第二十九話 二人きりの日常
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。美姫はホロテイルジュのトップであるエメラルディアから琴姫が自身を強く、そして優しい戦士にしようとしていた事実を知る。そしてその琴姫の思いを汲み取り、美姫は鈴木林檎と共に再びエメラルディアに従えない意向を決める。しかしリーナ・ジーニアスが戦士の資格をいずれ失うことでエメラルディアは焦っていた。その事実を知った林檎はリーナ、そして実・ファンタジアに戦い以外の生活の重要性を説く。その後、美姫は仕事中に襲われてしまう。戦う上で今の生活を続けられないとエメラルディアに言われる美姫だったが、それでも美姫は戦いと仕事を両立していくことを決めるのだった。
ある日、リーナ・ジーニアスと実・ファンタジアは共に街中を歩いていた。
「考えてみれば、リーナとデートなんて初めてかもね。」
「そうですね、ホロテイルジュに関する目的以外でこの世界に来たのは初めてかも知れません。」
実とリーナはそんな会話を交わす。二人はエメラルディアに拾われてから今まで戦いのことしか考えて来なったのだ。しかし林檎や竹月から守られる者の気持ちを考えていないと言われた二人はその気持ちを知るためエメラルディアのいる空間から人間界に赴いて来たのだ。
「それでは、何処に行きましょうか。」
リーナは実に尋ねる。街中でデートをしたことがない二人にとって右も左もわからない状態だった。
「ん~、こういうのはやっぱりカフェとかじゃない?」
「カフェ、ですか?」
実はカフェに行くことを勧める。
「私、いいところ知ってるから。」
実はそう言ってリーナの手を引き、走り出す。
「ちょっと実?」
リーナは困惑しながらも実と共に行くのだった。
「で、何で私のところに来るかなぁ!」
リーナと実が訪れたのは林檎が働くカフェであった。林檎は二人が来たことで顔をしかめる。
「だって知らない人だらけのところに行くのは気が引けるじゃん?」
「学校に押しかけたあんたが言うことかな…?」
実の言葉に、林檎は更に呆れてしまう。
「しかし、守るべき世界のことを知るべきだと言ったのはあなたです。」
「まあ、そうだけど…。」
リーナは林檎が言った言葉を出して説得する。林檎は理解をしていたものの、自身が働く店に知り合いが来ることが心許なかった。林檎は不本意ながらも店員として接客する。
「それにしても、戦い以外の姿を見るのは初めてですね。」
リーナはカフェの店員として働く林檎の姿を新鮮に感じる。そしてリーナと実の二人は話に花が咲く。
「そう言えばさ、林檎って果物だよね?」
「ええ、そうですね。」
「英語で何て言ったっけ?」
「Appleですね。」
「そうそう、アポーだよアポー!さっすがハーフ!」
「あまり関係ありません。これは独学で身に付けたものですから。」
二人は盛り上がるが、実の声は次第に大きくなっていた。
「あのーお客様、他のお客様のご迷惑になるので少々お静かにしてもらえませんか?」
林檎は二人に歩み寄り、不貞腐れたような言い方で注意する。
「ごめんごめん、アポーちゃん。」
「あ、アポーちゃん…?」
実は覚えたての言葉で林檎のことをアポーちゃんと言い、林檎は困惑してしまう。
「何~、あだ名で呼ぶなんて結構仲良くなってるじゃない?」
ふとカフェの店長がリーナと実の元に来る。実は以前にもカフェに来ているので、店長とは面識があった。
「いえ店長、仲は良くないです。」
林檎はキッパリとそう主張する。しかし店長は興味津々に話し掛ける。
「そう言えば、もう一人の子は初めて見るね。」
店長は初めて見るリーナを新鮮に感じる。
「なんか日本人っぽくないけど、外国の子なの?」
店長はリーナの少し日本人離れした顔立ちと褐色肌を珍しく感じ、尋ねる。そしてリーナは淡々と答える。
「私は日本と中東アジアのある国との混血、そう伺っています。」
