第二十三話 揺れ動く気持ち、迷う心
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。ダークストーリーズはトップであるママーハハの登場により勢力を増しつつあった。一方の美姫達はホロテイルジュのトップであるエメラルディアとその側近のリーナ・ジーニアスと実・ファンタジアに会うが、ホロテイルジュとしてダークストーリーズと戦うために今の生活を犠牲にするよう強いられる。その指示に納得出来ない美姫達六人はホロテイルジュを離脱、そして美姫はリーナ・ジーニアスに牙を剥かれてしまう。二人の戦いは決着がつかないまま終わったが、今度は実・ファンタジアが美姫以外の五人を連れ戻そうと訪れる。しかし実は全員からエメラルディアの元に戻ることを拒否されてしまう。そんな中、ダークストーリーズの新たな幹部フックガンが産み出したマリスに遭遇するが、実は皆が見守る中ピーターシザーズへとその姿を変え戦うのだった。
ピーターシザーズは左手に装備した鋏を振り回し、三体のマリスを攻撃する。
「ほらほら~、こんなもんかい?」
ピーターシザーズはマリスを煽りながら攻撃する。そして一体のマリスを挟み込み、消滅させる。
「よっしゃー!一体撃破!」
ピーターシザーズは喜びながら残り二体のマリスを攻め立てる。戦いの中、ピーターシザーズは本を開く。
「出でよシャムシール!」
ピーターシザーズはそう叫ぶと刀身の曲がった剣を召喚する。そして隙を与える間もなく斬り付け、マリスをまた一体消滅させる。
「そろそろ止め、行くよ!」
ピーターシザーズはそう言うと残り一体のマリスを鋏で拘束し、そのまま持ち上げる。
「ふんんんん~!」
精一杯の力でマリスを持ち上げたピーターシザーズは剣でマリスの体を貫き、消滅させるのだった。そしてピーターシザーズの前にはフックガンだけがいた。
「さあ、あとはあんただけだよフックガン!」
ピーターシザーズはそう言って剣をフックガンに向ける。
「ふん、今回のマリスが大海原に連れて行くまでもねぇ奴らだっただけだ。それよりお前とは大海原で戦いてぇな。」
「そう?だったら私はあんたを山の中で倒してあげる。」
ピーターシザーズとフックガンはお互いにおどけながら話す。
「まあいい、次はもっと強いマリスで相手してやるぜ。」
フックガンはそう言い残すとその場を後にするのだった。そしてその場にはピーターシザーズ、そして水原夜衣魚、鈴木林檎、双見アラモードが残っていた。
「ちっ、あいつも逃げるタイプか。」
ピーターシザーズはフックガンを逃がしたことを悔しがる。そしてピーターシザーズは振り返って夜衣魚達の方を向く。
「そうだ!」
ピーターシザーズは突然何かを閃いたように微笑む。そして左手の鋏を大きく振り上げる。
「実力行使で連れて帰っちゃお!」
「嘘⁉」
「私達を攻撃するつもり?」
夜衣魚達はピーターシザーズの行動に驚く。そして攻撃に怯えて目を瞑ってしまう。すると突然、遠くから声が聞こえる。
「止めなさい実!」
「リーナ…。」
その声はリーナだった。ピーターシザーズは夜衣魚達への攻撃を止めて実の姿に戻る。
「リーナ、三人も連れて帰るチャンスなんだよ。」
「あなたはもう一通り離脱した方々と会ったでしょう。エメラルディア様は帰還のご命令を下しています。」「そっか、じゃあしょうがないね。」
実は実力行使を止めてしまう歯痒さを訴えるが、エメラルディアの命令と聞くと素直に受け入れる。そしてリーナと実は共に夜衣魚達の元を後にしようとする。
「あ、あの!」
林檎はリーナと実を呼び止める。
「あなた達も覚悟を決めなさい。ホロテイルジュの力に選ばれた時点で、あなた達に日常を求める資格などないのですから。」
リーナは林檎達に背を向けながら冷たくそう言い、実と共にその場を去るのだった。皆はリーナの言葉にショックを受けてしまう。
「…聞いた林檎?何か私、今までで一番ホロテイルジュに入ったことを後悔してるんだけど。」
「うん、残念ながら私もね。」
夜衣魚と林檎は深刻な雰囲気で話す。そしてアラモードはリーナからあんなことを言われた状況でも平然とパフェを食べていた。
「アラモードはいいね、こんな時でもパフェを食べられて。」
