名前の光
白い部屋に、静かな緊張が漂う。
ルミナは、少女の前に座り、深く息をついた。
昨日の小さな反抗。
少女の意志。
そのすべてが、彼女の胸を締め付けていた。
「……今日は、あなたに名前をつけたい」
少女は、驚いたように目を見開く。
名前――それは、無色の存在には許されないもの。
でも、ルミナの声には、揺るがぬ決意があった。
「……名前……?」
少女はかすかに頷く。
胸の奥で、小さな光が揺れるように、希望が芽生えた瞬間だった。
ルミナは、微笑む。
呼ぶだけで、少女の存在が確かになる名前を、
そっと口に出す。
「……レイ、にします」
その瞬間、世界が一瞬、止まったように感じた。
白い部屋の空気が震え、少女の胸の奥で、光が広がる。
――名前を持つことの力。
それは、ただの呼称ではない。
自分を認められる存在になること。
そして、守られることを意味する。
少女――レイは、ゆっくりと笑った。
その笑顔は、昨日よりも鮮やかで、
胸の奥まで暖かかった。
カイルも扉の外で、それを感じていた。
胸の重さが、少し軽くなる。
少女の光は、確かに二人に届いている。
「……レイ……」
ルミナは繰り返す。
呼ぶたびに、少女の胸の光が大きくなるのを感じた。
世界のルールは、未だ正しい。
しかし、光を持った少女――レイ――は、
それに抗う力を秘め始めていた。
小さな亀裂が、
今、確かな光となって、世界を少しずつ変え始める。
レイの名前は、
ただのラベルではない。
それは、存在を認める約束であり、
希望の種だった。
白い部屋に、初めて笑い声が響く。
小さく、でも確かに、未来を照らす光のように。
「……ルミナ、カイル……ありがとう」
その声が、
二人の胸の奥で、深く刻まれた。