「え、自分のこと詳しく知らないの…?」
店長はリーナの言葉に驚く。
「店長、ここはあまり深く切り込まない方が…。」
林檎はそう言って店長を店の奥に連れて行く。
「私、何かおかしなことを言ったのでしょうか?」
リーナは店長から言われたことを気にして実に問い掛ける。
「ん~、そんなことないでしょ。」
実は特に気にしない様子で答える。一方、店長は少し罪悪感を感じていた。
「悪いこと聞いちゃったかな?」
「気にしないで下さい。でも、あの二人はちょっと特殊みたいなので…。」
林檎は店長を庇いながらそう言う。
「それじゃあ、あの二人にコーヒーを持って行きますね。」
林檎はそう言ってコーヒーを運ぶ。
「お待たせしました、コーヒーです。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう、アポーちゃん。」
「だからアポーちゃんは…、まあいいか。」
林檎は実からアポーちゃんと呼ばれることに抵抗を感じていたが、取り敢えず気にしないことにする。
「さっきはごめんね、リーナ。」
「いえ、お構いなく。」
林檎は店長がデリケートなことを聞いたことをリーナに謝るが、リーナは林檎を庇うように答える。そして林檎は二人の元にコーヒーを置く。そして林檎はふと気になることを尋ねる。
「ところで、お金はあるの?」
林檎が気になっていたことは二人がお金を用意しているかどうかだった。以前実が訪れた際にはお金の存在すら心得ていなかったからだ。しかしリーナは落ち着いた様子で答える。
「問題ありません、浦賀輝弓からデート代なるものを頂きました。」
「輝弓から、じゃあ大丈夫だね。」
浦賀輝弓からお金を貰ったと受け、一先ず安心する。そして林檎は戻り、リーナと実は二人きりになり、コーヒーを嗜む。
「苦い、しかし落ち着きますね。」
「何か癖になるよね~、このコーヒーって飲み物。」
二人はコーヒーの味をすっかり気に入っていた。
「それに、このお店も落ち着きますね。」
「流石アポーちゃんの働いているお店だよね。」
「これが、戦いのない日常というものでしょうか。」
「そうかもね。」
二人はゆったりとした時を過ごし、日常というものを感じつつあった。
一方その頃、美姫は水原夜衣魚、双見アラモード、三浦竹月、赤園風布花の四人を呼んでエメラルディアから聞いたホロテイルジュの過去や祖母の琴姫のこと、そしてリーナがペリドットの資格を失うことを伝える。
「それがホロテイルジュの過去ですか…。」
夜衣魚はホロテイルジュの過去を知り、その内容の濃さに圧倒される。
「しかし結局、ホロテイルジュの力は不思議な力なのですね…。」
竹月はエメラルディアでも力の源について解明できていないことに軽く落胆する。
「それにしても、リーナさんがペリドットの資格を失うなんて、どうなっちゃうのでしょう?」
風布花はリーナのことも心配していた。しかしアラモードはある提案をする。
「ペリドットの指輪がリーナよりも美姫さんが強いって判断しているんだったら、リーナが美姫さんよりも強くなれば解決なんじゃないですか?」
アラモードはリーナがペリドットに美姫より強いと判断されることを提案する。しかし美姫はそれに首を傾げてしまう。
「ん~、それでいいのかな?」
美姫はリーナが戦士のままでいることに疑問を感じていた。
「まあそれは、リーナの気持ち次第じゃないですか?」
「そうだよね…。」
夜衣魚はリーナの気持ちに任せるしかないと感じる。美姫も、そうするしかないと感じるのだった。
リーナと実は林檎が働くカフェを出た後もデートを続けていた。次に二人が訪れたのはとある映画館だった。
「浦賀輝弓が言うには、映画とは大きな画面で見る映像作品だそうですね。」
「そう言ってたよね。そして、デートなら恋愛ものっていうのがいいみたいだね。」
