらミツキちゃんもやる気になったらしい。

練習する意味があるのかは疑問だが多少は仕方がない。

こうして念入りに予行練習を行う。

これできっと大丈夫。楽観的に考えている。


「やめ! よし今日はこれまで! 」

違和感を失くし自然になるよう努力を惜しまない。

「ありがとうございました」

「そうだ。より自然にずっとお兄ちゃんと呼ぶといい。ほら言ってみな」

これこそ自然に。そう僕はどうしても兄妹ごっこがしたくて。

「お兄ちゃん…… 」

「ははは…… 言われちゃった。うん悪くない」

「はあ? 元気バカなの? 」

決して言ってはいけない一言を口にする。それがミツキちゃんさ。

「お兄ちゃんを忘れてるぞミツキ! 」

「はいはい。元気お兄ちゃん。そっちもちゃんを忘れてる」

そんな風に怒って見せる。うん悪くない。

しかし何の為にこんなことしてると思ってる? この告白が成功する為だろう? 

「ミツキはミツキだ! お兄ちゃんはお兄ちゃん! ほらもう一度! 」


こうして告白までの間兄妹ごっこを続ける。

僅かな間でも二人は兄妹になった。これでいい。これでいいんだ!


               続く

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