第二十六話 エメラルドの戦士、降臨
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。新たな幹部、ロバーズの登場によってダークストーリーズにより一層警戒するホロテイルジュ。一方の美姫はリーナ・ジーニアスと実・ファンタジアが孤児であった事実を知り、二人とわかり合おうと訪れるが二人はホロテイルジュの戦士としての生き方以外を受け入れられなかった。そんな中、またもダークストーリーズの幹部パンドラスが現れホロテイルジュと交戦するが、途中でロバーズが乱入、戦士達を圧倒してしまう。そんな中美姫が姿を変えた戦士シンデレーザーのみがなんとか善戦、しかしロバーズはシンデレーザーが美姫だとわかると人間の姿に戻る。その正体は嘗ての美姫の恋人、鴻野義重だった。
ロバーズとパンドラスが去った後、桜名美姫、桃井剣二、浦賀輝弓、金山依斧、水原夜衣魚、鈴木林檎、リーナ・ジーニアス、実・ファンタジアがいるその場には静寂が漂っていた。
「ギジュ、どうして…。」
美姫は嘗ての恋人である義重がダークストーリーズの幹部になったことにショックを受け、俯いてしまう。
「夜衣魚、あいつは美姫の…。」
「はい、確かにロバーズの正体は美姫さんの元カレです。」
剣二はロバーズの正体を夜衣魚に尋ね、美姫の元恋人だと知る。
「だとすると、美姫の奴は相当ショックを受けてるだろうな…。」
剣二は美姫の気持ちを察する。そして剣二達の横を美姫は俯きながら通り過ぎる。
「美姫。」
「ごめん、一人にさせて。」
剣二が話し掛けるが、美姫は悲しそうにそう言ってその場を後にするのだった。
「美姫さん…。」
夜衣魚も美姫を心配しながら見つめる。そして実はリーナの元に歩み寄る。リーナは戦いの中、何故か胸に苦しさを覚えて途中で元の姿に戻ってしまったのだ。
「大丈夫?リーナ。」
「大丈夫です。」
実はリーナを庇う。リーナは大丈夫だと言うが、未だにどこか苦しそうだった。
「取り敢えず、エメラルディア様のところに戻りましょう。」
リーナはそう言って実と共にその場を去る。
「剣二、俺達も戻ろうか。」
「そうしましょう、剣二さん。」
輝弓と依斧も剣二に戻るよう言い、三人もその場を去る。
「夜衣魚、私達も帰ろっか。」
「うん…。」
夜衣魚も美姫を心配するが、林檎に言われて一先ず帰ることにするのだった。
一方、ダークストーリーズの本拠地に戻ったパンドラスはカイザードに詰め寄るように尋ねていた。
「おい、ロバーズが人間だったなんて聞いてねぇぞ!何で人間がダークストーリーズに居やがる⁉」
パンドラスはロバーズの正体が人間だったことに衝撃を受けていた。
「あら、言っていませんでしたか?」
「聞いてるわけねぇだろ!」
平然と返すカイザードにパンドラスは腹を立ててしまう。そしてカイザードはロバーズについて語る。
「ロバーズはダークストーリーズに相応しい適性を持った人物、ただそれだけのことですよ。」
「はぁ?」
パンドラスはカイザードの言葉に疑問を感じる。人間がダークストーリーズになる事例など聞いたことがなかったからだ。するとそこにロバーズが現れる。
「まあまあパンドラス先輩、私は奇跡の存在だと思ってくれればいいですから。」
「何言ってんだてめぇ?」
パンドラスはロバーズの態度につくづく憎たらしさを感じていた。
「パンドラス、ロバーズが人間だろうと今は立派なダークストーリーズの幹部です。」
カイザードはパンドラスにそう諭す。しかしそれでもパンドラスはロバーズが受け入れられないのであった。
一方、リーナと実はエメラルディアに謁見していた。
「ロバーズが人間だと⁉」
エメラルディアはロバーズの正体に酷く驚く。
「やはり、前例はないのですか?人間がダークストーリーズの幹部になること。」
「ああ、これまでに聞いたことがない。」
エメラルディアはその事実に焦ってしまう。
「じゃあ、これから人間を幹部にして増やすってことも有り得る訳?」
実はそう言って警戒する。人間がダークストーリーズの幹部になるということは、即ち幹部を増やすことが可能であるからだ。そしてリーナはもう一つ、気に掛かっていることをエメラルディアに告げる。