「こんな時だからこそパフェだよ。」
皮肉を言う林檎にアラモードはそう答える。そのアラモードの変わらない態度に、夜衣魚と林檎はある意味感心してしまう。
「しょうがない、私達も何か食べますか林檎。」
「そうだね、実が食べたプリンアラモードの分のお代も払わなきゃいけないし。」
こうして夜衣魚、林檎、アラモードの三人はスイーツショップで時間を潰すのだった。
フックガンはダークストーリーズへと戻る。カイザードはフックガンに甘いのか、やけに優しい目で迎えていた。
「お帰りなさいフックガン、ホロテイルジュの戦士はいかがでしたか?」
「ああ、ピーターシザーズって奴は中々強い奴だったぜ。大海原で戦うに相応しい。」
「なるほど、それは素晴らしいですね。」
カイザードはフックガンと和気藹々と話す。それがパンドラスにとって、気に喰わない光景だった。
「けっ、ママーハハ様直属の幹部は仲が良いなぁ。」
パンドラスはボソッと嫌味を呟く。しかしそれをカイザードは聞き逃さなかった。
「何か言いました?パンドラス。」
「別に何も言ってねぇよ。」
パンドラスはそう言いながらカイザードに背を向け横たわる。
「しかしラピスラズリの戦士ピーターシザーズが現れたとなると、我々の前に未だ姿を現わさないのはエメラルドの戦士のみとなりますね。」
カイザードはふと気になることを呟く。ダークストーリーズはホロテイルジュの戦士が最大で十二人までいることを知っていた。そしてフックガンはあることを言う。
「エメラルドっていうと、エメラルディアか?懐かしいな。」
フックガンはエメラルディアの名を挙げる。何故かフックガンはエメラルディアを懐かしんでいる様子だった。
「あいつが生きている訳ねぇだろ。一体幾つだと思ってんだよ。」
パンドラスは横たわりながらそう呟いていた。そしてカイザードは突然叫ぶ。
「そこにいるのでしょうバブルガス!いい加減出てきたらどうなんです?」
「ちっ。」
バブルガスはずっと物陰に隠れていた。そしてカイザードに呼ばれてバブルガスは漸く姿を現わす。
「あなたもママーハハ様に怯えているのですか?中々侵攻に出ませんね。」
「あぁ、悪いかよ!私もパンドラスと同じ、ただ生きたいだけさ!」
バブルガスもパンドラスと同じく、命を懸けて侵攻するということに抵抗を感じていた。しかしそれをカイザードが許すはずもなかった。
「あなたもダークストーリーズの幹部である以上、人間界への侵攻は義務です。わかったらさっさと行きなさい。」
「ちっ、わかったよ。」
バブルガスはカイザードに命令され、渋々人間界に行こうとする。そんなバブルガスに、パンドラスが歩み寄り耳打ちをする。
「適当にマリスを産んで暴れさせておけ。形だけでも取り繕えば死ぬタイミングくらいは延ばせるはずだ。」
「ありがとう、パンドラス。」
バブルガスはパンドラスから助言を受け、少し元気を出しながら人間界へと赴くのだった。
それから数日後。美姫、夜衣魚、アラモード、林檎、そして三浦竹月と赤園風布花の六人はとあるレストランに集まっていた。
「じゃあ、みんなのところにあの実・ファンタジアが来たんだ。」
「そうなんですよ~。」
「美姫さんのところにはリーナ・ジーニアスが来ていたんですね…。」
美姫、夜衣魚、林檎の三人はそんな言葉を交わす。そして六人はそれぞれにリーナ、実が訪れたことを知る。
「私達は複数の星座や童話の力が引き出せます。やっぱりエメラルディアって人にとって私達は必要な存在なんでしょうね…。」
林檎は自分達がホロテイルジュの中でもかなりの戦力になることを感じていた。しかしそれでもエメラルディアの元に行こうとは思えなかった。
「全く、強制さえしなければ幾らでも力を貸せるのにあの人達は何を考えているんでしょうね。」
夜衣魚はエメラルディア達に対する不満を吐露する。そして竹月はふと美姫にあることを尋ねる。
「ところで美姫さん、先ほど仰っていたペリドットの指輪の話なのですが…。」
「ああ、うん。確かにリーナのペリドットの指輪が私の体と反応したんだよね。」
「じゃあ、美姫さんはダイヤモンドだけじゃなくてペリドットの資格者でもあるってことですか?」
風布花は驚いて美姫に尋ねる。
