第三十話 ペリドットの行方
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。鈴木林檎から戦い以外の日常の重要性を説かれたリーナ・ジーニアスと実・ファンタジアはある日、戦い以外の日常に触れようとデートに出掛ける。そして二人は平和な日常を送ることを夢見るようになり、戦いに対する考え方が変わりつつあった。一方、ダークストーリーズの幹部ロバーズは傷ついたフックガンに突然ナイフを突き刺し、消滅させてしまうのだった。
ある日、リーナ・ジーニアス、実・ファンタジア、桃井剣二、浦賀輝弓、金山依斧の五人はエメラルディアの前に立っていた。
「…本気なのか?」
「はい。」
エメラルディアはリーナと実を睨み付け尋ねる。そしてリーナは真剣な眼差しで答える。その真剣な眼差しは実も同じだった。
「彼女らは本気です。どうかわかって下さい。」
剣二もエメラルディアに懇願する。しかしエメラルディアは未だ顔を顰めていた。
「もういい、頭を冷やせ。」
エメラルディアは呆れたような表情を浮かべ、五人を部屋から追い出すのだった。
剣二達五人は洋館に集まり、揃って頭を悩ませていた。
「どうすればエメラルディア様にわかってもらうことが出来るのでしょうか?」
リーナはそう呟く。それには他の皆も同じ気持ちだった。
「あの人は昔の厳しい戦いを経験しているから意固地になっているんだよ。」
輝弓はリーナにそう答える。そして皆は引き続き俯いてしまうのだった。
リーナと実は先日のデートで今まで知り得なかった平和な日常というものに触れ、世界を守るという目的を改めて明確にした。それと同時に美姫達が仕事や学校と両立して戦っていることに共感を覚え、エメラルディアに美姫達への戦いの強要を止めるよう説得することを決めたのだ。しかしエメラルディアは頑として考えを変えることはなかった。
「はぁ~、エメラルディア様もすっかり外の世界に行かなくなっちゃったからダークストーリーズを倒すことしか頭になくなっちゃったんだねぇ~。」
実はエメラルディアが意固地になっているという輝弓の考えに同意する。その言葉に輝弓は嬉しくなる。
「おぉ~、君からその言葉を聞ける日が来るとは。お兄ちゃんは嬉しいよ実ちゃん。」
「黙れ後輩。」
輝弓は実と距離を縮めるようなことを言うが、実は冷たく突き放す。
「とにかく、俺達は美姫さん達がまた戻って来られるようにエメラルディア様への説得と美姫さん達のサポートを続けるしかない。」
依斧も自身の考えを述べる。そして剣二も同意する。
「ああ、美姫は必ず俺達に手を貸してくれる、だからいつでも美姫がホロテイルジュに戻れるようにしよう。」
剣二の言葉で、皆は気持ちを固める。すると突然洋館の部屋の扉が開く。
「誰だ?」
剣二が警戒すると、そこに現れたのは美姫だった。
「あ、みんなそこにいたんだ。」
「「美姫さん。」」
皆は美姫が来たことに軽く驚くのだった。
一方、ダークストーリーズではカイザードがフックガンの死を悔いていた。
「フックガン、あんなに信頼の置ける幹部までもがホロテイルジュに敗れるとは。」
そう言いながら俯くカイザードにロバーズがそっと寄り添う。
「元気を出して下さいカイザード先輩、それではあの人も浮かばれません。」
「そうですね、彼もママーハハ様の立派な肥やしとなったことでしょう。」
ロバーズの言葉でカイザードは少し元気を出す。しかしフックガンを手に掛けたのがロバーズであることをカイザードは知る由もなかった。
「しょうがねぇ、フックガンの仇討ちにでも行ってやるよ。」
パンドラスはそう言って人間界に赴く。しかしパンドラスはフックガンの死に違和感を抱いていた。
皆に見つめられながら洋館の椅子に座り込む美姫。そして美姫は恐る恐るリーナに話し掛ける。
「あ、あのさリーナ。」
