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後継者

「さて、あなた方は帝国の建国神話を知っていますね」とリベルタス様が聞いた。さっきの神話だ。ヴァンは回復して再び縛られている。


「あなたがたはその英雄に連なるものです。七英雄と直接血のつながりがあるものがこの中には二人います。


 龍騎士(ドラゴンライダー)であるジルバ家とエルフ王家であるアルファ家は帝国成立から続く数少ない家系です。


 ただし、ジルバ家には養子の風習があるため今のジルバ家は直接初代皇帝と血のつながりはありません。龍と心を通わす能力も血のつながりとともに失われました。」


 ウェル皇子が渋い顔をしている。あまり知られたくない事実なのだろう。


「しかし、ウェル皇子はこのまま平和な世が続けば名実ともに最高の皇帝となるでしょう」とリベルタス様が付け加えたので、ウェル皇子は少し気が緩んだ顔をした。多分お世辞だと思う。



「ミネルヴァ・アルファ。あなたは、この大陸で、おそらくこの世界でも最も古い家系の血を引いています。あなた自身の身を大切にしてください」


「はい」とミネルヴァ。


「それから、ミランダさんの影をフェニカに重ねているようですが、それは忘れなさい。ミランダ様は敵の手によって亡くなりました」


 ミネルヴァは再び泣き出した。しかし他の一同は、初めて出た敵という言葉に身構える。しかしリベルタス様は、話を小人同盟に移した。



「次は小人同盟の王、ヴァンです。同盟とはいうものの、ヴァンの種族以外は絶滅しました。ドワーフ、ノーム、ヴァンの種族。この3種族が集まって作った同盟です。ドワーフとノームという種族、フェニカさんとヴァンさん以外は聞いたことがないかもしれません。純血のドワーフとノームは千年戦争の終結前に絶滅しましたから」


「ああ」ヴァンが珍しく真面目な顔をしている。

「皆が言う。なぜ小人同盟で生き残ったのが俺たちの種族なんだってな。ドワーフやノームが生き残ればよかったのに、と。俺たちが戦わず逃げ回っていたからだというものもいる。だが俺たちは勇敢なる戦士の末裔、一族の名誉のためには全ての小人が戦うだろう」

 初めて見る本気のヴァンに一同は、驚いていた。



「昨夜暗殺された獣王の後継者として選ばれたのがアリシア、アダム、あなたがたです」


「なぜ俺たちだけ二人で一人みたいな扱いなんでしょうか?」とアリシアは再び問う。「それは後々わかります。今私の口からはいう権限がありません」リベルタス様は話を続けた。



「そして、魔王の血を引くものですが、もうお分かりですね、レイ、あなたです。魔王は公的な記録では、子を残しませんでした。私も1300年間その話を信じていました。しかし、百年くらい前、七英雄の後継者を見つけなければならないと気づいた時に、魔王はたくさんの妾、淫魔を従えていたことを思い出したのです。それから家系図を丹念に辿りました。淫魔は婚外子が多く、家系図を真面目に作らない種族だったので、探すのに苦労しました。

 全く雲をつかむような話でした。淫魔はだいたいどんな他種族とも子をなせるため、探索範囲は異常なほど広かったのです。決め手がないまま長い時が経ちました。しかし二十年前、不意に思い出したのです。当時の淫魔には魂の性別を見抜く力があったことを。レイさんには意外かもしれませんが、現在の淫魔のほとんどはその能力を失っています。

 そうすると不思議なことで様々な記憶が戻ってきました。魔王の血には強い解毒と幻惑の効果がある。この重要な情報をなぜ90年も見落としていたのか……。そこで私は、魂の性別を見抜ける位の高い淫魔の中で、血に解毒作用があるものを探したのです。それがあなたのご両親でした。

 レイ。不思議なことにご両親はお二人とも解毒の血を持っていましたが、それを一番色濃く継いだのはご姉妹の中であなたでした。あなたの解毒の力は魔王のそれには及びませんが現代では、異常なほど強いのです」


「はい。ありがとうございます」とレイ。


「現在も魔族は派閥争いが絶えないため、レイ、あなたが魔王の末裔であることは特に口外してはいけません。おそらくレイなら下級魔族を無理やり従わせることができるでしょう。訓練すれば、魔貴族さえ、抵抗できなくなる。そのくらい、レイは魔王の血が濃いのです。今の段階で魔王の血についてバレれば暗殺されるでしょう」


「ナレッジ・ハルさんについては私は何も知りませんが……。ミルさまがおっしゃるなら後継者なんでしょう。ミルさま何か補足ありますか?」

「ナレッジ・ハルは英雄の中でも特殊な立ち位置なのでな。特に言うことはないよ。我々の味方であることは確かだ」


「最後にフェニカさんです」


 私はドキッとした。私が異界から来たことをバラされるんじゃないかと。思えば、私は異界出身であることを誰にも言わなかった。隠し続けてきた。なぜかと聞かれれば難しいが、もし知れたら仲間じゃなくなると思ったからだ。女神様がこの気持ち汲み取ってくれるといいのだけど。


「ここでフェニカちゃんの秘密をバラしてしまいます」

「やめてください」マジで。

「ああ、あなたが話して欲しくない方じゃないですよ。だから安心してください」

 どれだろう?

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