「エメラルディア様、それと先程の戦いの途中で胸に苦しさを覚え元の姿に戻ってしまったのですが…。」
リーナが気に掛けていたのは戦いの途中で元の姿に戻ったことだった。エメラルディアはそれに対しても更に深刻な顔を浮かべる。
「そうか…、もう時間がないな。」
「どういうことですか?」
エメラルディアの言葉にリーナと実は疑問を感じる。そしてエメラルディアはゆっくりとリーナに起こった現象について語る。
「そんな…。」
リーナはエメラルディアから告げられた衝撃の事実にショックを隠せない。それは実も一緒だった。
「嫌だ、そんなの信じたくない!」
実はそう言ってエメラルディアの部屋を飛び出す。
「エメラルディア様、私はこれからどう致せば…?」
リーナは悲しそうな表情を浮かべながらエメラルディアに尋ねる。
「時が訪れるまでにダークストーリーズを倒す、それしか方法がない。」
「やはり、離脱した彼女らを一刻も早く引き入れなければ…!」
リーナは焦りを覚え、エメラルディアの部屋を飛び出すのだった。
数日後、夜衣魚と林檎は赤園風布花に会いロバーズの正体について教える。
「ロバーズが美姫さんの元恋人⁉」
風布花もロバーズの正体には酷く驚いていた。
「うん、前にデートしているところを見たことがあるからわかる。あれは確かに美姫さんの元カレだった。」
林檎がそう答えると、風布花は突然立ち上がる。
「美姫さんを振った挙句、ダークストーリーズの幹部になるなんて最低です!私、今からぶっ倒しに行きます!」
「うん風布花ちゃん、取り敢えず汚い言葉遣いを止めようね。」
林檎は興奮する風布花を宥める。
「それにしても、美姫さんが心配だなぁ…。」
夜衣魚はふと美姫を心配する。
「そうですね、元恋人が敵になったんですからね…。」
風布花も美姫の心境には気を配っていた。しかし夜衣魚も林檎もあれから美姫に連絡をつけられずにいた。
一方、美姫は会社で義重について調べていた。義重が所属していた部署や義重と交友関係にあった人物、更には義重の家族にまで尋ねるが、義重が退職した後の行方を知る者は誰一人としていなかった。
「ギジュ、親御さんにまで行方を晦ましていたなんて…。」
美姫は義重と別れてから連絡を全くしていなかったことを後悔してしまう。
「やっぱり、直接ギジュと話すしかないか…。」
美姫はそう言って次にロバーズが現れた時に戦いに行けるよう、身構えるのだった。
「それじゃあ三浦、前に出て黒板に書いてくれ。」
「はい。」
三浦竹月は数学の授業を受けており、教室の前に出て問題の方程式を書いていた。優等生の竹月にとって、方程式を解くことなど造作もないことだった。そんな最中、教室にアナウンスが入る。
「授業中に失礼します。学校に不審者が入りました。速やかに避難して下さい。」
「え、嘘⁉」
「不審者ってマジかよ!」
「みんな、避難するんだ!」
教室中は混乱に陥り、すぐに皆は教室から出ようとする。
「一体、何が起こったというのでしょう?」
竹月も不思議に感じるが、竹月の教室に入って来たのはリーナだった。
「見つけました、三浦竹月。」
「あなたが不審者でしたか、リーナさん。」
竹月は学校に不法侵入したのがリーナだとわかると、教室の皆に呼びかける。
「皆さん、私に構わず避難して下さい!」
「でも三浦さんは?」
「お気になさらないで下さい。」
クラスメイトは竹月を心配するが、竹月は微笑みながら答える。その竹月の笑顔を見たクラスメイト達は竹月を信じて教室から出る。皆を逃がした後、竹月はリーナを睨み付ける。
「正義の味方と自負しておきながらこんな野蛮なことをして、何をお考えですか?」
「時間がないのです、今すぐに下らない学業など捨てて来なさい!」
リーナの言葉に、竹月は怒りを覚える。
「今の言葉で漸くわかりました。あなたは正義の味方として、守られる側の立場を全く考えていません!」
竹月はそう言って、リーナと同時に本を開く。
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