「桜名美姫、その前に一つ宜しいですか?」
美姫が話を切り出すより先に、リーナが美姫に何か話そうとする。
「あ、うん。何?」
美姫はリーナに恐る恐る用件を尋ねる。リーナは会ってからずっと睨み付けるような視線を送っていたため、美姫は何を言われるのか不安だった。
「そちらの都合も考えず、戦いを押し付けるようなことを言って申し訳ありませんでした。」
「…え?」
美姫はリーナの思わぬ言葉に動揺を隠せない。
「今まで私達はあなた方がホロテイルジュの戦士であるということで、戦いに身を捧げるというのが当たり前になっていました。しかし先日この世界にじっくりと触れた際、皆がそれぞれの生活を持っているということがわかりました。本当に申し訳ございません。」
「ああ…、うん。わかってもらえたんだね。」
美姫はリーナと実が考えを改めたことを嬉しく感じる。
「それで俺達、エメラルディア様を改めて説得しようとしたんですけど、やっぱりダメで…。」
輝弓は未だエメラルディアの説得に苦戦していることを明かす。
「そっか。まあダークストーリーズとの決戦の時は近づいているんだし、その時まで私達も準備をしておくから。」
美姫は皆にそう答える。美姫達もダークストーリーズとの戦いを見据えていた。
「それで、あなたの用件は何ですか?」
「ああ、そうだった。」
美姫はリーナに用件を尋ねられて思い出し、慌てて改まる。
「実はね、リーナのペリドットの資格のことなんだけど…。」
「…はい。」
美姫が話そうとしていたのはリーナのペリドットの資格のことだった。ペリドットの指輪が美姫の体に反応したことにより、リーナからペリドットの資格が離れつつあった。そのことにリーナは焦りを感じていた。
「もしペリドットが強い人を選んでいるんだとしたら、その…。」
「もしかして、リーナがあんたより強いって証明できたら資格の譲渡なんて行われないってこと?」
実は美姫の気持ちを言いたいことを察する。しかしそれは美姫が発する言葉としては珍しいことだった。
「美姫、それじゃあリーナと勝負するということか?」
剣二は美姫にそう尋ねる。そして美姫は言葉を詰まらせながら答える。
「…うん、リーナさえ良ければ。」
美姫の言葉で、皆は同時にリーナの方を向く。しかしリーナは反応に困っている様子だった。
「あの、少し外の空気に当たって来ていいですか?」
リーナはそう言って洋館を出る。
「リーナ待って。」
実もリーナを追いかけるように洋館を出る。そして剣二は美姫にふと尋ねる。
「お前が思いついたのか?」
「いや、アラモードちゃんの受け売りなんだけど。」
「ああ、なるほどね。」
「あいつなら考えそうだな。」
剣二は今回のことを美姫が考えたのかと思っていたが、双見アラモードが考えたと知り輝弓も依斧も納得する。そして美姫は話を続ける。
「うん、私は少しどうかなと思ったんだけどね。リーナの気持ちもあるし。」
美姫はリーナの気持ちに一任しようとする。それは剣二達も同じだった。
リーナと実は洋館を出て、街中を歩いていた。実はふとリーナに話し掛ける。
「リーナ。」
「…はい。」
「前のリーナだったら、多分迷わず戦おうとしたよね。」
実の言葉はリーナの心に突き刺さるようだった。リーナは美姫と戦うことに対して複雑な心境にあった。
「今の私は、桜名美姫と戦って勝てる自信などありません。彼女は琴姫様の血を受け継ぐ存在、現に複数の星座や童話の力を引き出しています。それにそこまでして、もう戦士でいる意義も見出せません。」
リーナは普通の日常に触れ、戦士であることへの拘りを失っていた。
「じゃあもう戦うの辞める?私ならリーナの分まで戦うよ。」
実はリーナの気持ちを汲み取りリーナに戦いを辞めることも勧めるが、リーナはその決断もできなかった。
「いえ、私も今まで戦士として育って来た身、資格を手放すとなると少し…。」
