第三十一話 童話に魅せられた少女
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。自身からペリドットの指輪の資格を失うことに焦りを覚えていたリーナ・ジーニアスは、実・ファンタジアとのデートで世界を守るということを改めて感じる。そんな中、美姫はリーナに勝負で自身に勝てばペリドットの資格を失わずに済むのではないかと提案する。戦士であることに拘りを持たなくなったリーナは躊躇うが、改めて真の戦士になりたいと感じ美姫との勝負を決意する。一方、ダークストーリーズの幹部パンドラスはフックガンを倒したのがロバーズだという事実に気付きつつあった。
互いに力をぶつけ合うシンデレーザーとアラジンザスカイ。しかしシンデレーザーの能力は既にアラジンザスカイを遥かに上回っていた。
「ここまで力の差があるとは…。」
アラジンザスカイはシンデレーザーに力で押されると同時にその力の差に悔しさを感じていた。
「何で?リーナはずっと戦士として育って来たんだよ。それなのにどうしてこんなに圧倒される訳?」
実はアラジンザスカイがシンデレーザーに圧倒される様を見て不思議に感じる。しかし双見アラモード、三浦竹月、赤園風布花の三人は信じて疑わない様子だった。
「美姫さんは、ホロテイルジュを作り上げたお祖母さんの血を受け継いでいます。そして、お祖母さんの思いもしっかり受け継いでいます。」
「恐らく美姫さんはホロテイルジュの力、その真髄を誰よりも心得ています。やはり本気の美姫さんに敵う者はいないのでしょう。」
風布花と竹月は実にそう答える。実もその事実を認めざるを得なかった。
「やはり桜名美姫、彼女にペリドットの資格を渡すしかないの…?」
アラジンザスカイは拳を地面に叩きつけながら悔しさを噛み締めていた。
一方、キルビーレオン、サファイアロード、アックシトリナー、マーメイデスト、ポイズノームの五人は未だカイザードとマリスと戦っていた。
「おやおや、手応えがなくなって来ましたねぇ。」
苦戦するキルビーレオンに、カイザードは嫌味を言う。
「うるさい、お前如きにやられてたまるか!」
キルビーレオンは倒れ込みながらもそう言ってカイザードに剣を突き付ける。
「剣二さん!」
「今行きます!」
マーメイデストとポイズノームはキルビーレオンの元に駆け寄る。
「くじら座!」
「三枚の蛇の葉!」
マーメイデストはスプラッシュタイプに、ポイズノームはスネークタイプにそれぞれ姿を変える。
「トライデントスプラッシュ!」
マーメイデストは三又の槍から水飛沫を噴き出し、カイザードに攻撃する。
「はぁぁ!」
ポイズノームは蛇のようなしなやかな動きでカイザードを攻め立てる。
「剣二!」
「剣二さん!」
サファイアロードとアックシトリナーもキルビーレオンの元に駆け寄り庇う。
「五人揃ったところで勝てるとお思いですか?」
「勝てるさ、もっと頼もしい仲間がいるからな!」
カイザードに煽られながらもキルビーレオンが屈することはなかった。
一方、未だ交戦するシンデレーザーとアラジンザスカイだったがそこにエメラルディアが現れる。
「まだ決着が着かないか。」
「エメラルディア様。」
エメラルディアもシンデレーザーとアラジンザスカイの勝負が気になっていた。実がエメラルディアに勝負の様子を話す。
「リーナ、あの人に押されてるんです。やっぱりエメラルディア様のお姉さんの孫だからなんですか?」
実はエメラルディアにそう話す。しかしエメラルディアの考えは実のとは違った。
「美姫は姉さんを慕っていたようだ。恐らくあいつは星座や童話への造詣が深いはずだ。」
「それって、エメラルディア様が私達にしてくれたことよりも凄いことをしてもらったということですか?」
「ああ、恐らくな。」
エメラルディアの言葉に、実はリーナと共に過ごして来たことを思い出す。そしてエメラルディアもリーナと実を育てた時のことを思い出していた。