二人は同時にそう叫んでそれぞれフルムーンハイヤーとアラジンザスカイに変わる。
「ここで戦えば学校が倒壊しますので今から場所を変えます。」
フルムーンハイヤーはそう言って教室の窓を開き、飛び出す。
「逃がしません!」
アラジンザスカイも窓から飛び出し、フルムーンハイヤーを追いかける。
「うさぎ座!」
フルムーンハイヤーはうさぎ座の力でジャンパータイプになり、高くジャンプしながら移動する。
「出なさい!」
アラジンザスカイは魔法の絨毯を召喚し、フルムーンハイヤーを追いかける。
「待ちなさい!」
「待ちません!」
フルムーンハイヤーとアラジンザスカイは追いかけっこをしながらとある広場に辿り着く。この日は平日なので人気はほぼなかった。
「私の戦士と高校生としての意地、ご覧に入れて差しあげます!」
フルムーンハイヤーはそう言うと空高く跳び上がり、宙返りしながらアラジンザスカイの後ろに回る。
「何⁉」
「参ります!」
アラジンザスカイが驚く中、フルムーンハイヤーは本を開いて満月を散りばめる。そしてフルムーンハイヤーは満月を飛び回りながらアラジンザスカイを翻弄する。
「こんな攻撃で、劣勢になる私ではありません!」
アラジンザスカイはそう言ってレーザー銃を取り出し、フルムーンハイヤーの行動を読む。
「そこです、アラジンザストライク!」
アラジンザスカイはレーザー光線を放ち、満月を全て消し去る。
「そんな…!」
フルムーンハイヤーは足場を失い、地面に急降下してしまう。
「うっ…!」
フルムーンハイヤーは脚力でなんとか踏み止まるが、アラジンザスカイはフルムーンハイヤーに容赦なく攻撃する。
「私には時間がないのです!」
「え…?」
フルムーンハイヤーはアラジンザスカイの間髪与えない攻撃に違和感を覚える。しかしアラジンザスカイの攻撃によって、フルムーンハイヤーは窮地に陥ってしまう。
「さあ、さっさと降伏しなさい。あなたのような真面目な方が意向を変えれば他の方も次第に考えを変えてくれるはずです。」
アラジンザスカイはそう言って倒れ込むフルムーンハイヤーに銃口を向ける。そんな時、アラジンザスカイの頭上のお菓子の家が現れる。
「何⁉」
お菓子の家はアラジンザスカイの頭上目掛けて落ちる。アラジンザスカイは一瞬動揺するが、寸前のところで避ける。そしてアラジンザスカイとフルムーンハイヤーの前に現れたのは双見アラモードがその姿を変えた戦士、ツインスウィーテスだった。
「私の恋人に、これ以上手出しはさせない!」
ツインスウィーテスはそう言ってアラジンザスカイを睨み付ける。
「アラモードさん…。」
「ごめんね竹月ちゃん、恐い思いさせて。」
ツインスウィーテスはそう言ってフルムーンハイヤーに手を差し出す。そしてフルムーンハイヤーは立ち上がり、二人でアラジンザスカイの前に立つ。
「先ほど時間がないと仰っていましたが、それはどういう意味なのですか?」
フルムーンハイヤーはアラジンザスカイに尋ねる。
「それは…。」
アラジンザスカイは言葉が詰まってしまう。そんな中、カイザードとロバーズが現れる。
「おやおや、ホロテイルジュ同士で争うとは滑稽な光景ですね。」
「やっちゃって良いですか?カイザード先輩。」
ロバーズはそう言うと瞬時にアラジンザスカイに近づき、拳を打ち込む。
「うっ…。」
アラジンザスカイはロバーズの攻撃にダメージを受け、倒れ込んでしまう。
「アラモードさん、確かあの方って…。」
「うん、美姫さんの元カレって言ってたよね。」
二人はロバーズの正体を夜衣魚達から聞いていた。そして二人はロバーズに警戒する。
「さて次はあなた達ですね。」
ロバーズはツインスウィーテスとフルムーンハイヤーに標的を変え、瞬時に近づく。
「え?」
「これは、隙がありません!」
ロバーズの動きには、攻撃を与える隙がなかった。
「ふん!」
ロバーズは二人にも拳を打ち込み、二人も同じように倒れ込んでしまう。
「うっ…。」
「そんな…。」
ロバーズは倒れ込む戦士達を見て高らかに笑う。
「ははは!そんなものですかホロテイルジュというのは!」
ロバーズが高らかに笑う中、美姫がロバーズに向かって走って来る。
