覚悟
月曜日の夕方。
心配だから寄って行けと言う光の誘いを断り一人の世界に没頭する。
やっぱり寄ればよかったかな? でもミツキちゃんと会いたくない。
何で碓氷さんは態度を変えたのか? それが分かればいいんだけど……
彼女の気分次第だからな。それだと考えても無駄か。
僕は…… 二人はどうしたらいい? 今までのようには行かない。
ミツキちゃんを受け入れた以上何らかの手を打つ必要がある。
うーん。どうしても光に悪いと思い考えてしまう。解決策は今のところない。
いやあるにはあるのか。僕が碓氷さんと付き合えばいいんだ。
そうなればきっとミツキちゃんと別れることになる。
それが一番二人にとっていい。でも言えないし何もできない。
僕は優柔不断で中途半端な人間なのさ。それは最初から分かり切っていたこと。
いくら主役でも第三の山田がまともなはずがない。
「もう! さっきからブツブツ嫌らしいんだから! まさか私のが気になるの?」
ミツキちゃん登場。どこら辺からつけて来たのやら。もう怒る気にもなれない。
今日は会わずにただなぜ碓氷さんが改心したのか? これって改心で合ってる?
ミツキちゃんから教えてもらう予定。
それにしてもいつにも増して意味不明なことを呟くミツキちゃん。
気になるかと言えば当然気になるが。そう言えばご褒美の件はどうなったんだ?
「どうして碓氷さんは優しくなったのかな?
それと宇宙人かと腹が大きくなったか教えたら帰っていいよ」
これ以上はいい。毎日のように会えば飽きやすくもなるし思いやれなくもなる。
どうしても扱いが雑に。悪いなと思いながらも癖みたいなものだから仕方がない。
「はあ? 元気のくせに生意気! その態度は何なの? 」
怒りのミツキちゃんによるいつもの口癖。
教えるだけ教えて帰るようなことはない。
そんな都合の良い女にはなりたくないと。
「悪い悪い。かわいいからつい…… それでなぜ碓氷さんは急変したの? 」
どうにかごまかすが納得が行ってない様子のミツキちゃん。
「はあ? 他の女の話? どう言う神経してるのかな元気君は? 」
そう。日曜日ぐらいから舐めてるのか君づけするように。これは由々しき問題。
「でもミツキちゃんが…… 」
「はいはい。からくりを教えますよ」
うわ。何なんだこいつは? 先輩に対してその口の利き方はないだろう?
いくら恋人でもその辺は弁えないと。
「それで? 」
「もう元気ったらバカなんだから! 」
バカにまでし出したぞ。どうなってるんだ近頃のガキは?
僕も人のこと言えないか。文句は光にでも言っておくとしよう。
しかしあいつはミツキちゃんになるとまったく見えないからな。当てにならない。
「ミツキちゃん早く頼むよ」
「だから碓氷さんはお兄ちゃんと元気ができてないと確信を得たんでしょう。
可哀想にあなたの今までの努力が無駄になったみたい」
人の心まで支配しようとするとんでもないお方。それがミツキちゃんだ。
まったく困ったものだぜ。おっと…… 顔に出てない?
意外にも細かいところに気が付くからな。勘のいい子。
これは浮気したら一発でバレるな。まあ僕には関係ない話さ。
「これで碓氷さんからの負の感情を受け取らなくていい。再び愛を育める? 」
「それは違うよ元気君。あなたはこのミツキちゃんと添い遂げるんだから」
ついにおかしくなってしまったか? 自分の立ち位置を忘れてるよ。
「いや待ってくれ。僕は情けないことに碓氷さんに気がある。
それは隠せるものでも諦めるものでもない。それはミツキちゃんだって同じだろ?
ミツキちゃんには光がいる。違うのか? 」
改めて気持ちの確認。僕たちは確かに愛し合ってるし親だって認める仲だ。
でもそれぞれが二番目に置いている歪な関係。
僕がミツキちゃんを二番目に好きなのと同様ミツキちゃんも二番目に僕が好き。
もし変化があったのなら早く知らせて欲しい。受け止めるつもりだ。
ミツキちゃんが本気なら僕は構わない。そう日曜日までは考えていた。
しかし碓氷さんとの関係が改善されたらそうもいかない。
もう二人の女性の間を行ったり来たりしたくないんだ。
男としてどちらか一本にしたい。
揺れ動く心をより複雑にしてるミツキちゃんの浅はかな行為。
それがより迷いを生じさせてしまう。一体どっちなんだ?
僕を助けてくれて素直に嬉しいが一気にミツキちゃんに傾いた流れが戻される。
それは対象の彼女たちよりも僕本人の方が辛い。
どうすればいいか迷い続けることになる。このままではずっとずっとだ。
いい加減その辺のことはケリをつけたい。もう僕たちはその段階まで来てる。
未練があるから断ち切れずこんな中途半端な感じになってしまうのだろう。
ただそれをミツキちゃんに背負い込ませるのは違う気もする。
この辺のことを思い切ってぶつけてみる。
アドバイスと言うか意見を聞いてみたい。
「そっか元気も悩んでたんだ? 分かるよ。辛いもんね」
そう言うミツキちゃんが悩んでるようには見えない。分かり辛いのかもの。
「悪いな。急かすような真似して。でもミツキちゃんを大切に思うから」
一応は真面目な振りをする。実際はまだキープしておきたいのが本音。
それはミツキちゃんの感覚とは違うんだろうな。
「ありがとう元気。でも碓氷さんを捨てる覚悟はあるの? 」
「それは…… そもそも僕たち付き合ってないが…… 」
「いいから答えて! 」
細かいことはいいと今の関係をはっきりさせようとする。我がままだな。
でも自分でもよく分かってないからな。どう答えればいいのか?
大切な存在。二番目に大好きな人。
「もちろんある…… と思う。でもその時々で変わる。まだはっきりしないんだ。
ミツキちゃんの方はどうなの? 」
「ある! 元気がその気なら今すぐにでも」
ついに僕たちはそれぞれを一番大切なものとして位置付けた。パートナーかな?
当然それが上手く行ってもハードルがある。光に許しを乞う。
この場合は冗談ではなくきちんと許可を得る必要がある。
『お兄様ミツキちゃんを下さい! 』
こんな感じだろう。
続く




