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小さな日常

白い部屋に、初めて笑い声が響いてから数日。


ルミナとカイルは、少しずつ日常のような時間をレイと過ごしていた。

とはいえ、施設の規則は変わらない。

だからこそ、この静かな時間は奇跡のように感じられた。


「……今日の観測、どうする?」

カイルが端末を見ながらつぶやく。


「さあ……」

ルミナはレイを見て微笑む。

「少しだけ自由にさせてあげよう」


レイはにこりと笑い、二人を見上げる。

小さな手で、自分のノートを広げる。

そこには、意味不明な絵や、数字が書き連ねられていた。


「……それ、何描いてるの?」

カイルが聞くと、レイは真剣な顔で答える。


「秘密です!」


ルミナは笑いをこらえられず、肩を揺らす。

カイルも少し困ったように笑った。

こんなに無邪気な表情を見るのは、久しぶりだった。


その後、三人で簡単なゲームを始める。

ルミナがレイに小さな紙飛行機を折って渡すと、

レイは驚いた顔で受け取り、全力で部屋の隅に飛ばす。


紙飛行機が壁にぶつかり、くるりと回って落ちる。

「もう一回!」

レイの声に、ルミナとカイルも笑顔で応える。


――こんな日常が、世界のルールに背いていると誰が思うだろう。


しかし、ふとした瞬間、ルミナは思う。

この時間は永遠ではないかもしれない。

いつか、規則が二人を引き離す日が来るかもしれない。


「……でも、今は、いい」

ルミナは心の中でつぶやく。

胸の奥の痛みを抱えつつも、

この小さな光を大切にしたいと思った。


その夜、三人は並んで座り、静かに空を見上げる。

白い部屋の窓から、施設のライトに反射する星空が見える。


「……綺麗ですね」

レイが小さく言う。


「うん、でも……君の笑顔の方が、もっと綺麗だよ」

ルミナが返すと、レイは頬を赤らめて目をそらす。


カイルは横で苦笑い。

「……いや、まじでギャグにしか見えないだろ、それ」


三人の笑い声が、夜の静寂に小さく響く。

短い日常だけれど、

それが今の彼らにとって、かけがえのない瞬間だった。

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