再会 side雫
「どうしよう・・・」
秋の夜空の下、俺は公園のベンチに座ってただ愕然と遠くを見つめている。
かれこれもう30分はこうしているだろう。
俺はくしゃくしゃになった手紙を握りしめている右手に目を落とす。
その紙の内容は
わたしは愛する人と暮らします。
こんな短文だ。正直こんなに短いと何が何だかわからないが、どうやら俺は捨てられてしまったらしい。
かれこれ5年前、両親を交通事故で失った俺を引き取ってくれたのが叔母さんだ、その時は俺も重傷を負い5年前以降昔の記憶を失ってしまう状態だった。当時の医者からは衝撃からの記憶喪失という診断だったらしい。
幸い、記憶は失っても勉強のことなどは忘れなかったので高校にも通うことができているのだが、とうとう、今日、叔母さんは俺との生活に嫌気がさしたのか、俺が家に帰ってみるとテーブルの上に手紙がある状態で家のどこにも姿はなかった。
正直これからどうすればいいかわからない。
叔母さんを探せばいいのか、それとも、一人生活すればいいのか。
そんなことを考えていると数人の男たちが近寄ってきた。
「おい、おまえ金持ってないか?」
「ないですけど」
どうやら俺はカツアゲされているらしい。
金髪の男やスキンヘッドの男などいかにも不良の格好だった。
「ウソつくなよ、持ってんだろ、さっさと出したほうが怪我しなくて済むぞ」
「ないものはないですよ」
俺がそういうと突然不良の一人が俺の胸ぐらに掴みかかってきた。
「ふざけんなよ!いいから持ってるもん出せよ‼」
不良たちが俺に殴りかかろうとした時
「待ちなさい!」
女性の声が公園に響いた。
声のほうを向くとそこには一人の女の子が立っていた。
服装から見て高校生だろうか。
「なんだ?関係ない奴は黙ってろ!」
不良の一人が女の子に向かって叫ぶ。
それに臆することなく女の子はこっちに近づいてくる。
そして、歩きながら口を開く。
「私は困っている人を見て見ぬふりをすることはしないの、いいからその人から手を離しなさい!」
その言葉に反応したのか俺の胸ぐらを掴んでいた不良は手を離す。
そのあと不良全員で女の子のほうを向いた。
「なめた口きいてんなよ、その顔もいつまで続いていられるかな?」
不良たちはいっせいに少女に殴りかかっていく。
まずくないか、
俺がそう思うのもつかの間だった、少女は不良たちの攻撃をすべてかわし手に持っている、木刀?らしきもので不良たちを次々に倒していく。
圧巻の強さだった。
その様子を見ながらふと最初のほうで倒されて地面に膝をついている不良を見るとスーと服の懐から街灯の光りで輝く細長いものを取り出した。
その正体はナイフだった。
そいつは女の子の背後に回って音もなく近づく。
どうやらあいつ本気で女の子を殺そうとしているらしい。
それを見るや俺の足はすでに少女の元へ走っていた。
間に合うか?
ナイフを持った不良は俺に気付いたのか急に走り出した、それでも俺と女の子の距離はもうすぐだった。
「死ね!」
男が女の子にナイフを突きつけようとする、それに反応したのか女の子は振り向き目を瞑った。
この時、俺にはすべてかスローモーションに感じた。
俺は女の子とナイフの間に入りナイフを左手でつかみ、そのまま右手で男の顔を思いっきり殴る。
女の子のほうを振り向くとまだ目を瞑っていた。
「大丈夫?」
その言葉に反応して女の子は目を開いた。
その様子はとても驚いているのか目を見開いている。
それもそうだろう、目を開くといつのまにか俺がいるんだから。
俺は不良たちに向き合う。
「お前らそろそろいい加減にしとけよ!」
俺がそういうと不良はさっき殴った仲間のほうを見て、不良たちは倒れている男を背負い俺に背を向けて立ち去って行った。
どうやら、俺には勝てないと判断したのだろうか、それとも俺が殴った不良のことが心配で病院にでも行ったのだろうか?
俺は再び女の子に向き合う。
話しかけようと思ったら先に女の子のほうから話してきた。
「私が助けようとしたら逆に助けられちゃったわね」
そんなことないよ、と言おうと思ったら急に頭に激痛が走った。
それに続いて視界がゆがみだした。
なんだ、この頭痛は?
その痛さに耐えきれず俺は地面に両膝を付ける
「・・・だい・・・ぶ?ねえ!・・・」
女の子が心配そうに俺に話しかけてくる。
それを最後に俺の意識は遠のいた。