リーナは潔く美姫にペリドットの資格を渡すことも出来なかった。
「しばらく考えたらいいよ。私はずっとリーナと一緒だから。」
実はそう言ってリーナに抱き着く。
「ありがとうございます、実。」
リーナは実の気持ちを嬉しく感じる。しかしそんな二人の元に突然パンドラスが現れる。
「何だ、お前らか。」
「あなたは、パンドラス!」
「あんたこそ、何の用?」
リーナと実はパンドラスと互いに睨み合う。
「ふん、俺だってダークストーリーズの幹部なんだ。やることはキッチリやらせてもらうぜ。」
パンドラスはそう言って戦いの姿勢を取る。
「私達もやっちゃおう、リーナ。」
「ええ、実。」
リーナと実も戦いの姿勢を整え、本を開く。
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
二人はそれぞれ叫び、アラジンザスカイとピーターシザーズへとその姿を変える。
「「はぁぁ!」」
二人はパンドラスに同時に蹴りを入れ込む。しかしパンドラスは寸前のところで避けてしまう。
「もう!また逃げるつもり?」
ピーターシザーズは攻撃を避けるパンドラスに苛立ってしまう。
「ならばこれはどうですか?」
アラジンザスカイはそう言うと本を開き、魔法の絨毯を召喚する。そして絨毯に乗るとパンドラス目掛けて突っ込む。
「うぉっ、あぶねっ!」
パンドラスはアラジンザスカイの攻撃を寸前のところで交わす。しかしその隙にピーターシザーズはパンドラスを鋏で挟み込む。
「捕まえた!」
「何⁉」
驚くパンドラスに間髪入れずピーターシザーズはパンドラスを投げ飛ばす。ダメージを受けたパンドラスはアラジンザスカイとピーターシザーズの二人に両手を見せる。
「ちょっとタンマ、タンマ!」
「はぁ?もしかして命乞い?」
「こんなの聞く必要はありません。」
二人はパンドラスに聞く耳を持たず攻撃しようとするが、パンドラスはそれでも必死に止めようとする。
「待てって!ちょっと聞きたいことがあんだよ。」
パンドラスに必死の抗議に、漸く二人は攻撃の手を止める。
「もう、何の真似?」
「用があるならさっさと話してもらえますか?」
二人は呆れるようにパンドラスを睨み付けながらそう言う。そしてパンドラスは話を始める。
「なぁ、お前らこの間フックガンと戦ったんだよな?お前らがフックガンの奴をやったのか?」
パンドラスが気になっていたのはフックガンのことだった。フックガンは荒々しいが計算高いのですぐに倒されるような幹部ではないとパンドラスは考えていたので、フックガンの死に違和感を覚えていたのだ。そして二人は答える。
「はぁ?フックガンは尻尾を巻いて逃げただけだし。」
「それで、何が言いたいのです?」
「そうか…。」
パンドラスはフックガンがホロテイルジュの戦士に倒されたわけではないとわかると、立ち上がる。
「悪いが戦いはここまでだ、俺はここで退かせてもらうぜ。」
パンドラスはそう言って二人に背を向ける。しかしそこに双見アラモードと三浦竹月が現れる。
「パンドラス、今日こそお縄を頂戴させて頂きます。」
「いい加減にしてくれないと鬱陶しいんだよね。」
竹月とアラモードはそう言うと同時に本を開く。
「ふたご座!オパール!ヘンゼルとグレーテル!」
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
二人はそう叫ぶと、それぞれツインスウィーテスとフルムーンハイヤーへとその姿を変える。
「ちっ、ここまで増えたら分が悪いな。気合が入ってるところ悪いが退散させてもらうぜ。」
パンドラスはそう言うと高速でツインスウィーテスとフルムーンハイヤーの間を横切り、人間界を去るのだった。パンドラスを逃がしたツインスウィーテス、フルムーンハイヤー、アラジンザスカイ、ピーターシザーズは元の姿に戻る。
「あ~あ、逃がしちゃった。」