リーナと実はそう言葉を交わし、輝弓からもらった映画のチケットを握り締めて映画館に入る。
「「うわぁ…。」」
二人は映画館に入ったはいいものの、その日は丁度話題作の公開初日であったために行列で溢れていた。その光景に目を見張る二人。
「これは、先ほど鈴木林檎から教わった並ぶという行為が必要になりますね。」
「アポーちゃん、いいこと教えるなぁ。」
二人はカフェを出る前に林檎から映画館で並ぶことを教わっていた。そして二人は映画を見ようと行列に並ぶのだった。
一方その頃、ダークストーリーズではカイザードがエメラルディアのことで思い悩んでいた。
「エメラルディアをなんとかせねば、ダークストーリーズに未来はない。」
カイザードはエメラルディアに苦戦続きになっていたことで、ダイヤレーザーとエメラルディアがいた以前のホロテイルジュを思い出していた。
「随分と抱え込んでいるみたいだな、カイザード。」
フックガンがカイザードに話し掛ける。そしてそこにロバーズも現れる。
「カイザード先輩、ここはフックガン先輩に任せたらどうですか?」
ロバーズはカイザードに、フックガンに侵攻を任せるよう勧める。
「しかし、またエメラルディアが現れたら…。」
カイザードはエメラルディアに遭遇した時のことを思い、躊躇ってしまう。
「何を躊躇っているのですか?ダークストーリーズの幹部として命を投げ出す覚悟なのは同じでしょう。」
ロバーズは微笑みながらカイザードを説得する。
「そうだぜカイザード、俺もそろそろ大海原が見えて来た。」
フックガンも人間界への侵攻に意気込み、人間界へ赴くのだった。
「ひゃ~、面白かった。」
映画を見終えたリーナと実は映画館を出る。実は映画館を出た瞬間、すっきりした表情で開口一番にそう言う。一方のリーナは涙を溢していた。
「うっ…、うっ…。」
ハンカチで涙を拭いながら歩くリーナ。
「そんなに感動した?リーナ。」
実はリーナに尋ねる。
「初めて味わう感動です。童話ともまた違った感動、映画とは何と素晴らしいものでしょう。」
リーナは泣きながらそう言う。
「じゃあリーナ、次は遊園地行こう。」
「そうですね。」
二人は次に遊園地に行こうとする。二人は輝弓から遊園地のチケットも貰っていたのだ。
「よーし、楽しんじゃうぞー!」
実はそう言って意気揚々にリーナの手を引き、走り出す。
「あ、ちょっと実?」
リーナは一瞬戸惑いながらも実と共に走るのだった。
「うっひょ~、風を感じる~!」
リーナと実は遊園地に行くなりまずはジェットコースターに乗る。二人共ジェットコースターに乗るのは初めてだったが、実は大丈夫なようでジェットコースターを楽しむ。しかしリーナはジェットコースターが苦手なようで、目を回してしまう。
「これは、恐くて気持ち悪いです~!」
ジェットコースターから降りることには、リーナは実に支えてもらわないと歩けないまでになっていた。
「やれやれ、リーナって意外と弱いんだね。」
「すみません、リーナ。」
実はリーナを抱えながらそう言う。
「よし、気を取り直して次はコーヒーカップだ!」
「え、またですか⁉」
実はそう言ってまらリーナの手を引いて走り出す。
「このくらいなら大丈夫でしょ?」
「はい、このくらいでしたら大丈夫です。」
リーナはコーヒーカップのゆったりとした動きで、漸くジェットコースターの酔いが落ち着く。そしてコーヒーカップを楽しむ二人だったが、実はふと家族連れを見つけ、少し黄昏れる。
「どうしたのですか?実。」
「え?いや、何でもないよリーナ。」
実は誤魔化すような態度を見せる。しかしリーナは実が今までに見せたことのない表情を心配してしまう。
「リーナ、買って来たよ。」
実はソフトクリームを二つ買い、リーナに与える。そして二人はベンチに腰かけ、共にソフトクリームを食べる。
「美味しいですね、実。」
「うん…。」
実は少し覇気のない返事をする。そして実はまた家族連れを見ていた。
