第二十二話 世間知らずに言われても
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はホロテイルジュの戦士シンデレーザーとして戦っていた。トップである幹部ママーハハが現れたダークストーリーズに対抗するため、美姫達はホロテイルジュのトップである男性から招集の命令を掛けられる。そして未だ姿を見せなかったホロテイルジュの残り三人に会いに行く。そこにいたのはホロテイルジュのトップであるエメラルディアという男性と、その側近であるリーナ・ジーニアス、実・ファンタジアという二人の女性だった。そしてエメラルディアは美姫達に、今の生活をやめてホロテイルジュのために生活することを強いる。その命令に飲み込めない美姫と他五人はホロテイルジュを抜けると言ってその場を後にする。その後、美姫の元にリーナが訪ねて来て美姫を無理矢理エメラルディアの元に連れて行こうとする。拒む美姫だったがそこにマリスが出現、リーナはアラジンザスカイになってマリスを倒す。するとアラジンザスカイは美姫に牙を剥くのだった。
激しくぶつかり合うアラジンザスカイとシンデレーザー。二人の放つレーザー光線が飛び交っていた。
「あなた、中々やりますね。」
アラジンザスカイは自身と対等に交戦するシンデレーザーに感心していた。
「絶対に負ける訳には行かない。私は、今の生活と両立させながら戦ってみせる。」
シンデレーザーも本気でアラジンザスカイに立ち向かう。しかし突然アラジンザスカイは魔法の絨毯を召喚し、シンデレーザーを巻き込んで乗り込む。
「え、嘘⁉」
戸惑うシンデレーザーを乗せてアラジンザスカイは屋上を飛び出して空高く舞う。そしてシンデレーザーを上空から突き落とす。
「本気ってここまでー⁉」
シンデレーザーは驚きながら急降下する。しかし咄嗟に本を開いてカボチャの馬車を召喚する。
「助かった…。」
カボチャの馬車のおかげでシンデレーザーは事無きを得る。しかしアラジンザスカイは魔法の絨毯でシンデレーザーに近づく。
「このままでは済まさないです!」
近づくアラジンザスカイに対し、シンデレーザーは馬車を消して馬に乗る。
「こんな街中で馬を乗り回すなんて!」
シンデレーザーは不本意ながらも馬を走らせる。アラジンザスカイも馬の横を魔法の絨毯で飛び、レーザー銃を放つ。
「逃がしません!」
「それはこっちの台台詞だから!」
そう言って二人は再びレーザー光線を撃ち合う。そして馬と絨毯は消え、二人は地面に転がる。
「こっちは仕事抜け出して来てんの!いつまでこんなことしているつもり?」
「あなたはこの仕事を辞め、私と共にエメラルディア様の元に行くのです。今更そんなことを気にする必要はありません!」
二人はそう言いながら激しい戦闘を繰り広げる。
「はぁぁ!」
アラジンザスカイの後ろ回し蹴りが決まり、シンデレーザーはレーザー銃を落としてしまう。
「しまった!」
レーザー銃を拾おうとするシンデレーザーにアラジンザスカイは銃口を向ける。
「随分手こずらせてくれましたね、しかしこれまでです。」
アラジンザスカイはそう言って引き金を引こうとする。するとアラジンザスカイの喉元を剣の刃が突き付ける。アラジンザスカイが振り向くとそこにはキルビーレオンがいた。
「いい加減にしろ。」
「あなたもエメラルディア様に盾つく気ですか?」
「ふざけるな、本気で殺そうとしてどうする?」
キルビーレオンはアラジンザスカイに、シンデレーザーに本気で挑んだことを咎める。そして三人はそれぞれ元の姿に戻る。
「…ここは退いて差し上げます、他の方も引き入れなければなりませんし。」
リーナはそう言って桜名美姫と桃井剣二の元を去る。そして美姫と剣二は二人きりになっていた。
「桃井…。」
「美姫、お前も何をやっているんだ。ホロテイルジュを抜けて仕事に専念するんじゃなかったのか?」
剣二は美姫にもリーナと戦っていたことを咎める。
「だってリーナが!」
美姫は必死に弁解しようとする。しかし剣二は呆れたような目を見せる。
「いいから仕事に戻れ。」
「言われなくても戻ります!」
美姫は剣二に怒りをぶつけ、仕事に戻るのだった。