「つる座!ダイヤモンド!いばら姫!」
美姫はシンデレーザー・エレガントタイプに姿を変え、ロバーズに立ち向かう。
「ギジュ、何でダークストーリーズなんかに入ったの⁉」
シンデレーザーは攻撃しながらロバーズに尋ねる。
「美姫、俺はこの世界に嫌気が差していたんだよ。会社でも業績が伸びないし、誰も俺を評価しない。そんな時に出会ったんだカイザード先輩に!カイザード先輩は俺の悪意からマリスを産み出そうとしたら俺にその力が纏われ、俺はこの姿になったんだ!」
ロバーズは高らかに笑いながらそう語る。
「そんな人だと思わなかった、辛かったら相談してくれれば良かったのに!」
「お前にはわからない苦しみだ!」
シンデレーザーとロバーズは口論しながら戦う。
「うっ…、ううっ!」
シンデレーザーが戦う中、アラジンザスカイはまた胸に苦しさを覚え元の姿に戻ってしまう。
「また戻った…!」
リーナは焦りを覚えてしまう。そしてそんなリーナをカイザードが目をつける。
「おや、こんな時に元の姿に戻るなど注意不足ですねぇ。」
カイザードはそう言いながらリーナに近づく。そんな時、実がカイザードの元に飛んで来る。
「リーナ!」
実は急いで本を開く。
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
実はそう言ってピーターシザーズになり、カイザードに攻撃する。
「リーナに指一本触れさせない!」
ピーターシザースはそう言って不敵に立つ。
「実…。」
リーナはカイザードと対峙するピーターシザーズを心配する。するとそこに、フックガンが現れる。
「お前の相手は俺がしてやるぜ!」
フックガンはそう言うとピーターシザーズに襲い掛かる。
「ちょっと邪魔!」
「邪魔してんだよ!」
ピーターシザーズはカイザードからリーナを庇うため、フックガンを邪魔に感じるがフックガンは邪魔をするつもりで攻撃していた。
「さて、そろそろ…。」
カイザードはピーターシザーズをフックガンに任せ、リーナを狙う。するとかまいたちの如く何かがカイザードを切り裂く。カイザードの腕には傷がついていた。
「何ですかこれは?」
カイザードは傷を不思議に感じるが、そんなカイザードの横には風布花がその姿を変えたレッドバイトゥース・クリムゾンタイプが構えていた。
「あなたの相手はこの私です!」
レッドバイトゥースはそう言ってカイザードに飛び掛かる。そしてカイザードはリーナに手を出せなくなっていた。その瞬間を狙い、夜衣魚がリーナの元に駆け寄る。
「リーナ、大丈夫?」
「水原夜衣魚、どうして?」
リーナは夜衣魚が自身を助けることを疑問に思っていた。
「普通、人は助けるでしょ。」
夜衣魚はそう答えてリーナの肩を持ち立ち上がる。そしてツインスウィーテスとフルムーンハイヤーの元には林檎が歩み寄っていた。
「ほらそこのバカップル、さっさと立ちなさい。」
「ごめん林檎。」
「申し訳ございません。」
二人はそれぞれアラモードと竹月の姿に戻り、林檎に身を預けて立ち上がる。
「ところで林檎さん、今日は平日ですが風布花ちゃんの学校の方は?」
竹月はふと風布花が学校に行かないで戦っていることが気になり、林檎に尋ねる。
「うん、昨日運動会があったみたいで今日は代休だって。」
林檎はそう答え、アラモードと竹月を連れて避難する。
「何だこの状況?」
人間界に取り敢えず降り立ったパンドラスは目の前に広がる戦いの光景に唖然としていた。
「俺の出番はなしか、じゃあ帰ろっと。」
パンドラスはカイザード、フックガン、ロバーズが戦っているのを見て帰ろうとするが、そこに桃井剣二がその姿を変えた戦士キルビーレオンが現れる。
「パンドラス、お前も戦う気か?」
「何だお前かよ。」
パンドラスは戦いを面倒に感じるが、既にパンドラスの後ろには浦賀輝弓が変わった戦士サファイアロードと金山依斧が変わった戦士アックシトリナーが囲んでいた。
「もう逃げられないよ。」
「お前もここまでだ。」
「ちっ、しょうがねぇな。お望み通り戦ってやるよ。」
パンドラスはそう言って三人の戦士と交戦する。