「リーナ、あれがお父さんとお母さんってことなのかな?」
「恐らくそうでしょうね。」
実は大人の男女が一人の少女を間に挟み、手を繋いで歩いているところを見て男女が少女の両親だと感じていた。リーナもそれに同意する。しかしリーナはそれを訪ねて来た実を心配する。
「実も気になっているのですか?自分の両親のこと。」
「別にそういうわけじゃないけど…。」
リーナは実が両親を恋しく思っているのではないかと感じていた。実は両親と思しき男女がダークストーリーズによって惨殺される光景を残して、エメラルディアに拾われる以前の記憶を失っていた。
「私はリーナとエメラルディア様がいれば家族なんて関係ないと思ってたけど、何かああいうのを見ちゃうとちょっとね。」
実は普通の家族の在り方というものを羨ましく感じていた。それは実が初めて人間界をリーナと共に歩き、芽生えた感情だった。
「私達が守る世界って、こういうことなんだね。」
「恐らく、そういうことですね。」
実は何となくではあるが、戦うこと以外の正義の味方としての自覚が芽生えていた。そしてそれはリーナも一緒だった。
「よし、じゃあもう辛気臭いのは無しだよリーナ。」
「ええ、まだ乗っていないものもありますしね。行きましょう実。」
そして二人はまた気持ちを切り替え、遊園地デートを楽しむのだった。
リーナと実の二人が遊園地デート楽しむ中、フックガンは遊園地に潜んでいた。
「ったく、楽しそうな声が響いて悪意が全然見つかんねぇ。」
フックガンは遊園地で楽しむ人に囲まれマリスを産み出せずにいた。
「しょうがねぇ、他を当たるか。」
フックガンがそう言って遊園地を出ようとした時、ある男女が目に入る。
「もうあなたなんて知らない!」
「ちょっと待ってくれよ!」
フックガンが見つけたその男女は痴話喧嘩をしていたようだった。そして女性は男性を置いて遊園地を出る。
「そんな…。」
その女性に捨てられた男性は落胆したように膝をつく。
「俺が悪いんじゃないんだ、あいつが…。」
男性は破局の原因が女性の方にあると強く感じ、怒りを覚えていた。
「なるほど、これはいい悪意だな。」
フックガンはその男性の悪意を気に入り、男性に近づく。
「お前の悪意、気に入ったぜ。」
「な、何だお前?」
男性はフックガンの姿に困惑するが、フックガンは気にせずに男性の頭に手を翳す。
「現れろマリス!」
フックガンがそう叫ぶと男性を黒いオーラが包み、中からマリスが現れる。
「さあ大海原だ、暴れろマリス!」
フックガンがそう言うと、マリスは遊園地の中を暴れ始め、人々は混乱に陥るのだった。
一方その頃、リーナと実は観覧車に乗っていた。
「うわぁ~、いい眺め~。」
実は観覧車から覗く景色に興奮する。
「そうですね、とてもいい眺めです。」
リーナもそれに優しく同意する。そして実はふとあることを思い出す。
「そう言えばリーナ、さっき見た映画で乗ってる観覧車が真上に来た時にキスしてたよね。」
「そうでしたね、あれはとても感動しました。」
実が思い出したのは、先ほど見た映画でのキスシーンだった。そして実はリーナに尋ねる。
「やっぱり観覧車ってキスしやすいのかな?」
「ええ、観覧車が真上に来ると角度的に人に見られることはありませんから。」
リーナが実にそう答えると、二人はうっとりとした表情を浮かべる。そして二人が乗る観覧車はいつしか真上に来ていた。
「じゃあリーナ、私達もここでキスしていいのかな?」
実はそう言いながらリーナの隣に移動し、リーナの肩を抱く。
「ええ、今この瞬間は私達だけの時間です。」
リーナがそう答えると、二人は唇を近付け合う。しかし二人の唇が触れあおうとした瞬間、人々の悲鳴が聞こえる。
「きゃぁぁぁ!」
「え、何⁉」
「何があったのでしょう?」
二人は驚き窓を覗くと、マリスが暴れているところを目撃する。
「マリス⁉」
実はその光景に驚いてしまう。そしてリーナは真剣な目つきに変わる。