一方その頃、ダークストーリーズではパンドラスが戻っていた。パンドラスはカイザードから冷たい視線を浴びる。
「…うわぁ、来たなこの感覚。」
パンドラスは作戦が失敗した幹部が他の幹部から冷たい視線を浴びる感覚を新鮮に感じていた。
「作戦など最初からあなたにはなかったのでしょう。全く、投げ槍でマリスを産み出すとは。」
カイザードはパンドラスが投げ槍でマリスを産み出し、勝手に暴れさせていたことに気付いていた。
「だから言ってんだろ、俺は生きたいだけだって。」
パンドラスはそう言ってカイザードを冷たく突き放し、その横を通り過ぎる。
「それで、ママーハハ様は何て仰ってるんだ?」
「生憎ですがママーハハ様は休眠を取られています。まあ、手を抜いているところを見られていなくて幸運でしたね。」
カイザードはママーハハが休眠を取っていると告げる。
「じゃあ今度はてめえが人間界を侵攻して来いよ。俺は見ての通りやる気なんかねぇんだからよ。」
パンドラスはそう言って椅子に座り込む。パンドラスはまるでやる気を見せなかった。
「仕方がねぇな、じゃあ俺がやってやるよ。」
そう言って新たな幹部が現れる。その幹部は海賊帽に左目を多く眼帯、そして右手にかぎ爪を備えた怪物だった。
「来ましたか、フックガン。」
カイザードはそう言ってニヤリとする。その怪物はフックガンという。フックガンはカイザードと共にママーハハの直属の幹部を勤めていた。
「大海原が俺を呼ぶ、これは俺を必要とする声だ。」
フックガンはパンドラスと違ってやる気満々な様子だった。
「フックガンはダークストーリーズに相応しいやる気の持ち主ですね、どこかの誰かと違って。」
カイザードはそう皮肉めいたことを言いながらパンドラスを睨み付ける。
「ちっ、やる気が空回ればいずれホロテイルジュにやられるさ。」
パンドラスはフックガンに嫌味を言う。しかしそんなパンドラスを気にも留めずフックガンは人間界へ赴くのだった。
リーナはエメラルディアの元に戻っていた。エメラルディアの元には他に実がいた。
「申し訳ありませんエメラルディア様、シンデレーザーを連れ戻すことに失敗してしまいました。」
リーナはそう言ってエメラルディアの前に膝をつき、頭を下げる。しかしエメラルディアは咎める様子がなかった。
「気にするなリーナ、まだ機会はある。」
そう言ってエメラルディアはリーナを励ます。そして実もリーナを励ましていた。
「そんなに根詰めなくていいよリーナ。」
実はそう言ってエメラルディアの元を去ろうとする。
「実、どこへ行く気ですか?」
リーナは実に尋ねる。
「私もあの人達と仲良くなっておかないとね。」
「ちょっと実、待ちなさい!」
リーナは実の様子に不安を感じ止めようとするが、実はそのまま行ってしまう。
「エメラルディア様、いかが致しましょう?」
リーナは不安を拭えず、エメラルディアに指示を仰ぐ。
「実も他の戦士達と向き合わなければならない、いい機会だろう。」
エメラルディアは実の行動を前向きに捉えていた。そして実はエメラルディアの元を後にするのだった。
「はぁ~、凄く新鮮な空気。」
実は街中に行き、空気と光景を新鮮に感じて腕を大きく振りながらスキップしていた。実は普段エメラルディアのいる空間で一緒にいる。実はその空間から人間界に行ったことは今まで一回もなかった。それ故に実は気分が高揚していた。
「さてと、まずはこいつか…。」
実がそう言って着いた先は水原夜衣魚の勤め先であるアパレルショップだった。
「水原夜衣魚、アクアマリンの戦士マーメイデストか…。」
実は張り切ってアパレルショップの中に入る。
「いらっしゃいませ…、あ。」
夜衣魚はいつものように客を出迎えるが、それが実であったことに唖然としてしまう。
「あ、すぐ来た。」
実は夜衣魚が出迎えてくれたことに幸運を感じる。しかし夜衣魚は実の姿に顔が引きつってしまう。
「み…、実・ファンタジア…。」
唖然とする夜衣魚だったが、実は構わず店内に入る。
「へぇ~、意外とお洒落なところじゃん。」
「彼氏の家か!ていうか何しに来たの?」
夜衣魚は実の態度に腹を立てながら用を尋ねる。