リーナ・ジーニアスは生後間もない頃、ダークストーリーズの襲撃に遭い両親を殺された。その時に単身ダークストーリーズと戦っていたエメラルディアに拾われ育てられた。
「はぁ…、どうしたものか。」
リーナを引き取ったエメラルディアだったが、今まで人を育てたことなどないエメラルディアは考えあぐねていた。勿論リーナを引き取ってくれる親戚などを探してみたが、何も手掛かりが掴めなかった。ただ一つだけわかっていたのが、母親が死ぬ間際に放ったリーナという名前だけだった。
「ファミリーネームは…、まあジーニアスでいいだろう。」
エメラルディアはリーナの苗字をジーニアスとすることにした。それからのエメラルディアはリーナを育てることに必死だった。頻繁にぐずり出し、その度にあやしていた。
「全く、何故俺がこんなことをしなければならないのだ。」
エメラルディアは日々の子育てに参っていた。ダークストーリーズと戦うだけでも大変な時に、見知らぬ人の子供を育てるというのはエメラルディアにとっては嘗てないほどの苦痛だった。しかしエメラルディアにとって嬉しいこともあった。それはリーナの体にペリドットの指輪が反応したことだった。
「これは…。」
エメラルディアはその時リーナを戦士にすることを決めた。リーナが言葉を覚えた頃、エメラルディアは姉である琴姫が好んでいた童話を次々に読み聞かせた。エメラルディアは今までのホロテイルジュの戦士の傾向から星座や童話への造詣が深いほど能力を引き出すことが出来るということを感じていた。それ故にリーナがもっと星座や童話に興味を持ってもらえるようなんとか知識を与えた。
「エメラルディア様、私はこの童話を凄く気に入りました。」
リーナが大きくなり、礼儀正しい言葉遣いになった頃、リーナはある童話を気に入っていた。その童話はアラジンと魔法のランプだった。
「俺と似ているな、リーナ。」
「はい、とても嬉しいです。」
リーナは自身を育てたエメラルディアをすっかり慕うようになっていた。そしてエメラルディアはリーナを真の戦士にするべく心身も鍛え上げた。そしてリーナは小学生くらいの年齢になる頃、アラジンザスカイとなって前線に立つようになっていた。
「はぁぁ!」
アラジンザスカイは幼い年齢ながらもエメラルディアに並ぶほどの戦闘力を身に付けていた。
「くぅぅ…!エメラルディア、また強力な戦士を連れて来ましたね。まあいいでしょう、今日のところは退いて差し上げます。」
アラジンザスカイの強さはカイザードも感心してしまうほどだった。
「強くなったな、リーナ。」
「エメラルディア様のおかげです。」
エメラルディアもリーナの強さを誇りに感じていた。そしてホロテイルジュはしばらくエメラルディアとリーナのみで戦っていた。そんな二人に再び転機が訪れたのは今から五年ほど前だった。ダークストーリーズと戦っている際に倒れ込む一人の少女がいた。
「お前、大丈夫か⁉」
「え…?」
エメラルディアがその少女に声を掛けるが、少女はキョトンとした表情を浮かべていた。エメラルディアはリーナと共に、その少女を連れて帰ることにした。
「お前、名前は何と言う?」
「ナ…、マ…、エ…?」
連れて帰ったその少女は一切の記憶を失くしており、それどころか言葉すら何もわからなかった。
「これは重症ですね、エメラルディア様…。」
「そうだな…。」
エメラルディアとリーナはその少女に参っていた。それから二人はその少女に対し必死に言葉を覚えさせた。
「取り敢えずあなたの名前を、実と致しましょう。」
「ファミリーネームは…、ファンタジアでいいか。」
「ミノリ…、ファンタジア…?」
エメラルディアとリーナはその少女を実・ファンタジアと名付け、育て上げた。エメラルディアが実にも尽力したのは実の体にラピスラズリの指輪が反応したからだった。エメラルディアは実にも星座の知識を与え、童話を沢山読み聞かせた。その中でも特に実が興味を持ったのはピーターの物語だった。