アラモードは呑気にパンドラスが去った方向を見上げる。そして竹月はリーナと実の元に歩み寄る。
「リーナさん、実さん、大丈夫ですか?」
竹月は二人を心配する。しかしリーナは竹月が自身を心配してくれることが意外だった。
「私を心配してくれているのですか?私はあなたの日常を壊すような真似をしたというのに。」
リーナは以前竹月の学校に押しかけ、授業を妨害したことを申し訳なく感じていた。しかし竹月はリーナを責める様子がなかった。
「お気になさらないで下さい、戦士の資格を失うことに焦っているということは美姫さんからお伺い致しました。」
竹月はリーナの事情を汲み取っていた。そしてアラモードもリーナに話し掛ける。
「それで、美姫さんより強くなれば戦士の資格を失わずに済むかも知れないってことは聞いた?」
「ええ、つい先ほど聞きました。」
リーナはアラモードにそう答える。リーナは丁度そのことについて悩んでいたところだったので少し心に突き刺さる感覚だった。
「あれさ、私が考えたんだ。」
「はぁ?あんたが考えたことだったの?」
実はリーナが美姫より強くなることをアラモードが提案したということを知り、苛立ちを覚える。
「あんたのせいでリーナが悩んでるじゃん、どうしてくれんの?」
実はそう言ってアラモードの胸ぐらを掴む。しかしアラモードは動じる様子などなかった。
「悩んでるんだ、てっきり美姫さんを倒すくらいの勢いかと思ってたのに。」
アラモードは皮肉を言う。
「あんたねぇ…!」
実は更に苛立ちを覚えるが、リーナは図星を突かれて何も言えなかった。そんなリーナの様子を見て、竹月は嬉しくなっていた。
「リーナさん、私達が大事にしようとしている日常というものを理解して下さったのですね。」
「…ええ。」
竹月はリーナが自分達の主張に理解を示してくれたことが嬉しかった。
「リーナさんがこれからも戦士であり続けるかどうかはご自身でお決め下さい。しかし、今の優しさがあればきっとこの世界を守るがことが出来ますし、私達はいくらでも手を貸します。」
竹月はそう言ってリーナに手を差し伸べる。そしてリーナは竹月の手を握る。そしてリーナは決意を固めるのだった。
ダークストーリーズに戻ったパンドラスに、カイザードが話し掛ける。
「またホロテイルジュと無駄な戦闘をしただけですか?」
「ほっとけ。」
カイザードはパンドラスを責めるが、パンドラスはそれを疎ましく感じる。そしてパンドラスはふとカイザードに尋ねる。
「なぁ、ロバーズの野郎はいつからママーハハ様直属の幹部になりやがった?」
「彼なら出会った頃に私がその熱意を買い、ママーハハ様直属の幹部にしたのです。」
カイザードはロバーズをママーハハ直属の幹部にした経緯を話す。しかしパンドラスはそれが納得できなかった。
「俺達はダークストーリーズが誕生した時からの仲だ、少なくともあんなぽっと出の元人間よりかは信用してもらえると思ったんだがなぁ。」
「それを言いたいなら行動で示して欲しかったものです。」
カイザードは吐き捨てるようにそう答え、人間界へと赴く。
「いずれにしろ、ダークストーリーズの命運は近い内に決まります。」
カイザードは最後にパンドラスにそう言うのだった。
数日後、エメラルディアが住まう空間の中の草原のようなところで美姫とリーナは向かい合っていた。
「覚悟を決めてくれたんだね、リーナ。」
「ええ、やはり私は戦士でありたいです。強く、優しいホロテイルジュの戦士として。」
「わかった。」
リーナはホロテイルジュの戦士として足掻くことを決めたのだった。そして実、剣二、輝弓、依斧、林檎、アラモード、竹月、水原夜衣魚、赤園風布花が見守る中、美姫とリーナは同時に本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