「リーナはそう言っていた。私はホロテイルジュの力と適合性の高いDNAを持っている、可能性が高いって。」
「あくまで可能性の話なんですね…。」
林檎はリーナがあくまで可能性の話をしているということに少し煮え切らないものを感じる。そしてそれを踏まえて皆は今後どうするかについて考えていた。
「みんな、まだ指輪と本を持っているんだよね?」
「はい、もう戦わないなら返そうとも思ったんですけど…。」
「やっぱりダークストーリーズの存在を知っている以上手放すのも心許ないんですよね~。」
美姫の問いに林檎と夜衣魚が答える。皆はホロテイルジュを抜けてもダークストーリーズのことを考えると指輪と本を手放すことができなかった。しかし指輪と本を持っている以上、美姫達にはある懸念があった。
「しかし、私達が本を持っている以上、リーナさんや実さんに居場所がわかってしまわれるのですよね…。」
竹月は深刻そうにそう言う。確かにリーナと実が皆のところに現れたのは全て本を通じて居場所を割り出したからだ。
「じゃあ、本をどこかに捨てますか?」
風布花は本をどこかに捨てて居場所を割り出されないようにすることを提案する。しかし美姫には同意しかねる意見だった。
「いや、これはホロテイルジュにとって大事な物だし捨てる訳には行かないよ。」
美姫は風布花の意見を却下する。本がホロテイルジュにとってどれほど大事な物なのかわかっていたからだ。
「でも、ダークストーリーズとの戦いが激しくなりそうな時に私達レベルの後継者を見つけるのも難しい話ですよね~。」
夜衣魚は複雑な感情を込めながらそう話す。美姫達ホロテイルジュを離脱した六人は既に複数の星座や童話の力を引き出すことに成功しており、ホロテイルジュにとっても大事な戦力になることは皆も自覚していたことだった。しかし、戦いのために今の生活を捨てることができないのもまた事実だった。
「やっぱりエメラルディアを説得することが一番だよね…。」
「そうだと思います。」
美姫はエメラルディアを説得させるということに答えが落ち着く。それには林檎も同意していた。美姫達が今後について話し込んでいた頃、アラモードだけは会話に参加せずに窓から外の景色を眺めながらパフェを食べていた。
「アラモードさん、どうされたのですか?」
竹月はアラモードの様子が気になり尋ねる。
「いや、あそこにいるの。」
アラモードはそう言って指を差す。首を傾げながら美姫達五人がその方向を見ると、そこにはマリスが暴れていた。
「「「「「マリス⁉」」」」」
美姫達はマリスの姿に思わず驚いてしまう。
「大変、今すぐに行かなきゃ!」
美姫はそう言いながら慌てて支度を始める。
「全くあんたはいっつもいっつも肝心なことをあっさり話すんだから!」
林檎はアラモードに対して怒り狂ってしまう。
「美姫さん、お会計どうします?」
「ここは私が払っておく。竹月ちゃんと風布花ちゃん以外は後でお金ちょうだい。」
「美姫さん、申し訳ないです。」
「御馳走様です、美姫さん。」
他の皆も慌てて準備をし、急いで店を出るのだった。
「アラモード、早くして!」
「でもまだパフェが。」
「いいから来なさい!」
林檎は相変わらずマイペースなアラモードを無理矢理連れて出るのだった。
街中は暴れ回るマリスで混乱に陥っていた。
「待ちなさいマリス!」
美姫はマリスを呼び止める。
「風布花ちゃん、竹月ちゃん、アラモードちゃんは街の人の避難をお願い。」
「承知致しました。」
「わかりました。」
「夜衣魚ちゃんと林檎ちゃんは私と一緒にマリスを叩くよ!」
「了解です!」
「わかりました。」
美姫は即座に皆に指示し、皆はそれに応じて即座に動く。
「皆さん、こちらへ逃げて下さい!」
「大丈夫です、落ち着いて下さい。」
竹月と風布花は街の人の避難誘導をする。
「アラモードさんもこちらです。」
竹月は何故かアラモードも誘導してしまう。
「何であんたが誘導されてんの!」
「あ、ごめん。」
林檎はアラモードに一喝する。アラモードは林檎に謝り、竹月と共に避難誘導に当たる。
「行くよ。」
「「はい!」」
美姫、夜衣魚、林檎の三人はマリスの前に行き、美姫の掛け声で一斉に本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