「エメラルディア様、私このお話が好きです。ピーターがチョーかっこいいです。」
「おお…、そうか。」
エメラルディアは実が童話に興味を持ってくれたことが嬉しかったが、実が少しギャルのような話し方になっているのが気になっていた。
「恐らく、テレビを見せた結果だと思います。」
リーナは実がテレビの影響で言葉遣いがおかしくなったと感じていた。しかし実も戦士として確かな実力を身に付けて行った。
「私達はずっとエメラルディア様にホロテイルジュに必要な力、星座や童話のことを沢山教えていただきました。ずっとホロテイルジュの戦士として最高の戦力となるために!それでも、あなたには勝てない…。」
膝をついてしまったアラジンザスカイはシンデレーザーに勝てないことに悔しさを噛み締め、拳を地面に叩きつけながら涙を溢してしまう。
「戦いに関してはリーナの方が上かも知れない。でも私はお祖母ちゃんからずっと星座も童話も教えてもらって来た。」
シンデレーザーはアラジンザスカイにそう言い放つ。シンデレーザー自身も星座や童話のことは譲れなかった。それは祖母である琴姫との思い出があってのことだった。シンデレーザーは祖母である琴姫とのことを思い出す。
「美姫、今夜も新しい童話を読み聞かせるわ。」
「うん、私お祖母ちゃんのお話凄く好き!」
美姫は幼い頃、祖母の琴姫から童話を読み聞かせてもらうことを日課としていた。当時、琴姫以外の家族はあまり童話に興味を示さなかった。それ故に琴姫は桜名家の中でも少し浮いた存在だった。美姫はダイヤモンドの指輪に体が反応したこともあってか桜名家の中でも特に琴姫の好きな星座や宝石、童話に興味を持ち誰よりも琴姫を慕っていた。
「本当に美姫、お祖母ちゃんのこと好きね。」
美姫の母親は呆れるようにそう言う。それまで琴姫に懐く者がいなかったので、琴姫に異様に懐く美姫が意外だった。
「うん、お祖母ちゃんの話すお話凄く面白いもん!」
美姫は恐らく琴姫と同じ感性を持っていた。美姫が興味を示したのは童話だけでなく星座や宝石、琴姫の好きな物は全て興味を示していた。
「美姫、あれがおとめ座よ。」
「わあ、凄く綺麗~。」
「そうね。」
「お祖母ちゃんの指輪も凄く綺麗。」
「これはダイヤモンドっていう宝石でね、とても固い宝石なの。」
琴姫は美姫が興味を持ったものに対しては優しく、丁寧に教えていた。そしていつしか美姫はそれらの知識を琴姫と並ぶくらい持つようになっていた。
「本当飽きないよね、童話なんて。」
美姫が中学生になる頃、美姫の姉である咲姫は美姫をそう言ってからかっていた。その頃の美姫は童話の知識が豊富だっただけでなく、童話自体に憧れを持つようになっていた。
「だって憧れるじゃん、シンデレラなんて最後は王子様と結ばれるんだよ。ガラスの靴でシンデレラがお姫様だってわかってさ。私もいつかこんな出会いが出来たらなぁ。」
「あのねぇ、そういうのは小学校にも上がらない内にそんな訳ないって気付くものなの。それを中学生になってもそんなことを言って馬鹿みたい。」
咲姫はそう言って美姫をからかう。美姫は琴姫の影響を多大に受けており、そのロマンチックな考えは家族や学校でも少し浮いたものとなっていた。
「桜名さんってまだ童話とか読んでるんだって。」
「あいつお姫様みたいになりたいとか言ってるんだぜ。」
美姫に対して周りは少し冷たい視線を送っていた。それが美姫にとって辛かった。しかしそれでも祖母の琴姫だけは美姫に味方してくれた。
「お祖母ちゃん、私って変なのかな?」
「そんなことないわ、童話は決して美姫を裏切ったりしない。シンデレラだって継母の家族からいじめられて辛い目に遭っても最後には王子様と結ばれたじゃない。きっと美姫には幸せが訪れるわ。」
「本当?嬉しい。」
美姫は嬉しくなって琴姫に抱き着く。当時の美姫にとって琴姫が唯一の心の拠り所であり、琴姫といる時だけが美姫にとって幸せな時だった。そんな美姫に転機が訪れたのは高校生の時だった。
