第二十五話 最凶の刺客の正体
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。ママーハハが戦いに敗れた幹部の力を体ごと吸収する事実を突き付けられ、ダークストーリーズに居づらさを感じてしまうパンドラスとバブルガス。元ホロテイルジュのメンバーである水原夜衣魚はその事情を知ってしまいバブルガスに同情してしまう。しかしバブルガスが悪の道から改心したわけではないとバブルガスを倒すべきか悩んでしまう。バブルガスがダークストーリーズに服従することを決めたことでなんとかバブルガスを倒す決意を固めた夜衣魚は他のメンバーの力を借りて新たな姿、マーメイデスト・スプラッシュタイプになる。しかし止めを刺す寸前で躊躇してしまう。そんな中、新たに現れた幹部ロバーズの手によってバブルガスは消滅してしまうのだった。
ロバーズが去った後、皆はそれぞれ元の姿に戻る。そしてその場には桃井剣二、水原夜衣魚、双見アラモード、鈴木林檎、三浦竹月、赤園風布花が立ち竦んでいた。
「新たな幹部、ロバーズか…。」
剣二はロバーズというダークストーリーズの新たな幹部が現れたことで警戒心を強める。
「やっぱりダークストーリーズも殺伐とした組織みたいだね。」
林檎はバブルガスがロバーズに倒されたことで改めてダークストーリーズの恐ろしさを感じる。
「夜衣魚さん、大丈夫ですか?」
竹月はバブルガスが倒されたことでショックを受ける夜衣魚を気遣う。
「うん…。」
夜衣魚の返事は明らかに覇気がなかった。
「でも、これでダークストーリーズを倒すことに躊躇いは無くなったでしょ。」
アラモードは夜衣魚にそう言う。今生き残っている幹部はダークストーリーズの目論みに忠実な者ばかりだと感じていたからだ。しかしそれを林檎が否定する。
「いや、まだパンドラスがいる。」
林檎が懸念していたのはまだパンドラスが生き残っていることだった。パンドラスもバブルガスと同様、世界を支配することよりも生きることに執着していた。
「よし、取り敢えずこのことをエメラルディア様に報告する。ついでに夜衣魚がまた新たな力を引き出したことも言わなければならないしな。」
剣二は一先ずこの戦いで起きたことを報告しに戻ろうとする。そして皆に背を向けた剣二を風布花が呼び止める。
「あの、剣二さん。」
「どうした風布花?」
「私達、これからどうすれば…?」
風布花は剣二にそう尋ねる。ホロテイルジュを離脱した身でありながら尚もダークストーリーズと戦う自身らが今後どうすればいいのかわからなかったからだ。
「…お前達にまだ戦う意志があるのなら俺はエメラルディア様への説得を引き続き試みる。お前達は自分達がどうしたいのか考えろ。」
剣二はそう言って皆の元を去る。剣二の言葉を汲み取った林檎は夜衣魚に言い聞かせる。
「夜衣魚、残念だけどもう迷う余地はないかも。私達がどれだけダークストーリーズに反旗を翻した幹部を庇ったとしても結局はママーハハの意志で無駄になる。」
林檎の言葉で、夜衣魚は少しだけ覚悟を決めたような表情を見せる。
「そうだね、私は美姫さんと剣二さんに次いでこの中じゃお姉さんなんだししっかりしないと。」
夜衣魚はそう言って場を和ませようとする。皆は未だ夜衣魚がどこか無理をしているような気がしていたが取り敢えず夜衣魚が少しだけでも元気を取り戻したことを喜ぶ。
「よし、じゃあみんなで何か食べに行こうか。私の奢りでね。」
夜衣魚はそう言って皆をどこかに連れて行こうとする。
「そう言えば風布花ちゃん、美姫さんは?」
林檎はふと風布花と一緒だった美姫がいないことを気に掛ける。
「あ、美姫さんならリーナさんのところに行ってます。」
「リーナさんのところと言うと、またあの空間にいらっしゃるのですか?」
竹月は風布花の言葉から美姫がまたエメラルディアのいる空間に行っていることに驚く。
「はい、リーナさんとわかり合おうということで。」
「あの頑固お姉さんと?そんな必要なくない?」
アラモードは美姫がリーナとわかり合うということに疑問を抱く。
「いえ、私達はリーナさん達ともわかり合わなければなりません。」
風布花は強くそう主張し、剣二から聞いたリーナ・ジーニアスと実・ファンタジアの話をするのだった。