「決まってるじゃん、あんたをエメラルディア様のところに連れて行くの。」
「何それ?私はホロテイルジュを抜けたって言っているでしょ!」
夜衣魚は実に怒りを覚え、つい声を荒げる。
「あっれ~?お客さんにそんなことを言って良いのかな~?」
実は嘲笑うようにそう言う。気付けば夜衣魚と実の様子は周りから目を引いてしまっていた。夜衣魚はその光景を見て落ち着きを取り戻す。そして一応実に接客を始める。
「あの、失礼致しましたお客様。どういった服をお探しでしょうか?」
「別に服なんていらな~い。」
「…は?」
夜衣魚は実の言葉に唖然としてしまう。そんな夜衣魚の様子を気にせず実は続ける。
「だって服を着て来てるのに服を買うなんて訳わかんなくない?」
「いやだって、同じ服ばかりじゃつまんないでしょ?」
「私はエメラルディア様からもらったこの服があるし、いちいち着替えるとか無駄でしょ。」
実の言葉で、流石の夜衣魚も怒りが沸点に達する。
「ご購入する気がないのであればお引き取り下さいお客様!」
夜衣魚はそう言って実を店から追い出す。そして実はこのアパレルショップにおいて出入り禁止となるのだった。
「ちぇ~、失敗した。」
実はホロテイルジュの戦士を連れ戻すことに失敗してしまったが、特に引き摺る様子もなく平然としていた。
「まあいいや、次はここだ。」
そう言って実が次に訪れたのは鈴木林檎が働くカフェだった。
「鈴木林檎、アメジストの戦士ポイズノームね…。」
実はそう言ってまた扉を開き、カフェの中に入る。
「いらっしゃいま…。」
実を出迎えた林檎は、夜衣魚と同じく実の姿に唖然としてしまう。
「…お席へ案内します。」
林檎はムスッとした表情を浮かべながら実を席に案内する。席に座った実は辺りを珍しそうに見渡す。そして林檎はムスッとした表情を保ちながら実に接客をする。
「…ご注文は?」
「じゃあこの店で一番人気の子を指名しちゃおっかな~。」
「キャバクラか!ここはカフェなんだから飲み物と食べ物を注文しなさい。」
「は~い。じゃああれ欲しい、黒っぽい豆から入れる飲み物。」
「コーヒーね。今持って来るから。」
林檎は少し疲労感を覚えながらコーヒーを持って来る。
「ねぇ林檎ちゃん、あの子も知り合い?」
カフェの店長は林檎にそう尋ねる。
「ま、まあついこの間知り合ったというか…。」
店長になんとか実との関係性を誤魔化しながら話す林檎だったが、実は間に入るように話し出す。
「私、この林檎って人にこのお店を辞めさせようと思って来たんですよね。」
「林檎ちゃん、ウチ辞めるの⁉」
実の言葉に店長は驚いていた。そしてその反応に林檎も焦ってしまう。
「違いますから店長!私はずっとここで働きます。」
林檎は店長に必死に弁解して、実の元にコーヒーを運ぶ。そして実に話し掛ける。
「まあそれが用なのはわかっていたよ。あのエメラルディアって人、ホロテイルジュが全員揃うことに拘っていたみたいだし。」
「だったら話は早いよね、今すぐ私と一緒に!」
「行きません。」
実は林檎が事情を察していたことを知り連れて行こうとするが、林檎は即答で断る。
「じゃあコーヒーだけで良いよね?伝票ここに置いておくから。」
林檎は実がもう自身に用がないと思い伝票を置くが、実はそれに首を傾げていた。
「伝票?これって何?」
「いや、お会計の時に必要だから。」
「お会計?私何かしなきゃいけないの?」
「いや、お金を払うんだけど…。」
林檎は実の奇妙な言葉に首を傾げるが、ふとあることに気付く。実が今までエメラルディアの元にいたということは、社会に溶け込んで生活をしなかったということだ。当然お金など持っているはずもなかった。
「…わかった、ここは私の奢りにしておくからもう帰って。」
「あれ、エメラルディア様のところは?」
「だから行かないって言ってるでしょ!」
林檎は実の会計を立て替えて実を追い出す。こうして実は林檎を連れ戻すことにも失敗してしまうのだった。
「ここまで二人失敗か…。」
実は夜衣魚と林檎をエメラルディアの元に連れて行くことを失敗してしまい、流石に少し落ち込んでいた。