エメラルディアは城の中で一人瞑想を行っていた。エメラルディアは戦いに赴いたリーナと実を心配していたのだ。
「…これは、相当だな。」
エメラルディアはリーナと実のピンチを感じて目を開き、城を出るのだった。
一方、ロバーズはシンデレーザーと戦いながらまた語り出す。
「俺はダークストーリーズの目的を聞いて感動したよ、この世界の人間を自分のシナリオで自在に操れるんだからな!」
「あの考えに賛同したって言うの⁉信じられない!」
シンデレーザーはロバーズのその言葉で完全に元恋人である義重と完全に袂を分かつことを決める。
一方、ピーターシザーズはフックガンのかぎ爪の攻撃に対し、蟹の鋏で対抗していた。
「この感じ、まるで船上の決戦だね。」
「初めて考えが合ったな、俺も大海原に出ている気分だぜ。」
ピーターシザーズとフックガンはそんな会話を交わしながら互いの武器をぶつける。
「出でよシャムシール!」
ピーターシザーズは戦いの中、本を開き刀身の曲がった剣を召喚してフックガンに切り掛かる。
「させるか!」
フックガンも負けじと腰に備えていたレイピアを引き抜き、ピーターシザーズの剣を受け止める。
一方、レッドバイトゥースはカイザードを野性的な動きで攻め立てていた。その動きはとても速く、カイザードを翻弄する。
「くっっ…、中々やりますね。」
カイザードはレッドバイトゥースの強さに感心してしまう。
「あなたはウルフィンを捨て駒にしたのでしょう?彼は最期に自分の信念を貫きました、ママーハハの駒であるあなたと違って!」
「あなたに何がわかるのです、ウルフィンを葬っておきながら!」
レッドバイトゥースはウルフィンの恨みをカイザードにぶつけるが、カイザードもレッドバイトゥースに怒りをぶつける。こうして人気のない広場はホロテイルジュの戦士とダークストーリーズの幹部による戦いの場となっていた。
「今日、ここでお前らの最期になるかもなぁ。」
パンドラスは嘲笑するように言う。
「ここで終わるのはお前達だダークストーリーズ!」
キルビーレオンはそう返して切り掛かる。次第にキルビーレオン達はパンドラス相手に優勢になるが、ピーターシザーズはフックガンに苦戦していた。
「おいおい、こんなんじゃ大海原に連れて行けねぇぞ。」
フックガンは皮肉めいたことを言いながらピーターシザーズを追い詰める。
「こんなところで…!」
ピーターシザーズは劣勢になり、悔しさを噛み締める。そんな時、突然戦う皆の前に光の穴が現れる。
「何だありゃ?」
「一体何でしょう?」
パンドラスとカイザードはその光の穴に驚く。そして光の穴からエメラルディアが現れる。
「これ以上好きにはさせない、ダークストーリーズ。」
エメラルディアは荘厳で重厚な声でそう言うと、左手の中指に金色のフレームで縁取られたエメラルドの指輪を嵌める。
「ここからは、俺が行く。」
エメラルディアはそう言うと、本を召喚して開く。
「いて座!エメラルド!アリババと40人の盗賊!」
エメラルディアがそう叫ぶと空が暗くなり、いて座が浮かび上がる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「我が元に!」
エメラルディアがそう叫ぶといて座の最輝星が光を放ち、エメラルドの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、エメラルディアの体を包む。やがてエメラルディアの体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
その戦士は胸に大きなエメラルドの宝石が備わっていて、体の随所、そして仮面にもエメラルドが散りばめられていた。
「エメラルディア!」
その戦士はエメラルディアと名乗る。その姿に、その場にいた全員が目を見張る。特にパンドラス達ダークストーリーズの幹部は驚いていた。
「エメラルディア?何であいつが生きてんだよ!」
パンドラスはそう言って驚く。
「ある時から姿を見ないと思っていましたが、まさかまだ生きていたとは…。」
カイザードもエメラルディアの姿には驚いていた。しかしそれを余所目にエメラルディアはゆっくりと歩き出す。
