告白のタイミング
『お兄さん! 僕に妹さんを下さい! 』
うーん。言えたら格好いいんだが。そう言うキャラじゃないしな。
何と言っても第三の山田。失敗が付きものの情けない男さ。
それだけでなく結局親友の妹に手を出してしまった最低なクズ野郎さ。
「そうか。結局一番好きな人になったのか。でも本気? 」
こうなるだろうなと予想はしていた。すべては僕が受け入れたことが原因。
「だからこっちは大丈夫。問題は元気の方でしょう? しっかり言えるの? 」
どうやら説得は無理のよう。仕方ない。二人の道は二人の手で切り開くしかない。
「そうか分かったよ。気持ちは充分に伝わった」
「元気…… それでね…… 」
何か言いたそうだがそこで止まってしまう。
「いいさ。二人のことだからはっきり何でも言ってくれ」
「お兄ちゃんに告白しようと思うの」
「それは…… 」
嘘だろう? はっきりさせようとは凄いな。僕なんかよりもよっぽど強い。
「だから元気も告白して! 」
唐突なミツキちゃんの提案。確かにそれが筋だとは思うがこれで本当にいいのか?
それは危険な賭けではないのか?
「僕はいいとしてミツキちゃんは大丈夫? 無理してない?
告白しても関係は続くんだよ? 」
光とミツキ兄妹の禁断愛の結末は? ついでに僕と碓氷さんの恋の結末は?
僕は振られても構わないし何度も振られてる。だからダメージは最小限だろう。
でもミツキちゃんはたとえ成功しても痛みが伴う。失うものが多すぎる。
それでも彼女の気持ちを尊重すべきだろうな。
告白か? とんでもないことになって来た。
あまり考えたくないがこれって最悪の選択ではないか?
どうなるかまったく読めないチャレンジをすべきではない。悲劇の予感がする。
どうやら物語は最終章を迎えることに。
<最終章> 愛が嫉妬に変わる時。あるいは……
二人揃って告白。
すべてをはっきりさせるために決断せざるを得ない。
中途半端な気持ちが一番よくないと分かってたがそれでもダラダラ来てしまった。
もしミツキちゃんが言わなければきっとこのままの関係を続けていただろう。
さあもう覚悟を決めるしかない。二人にとっての最終章。
僕の場合は楽なものだ。碓氷さんに告白は何度かしてる。
その度に振られて来た。何なら屋上に呼び出したこともあったな。
その時は結局三十分待っても来なかった。そのような悲惨な展開が何度か続いた。
まったく相手にしてない。僕を見てくれない。そんな風に悩んだこともあった。
それが僕と言う存在であり碓氷さんと言う存在。
二人は同じ世界に居ながらまるで別世界の住民のよう。
同じクラスであれだけ近いのに残念だ。実に残念だよ。
今度も結果は変わらないさ。それでも諦めがつくなら悪くない。
これでやっとミツキちゃんだけを愛せる。ふう…… もう疲れたよ。
実際のところミツキちゃんの方が大変だろうさ。
僕はただ振られれば諦めがつくがあっちは兄妹関係が壊れてしまいかねない。
それがあるからずっとミツキちゃんは心に留めるだけだった。
でも今勇気を持って一歩前に踏み出そうとしている。
凄いよな。尊敬に値する。
後は光の気持ち次第。ただこれでいいのか?
本来ならミツキちゃんからではなく僕から提案すべきだっただろう。
僕たちの絆が深くなり余裕ができたことで彼女に決断させてしまった。
成長とか強くなるとか言うが実際無責任でしかない。
失敗した時のことを一切考えずに勧める。ただ今回ははかなり特殊なケースだが。
ミツキちゃんが成功したらどうなるんだろう?
思い留まってくれないかな。それが一番いい。
碓氷さんに告白か…… 振り返れば存在を認識するところから始まった。
その内ただのクラスメイトになってついにはライバルに。
三年になってからは睨まれて嫌われ続ける毎日。それが今ようやく改善された。
ただ話しかけても無視されるからいいんだか悪いんだか。
例外は修学旅行。運よく隣の席になった。
あの日がまるで嘘だったかのよう。大げさに言えばただの妄想だったとさえ。
でもその証拠はある。一緒に清水の舞台から落ちたしポッキーも一緒に食べた。
そして極めつけは夫婦ナイフ。夫婦茶碗だとハードルが高いので代わりに。
二人にとって大切な思い出の品。
そのナイフがどこを探しても出て来ない。
部屋中を探したがどこからも発見できなかった。
あの凶器は一体どこから見つかるのだろうか?
いくら調べてもない。ここは潔く聞くとしよう。
「母さん。修学旅行で買った大切なお土産がどこにも見当たらないんだ」
知ってるはずないだろうが念の為に聞くことに。
「はあ? お土産ってもう食べちゃったでしょう? 」
「違う! そうじゃなくてお土産のあれだよ…… 」
「あれって言われても分からない。どんなものか教えなさい! 」
「それは鋭くて銀色の…… 」
何だか言い辛い。口ごもってしまう。どう言えば誤解されない?
修学旅行のお土産に凶器のナイフを買う奴は普通いない。
でもこれは夫婦ナイフだから……
「はっきり! 」
「だから人を殺めるような…… いや脅しにしか使わない…… 」
「具体的に言ってってば! それじゃ探せないでしょう? 」
具体的に言えないから困ってるんだけど。
これでは余計に変な風に取られてしまう。それは心配させることになる。
でもどうやら母さんも見てないらしい。おかしい。あれば記憶に残るんだけど。
「いや…… もういいや。大したのじゃないから気にしないで」
探してもらおうと思ったけど難しそう。ここは潔く諦めるのも手だな。
「ああ…… そう言えばミツキちゃんが…… 」
どうやら思い出の品を奪ったのはミツキちゃんらしい。
そう言えばお土産を勝手に持って行ったようなことを言ってたっけ。
すると夫婦ナイフの一つはミツキちゃんに渡ったのだろう。
仕方ない。今更返してもらう訳にも行かないよな。
どうせ碓氷さんだって買ったはいいが扱いに困ってるだろうしな。
これでよかったのかもしれない。
今はそんなことよりも二人の告白をどう成功させるかだ。
こうして告白計画は徐々に進んで行った。
続く