「全く、エメラルディア様の元に行かないとか有り得ない!」
実は言うことを聞き入れてくれない夜衣魚と林檎に腹を立てていた。
「次はもう少し若いみたいだし、聞き入れてくれるかな~?」
そう言って実は三浦竹月の通う高校を訪れていた。
「それじゃあ三浦、教科書の次のページから読んでくれ。」
「かしこまりました。」
竹月はいつものように授業を受けていた。そんな時、教室のドアをガラッと勢いよく開く音が聞こえる。
「何でしょう?」
教室にいた全員が不思議に思い振り向くと、そこには実がいた。
「いたいた。三浦竹月、ガーネットの戦士フルムーンハイヤー。」
実は竹月を見つけると、早足で竹月に近づく。
「さあこんなところを出て私と一緒に来て。」
「まるで結婚式で花嫁を奪いに来たみたいですね。生憎ですけど私は学業を疎かにするつもりはありません。」
竹月は実に即答でエメラルディアの元に行くことを断る。しかし実は夜衣魚と林檎の経験からその答えは想定内だった。
「ふっふっふ、君がそう答えるのは想定内なのだよ。こういう時は!」
実はそう言って腕を大きく挙げる。
「先生、この方は所謂不審者になります。」
しかし竹月は実を不審者だと言う。その言葉で授業を行っていた教師及び男子生徒の手によって実は教室から追い出され、そして警備員によって学校からも追い出されるのだった。
「学校、恐るべし…。」
実は竹月の学校を追い出され、学校の恐ろしさを感じていた。
「服やコーヒーの店とは違うなぁ…。」
実は一応誰でも客として入ることのできる店とは違い、学校では不審者として扱われることを感じていた。
「次も学校なんだよなぁ…。」
実はそう言って赤園風布花の通う小学校の前に来ていた。
「赤園風布花、真珠の戦士レッドバイトゥースか…。」
実は気合を入れて風布花の学校に入る。
「それでは赤園さん、教科書の次のページから読んで下さい。」
「はい、先生。」
風布花も竹月と同様、いつものように授業を受けていた。それをドアの窓から実は覗いていた。
「さて、こういうのは勢いが大事だからね。相手は小学生だし、簡単でしょ。」
実は呼吸を整え、勢いよくドアを開ける。
「あかぞのふうか~!」
「あ、確か実さん…。」
風布花は実の姿に驚いてしまう。
「さあ、いいものあげるから私と一緒にエメラルディア様の元に来なさい!」
「言い方が不審者です。」
「え?」
実は勢いよく風布花を言いくるめられた気でいたが、言い方は正しく不審者であった。
「何ですかあなた?教室に入って来て。」
風布花の担任の先生が実を不審に感じ、結局実は竹月の時と同様に学校から追い出されるのだった。
リーナはエメラルディアの元で、実を心配していた。
「リーナ、そんなに実が心配か?」
エメラルディアはそわそわするリーナに尋ねる。
「当然です、実は私達以外の方と接触したことが殆どないのですから。」
リーナはそう言って実を心配する。実はエメラルディアがいる空間を出たことが殆どなく、それ故に社会のルールなどわからないことだらけだった。そんな常識知らずで更にエメラルディア以外の人に敬意を払うことを知らない実が他の戦士と上手く付き合うことができると思えなかったからだ。そんなリーナとエメラルディアの元に、浦賀輝弓が訪れる。
「お前か、浦賀輝弓。」
「少しお話をしてもいいですか?エメラルディア様。」
輝弓はいつになく真剣な表情を浮かべてエメラルディアの前に立っていた。
「あの、剣二とも話したんですけどやっぱり彼女らを組織で縛る必要はないじゃないでしょうか?」
「はぁ…、またその話か。」
エメラルディアは輝弓の言葉に溜め息を吐く。エメラルディアは世界を守るために自分の身を犠牲にする考えを変える気が無かった。
「俺は別に、彼女らを戦わせなくていいと言っている訳ではありません。ただ生活を犠牲にする必要はないと言っているんです。」
「世界を守るためには自己犠牲が必要なんだ。あいつらはそれをまだわかっていないだけだ。」
エメラルディアは頑として美姫達をホロテイルジュのために働かせるつもりだった。
「…失礼します。」
輝弓はまたエメラルディアを説得するやり方を考えようとその場を後にする。