「桜名さん、お祖母ちゃんの容態が急変したって今お母さんから連絡があったの。」
「え⁉」
当時の担任の先生からそう受けた美姫は慌てて学校を飛び出し、琴姫の入院している病院まで向かった。
「お祖母ちゃん!」
美姫が病室に着いた時、琴姫はベッドに苦しみながら横たわっていた。琴姫は美姫が高校に入学した頃から体が弱っていたのだ。
「お祖母ちゃん、お祖母ちゃん!」
美姫は必死に琴姫に話し掛ける。そして琴姫は蚊の鳴くような細い声で美姫に話し掛ける。
「美姫、あなたは私にとって自慢の孫よ。」
「うん…、うん。」
美姫は琴姫の言葉に涙を流してしまう。そして琴姫は最後の力を振り絞って美姫に語り掛ける。
「美姫、あなたは自分の好きなものをちゃんと信じなさい。そして自分の好きなように生きなさい。そうすれば幸せがちゃんと来るから。」
そう言って琴姫は静かに息を引き取る。
「お祖母ちゃ~ん!」
美姫の泣き叫ぶ声が病室に響き渡る。こうして美姫は最愛の祖母、琴姫と別れを告げることとなったのだ。
琴姫を亡くしてからの美姫は著しく口数が少なくなっていた。それまでは大好きだった星座や宝石、そして童話にも全く興味を示さなくなっていた。
「美姫、大丈夫?」
美姫の母親が心配して話し掛けるが、美姫は何も答えなかった。その元気のない様子に、周りは心配を覚えるしかなかった。
ある日、桜名家ではある相談が行われていた。それは琴姫が常に身に付けていたダイヤモンドの指輪をどうするかということだった。
「もうお祖母ちゃんもいないし、この指輪も売りに出す?」
「そうだな、お袋には悪いがこの指輪はもう…。」
美姫の両親が琴姫の指輪を売りに出すことを決めかけた時、それを聞いていた美姫は大きな声で叫ぶ。
「ダメ!」
「え、何?」
美姫の母親は思わずその声量に驚いてしまう。それは口数が少なく、更に声を張ることも無くなっていた美姫の久し振りに聞く声だったからだ。
「これはお祖母ちゃんがずっと大事にしていた指輪なの!売りに出すのなら私がもらう!」
美姫は強い眼差しでそう言う。その気持ちに負けた美姫の両親は美姫に指輪を渡すことを決めるのだった。
「お祖母ちゃん、この指輪をずっと大事にするからね。」
美姫はダイヤモンドの指輪を嵌めた左手を握り締め、そう誓うのだった。
「何か、私もお祖母ちゃんのことを思い出しちゃった。」
シンデレーザーは倒れ込むアラジンザスカイに銃口を向けながらそう話す。
「お祖母ちゃんはとてもロマンチックな人だったなぁ。だから私もお祖母ちゃんの好きな童話も、星座も宝石も大好きになった。」
「そうですか、それであなたが強い理由がわかりました。エメラルディア様も戦士として尊敬していた琴姫様の思いを受け継いでいるのですからね。」
アラジンザスカイはそう悟ると、立ち上がってリーナの姿に戻る。
「桜名美姫。」
「…うん。」
シンデレーザーもリーナの気持ちを汲み取り、美姫の姿に戻る。そしてリーナは美姫に向かって頭を下げる。
「決して執拗に戦いを強要するつもりはありません。エメラルディア様の意向に従わなくてもいいです。しかし私達に力をお貸し下さい。」
美姫はそのリーナの言葉に強い思いを感じていた。そして美姫はリーナを抱き締める。
「私ね、ホロテイルジュには感謝してるんだ。お祖母ちゃんが私に遺してくれた星座と宝石と童話で世界も守ることが出来るから。だから私もお祖母ちゃんが断念したことを成し遂げたい。優しい気持ちでこの力を使って、ダークストーリーズを倒してこの世界を守りたい。」
「…はい!」
リーナは涙を流し、美姫と抱き合う。そしてそれに感動した風布花と実は駆け寄って抱き着く。
「美姫さ~ん!」
「リ~ナ~!」
風布花と実も思わずもらい泣きしてしまう。そしてリーナはエメラルディアの元に行き、再び頭を下げる。
「エメラルディア様、桜名美姫よりも強くなることが出来ませんでした。」
「…ああ。」