一方その頃、リーナ・ジーニアスと実・ファンタジアは実の部屋で共にいた。リーナと実はエメラルディアに拾われてからずっと共に暮らしていて、城の中でもかなり大きな部屋を自室として与えられている。
「リーナ、そんなに険しい顔してまた抜けた奴らとやり合った?」
実は険しい表情を浮かべるリーナに話し掛ける。
「いえ。ただ見てしまっただけです、桜名美姫と赤園風布花が不埒な行為に及んでいるところを。」
リーナは美姫と風布花がキスをしようとしていることを目撃し、不機嫌になっていたことを実に言う。
「不埒ってな~に?」
実はそう言ってリーナを抱き寄せる。
「もしかして、こう言うこと?」
そしてリーナの頬に手を当て、共にベッドに座る。
「そうではありません、私達は至って純粋な関係です。」
リーナはそう言って実にキスをする。
「嬉しいよ、リーナ。」
「実…。」
そして実がリーナを押し倒すようにして二人は共にベッドに横たわる。
「リーナ?」
「「え?」」
二人が思わぬ声を聞き、振り向くとそこには美姫がいた。二人は目を丸くしてしまう。
「桜名美姫、何故そこにいるのですか?」
「ちょっと、リーナに話したいことがあってさ。」
驚きながら尋ねるリーナに、美姫は答える。
「ていうかさ、人の部屋にノックもせずに入るとか酷くない?」
実は美姫が勝手に部屋に入って来たことを責める。
「いや、したんだけど何も返事がなかったし心配になってね。」
美姫は実にそう答える。リーナと実は美姫が故意でやったのではないと感じ、仕方がなく部屋に入れる。しかし三人は少し気まずい雰囲気になっていた。
「えっと…。」
美姫は何を話そうか迷っていた。そんな美姫に実が尋ねる。
「あのさ、あんたどこまで見てた?」
「ああ、別に私はベッドに押し倒すところしか見てないよ。」
「十分問題です。私と実の関係を見られたのですから。」
リーナは美姫にそう話す。リーナにとって実との関係を見られるのはプライドが許さなかった。しかし美姫はそんなリーナを庇うように言う。
「別に気にしなくていいでしょ。少なくとも私が風布花ちゃんにしようとしていたことの方が問題なんだし。」
「それって、リーナが言っていた不埒な行為のこと?」
実は食い気味に美姫に尋ねるが、リーナは話を止めようと割って入る。
「いいから!さっさと用件をお話しください。」
「あ、うん。」
リーナに急かされ、美姫は本題に入るのだった。
一方その頃、ダークストーリーズではパンドラスがロバーズを睨み付けていた。
「おいてめー、何でバブルガスを倒しやがった!」
パンドラスはロバーズの胸ぐらを掴んで詰め寄るように尋ねる。しかしロバーズは平然とした態度でいた。
「何でって、彼女は今のダークストーリーズに疑問を持っていたのでこのまま生かしておくこともないでしょう。それにこれはママーハハ様の判断です。」
ロバーズは表情を全く崩さずに答える。パンドラスはそんなロバーズの態度が憎たらしかった。
「あなたも今後の出方次第では粛清の対象になりますよ。少しでも長生きしたいのなら身の弁え方に気を付けることですね。」
ロバーズはそう言ってパンドラスの元を去る。
「ちっ、もう俺以外はママーハハ様に忠実な奴ばっかりになっちまったなぁ。」
パンドラスはそう言ってダークストーリーズの本拠地を出ようとする。
「あら、どこへ行くのですかパンドラス?」
カイザードはパンドラスの様子が気になり尋ねる。
「ちょっくら人間界の侵攻をしようと思ってさ。別に侵攻しに行く分にはいいだろう。」
パンドラスはどこかやけになっているようにそう言うと人間界へ赴くのだった。
「そう、桃井剣二から私達のことを聞いたのですね。」
「うん、それでちょっと申し訳ないなと思って。」
美姫は剣二からリーナと実が孤児となってエメラルディアに引き取られていた事実を知り、そのことを彼女らに話していた。
「リーナと実が今までエメラルディア様と一緒にいて、ずっとホロテイルジュの戦いのために生きていたってことはわかった。でもね、人生は長いんだし戦い以外のことも大事だと思うんだ。」
美姫はリーナと実に戦い以外の人生を謳歌することを説く。しかし二人は美姫の言うことを素直に受け入れられなかった。
「あのさ、私達はずっとダークストーリーズと戦うために生きて来たんだから今更そんなこと考えられる訳ないじゃん。」