二人がそう叫ぶと空が暗くなり、おとめ座とてんびん座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来て!」
「来るのです!」
二人がそう叫ぶと二つの星座の最輝星が光を放ち、二人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、二人の体を包む。やがて二人の体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「シンデレーザー!」
「アラジンザスカイ!」
二人は名乗り、それぞれレーザー銃を手に取る。そして荘厳な雰囲気の中睨み合い、互いに銃口を向ける。そして同時にレーザー光線を放つと華麗に互いの光線を避ける。
「「はぁぁ!」」
二人は勢いよく走り出し、肉弾戦を始める。二人の素早い拳や蹴りが激しくぶつかり合う。
「リーナ、悪いけど手加減はしないよ。本当に戦士でありたいのなら、全力で応える!」
「それが本望です、私はペリドットの指輪に再び認めてもらえるような立派な戦士になります!」
シンデレーザーとアラジンザスカイは戦いながらそう言葉を交わし、互いの本気を確かめる。
「美姫さん、今までにないくらい凄い。あれ大丈夫かな?」
「私も、とても心配です。」
夜衣魚と風布花はシンデレーザーの激しい戦いに心配する。
「きっと大丈夫、私達はしっかり見守ろう。」
林檎はそう二人に言い聞かせ、皆は再び黙って戦いを見守る。
「リーナ…。」
実は必死に祈っていた。その様子を見た剣二が優しく話し掛ける。
「実、何を祈っている?」
「えっと、リーナが勝つように…。いや、リーナが無事でありますようにって。」
リーナがこれからも戦士として戦えるようになることよりも、リーナが無事に戦いを終えることを祈っていた。それが前の実ならば思うはずのないことだとは実自身も感じていた。そしてアラジンザスカイはレーザー光線をまき散らすように放ち、シンデレーザーの前で爆発が起きる。
「きゃっ!」
「美姫さん!」
皆は思わず目を見張ったり目を覆ったりしてしまう。
「やまねこ座!ダイヤモンド!マレーン姫!」
しかしシンデレーザーはワイルドタイプになり、爆発した煙の中から飛び出してアラジンザスカイに飛び掛かる。
「ガルルルル…!」
唸り声と共にシンデレーザーは鋭い爪をアラジンザスカイに突き立てる。
「くっっ…!」
アラジンザスカイは苦戦しながらもなんとかシンデレーザーを引き剥がす。
「喰らいなさい!」
アラジンザスカイはそう叫んでレーザー銃をシンデレーザーに放つが、シンデレーザーは野性的且つアクロバティックな動きで避ける。そしてシンデレーザーは空高く跳び、アラジンザスカイに向かって急降下する。
「ウガァァァァァァァァ!」
シンデレーザーは鋭い爪でアラジンザスカイを引き裂く。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
アラジンザスカイは勢いよく吹き飛んでしまう。
「リーナ!」
実は思わず叫んでしまう。アラジンザスカイはシンデレーザーに対し劣勢となっていた。そして皆が固唾を飲んで戦いを見守る中、ダークストーリーズの出現を察知する。
「ダークストーリーズか?」
剣二はダークストーリーズの出現を察知し、目の色を変える。しかし未だシンデレーザーとアラジンザスカイの戦いは決着が着かずにいた。
「剣二さん、私達で行きましょう。美姫さん達は今大事な時ですし。」
「ああ、そうだな。」
夜衣魚は剣二にシンデレーザーとアラジンザスカイを戦いに集中させるためにダークストーリーズとの戦いに行くことを提案する。剣二もそれに同意し、剣二、輝弓、依斧、夜衣魚、林檎の五人で行くこととなる。
「ごめんみんな。」
「安心して下さい美姫さん。」
申し訳なく思う美姫に、林檎はそう言って励ましダークストーリーズの元に赴くのだった。