三人はそれぞれ叫び、戦士へとその姿を変える。
「シンデレーザー!」
「マーメイデスト!」
「ポイズノーム!」
三人はそれぞれ名乗り、マリスに立ち向かう。
「ポイズンストラングル!」
ポイズノームは鞭を召喚してマリスを縛り付ける。
「夜衣魚!」
「オッケー!」
ポイズノームの合図で、マーメイデストは三又の槍を召喚する。
「トライデントホリゾンタル!」
マーメイデストはそう叫ぶと横一直線状にマリスを切り裂き、マリスに背を向ける。
「美姫さん!」
「任せて!」
マーメイデストの合図で、シンデレーザーは走り出す。そしてマーメイデストの槍の上に乗ると、マーメイデストはシンデレーザーを勢いよく上に飛ばす。
「レーザーストライク!」
シンデレーザーは空高くからレーザー銃を放ち、マリスは消滅する。
「よし、一丁上がり!」
マーメイデストは鼻高々にそう言う。そして三人はそれぞれ元の姿に戻る。避難に当たっていたアラモード、竹月、風布花も美姫達の元に集まる。
「美姫さん、やっぱり指輪と本を手放す訳には行かないですよね…。」
林檎は改めてホロテイルジュの力を手放せないことを痛感していた。それには美姫も同意していた。
「そうだね、やっぱりダークストーリーズを見過ごす訳にも行かないし…。」
美姫もホロテイルジュの力を手放せられない歯痒さを感じる。そんな時、リーナ・ジーニアスと浦賀輝弓が現れる。
「そこまでだマリス!…ってあれ?もういないや。」
「あら、皆さんお揃いで。」
輝弓とリーナはマリスと戦いに来たのだが、既に美姫達が倒したため出る幕はなかった。リーナは美姫達六人を見つける。
「あれ、輝弓君。」
夜衣魚は久し振りに見る輝弓の姿に驚き、話し掛ける。
「みんなが倒してくれたんだ、良かったよ。」
輝弓は美姫達がマリスを倒したことで安堵するが、皆は何故か輝弓を警戒していた。
「ちょっと、みんな何で俺を警戒してるの?」
「だって、リーナと一緒だから私達をエメラルディアの元に連れて行こうとしてるんじゃないの?」
輝弓の問いに林檎が答える。美姫達はリーナや実の姿にも既に警戒するようになっていた。
「誤解だって、俺はマリスが現れたから戦いに来ただけ。」
輝弓は必死に弁解しようとするが、リーナがそれを遮る。
「いえ、丁度良いのであなた達をエメラルディア様の元へ連れて行きます。」
リーナは案の定美姫達を連れて行こうと本を開くが、輝弓がそれを止める。
「ちょっとリーナちゃん、俺達の今日の目的はマリスと戦うことでしょ?もういないんだからここは一先ず戻ろうか。」
輝弓はリーナを宥めて無理矢理エメラルディアの元に戻ろうとする。そして輝弓はリーナと共にその場から去ろうとする時、美姫が輝弓に話し掛ける。
「ちょっと輝弓君。」
「何ですか美姫さん。」
「…輝弓君達はエメラルディアの言うことに納得しているの?」
美姫はずっとエメラルディアの元にいる輝弓達が気になっていた。そして美姫の問いに輝弓が答える。
「…俺達はただ、あの人の意向に従える立場ってだけです。安心して下さい、俺達は美姫さん達の味方ですから。」
輝弓はそう言い残し、リーナと共にその場を後にするのだった。去って行く輝弓を見た美姫は、桃井剣二がリーナとの戦いを止めに来たことを思い出す。
「そう言えば桃井の奴も、私がリーナにやられそうになったところを助けてくれたっけ。」
「剣二さん達は、完全に私達と袂を分かった訳ではないようですね。」
竹月は剣二達と対立しているのではないと感じ、安堵する。そしてこの日は皆、解散するのだった。
エメラルディアの元に戻るリーナと輝弓。
「申し訳ありませんエメラルディア様。マリスを離脱者に倒されてしまった上に連れ戻すことができませんでした。」
リーナは自身の失態をエメラルディアに詫びる。しかしエメラルディアに責める様子はなかった。
「いや、寧ろ彼女らに戦う意志が無くなった訳ではないことがわかっただけでも御の字だ。」
「ありがたきお言葉、感謝致します。」
リーナはそう言って一歩後ろに下がる。そして輝弓が真剣な眼差しでエメラルディアを見つめていた。
「…何か言いたそうだな。」
「はい。」
エメラルディアは輝弓に話し掛ける。そして輝弓はエメラルディアに話をする。
