フェニカの秘密
「私がこれから話すフェニカちゃんの秘密なんですが、なんと、ミル様にも今日初めて話します」
「なんじゃと?」と校長。
「実は、フェニカちゃん自身にも嘘を教えてあります」
「えっ?」と私。なんの話だろう?
「フェニカちゃんが、自己紹介の度に言う『不死鳥とドラゴンを身に宿す者』という言葉、どんな意味があるでしょう? はいアダムさん、あれアリシアさんだっけ? どっちでもいいや」
「ひどいです。普通に、不死鳥のように死なず、ドラゴンのように強いという意味ではないのですか?」アダムの方が答えた。
「違います。はい、ミネルヴァさん」「ドラゴンの炎を身に受け、不死鳥のように蘇った者、という意味かと」
「それも違います。はいウェルさん」「不死鳥を移植され、ドラゴンの炎から生き残った者と聞かされているが……」
あれ? なんか誰も本当のことを知らない?
「移植? 移植ってどういうことですか?」とアダム。
「今いいところだから後で」女神様は相手にしない。
「ウェルさん、人から受けた報告は疑った方がいいですよー。ミル様正解をどうぞ」
「ウェル君と同じように報告を鵜呑みにしてたけど、報告が違うな。私は、フェニックスを移植して、ドラゴンの炎から蘇生させるときにドラゴンの生き血を飲ませたと聞いたぞ」
もしかして、私に関する報告ってどこかで書きかえられてる?
「はい不正解ー。ダメ賢者ー。フェニカちゃん以外で正解がわかる人挙手」
手を挙げたのは、ヴァン、レイ、ナレッジ・ハルの三人だった。
「ヴァンわかるんですか?」リベルタスさまは意外そうだった。
「みれば分かる……だが、なぜこいつが存在しているのかわからない。そいつの心臓には、生きたドラゴンの一部と生きた不死鳥の一部が入っている。普通は死ぬはずなんだがな……。なんで生きてるんだ? しかも、この術法、誰がやった? 俺の知らねぇやつだな」
手を挙げなかったみんなが驚いた。女神様すら、ヴァンが正確に見抜いたことに驚いた。
ナレッジ・ハルが言った。
「生きた生命を体内に移植するこの術法は風の民の得意とするもの。ドラゴンを移植して生き残った例はない。私には魂が見えないのでわからないが、魂が焼け死ぬと聞く」
次の瞬間、ヴァンはいつの間にかナレッジ・ハルの肩の上に立ち首に小刀を突きつけていた。
「あんた、その名をどこで聞いた」ヴァンの眼差しは殺すことも辞さない目だった。