「これが、エメラルディア…。」
シンデレーザーもエメラルディアの姿には目を奪われてしまう。そしてエメラルディアは本を開く。エメラルディアが開いたページにはある童話が書かれていた。
「ウサギとカメ!」
エメラルディアがそう叫ぶと巨大な兎と亀が現れ、幹部達を踏み潰す。
「うおっ、何だこれ⁉」
パンドラスはエメラルディアの攻撃にダメージを受ける。
「何ですかあの戦士は!」
ロバーズは初めて見るエメラルディアに怒りを覚える。
「こんな戦士、私が倒してあげます。」
ロバーズはそう言ってエメラルディアに向かって走り出す。しかしエメラルディアは動揺する様子などなく、左手を挙げる。
「かみのけ座!」
エメラルディアがそう言うと空が暗くなりかみのけ座が現れる。すると避難していた夜衣魚、アラモード、林檎、竹月の髪の毛が伸びる。
「え、嘘⁉」
「髪が伸びた?」
「最悪~!」
「何が起こっているのでしょう?」
四人は驚いてしまうが、四人の伸びた髪はロバーズの元に向かい、ロバーズの体を締め付ける。
「何ですかこれは!」
身動きできないロバーズに、エメラルディアは再び本を開く。そのページにはまた違う童話が書かれていた。
「さるかに合戦!」
エメラルディアがそう叫ぶと本から巨大な臼が現れ、ロバーズの頭上に落ちる。
「うっ…!」
ロバーズはダメージを受けてしまうが、ロバーズを締め付けていた髪を引っ張られていた夜衣魚達にもダメージが与えられてしまう。
「いった~!」
「あの人、容赦なくない⁉」
夜衣魚達の髪は元に戻るが、四人は痛がってしまう。しかしそんなことを気にも留めずエメラルディアはまた本を開く。
「かさじぞう!」
エメラルディアがそう叫ぶとロバーズ、カイザード、フックガン、パンドラスは突然体の自由を奪われ、一列に並び石のように動けなくなる。
「何だよこれ、お前何した⁉」
パンドラスは酷く動揺するが、エメラルディアは何も答えず左手を挙げる。そして空にいて座が浮かび、弓矢が召喚される。
「秘弓・閃光の一射。」
エメラルディアは重厚な声でそう言うと弓矢を放ち、放たれた矢は光を放ちながら四体の幹部を一気に貫く。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」
四体はダメージを受けてしまい、倒れ込んでしまう。
「うわぁ…、俺のアイデンティティ取られた…。」
サファイアロードはエメラルディアの弓矢の攻撃に複雑な気持ちになる。
「くそっ…、相変わらず強いな…。」
パンドラスは変わらぬエメラルディアの強さに感心してしまう。
「取り敢えず、ここは分が悪いので一旦退きましょう。」
カイザードは撤退を指示する。
「そんな、私はまだ戦えます!」
「このままじゃ全滅だぞ、いいから退くんだ!」
ロバーズは尚も戦おうとするが、フックガンが宥める。そして四体の怪物はダークストーリーズの本拠地へと戻るのだった。そしてエメラルディアは元の姿に戻る。
「リーナ!」
エメラルディアはすぐにリーナに目を運び、駆け寄る。
「大丈夫か?」
「申し訳ございません、エメラルディア様…。」
エメラルディアはリーナを心配し、リーナの肩を持つ。リーナの肩を持っていた夜衣魚はリーナから離れる。そして戦っていた他の皆も元の姿に戻り、エメラルディアの元に駆け寄る。
「初めて見ました、エメラルディア様の戦士としてのお姿。」
剣二はエメラルディアに話し掛ける。そして実ははしゃいでエメラルディアに抱き着く。
「エメラルディア様~!」
「実、お前も無事で良かった。」
エメラルディアは優しくそう言って実を抱き締める。そしてエメラルディアは美姫に目を配る。
「美姫、俺の自己紹介がまだだったな。」
「え?エメラルディア様なら既に…。」
エメラルディアの言葉に美姫は疑問を感じる。しかしエメラルディアは言葉を続ける。
「俺の本当の名前は土ノ瀬真亜琴、美姫の祖母に当たる琴姫の実の弟だ。」
「え…?」
美姫に突き付けられた事実は俄かに信じがたいものだった。そしてエメラルディアの言葉に、その場は静寂が漂うのだった。