「美姫さん達は、生活の拘束さえしなければホロテイルジュに協力的な方々です。エメラルディア様が妥協さえしてくれればダークストーリーズを倒す突破口に成り得るはずです。」
輝弓はエメラルディアに美姫達に対しての強要を妥協するよう説得する。しかしエメラルディアは頑として意見を変える様子がなかった。
「何度も同じことを言わせるな。戦士たるもの戦いに集中しなければならない。」
「しかし、彼女らは先ほどもマリスを撃退しました。ダークストーリーズから世界を守る気持ちは同じのはずです。」
「同じ志を持つのならば、常に組織として行動を共にするべきだ。」
「…失礼します。」
輝弓はエメラルディアへの説得をやめ、エメラルディアの元を後にする。
「男どもはわかってくれていると思っていたが、まだ少し時間が掛かるようだな。」
エメラルディアは輝弓達に対しても不満を吐露するのだった。
「はぁ…。」
輝弓は溜め息を吐きながら部屋に戻る。そして部屋には金山依斧がいた。
「またダメだったか、エメラルディア様の説得。」
依斧は輝弓の溜め息で心境を察する。
「ああ、どうすればいいんだよあの石頭!」
輝弓は思わずエメラルディアに対しての不満を叫んでしまう。
「おい、エメラルディア様に聞かれたらどうする。」
依斧は周りを気にせずに振る舞う輝弓を咎める。そして輝弓は落ち着くが、ふと依斧に尋ねる。
「なぁ依斧。」
「何だ?」
「また美姫さん達と一緒に戦いたいよぉ。」
輝弓は弱音を吐くように美姫達を恋しがる。それには依斧も同じ気持ちだった。
「ああ、また九人で集まりたいものだな。」
依斧も美姫達と一緒にいた時を思い出す。
「輝弓、今は俺達のできることをするしかない。」
依斧はそう言って輝弓を諭すのだった。
一方、バブルガスはダークストーリーズの本拠地へと戻っていた。バブルガスは案の定、カイザードとフックガンから冷たい視線を浴びていた。
「何だい、ちゃんとマリスを産み出して暴れさせただろ。」
バブルガスは一応の弁解をする。しかしカイザードはバブルガスに対して許すつもりなどなかった。
「やり方が投げ槍過ぎるのですよ。マリスを一体だけ放して自分はその場に居合わせない。そしてホロテイルジュの戦士に呆気なく倒されて納得するとお思いですか?」
「ちっ。」
カイザードはバブルガスが人間界の侵攻に対してやる気がないことを見抜いていた。
「やはりあなたはマリスに頼らず、自分の力でホロテイルジュに挑むべきですね。」
「はぁ⁉何でそんなことになるんだい!」
バブルガスはカイザードに自身で前線に出るよう言われ反論するが、カイザードは何も言わず睨み付けていた。
「…わかったよ、行けばいいんでしょ。」
バブルガスはそう言って再び人間界へと赴くのだった。
翌日、夜衣魚と林檎は二人で街中を歩いていた。
「ねぇ林檎、ダークストーリーズであと倒してない幹部ってどのくらいいたっけ?」
夜衣魚は林檎にふと尋ねる。
「ええと、カイザードにこの前現れたフックガン。あとパンドラスも倒してないし、あとは…。」
林檎は今まで出会った幹部でまだ倒していない幹部を数える。そして最後の一体を思い出そうとした時、俯きながら歩くバブルガスと出会う。
「バブルガス…。」
偶然出会った夜衣魚と林檎、そしてバブルガスは目を見張ってしまう。
「「「あぁ~!」」」
三人は思わず叫んでしまう。
「ほ、ホロテイルジュ!わ、私が相手だよ!」
バブルガスは慌てて構える。
「夜衣魚、私達も行くよ!」
林檎も警戒して本を開こうとする。しかし夜衣魚は林檎を止める。
「待って林檎!何かバブルガスの様子おかしくない?」
夜衣魚はバブルガスの様子に違和感を感じていた。そして夜衣魚はバブルガスに話し掛ける。
「ねぇバブルガス、ウルフィンがダークストーリーズを抜けたみたいにあんたも今のダークストーリーズに居づらいんじゃないの?」
「いや、私は…。」
バブルガスは夜衣魚から図星を突かれてしまう。そして観念して全てを打ち明ける。
「…そうだよ、確かにダークストーリーズに居づらいっていうのはある。カイザードからも侵攻を急かされるしさ。」
「バブルガスは、世界の支配をしたいんじゃないの?」