「行きましょう、実。」
「オッケー。」
実も目つきが変わり、二人は真上に来た観覧車の扉を開いて身を投げ出す。そして二人は落下しながら本を開く。
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
二人がそう叫ぶと空が暗くなり、てんびん座とかに座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来るのです!」
「来ちゃいな!」
二人がそう叫ぶと二つの星座の最輝星が光を放ち、二人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、二人の体を包む。やがて二人の体は光を放ち、二人は戦士へとその姿を変える。
「アラジンザスカイ!」
「ピーターシザーズ!」
二人はそれぞれ名乗る。そしてアラジンザスカイは再び本を開き、魔法の絨毯を召喚する。二人はそれに乗り、マリスの元へと飛ぶ。
「はぁぁ!」
「おりゃぁ!」
二人は絨毯からマリスに飛び掛かる。そしてマリスは消滅する。
「何だよ、お前らも来ていたのか。」
フックガンはアラジンザスカイとピーターシザーズの二人を見て、苛立ちを覚える。
「フックガン?」
「遊園地を荒らしてくれちゃって、ここが年貢の納め時って奴だよ。」
アラジンザスカイとピーターシザーズはそう言うとフックガンに立ち向かう。
「はぁぁ!」
アラジンザスカイは華麗な足技でフックガンを攻め立てる。
「かに座!」
ピーターシザーズはかに座の力で左手に大きな鋏を備え、フックガン目掛けて勢いよく振るう。しかしフックガンはいとも簡単に二人の攻撃を受け止めてしまう。
「何だお前ら、そんな攻撃が通じると思ったか?」
フックガンはそう言って二人を煽る。いつもならクールに返す二人だったが、この日は二人とも怒り狂うように返す。
「ふざけんじゃないっての!自分が今何をしているかわかってる?」
「あなたは人の心を癒す平和な一時を踏みにじっているのです。今ここで私達が粛清します!」
二人は怒りに身を任せるようにそう言い、フックガンを攻め立てる。その猛攻に、フックガンは手を出せなくなる。
「何だ?無茶苦茶な攻撃なのに全然隙がねぇ。一体どうなってやがる?」
「「平和を願う気持ち、舐めんな!」」
不思議に感じるフックガンに二人は叫ぶようにそう答え、ピーターシザーズは鋏でフックガンを頭上まで持ち上げる。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そしてピーターシザーズは本を開き、刀身の曲がった剣を召喚する。
「行きます!」
アラジンザスカイは再び魔法の絨毯を召喚し、空高く浮かび上がる。そして二人はそれぞれ構える。
「アラジンザストライク!」
「ピータースラッシュ!」
アラジンザスカイは空からレーザー銃を放ち、ピーターシザーズは剣でフックガンを切り裂く。
「うわぁぁぁぁぁ!」
フックガンはとてつもない衝撃を受け、ぼろぼろになって倒れ込む。
「くっっ…、今回はやられちまったな。」
そう言ってフックガンは人間界を去る。アラジンザスカイとピーターシザーズはそれぞれリーナと実の姿に戻る。
「リ~ナ~!」
実はフックガンに勝ったことが嬉しくなり、リーナに抱きつく。
「やりましたね、実。」
リーナもそう言って実を抱き締める。そして二人は疲労感を覚える。
「リーナ、もう疲れちゃった。」
「そうですね、もう帰りましょうか。」
そう言って二人は遊園地を出てエメラルディアの元に戻る。この時、二人は今までにない達成感を味わっていた。初めて味わった平和な日常、そしてそれを守った時に二人は改めて戦士としての自覚を得たのだった。
リーナと実に敗れ、ダークストーリーズの本拠地に戻るフックガン。
「くそ、あいつら強くなりやがって。おい、誰かいるか?」