剣二達五人が駆けつけた先では、カイザードがマリスを従えて暴れていた。
「そこまでだ、カイザード。」
「おやおや、あなた方だけですか?」
カイザードは剣二達を下に見るように嫌味を言う。
「ちょっと、私達を舐めないでよね!」
夜衣魚が反発するようにそう言うと、五人は一斉に本を開く。
「しし座!ルビー!桃太郎!」
「みずがめ座!サファイア!浦島太郎!」
「おうし座!シトリン!金太郎!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
五人がそう叫ぶと空が暗くなり、五つの星座が浮かび上がる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来い!」
「来な!」
「来るんだ!」
「来ちゃって!」
「来なさい!」
五人がそう叫ぶとそれぞれの星座の最輝星が光を放ち、五人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、五人の体を包む。やがて五人の体が光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「キルビーレオン!」
「サファイアロード!」
「アックシトリナー!」
「マーメイデスト!」
「ポイズノーム!」
五人はそれぞれ名乗り、カイザードとマリスに立ち向かう。
「出て来い!」
キルビーレオンは本を開き犬、猿、雉を召喚する。そして三匹を連れてカイザードに切り掛かる。
「カイザード!」
しかしカイザードはキルビーレオンの剣を軽々と受け止めてしまう。
「あなた如きが私に勝てるとお思いですか?」
「勝てるさ、俺が諦めない限りな!」
キルビーレオンはカイザードの嫌味に屈することなく果敢に立ち向かう。
「マーメイトライデント!」
「スコーピオンウィップ!」
マーメイデストとポイズノームはそれぞれ三又の槍と鞭を召喚し、振り回してマリスに攻撃する。一方サファイアロードとアックシトリナーはマリスに追い詰められ、背中合わせになる。
「結構厳しくなって来たね、戦い。」
「ああ、正直今の俺達では力が不足してしまう。」
二人は日々増していく戦いの厳しさを痛感していた。二人は複数の星座や童話の力を引き出せない分、戦闘力で補うしかなかった。しかしそれでは補い切れない現実に直面していたのだ。
「なぁ輝弓。」
「何?」
アックシトリナーはサファイアロードにふと尋ねる。
「お前、美姫さんとリーナとどっちに勝ってもらいたいと思っている?」
「う~ん、微妙!」
アックシトリナーの問いに、サファイアロードはそう答える。サファイアロードはシンデレーザーとアラジンザスカイの戦いに複雑な心境だった。そして二人は再びそれぞれの武器を握り締めマリスに立ち向かう。
一方、未だ激しい戦いを繰り広げるシンデレーザーとアラジンザスカイ。アラジンザスカイは動きを抑え、素早く動くシンデレーザー・ワイルドタイプの動きをなんとか見極める。
「そこです!」
アラジンザスカイはシンデレーザーになんとかレーザー銃を放つ。レーザー光線はシンデレーザーの前で再び爆発し、煙を立たせる。
「美姫さん!」
風布花が思わず叫んでしまう中、爆発の煙の中から声が聞こえる。
「つる座!ダイヤモンド!いばら姫!」
煙が消えた時、そこに立っていたのはシンデレーザー・エレガントタイプだった。
「何⁉」
アラジンザスカイは驚いてしまう。
「言ったでしょ、全力で行くって。」
シンデレーザーはそう言いながらゆっくりとアラジンザスカイに向かって歩き出す。そして姿勢を崩さない華麗な動きでアラジンザスカイを攻め立てる。
「ここまで戦いの手数が多いとは…。」
アラジンザスカイはシンデレーザーの能力の使い方に翻弄されてしまうのであった。