林檎は心の内を打ち明けたバブルガスに、更に尋ねる。
「そりゃできるもんならしたいさ、この世界の奴らをシナリオで動かせるんだからね。でもそれ以上に生きたいんだよ。」
バブルガスの言葉に、夜衣魚と林檎は表情が曇ってしまう。そしてバブルガスは更に話を続ける。
「あんた達もウルフィンが死んだ時を見ただろ?ママーハハ様に力を体ごと吸収されてさ。私もいずれそうなるんだよ、あんた達が強くなっている今じゃ更に分が悪い。」
「バブルガス…。」
夜衣魚はバブルガスに同情してしまう。しかしそんな時、リーナ・ジーニアスが現れる。
「現れましたね、ダークストーリーズの幹部バブルガス。」
リーナはバブルガスを見つけるや否や本を開く。
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
リーナがそう叫ぶと空が暗くなり、てんびん座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来るのです!」
リーナがそう叫ぶとてんびん座の最輝星が光を放ち、リーナのしているペリドットの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、リーナの体を包む。やがてリーナの体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「アラジンザスカイ!」
アラジンザスカイは名乗り、バブルガスに立ち向かう。アラジンザスカイは容赦なくバブルガスに向けてレーザー銃を放つ。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっとリーナ!」
夜衣魚はアラジンザスカイの一方的な攻撃に気が引けてしまう。しかしアラジンザスカイは攻撃をやめる訳もなかった。
「あなた達はそこで見ていなさい!」
アラジンザスカイは夜衣魚達にそう言って更にバブルガスにレーザー銃を放つ。夜衣魚はそれを見ていられなかった。
「夜衣魚…。」
林檎は複雑な心情で戦いを見つめる夜衣魚を心配してしまう。
「ごめん林檎。」
夜衣魚は林檎にそう呟く。
「さあ、止めです。」
アラジンザスカイはそう言ってレーザー銃に力を込める。
「アラジンザストライク!」
そしてアラジンザスカイはバブルガスに向かってレーザー光線を放つ。
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
夜衣魚はその瞬間本を開き、マーメイデストになる。そしてバブルガスの前に立ち、アラジンザスカイの放ったレーザー光線を三又の槍で弾いてしまう。
「あんた、どうして?」
バブルガスはマーメイデストの行動に驚いてしまう。そしてそれはアラジンザスカイも一緒だった。
「水原夜衣魚、敵に情けを掛けるなど何の真似ですか?」
「何かわからないけど、今ここでバブルガスを倒す訳に行かないと思ったの!」
マーメイデストは必死に弁解するが、マーメイデスト自身も何をしているのかわからなかった。
「…そうですか、やはりあなたは戦士失格ですね。」
アラジンザスカイはそう言うとマーメイデストに銃口を向ける。
「はぁぁ!」
マーメイデストはアラジンザスカイがレーザー光線を放つ前に槍で飛び掛かる。そして二人は戦いを始める。
「あいつ、私を庇って…?」
バブルガスはマーメイデストが自身を庇ったという事実に驚きを隠せなかった。するとそこに、パンドラスが現れる。
「帰るぞ、バブルガス。」
「でもパンドラス。」
「いいんだ、ホロテイルジュの奴らが内輪揉めを始めたって言えば大丈夫だろ。」
パンドラスはそう言ってバブルガスを連れて帰ろうとする。
「ちょっとパンドラス!」
林檎はバブルガスと共にその場を去ろうとするパンドラスを呼び止める。そしてパンドラスは林檎の方を振り返る。
「バブルガスから今の俺達の状況を聞いたんだろうが、俺達を倒すのはお前達の勝手だからな。」
パンドラスはそう言い残してバブルガスと共にその場を去る。
「パンドラス…。」
林檎はパンドラスのことも心配してしまう。そして林檎は激戦を繰り広げるマーメイデストとアラジンザスカイをただ見つめるしかなかった。




