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限界の線

白い部屋の前で、ルミナは手を止めた。


心臓が、跳ねる。

胸の奥が、重く、痛い。

それは、昨日の接触の影響がまだ残っているからだ。


「……もう、限界かもしれない」


ルミナは、独り言を吐きながら、手を握りしめる。

触れてはいけない。

でも、目の前の少女を見捨てられない。


カイルも同じだった。

巡回中に胸の違和感が強まり、頭痛が走る。

感情を抑え込む訓練を受けても、

少女の存在は、容赦なく心を揺さぶる。


少女は、今日も膝を抱えて座っている。

目を閉じ、呼ばれるのを待っている。

その小さな姿に、二人の理性は押し潰されそうになる。


「……触れるな」


カイルの心が叫ぶ。

でも、足は止まらない。

昨日と同じように、自然に、少女に近づいてしまう。


ルミナもまた、躊躇しながら手を伸ばす。

指先が少女の肩に触れる瞬間、胸に鋭い痛みが走った。


――これは、接触の罰だ。


呼吸が乱れる。

体温が上昇し、頭がぼんやりする。

だが、視界の端に見える少女の顔は、笑っているように見えた。


その笑顔に、二人は押し潰される。

理性は世界のルールを叫ぶ。

でも、心は少女を守りたいと叫ぶ。


「……限界だ」


ルミナは、立ちすくむ。

世界の秩序と、自分の感情が、ぶつかる音が、

胸の中で鳴り響く。


カイルもまた、足が震えている。

それでも、少女の目が、自分を呼んでいる気がした。


白い部屋の中、少女は小さな声で呟く。


「……大丈夫、ですか?」


その言葉で、ルミナとカイルははっきり理解する。


――この子のためなら、世界のルールを破ってもいい。

それくらい、この存在は重く、尊い。


胸の奥で、痛みと熱が交錯する。

限界を超えることでしか、

少女と心を通わせることはできない。


その瞬間、世界は静かに息をひそめた。

白い部屋の外で、規則は見ている。

しかし、二人の心は、少女に完全に捕らわれていた。


小さな亀裂が、確実に広がっていく。


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