フックガンは二人に敗れた悔しさを噛み締めながらそう言う。すると、その場にはロバーズのみがいた。
「あらあら、随分と派手にやられましたねフックガン先輩。」
「ロバーズか、丁度良い。ちょっと来てくれ。」
フックガンはロバーズに介抱してもらおうと呼ぶ。
「ええ、言われなくても。」
ロバーズは不気味な笑みを浮かべてフックガンに近づく。
「ちょっと手を貸してくれ。」
フックガンはロバーズにそう言う。しかしロバーズは懐からナイフを取り出す。
「あ?何だよそれ。」
フックガンはナイフを取り出したロバーズを不審に感じる。するとその瞬間、ロバーズはフックガンの胸にナイフを突き刺す。
「うっ!」
胸を刺されたフックガンは苦しんでしまう。しかしロバーズは尚も不気味な笑みを浮かべる。
「邪魔なんですよ、あなたは。」
「お前、最初からそれが目的か…。」
フックガンはその瞬間ロバーズの本性を感じ取っていた。しかし時は既に遅く、フックガンは消滅してしまう。
「さてと、幹部は残り三体か。」
ロバーズは陰のあるような表情を浮かべ、その場を去るのだった。
デートを楽しんだその日の夜、リーナと実はエメラルディアの元に戻る。エメラルディアは二人を睨み付けていた。
「今日は人間界に行っていたそうだな。」
エメラルディアは二人にそう問い掛ける。
「「はい…。」」
二人はエメラルディアに遊びに行くことを伝えていなかったため、怒られると思い警戒してしまう。しかしエメラルディアの反応は意外なものだった。
「それで、楽しかったか?」
「「え?」」
二人は驚いてしまう。エメラルディアも内心ではリーナと実に普通の人としていて欲しいと考えていたようだ。そしてリーナは答える。
「あの、もし私がペリドットの資格を失ったらああいう風に生きたいと思いました。」
リーナは今日のデートで戦士以外の生き方を見出していた。そしてそんなリーナの言葉にエメラルディアは優しく返す。
「そうか、そうなると良いな。」
エメラルディアのその優しい言葉に、リーナと実は嬉しくなっていた。
「「はい。」」
そして二人は満面の笑みを浮かべ、部屋に戻るのだった。
一方その頃、林檎は仕事を終えて美姫と夜衣魚とレストランで合流していた。
「それでリーナと実が林檎ちゃんのお店に来たんだ。」
美姫と夜衣魚は林檎からリーナと実のことを聞く。そして二人の心境に変化が訪れていたことを嬉しく感じていた。
「これで私達に対しての態度も変わるのかなぁ~。」
夜衣魚は二人に淡い期待を抱く。
「そうだといいね。」
林檎は夜衣魚に同意するようにそう言う。そして林檎はあることを思い出す。
「そう言えば美姫さん、前にリーナに風布花ちゃんとキスしそうなところを見られたそうですね。」
「え?」
林檎は細い目をして美姫に尋ねる。美姫は一瞬軽く動揺してしまう。
「いやぁ、それはなんというか風布花ちゃんがね…。」
美姫はなんとか答えるが、どうしても目が泳いでしまっていた。
「何ですか~美姫さん、また風布花ちゃんに誘われちゃいました?」
夜衣魚は美姫の様子を面白く感じてからかう。しかし林檎は少し呆れていた。
「しっかりして下さいよ美姫さん、風布花ちゃんが道を踏み外したら大変なのは美姫さんの方ですからね。」
「ごめん…。」
美姫は五歳も年下の林檎から叱られてしまうのだった。
そして部屋で一緒になるリーナと実。二人はベッドに座り観覧車でのことを思い出していた。
「じゃあリーナ、観覧車の続き。」
実はそう言って目を閉じ、唇を軽く突き出す。
「そうですね、実。」
リーナはそう言って実の顔を両手で軽く挟み、キスをする。そして二人は共に横たわる。
「戦いが終わったらさ、二人で一緒に人間界で暮らすってどう?」
「そうですね、私達はずっと一緒です。」
二人はベッドの上でそんな会話を交わす。そしてうっとりとした表情を浮かべ、朝まで愛し合うのだった。




