文化祭三日前および本当にあった怖い話 #3
「あかないって・・・・・・ちょっとどけ。ぼくがやってみる」
今回こそはコウメイも素直に場所を譲った。
「全く。少しは体も鍛えろってんだ」
コウメイに、というより自分に言い聞かせるようにつぶやいた法明は閉めたときと同じように小さなくぼみに手をかけた。
開かない。手をかける部分が小さいからではない。明らかに何かが抑えているような開きにくさだ。
「おいおい、嘘だろ・・・・・・」
現実だった。この時を持ってして文芸部員は体育倉庫内に閉じ込められたのである。
「・・・・・・誰も助けにこないってどういうことだよ」
閉じ込められてから約一時間。手元の時計から察するにもうそろそろ学生は下校しなければいけない時間のはずだ。
もちろん彼らもじっと待っていたわけではない。戸をたたいてみたり、蹴飛ばしてみたりはしてみた。しかしなにぶん部活がなければ誰も近寄らないような体育倉庫だ。気づいてくれるものは誰もいなかった。
それどころか危うく法明が怪我をするところだった。法明が、という理由は簡単でコウメイが閉じ込められてからずっとマットの上(おそらくは高跳び用)の上でずっと考えごとをしているからだ。まさか葉月に手伝えともいえず法明一人で分厚い鉄の扉と格闘していたわけである。
「くそっ。も一回やってみるか・・・・・・」
一度は諦め、休憩をしていた法明が再び立ち上がった。
普段なら無駄なことが嫌いなコウメイがいつもの皮肉調で止めるところなのだがよほど考えることに集中しているのか顔を上げすらしない。
法明は先ほどの経験から素手での攻撃は無謀と悟ったのだろう。今度は一メートルはあろうかという棒を取り出した。よく見るとやり投げで使われる槍だ。
スイっと槍を構える法明は結構サマになっている。
「セヤッ」
裂帛の気合とともに槍が放たれる。その穂先は正確に鉄の戸に中心に吸い込まれていく。しかし
“ガツン”という虚しい音を残してわずかに扉をへこませただけだった。
しかも剣道の有段者である法明も槍の扱い方など所詮見た目だけだった。真っ平らな戸に全力で突きこまれた槍は耳障りな音を残し横に滑った。
「!!??」
当然法明の体は勢い余って戸に激突した。槍はというと法明の手から離れ、戸と棚のあいだに吸い込まれていきレールの中に溜まった砂に刺さる音と、“カンッ”という倒れる音だけを残し闇に消える。
「レールの砂を、ちょっとだけ掻き出せたかもね」
事の顛末を後ろで眺めていた葉月は呆れたようにつぶやいた。
「これで開くようになったらいいんだけどね、」
と、開かないことを前提にして戸に手をかけた・・・・・・のだが。
「え、嘘。開いちゃった」
なんと、戸が開いたのだ。
「え?」
「あいた?」
法明とコウメイも驚きの色を隠せない。
確かに一時間前、法明がけっても叩いても全く開かなかった扉だ。しかしそれが葉月の手によって簡単に開けられた。
「ふむ」
マットから立ち上がったコウメイは顎に手を当てる。
「また考えるべき謎が増えたな」




