文化祭三日前および本当にあった怖い話 #2
やっとミステリーっぽくなってきたので、よければトリックとか考えてみてください。
放課後。
「負けました・・・・・・」
法明も対した情報は持ってこないだろうと思っていた葉月に、法明は堂々とコウメイの無実という大ニュースを叩きつけた。
「しかし……コウメイじゃないとしたら誰だろうか?こんなことをする人なんてほかには考えつかないけど」
「私もね。大体、文芸部員以外得する人がいないじゃない」
「だとすれば愉快犯か。僕らが驚いているのをどこかで覗いて楽しんでいるかも」
「どっちにしたって、一回捜査を打ち切らないと。コウメイ君以外犯人の目星がなかったわけだし」
しかし、せっかく昼休みを割いてまで聞き込みをしたのだ。ここで打ち切るのもなにかもったいない。
「・・・・・・コウメイと共同戦線を張るってのはダメかな。僕らが入っても邪魔にはならないだろうしさ」
あきらめの悪い法明がほんの数時間前まで犯人扱いしていた相手との協力を提案する。
しかしそんな意味不明の提案が認められてしまうのが文芸部だ。
「うーん、そうね。コウメイ君も調べてるっていうなら、一緒にいてもいいよね」
しかし、この判断が後に二人にとんでもない恐怖体験をさせることとなる……!
「まいったな、もうばれちゃったのか」
コウメイがぼやく。
まさか、あなたを疑って捜査してたのですぐに気付きました、とはいえない法明と葉月は曖昧な笑みを浮かべた。
彼らがいるのは文芸部室ではない。朝、怪現象―すでに七不思議の呪いということになっているらしいが―の起きたグラウンドにいる。しかしその理由は足跡の再調査ではない。
グラウンドの端を歩きある場所に向かっているのだ。その場所と言うのが―
「しっかし古いな。ドアなんて錆びだらけじゃないか」
屋外でのスポーツ用品の納められた体育倉庫である。
本来なら陸上部がハードルやスタブロを出し入れしているのだが、今日は文化祭の準備のためか人気がない。
文化部の人間がこんなところに来ることはまずないのだが(強いて言うなれば文化部部員でもある程度染まった奴は煙草を吸う場所として倉庫の裏を使う)彼らがここにいるのは確固たる理由があるからに相違ない。
つまり七不思議についての捜査である。
グラウンドの体育倉庫は中に入ったまま戸を閉めると二度と開かなくなる。
普通に考えれば到底ありえないことだ。しかし、到底ありえないであろう足跡事件が起こったあとだ。第二の事件が起こる可能性もゼロではない。
そう考えた彼ら(主にコウメイだが)はこうして直々に捜査に来たというわけだ。
「さてと。じゃあ、入ってみますか?」
「ああ。ノリ君、君が開けてくれ」
「・・・・・・なんで?」
「君が一番腕力があるだろ。あと、僕は頭脳労働担当だ」
ようするにいいように使われていた。
渋々扉に手をかけた法明は、そのまま一気に引きあけた。
半分くらい行ったところで、不快な衝撃が伝わってきた。どうやら、倉庫の内側にある戸のレールに砂が詰まっているらしかった。
しかし、半分も開けば中に入るには十分だ。
「あいたぞ」
と、後ろに一声かけた法明はその隙間に身を滑り込ませた。あとの二人もそれにならう。
「うわ、土臭っ」
倉庫の中は土が充満し、視界がかすむほどだった。一番扉の近くにいた葉月が扉を大きく開けようとしたが、例によって砂が詰まっているため開かない。それに気づいた葉月は壁際にあるレールに目をやるが、レールの前に棚が置かれているのを見て砂をかき出すことを諦めた。
一方、法明は一応あたりに人がいないか探っていったが、誰もいないようだと判断してコウメイにこんな提案をした。
「とりあえず七不思議が発動するか試してみるかい?」
コウメイは少し考えてから小さく頷いた。
そして自分自身は棚に並んでいる陸上部のものと思しき道具を検分し始める。今回も手伝うつもりはないようだ。
やれやれ、というように首をすくめた法明は戸に手をかけた。
戸にはちいさなくぼみがついているのだが指を引っ掛けて全力を出すにはいささか小さすぎた。
少しずつ力を込めて戸を動かした法明は三十秒ほどかけて完全に締め切った。
真っ暗になった。もともとコンクリートで囲まれているこの倉庫には窓がない。そして電気も通っていない。つまり入口を閉じてしまえば光が入ってこないのだ。
「さてと。閉じてみたけど、どうだいコウメイ。開けるのくらいはやってもいいと思うぞ」
法明が少し皮肉っぽく言うと暗闇の中でコウメイも頷いた。
「そうだね。自分でやってみないとのちのち頭脳労働で情報不足になるからね」
と、こちらもやや皮肉気味に返した。
暗闇の中で、一瞬火花が飛んだ気もした。そして直後に女の子のため息も聞こえた。
数秒にらみ合った後、コウメイの方が扉に手をかけた。そして力を込めた――ハズだった。
相変わらず倉庫内は暗い。
「開かない・・・・・・」
暗闇の中でも三人の顔が青ざめるのがわかった。




