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接触の罰

翌朝、ルミナは決意を胸に、白い部屋へ向かった。


扉を開ける。

少女はいつも通り、膝を抱えて座っている。


「……おはよう」


声にした瞬間、自分の心臓が跳ねるのを感じた。

これが、規則違反の最初の一歩だ。


少女はゆっくりと顔を上げ、

ルミナを見つめる。


その視線は、昨日より少しだけ強く、

明らかに“誰かに呼ばれることを待っている”目だった。


ルミナは息を飲む。


「……きょうは、少しだけ……一緒にいてもいい?」


少女は頷き、わずかに笑った。

笑った――それは、記録には残らない瞬間。


しかし、その瞬間、ルミナの手が震えた。

胸の奥が、熱く、痛くなる。


――接触は、危険だ。


カイルは、巡回中に異変を感じていた。


「……体が、重い」


胸の奥がざわつく。

頭の片隅に、少女の姿が浮かぶ。


「……またか」


以前も、同じことがあった。

無色個体と“目が合った”だけで、感覚が狂った。


警告信号。

しかし、今日の彼は、足を止める。


少女が、ルミナと話しているのを、扉越しに見てしまったのだ。


二人が近づきすぎる。

その距離が、世界の規則に触れる。


ルミナは、そっと手を伸ばす。

少女の手は冷たく、細い。


触れた瞬間、世界が静止したように感じる。


胸の奥に、重い鎖が巻きつく。

呼吸が、ほんの少し、苦しくなる。


「……これは、接触の罰」


ルミナは心の中でつぶやく。


少女も、小さく息を呑んだ。

手を握られていることは、理解していないかもしれない。


ただ、感じている。


――温かい。

自分の存在を、確かに認めてくれる何か。


その瞬間、二人は知った。


この世界は、決して許さない。

それでも、近づきたくなる存在がいることを。


ルミナとカイルは、同時に理解する。


――無色個体は、危険だ。

そして、尊い。


胸の奥で、抑えきれない感情が、

ゆっくり、静かに燃え上がる。


世界のルールは、間違っていない。

それでも、目の前の少女を見捨てることは、できない。


「……大丈夫だよ」


ルミナは、少女に向かって、

ぎこちない笑みを返す。


その笑みは、記録には残らない。

しかし、少女の胸に、確かに届いた。


――小さな光が、無色の世界に、灯った瞬間だった。

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