施設の異変
翌朝、白い部屋の空気は昨日の柔らかさを失っていた。
ルミナは、巡回端末の画面を見つめながら眉をひそめる。
数値は安定している――はずだった。
しかし、観測対象であるレイの脳波に、微かな異常が現れていた。
「……これは……」
ルミナは小さく息を吐く。
昨日までの笑顔や日常の光は、規則の目には映らない。
でも、少女の中では、確かに何かが変化している。
カイルも、廊下を巡回中に違和感を覚える。
胸の奥で、昨日までの重さが、より鋭く痛む。
「……また、規則が動き出したか……」
白い部屋の扉の中、レイは小さな手を握りしめて座っていた。
まるで、何かに耐えるように。
そして、ふと、ゆっくりと顔を上げる。
「……ルミナ、カイル……」
その瞬間、施設全体の照明がわずかに揺らいだ。
ルミナとカイルは顔を見合わせる。
異常は端末では確認できないが、
“感じる”――確かに、世界の規則が、二人の行動に反応している。
「……危険だ」
ルミナは低くつぶやく。
胸の奥で、痛みと熱が交錯する。
昨日までの小さな日常は、
もう守れないかもしれない。
カイルはそっと手を伸ばす。
だが、規則が警告のように心を押さえつける。
接触は、まだ許されない。
レイは、それでも目を輝かせる。
「……大丈夫です……きっと」
小さな声だが、揺るぎない決意が感じられた。
ルミナは息をのみ、覚悟を決める。
守るべきは、光を持ったこの少女――レイ。
規則に背くことも、覚悟しなければならない。
カイルもまた、胸の奥の痛みを押さえながら、静かに頷く。
二人の心は、完全に一致した。
――この子を、守る。
その瞬間、施設の空気が再び揺れる。
小さな亀裂が、さらに広がる予感。
白い部屋に差し込む光の中で、
レイは静かに笑みを浮かべる。
その笑顔は、規則さえも侵す力を秘めていた。