輝弓と剣二、そして金山依斧は共にエメラルディアとは別の部屋で寝泊りしていた。
「依斧~、やっぱあの人石頭だぜ。」
「…やはりそうか。」
輝弓は部屋に戻り、依斧にエメラルディアの説得を失敗したことを話す。
「必ずエメラルディア様を説得しよう。美姫さん達と和解してホロテイルジュが十二人揃えば、必ずダークストーリーズを倒せるはずだ。」
依斧は輝弓にそう言う。剣二、輝弓、依斧の三人は美姫達とエメラルディアの和解を目指していた。そして輝弓と依斧はまたエメラルディアを説得しようと心に誓うのだった。
一方その頃、フックガンはとある暴走族に会っていた。
「お前ら、大海原までぶっ飛ばしてみたくねぇか?」
フックガンは暴走族に対してけしかけるようにそう言う。
「なるほど、てめーならできそうだな。行くかみんな!」
「「「「「おぉ!」」」」」
暴走族の総長と思われる男性はフックガンの怪物の見た目からその話を信じ、仲間達と共にその話に乗る。しかしフックガンは暴走族を走らせるつもりなどなかった。
「お気持ちだけ頂くぜ。」
フックガンはそう言うと暴走族を黒い霧で包む。そして三体のマリスを産み出し、暴走族は皆その場に倒れ込む。フックガンは最初から暴走族の悪意が目的だった。
「ぶっ飛ばせるかバーカ。」
フックガンは倒れ込む暴走族に向かってそう言うと、三体のマリスを連れて歩き出すのだった。
「大海原は俺だけを選ぶんだよ。」
夜衣魚、林檎、竹月、風布花を連れ戻すのに失敗した実は、俯きながら歩いていた。
「他の人と接するっていうのが、これ程までに難しいとは…。」
実はエメラルディアとリーナ以外の人と接するというのが難しいことを痛感していた。
「最後はこいつか…。」
実はそう言いながら双見アラモードのよく通うスイーツショップを訪れていた。
「双見アラモード、オパールの戦士ツインスウィーテスか…。」
実はアラモードを待つためにスウィーツショップに入る。
「お客様、ご注文をお伺いします。」
「あ、え~と、アラモード…。」
「プリンアラモードですね、かしこまりました。」
「え、あ、はい。」
実は店員から注文を聞かれ、焦ってしまいアラモードの名前を言うとプリンアラモードを注文することになってしまう。しかし実は当然お金を持ち合わせているはずもないので、また会計のことは何も考えていなかった。そして実がプリンアラモードを食べながら時間を潰していると、案の定アラモードが店を訪れる。
「すみません、チョコレートパフェ一つ。」
「かしこまりました。」
アラモードはすぐにパフェを注文し、黙々と食べる。
「よ~し、こいつこそ。」
実はアラモードだけでも連れ戻そうと意気込み、アラモードの近くに座る。
「ヤッホーそこの姉ちゃん、今ヒマ?」
「何そのナンパみたいな言い方?ていうか誰?」
実はアラモードにフランクに話し掛けたつもりだったが、アラモードは冷たい視線を送る。そしてアラモードは実のことを覚えていなかった。
「いや、この前会いに来てくれたじゃん。エメラルディア様の側近の実・ファンタジアだよ~。」
「エメラルディア…?あ、ホロテイルジュの残り三人の一人?」
アラモードはエメラルディアの名前を聞いて漸く実のことを思い出す。
「やっと思い出してくれた。じゃあ私と一緒にエメラルディアのところに来てくれない?」
「やだ。」
実は早速アラモードにも説得を試みるが、アラモードも即答で断る。
「はぁ…、こいつもか。」
実は遂に五人全員から断られてしまい、溜め息を吐いてしまう。
「ていうかさ、そのパフェだっけ?よく飽きないよね。」
「別にあんたには関係ないでしょ。」
実はアラモードに対して嫌味を言う。アラモードは実を冷たく突き放しながらパフェを食べる。
「あ、アラモードと実。」
「やっぱりアラモードのところにも来てたんだ。」
夜衣魚と林檎は仕事を終え、アラモードと実を見つけるとすぐに二人の元に駆け寄る。
「ちょっと、またお金を持ってないのに食べてる訳?」
林檎は実がまた店で食べていることに呆れてしまう。しかし実は、夜衣魚と林檎が自身の元を訪れたことに何故か希望を見出していた。