実は美姫にそう言い聞かせる。
「確かに私は両親を殺されています。でも私は生後間もないころだったので両親のことなんて知りませんし、ダークストーリーズを憎む程の思い出もありません。ただ私にあるのはダークストーリーズを倒す、その使命だけです。」
「そんな…。」
美姫はリーナの言葉に悲しさを覚える。
「よし、それがわかったらさっさと帰って。」
実はそう言って美姫を追い出そうとする。
「わかった、じゃあまた来るね。」
「ホロテイルジュに戻る気がないならもう来なくていいからね。」
実にそう言われながら、美姫は実の部屋を後にするのだった。
「新たな幹部、ロバーズだと⁉」
「はい。」
エメラルディアの元に戻り、ロバーズのことを報告する剣二。エメラルディアはロバーズという名が初耳だった。
「ご存じないのですか?」
「ああ、今までの幹部は以前にもホロテイルジュと交戦していたことを覚えている。だがロバーズという名の幹部は一回も聞いたkとがない。」
「驚きました。まさかエメラルディア様も存じ上げない幹部がいるとは。」
そう言いながら金山依斧は剣二とエメラルディアの元に割って入る。
「でももしまたエメラルディア様の存じ上げない幹部が現れたらどうします?それこそ美姫さん達にも協力を仰がないと勝てない状況になったら。」
浦賀輝弓もエメラルディアの前に現れそう言う。それはエメラルディアも懸念している点であった。
「そんなことはわかっている。しかしあいつらが戦いに身を捧げようとしないことが問題なんだ。」
エメラルディアはあくまでもホロテイルジュは戦いに身を捧げるということを考えていた。輝弓はそんなエメラルディアの考え方に腹を立てる。
「あぁ~もう!そんな考え方だったら最初から軍人から引き抜けばいいじゃないですか!」
「おい、落ち着け輝弓!」
「ここでエメラルディア様の機嫌を損ねたら美姫さん達と共に戦う希望もなくなるぞ。」
剣二と依斧は輝弓を宥める。そんな時、エメラルディアの部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「あの、エメラルディア様はいらっしゃいますか?」
「入れ。」
エメラルディアがそう言い、入って来たのは美姫だった。
「美姫。」
「美姫さん、来てたんですか?」
輝弓と依斧は美姫が現れたことに驚く。しかし美姫はそんな皆を横目にエメラルディアの元に歩み寄る。
「ここに来たということは、戦う覚悟を決めたか?」
エメラルディアは美姫にそう尋ねるが、美姫の考えは変わらなかった。
「戦う覚悟なら既に出来ています。しかしあなたの言うような組織体制には従えないだけです。」
美姫は真っ直ぐな目でエメラルディアに言う。エメラルディアは美姫に呆れてしまう。
「やはりまだわかっていないようだな。それで、用は何だ?」
エメラルディアは美姫に訪れた理由を尋ね、美姫は本題に入る。
「リーナと実に、ホロテイルジュとしての戦いしか教えて差し上げて来なかったのですか?」
美姫がエメラルディアに尋ねたのはリーナと実のことだった。二人が見た目の年齢にそぐわず戦いにストイックな性格になったのはエメラルディアが育てていく中で戦いしか教えて来なかったからだと考えていたからだ。
「その話か。何度も言っているはずだ、戦士たるもの戦いにその身を捧げなければならないと。」
「しかし、彼女らはまだ若いんですよ?それなのにずっと戦う使命を背負い続けるのは酷だと思います。」
美姫はエメラルディアに強く反論する。しかしエメラルディアは未だ平然とした様子で美姫に逆に尋ねる。
「美姫、お前は何故ホロテイルジュで戦おうと思った?」
「え?」
エメラルディアの突然の問いに、美姫は一瞬戸惑ってしまう。しかし美姫はすぐに答えが出ていた。
「みんな、普通の人だったからです。」
「ほう。」
美姫の答えに、エメラルディアは関心を示す。そして美姫は更に話を続ける。
「みんな、私と同じ普通の生活をしながらホロテイルジュとして戦っていて、その温かさやどこか間の抜けた正義の味方らしくない雰囲気が好きでした。そしてそんな中でもホロテイルジュとして、正義の味方としてダークストーリーズからこの世界を守って来ました。だからもっと自由に、もっと人間らしく生きてダークストーリーズを倒す、そんな組織であって欲しいと感じています。」