エメラルディアは決してリーナを責めなかった。それは自身の責任でもあると感じていたからだ。
「俺が姉さんを超える戦士を育てられる訳がなかったんだ。それなのに未来あるお前を戦士にしたのは全て俺の責任だ。おれの方こそすまなかった。」
エメラルディアはそう言ってリーナに頭を下げる。エメラルディアも美姫とリーナの戦いを見て心を動かされたようだった。エメラルディアは美姫に歩み寄る。
「美姫、やはり自分の生活や日常を大切にした方がいいな。これから宜しく頼む。」
「はい。」
美姫はエメラルディアと和解することが出来たと嬉しく感じる。そんな時、アラモードがあることを思い出す。
「そう言えば、剣二さん達遅いなぁ。」
「言われてみれば遅いですね。」
アラモードが気になっていたのはダークストーリーズと戦いに赴いた桃井剣二達が一向に戻って来ないことだった。そして竹月もそれに同意する。
「恐らく幹部が相手になっているのでしょう。」
リーナは剣二達が幹部相手に苦戦していると考える。そして美姫はリーナに問い掛ける。
「リーナ、結構激しい戦いの後だけど、どうする?」
美姫の問いに、リーナは一瞬考え込むと決心したかのように顔を上げ美姫の方を向く。
「私は、力を失うその瞬間まで戦士で在り続けたいです。今度は一緒に戦って下さい。」
「わかった。」
リーナの眼差しから本気を感じ取った美姫は共に戦いに赴くことを決めるのだった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
カイザードに未だ苦戦するキルビーレオン達。
「さてと、あなた方にしては粘った方でしょう。ここで止めと行きましょう。」
倒れ込む皆に止めを刺そうとするカイザードだったが、そこに美姫とリーナが現れる。
「カイザード、そこまでだよ。」
「これ以上好きにはさせません!」
美姫とリーナはカイザードを睨み付け、そして深呼吸をする。
「行くよ、リーナ!」
「畏まりました!」
二人は互いにそう言うと同時に本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
二人がそう叫ぶと空が暗くなり、おとめ座とてんびん座が浮かび上がる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来て!」
「来るのです!」
二人がそう叫ぶと二つの星座の最輝星が光を放ち、二人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、二人の体を包む。やがて二人の体が光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「シンデレーザー!」
「アラジンザスカイ!」
二人はそれぞれ名乗り、カイザードに向かって勢いよく走り出す。
「「はぁぁ!」」
シンデレーザーとアラジンザスカイの二人は鏡合わせのような動きでカイザードを翻弄する。
「くっっ…!やはりあなた方の方が手応えがありますね。」
カイザードはシンデレーザーとアラジンザスカイの猛攻に微笑む。
「その減らず口、二度と叩けなくしてあげる!」
シンデレーザーはカイザードにそう言い放つ。
「美姫、リーナ…。」
「決着はついたみたいだね。」
キルビーレオン達はそれぞれ元の姿に戻る。そして剣二と輝弓は美姫とリーナの息の合った連携攻撃に安堵の気持ちを覚える。
「剣二さん、皆さん!」
「大丈夫ですか?」
シンデレーザーとアラジンザスカイの戦いを見守る剣二達の元にアラモード、竹月、風布花、実が駆け付ける。そして竹月と風布花が
「うん…。」
「なんとかね。」
夜衣魚と林檎が少し苦しみながらそう答える。剣二達五人はカイザードとの戦いでかなり消耗していた。
「あいつら、どっちが勝った?」
剣二はふと美姫とリーナの戦いの行方について尋ねる。そしてその問いに竹月が答える。
「美姫さんの圧勝です。」