「もしかして考え直してくれた?エメラルディア様の元に戻るって。」
「戻らないよ。」
「はぁ…。」
夜衣魚は実に即答で断る。そして実はまた溜め息を吐いてしまう。
「大体みんな甘いんだよ。仕事や学校の合間に世界を守れる訳なくない?」
実は皆が生活を犠牲にしないことに甘さを感じていた。それは皆も感じていたことではあった。しかしそれでも皆は今までダークストーリーズと戦っていたことに誇りを感じていた。林檎は実に反論する。
「でも私達は今まで自分の生活を両立させながら戦って来たの。あんた達が全く助けてくれなかったのに。」
「エメラルディア様はあんた達が一定のレベルまで強くなるタイミングを見計らっていたの。せっかくホロテイルジュ全体が強くなった時に離反とか有り得ないでしょ。」
実はあくまでエメラルディアの考えを尊重していた。そんな実に夜衣魚はある疑問を抱く。
「でもさ、ホロテイルジュのために仕事を辞めるのとかって家族が心配するでしょ。実も心配されてないの?」
夜衣魚は家族の存在を出して実に反論しようとする。しかし実にはそれが全く響かなかった。
「私の家族はエメラルディア様とリーナだけだから。」
「「え?」」
実の言葉に夜衣魚と林檎は違和感を感じる。
「いや、親とかいないの?」
「知らな~い、だって私五年前くらいにエメラルディア様に拾われたんだけどその前の記憶とかないから。」
「もしかして記憶喪失って奴?」
夜衣魚と林檎は実が記憶喪失だという事実に驚く。それと同時にエメラルディアの言葉に何も疑問を抱かない理由にも合点が行った。
「だから、過去とか家族とか捨ててホロテイルジュに尽くせばいいの。エメラルディア様に従えば間違いないんだから。」
夜衣魚と林檎は実のどこか世間知らずな態度にも同情を感じていた。しかしエメラルディアの元に行くことには未だ同意しかねていた。そんな時、夜衣魚達の前に三体のマリスとフックガンが現れる。
「おいおい、噂のホロテイルジュが揃ってるじゃねぇか。」
フックガンは夜衣魚達を見てニヤリと微笑む。
「何あいつ?初めて見る幹部…。」
「あいつ、エメラルディア様が言っていたフックガンって幹部だ。」
実はフックガンについて知っていた。そして皆はフックガンに警戒する。
「夜衣魚、本と指輪は?」
「一応持ってるよ。アラモードは?」
「私も持って来てるよ。」
夜衣魚、林檎、アラモードの三人はホロテイルジュを抜けながらも使命感から指輪と本を肌身離さず持っていた。三人は戦おうと構えるが、実がそれを止める。
「いいもん、そんな中途半端な考えの人達と一緒に戦いたくないから。」
実はそう言ってポケットからラピスラズリの指輪を取り出し、左手の中指に嵌める。そして本を取り出して開く。
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
実がそう叫ぶと空が暗くなり、かに座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来ちゃいな!」
実がそう叫ぶとかに座の最輝星が光を放ち、実のしているラピスラズリの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、実の体を包む。やがて実の体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
その戦士は臍を覆わないくらいの丈の緑色の服に緑色の短パン、そして緑色の尖った帽子に赤い羽根が刺さっていた。
「ピーターシザーズ!」
その戦士はピーターシザーズと名乗る。その姿に夜衣魚達は目を見張っていた。
「あの、ピーター…?」
そんな夜衣魚達を余所目に、ピーターシザーズはマリスに立ち向かう。ピーターシザーズの動きは幼稚ながらも確実にマリスを攻撃していた。そしてピーターシザーズは左手を空に掲げる。
「かに座!」
ピーターシザーズがそう叫ぶとかに座の最輝星が光を放ち、ピーターシザーズの左手が蟹の鋏のようになる。
「行くよ!」
ピーターシザーズは左手の鋏を大きく振り回し、三体のマリスを圧倒するのだった。