「そうか…。」
エメラルディアは美姫の言葉に少し響くものがあった。そしてエメラルディアの脳裏を過ぎったのは、エメラルディアがある女性と口論をしている様子だった。
「本当にホロテイルジュの力を、私達の力を必要としているのなら考え直して下さい。本当の戦士として、どうあるべきかを。」
美姫はそう言ってエメラルディアの元を後にする。
「エメラルディア様、いかがお考えですか?」
美姫が去った後、剣二はエメラルディアに尋ねる。
「確かにお前達の今までの戦績は人間らしさもあってこその勝利かも知れない。現に桜名美姫以外の戦士がまた一人、新たな力を引き出したと言うのだからな。」
エメラルディアは今までのホロテイルジュでは成し得なかった幹部の撃破や、暫く現れることのなかった複数の星座や童話の力を引き出した者が現れたことで美姫の考え方にも少し同意する部分はあった。しかしエメラルディアにはどうしても拭えない懸念点があった。
「しかし、戦士として情を捨てなければならない時が来るはずなんだ。敵の幹部を庇う以上に辛い現実がな。それをわかって貰いたい。」
エメラルディアはどこか辛さを噛み締めるような表情を浮かべながらそう答える。剣二達はその気持ちを汲み取っていた。
「ロバーズ?」
「はい。」
エメラルディアの元から戻った美姫は夜衣魚、林檎と会っていた。そして夜衣魚達からダークストーリーズの新たな幹部ロバーズの存在を知る。
「そっか、次から次へと新しい幹部が出て来るね。」
美姫はダークストーリーズの撃破に遠い道のりを感じてしまう。
「はい、ダークストーリーズも一種の悪の概念の具現化のような存在なのかも知れません。だとすると人の悪意がある限り生まれるって可能性もありますね…。」
林檎は一つの懸念点を話す。思えばダークストーリーズがどのような存在なのか、良く知る者はいなかった。
「まあ、多分ママーハハを倒す時がゴールになると思うから、それまで頑張らないとね。」
美姫は少し考え込む夜衣魚と林檎にそう言って励ます。
「それに、夜衣魚ちゃんも新しい力を引き出したんだし、きっと勝てるよ。」
美姫は夜衣魚が新たな姿になったことにも触れる。
「そうですね、私達ならきっと勝てます。」
夜衣魚は美姫の言葉で、再びダークストーリーズと戦う意志を固める。しかしそんな中、三人中に割って入るようにパンドラスが襲って来る。
「おりゃぁぁ!」
「きゃぁ!」
「パンドラス?」
三人は突然のパンドラスの襲撃に戸惑う。
「悪いが戦ってもらうぜ。お前らと戦っておかないと上がうるせぇんだ。」
パンドラスはそう言って戦おうと構える。
「仕方がないか。みんな行くよ!」
美姫はパンドラスと戦おうと叫ぶ。そして美姫、夜衣魚、林檎の三人は一斉に本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
三人が一斉に叫ぶとそれぞれ戦士へとその姿を変える。
「シンデレーザー!」
「マーメイデスト!」
「ポイズノーム!」
三人はそれぞれ名乗り、パンドラスに立ち向かう。
一方、エメラルディアはダークストーリーズの出現を察知していた。
「来たか。」
「俺達が行きます。」
剣二はエメラルディアにそう言って輝弓、依斧と共にエメラルディアの元を後にする。
「よし、あの人も帰っただろうしそろそろ…。」
実は美姫が帰った頃合いを見計らい、リーナを再び抱き寄せる。
「リーナ、大好きだよ。」
「私もです、実。」
そう言って二人は再びベッドに座り込み、互いに唇を近付け合う。すると、エメラルディアの声が響き渡る。
「リーナ、実、ダークストーリーズが現れた。今すぐに行ってくれ。」
「もう、こんな時に…。」
「仕方がありません、行きましょう。」
実はリーナとキスができなかったことにじれったさを感じるが、リーナは割り切って実を連れ戦いの場へ赴くのだった。
「しし座!ルビー!桃太郎!」
「みずがめ座!サファイア!浦島太郎!」
「おうし座!シトリン!金太郎!」
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
剣二、輝弓、依斧、リーナ、実の五人は走りながら本を開き、それぞれ戦士へとその姿を変える。
「キルビーレオン!」
「サファイアロード!」