「…そうか。」
剣二はそう言って深く頷く。すると実が割って入るように話し掛ける。
「でも、これでエメラルディア様も考え直してくれたよ。もう無理強いさせるようなことをしないって。」
「それじゃあ、これでホロテイルジュがみんな揃って戦えるってこと?」
「ああ、しかしリーナにはもう時間がないがな。」
実の言葉に、輝弓も依斧も喜ぶ。しかしそれでもリーナが戦士の資格を失う事実に変わりはなかった。
「リーナは今、戦士として精一杯戦っているんだ。エメラルディア様に戦士として育ててもらった今までの人生に未練がないようにな。」
剣二は戦うアラジンザスカイの様子を見てそう感じ取る。それを理由にシンデレーザーとアラジンザスカイの攻撃は剣二達でも歯が立たなかったカイザードに隙を与えず攻め立てていた。
「これがホロテイルジュの本気、嘗て私達の前に初めて姿を現わした頃のホロテイルジュを思い出します。しかし!」
カイザードはシンデレーザーとアラジンザスカイの強さに感心するがそれでも勝利を譲るつもりはなく、カイザードは全身から強力なオーラを発する。
「はぁぁ!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」
カイザードの発するオーラでシンデレーザーとアラジンザスカイは吹き飛ばされてしまう。
「ここで敗れる訳には行かないのですよ!」
カイザードはいつにない本気を見せる。しかしシンデレーザーとアラジンザスカイも本気なのは一緒だった。
「私達も負けられないの!」
「必ずダークストーリーズを倒して、世界を守ります!」
二人はそう言うと同時に腰のレーザー銃を取り出し、カイザードに向けて力を込める。
「レーザーストライク!」
「アラジンザストライク!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
カイザードは二人の攻撃を受け、大きなダメージを負ってしまう。するとそんな時、カイザードの元にロバーズが現れる。
「お一人じゃ厳しいでしょう、カイザード先輩。」
「いいところに来ましたロバーズ、力を貸しなさい。」
カイザードはロバーズを心強く感じる。そしてロバーズはナイフを取り出しシンデレーザーとアラジンザスカイに向ける。
「ギジュ…。」
「終わりだ、美姫。」
ロバーズに警戒するシンデレーザー。しかしそんな時、パンドラスが凄まじい剣幕で駆けつける。
「ロバーズから離れろ、カイザード!」
「パンドラス?」
パンドラスの言葉に首を傾げるカイザードたったが、その瞬間ロバーズのナイフはカイザードの胸元を突き刺す。
「先に終わるのは貴様だ、カイザード!」
「ロバーズ…。」
カイザードは突然のロバーズの裏切りに戸惑いながら消滅してしまう。そしてその光景はその場にいた全員が目を見張った。パンドラスはロバーズに叫ぶ。
「やっぱ最初からダークストーリーズを乗っ取るつもりだったのか、ロバーズ!」
「今更気付きましたか、しかしもう遅い!」
しかしロバーズは毅然とした態度で答えていた。そしてロバーズは話を続ける。
「私はダークストーリーズにとても魅力を感じました。だってこの世界の全てを己のシナリオの登場人物に出来るのだから!そして私は決めました、この力を自分だけのものにすると!」
そう叫ぶロバーズの目は人とは思えないほど狂気に満ちていた。そしてロバーズはシンデレーザー達の方を向く。
「ホロテイルジュ!いずれ貴様らを倒し、この世界を俺だけの物にしてやる!」
そう言ってロバーズはシンデレーザー達の元を去る。
「待ちなさいロバーズ!」
アラジンザスカイは慌ててロバーズを追いかけようとするが、胸に苦しさを覚えてリーナの姿に戻ってしまう。
「くっっ…。」
「大丈夫リーナ?」
実はリーナの元に駆け寄る。そしてシンデレーザーも美姫の姿に戻る。
「ギジュ…。」
美姫は嘗ての恋人である義重との決戦を覚悟し、その場に佇むのだった。