「アックシトリナー!」
「アラジンザスカイ!」
「ピーターシザーズ!」
五人はそれぞれ名乗り、パンドラスに立ち向かう。
「あれ、パンドラスだけ?」
サファイアロードは相手がパンドラスしかいないことに驚く。
「だが一気に叩くチャンスだ。行くぞ!」
しかしキルビーレオンはパンドラス飲みであるということに勝機を見出す。
「秘剣・桃の舞!」
「おっと!」
キルビーレオンは必殺の剣を食らわせるが、パンドラスは華麗に避けてしまう。
「秘弓・水の一射!」
「タウラスブレイク!」
「喰らってたまるか!」
続いてサファイアロードとアックシトリナーが同時に攻撃するが、パンドラスはまたも避けてしまう。
「ちょっと、避けてばっかりで何のつもり?」
シンデレーザーは全く攻撃を仕掛けずに避けるだけのパンドラスに疑問を抱く。
「あぁ?ここで無駄に命を削るような真似をしたくねぇってだけだよ。」
「なるほど、そういうことか。」
パンドラスの言葉でポイズノームは合点が行く。
「ちょっと夜衣魚、どういうことだよこれ。」
サファイアロードはパンドラスの言うことがわからずマーメイデストに尋ねる。
「パンドラスはママーハハに吸収されて消滅なんてしたくないってこと。だから適当に戦ったって事実を見繕っているだけだと思う。」
「なるほどね。」
サファイアロードはマーメイデストの説明で合点が行く。パンドラスはできるだけ派手な戦闘を避けて生き延びるようにしていたのだ。
「そんな御託、こちらには関係ありません。」
アラジンザスカイはそう言ってパンドラス容赦なくレーザー銃の銃口を向ける。
「アラジンザストライク!」
アラジンザスカイは必殺のレーザー光線をパンドラスに浴びせるが、パンドラスは片手で受け止めてしまう。
「何だ?気迫の割に生温い攻撃だなぁ。」
パンドラスはアラジンザスカイに嫌味をぶつける。
「私の本気は、これからです。」
アラジンザスカイはそう言って本を開き、魔法の絨毯を召喚する。そして絨毯に乗り、パンドラスの周りを四方八方に飛び回る。
「はぁぁ!」
アラジンザスカイはパンドラスに飛び掛かり、自らと共に倒れさせる。
「くっ、中々やるじゃねぇか。」
「こんなものでは終わりません、実!」
「オッケー!」
アラジンザスカイの合図でピーターシザーズは左手に備えた蟹の鋏をパンドラスに突き付ける。
「うおっ、あぶねっ!」
パンドラスはギリギリのところで避ける。
「分が悪くなって来たな…、そろそろ頃合いか。」
パンドラスは自身が劣勢になった頃合いを見て撤退を試みる。しかし、そこにロバーズが現れてしまう。
「こんな生温い戦闘をして、すぐに帰れるとお思いですか?パンドラス先輩。」
「ロバーズ、何しに来やがった!」
ロバーズはそう言ってパンドラスを咎める。ロバーズは最初から見かけだけの戦闘のみをして帰って来ることを予測していたのだ。
「まあまあ、ここからは私に任せて下さい。私が伊達にママーハハ様直属の幹部を勤めている訳ではないこと、ここで証明して差し上げますよ。」
ロバーズはそう言ってホロテイルジュの戦士達の前に立つ。その姿は何者も恐れない毅然とした態度だった。
「そうですねぇ…、まずは…。」
ロバーズはそう言いながらホロテイルジュの戦士達を見渡す。そしてポイズノームを指す。
「あなたにしましょう。」
「え?」
ロバーズに指されたポイズノームは驚くが、間髪を入れずロバーズは瞬時にポイズノームに近づく。
「はぁぁ!」
ロバーズは勢いよく腹部に拳を打ち込む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
攻撃を受けたポイズノームは勢いよく吹き飛んでしまう。
「林檎!こいつ~!」
マーメイデストはポイズノームを吹き飛ばしたロバーズに怒りを覚える。
「くじら座!」
そして左手を挙げ、マーメイデスト・スプラッシュタイプに変わる。
「マーメイトライデント!」
そして三又の槍で接近戦を挑む。
「おらおらおら~!」
マーメイデストは攻撃の隙を与えることなく槍でロバーズを攻撃するが、ロバーズには全く通じなかった。
「あら、これで終わりですか?」
「え?」
平然とするロバーズに戸惑うマーメイデストだったが、そんなマーメイデストにロバーズは蹴りを入れ込む。
「はぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
マーメイデストも吹き飛んでしまうが、サファイアロードがギリギリで受け止める。
「あ、ありがとう輝弓君。」
「夜衣魚、もうひと踏ん張り行くよ。実!」
「しょうがないなぁ。」
サファイアロードはピーターシザーズを呼び、サファイアロードとマーメイデスト、そしてピーターシザーズが並び立つ。
「水の同時攻撃だ!」
サファイアロードがそう言うと三人はそれぞれ弓と槍と鋏を持って構える。
「トライデントクロス!」
「「「トリプルスプラッシュ!」」」
三人がそれぞれの武器を振るうと大きな水飛沫がロバーズに浴びせられ、ロバーズは視界を遮られてしまう。
「今だ剣二、依斧!」
サファイアロードがそう言うとキルビーレオンとアックシトリナーがサファイアロードの両肩で踏み切り、空高く跳び上がる。
「桃一閃!」
「タウラスブレイク!」
二人の同時攻撃が決まる。しかしそれでもロバーズは表情一つ変えなかった。
「全く、ここまで甘く見られるとは心外ですねぇ。」
ロバーズはキルビーレオンとアックシトリナーの振るった武器の刃を軽々受け止め、二人を吹き飛ばす。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」
「リーナ、私達で一緒に行くよ!」
ロバーズに焦るシンデレーザーはアラジンザスカイに協力を求める。しかしアラジンザスカイは素直に受け入れなかった。
「誰があなたとなんか…。」
「そんなこと言ってる場合⁉」
シンデレーザーはアラジンザスカイを一喝し、アラジンザスカイは不本意ながらもレーザー銃を構える。
「レーザーストライク!」
「アラジンザストライク!」
二人は同時にレーザー光線を放つ。しかしそれもロバーズの前には効かなかった。
「今更こんなちんけな攻撃でダメージを与えられるとお思いで?」
嘲笑するロバーズの態度に、アラジンザスカイは悔しさを覚える。
「笑っていられるのも、ここまでです!」
アラジンザスカイはそう言って走り出そうとする。しかし突然、アラジンザスカイは胸に苦しさを覚えてしまう。
「うっ…。」
アラジンザスカイは思わず膝をついてしまう。
「リーナ、大丈夫?」
シンデレーザーはアラジンザスカイを心配して屈むが、その瞬間シンデレーザーの右手の中指とアラジンザスカイのペリドットの指輪が光り出す。
「嘘、またペリドットの指輪と反応してる?」
シンデレーザーはその光景に驚いてしまう。そしてアラジンザスカイはリーナの姿に戻る。
「どうやら調子が悪いようですねぇ。これは潰すチャンスでしょう!」
ロバーズはそう言ってリーナに攻撃しようとする。シンデレーザーは向かって来るロバーズを蹴り付け、本を開く。
「つる座!ダイヤモンド!いばら姫!」
シンデレーザーはエレガントタイプになり、鶴のような華麗な動きでロバーズを攻め立てる。
「はぁぁ!」
「くっ…。」
流石のロバーズもエレガントタイプとなったシンデレーザーには劣勢になってしまう。
「これが噂のシンデレーザー、中々の強さですね。」
ロバーズはシンデレーザーの強さに感心する。
「桜名美姫…。」
リーナはシンデレーザーを心配し、美姫の名を呼びかける。するとロバーズが美姫の名を耳にし、反応する。
「桜名美姫?」
美姫の名を気に掛けたロバーズは人間の姿になる。するとその姿は、嘗ての美姫の恋人である鴻野義重だった。
「ギジュ…。」
義重の姿に驚いたシンデレーザーは美姫の姿に戻る。
「久し振りだな美姫。」
「ギジュ、どうしてダークストーリーズに?」
美姫は義重にダークストーリーズにいることを尋ねる。そして義重の姿にその場にいた全員が目を見張っていた。
「あの人、美姫さんの元カレの人だ。」
マーメイデストは以前義重と美姫のデート現場を目撃していたので義重の姿に見覚えがあった。
「ロバーズが人間だと?」
パンドラスもロバーズが人間であった事実を知らず、驚いてしまう。そして義重は再びロバーズの姿に戻り、パンドラスの元に歩み寄る。
「帰りますよパンドラス先輩、あなたはまたの機会に粛清します。」
そう言ってロバーズはパンドラスを連れ、人間界を後にするのだった。そして、その場に残された全員はその場に立ち竦んでしまうのだった。




