第十八話 厳しい戦いの予感
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫は新たな姿であるシンデレーザー・ワイルドタイプへとその姿を変える。そして美姫の後を追うように水原夜衣魚、鈴木林檎、双見アラモード、三浦竹月も新たな力を引き出す。一方、小学生のメンバーである赤園風布花は林檎から美姫に恋愛を求めることをやめるように言われホロテイルジュの仲間に顔を見せなくなってしまう。ある日、風布花はダークストーリーズを抜け出したウルフィンに会い、お互いに内に秘めたる想いを明かし、奇妙な絆が生まれる。風布花とウルフィンは林檎に保護され、ウルフィンは林檎からやりたいことを我慢しないと助言を受け、暴走した風布花と戦うことを決める。風布花はまた戦い暴走してしまうが、自身への想いを受け止めた美姫によって暴走を克服する。そして風布花は新たな姿、レッドバイトゥース・クリムゾンタイプに変わるのだった。
レッドバイトゥース・クリムゾンタイプは腰を落とし、鋭い牙をウルフィンに向ける。
「ウルフィン、覚悟です!」
「ああ!」
そしてレッドバイトゥースとウルフィンは激しくぶつかり合う。二人の戦いはとても速く、誰もその動きを捉えることが出来ない。
「風布花ちゃん…。」
「強い…。」
皆はその激しい戦いに目を見張る。
「速ぇ!強ぇ!ここまでの相手は今まで会ったことがねぇ!」
ウルフィンはレッドバイトゥースの強さに最高の心地だった。
「私は戦います!そして勝ってみせます!」
レッドバイトゥースも真剣な眼差しでウルフィンに挑む。そして二人の鋭い爪が激しく入り乱れる。
「あいつ、おおかみ座の力を完全に自分のものにしている…。」
キルビーレオンもレッドバイトゥースの戦いぶりに目を見張る。そしていつしかレッドバイトゥースが優勢になる。
「はぁぁ!」
レッドバイトゥースはウルフィンを跳ね飛ばす。そして再び野性的な構えを見せる。
「必殺、ウルフクラッシャー!」
「うわぁぁ!」
レッドバイトゥースは爪でウルフィンを切り裂き、ウルフィンは倒れ込んでしまう。
「ウルフィン!」
レッドバイトゥースは倒れるウルフィンを抱きかかえる。
「…何だよ、敵に情けを掛ける気か?」
ウルフィンはすっかり弱った声でレッドバイトゥースに問い掛ける。
「当たり前です。敵とはいえ、あなたを倒すのは…。」
レッドバイトゥースは涙を流しながら答える。そんなレッドバイトゥースの頬をウルフィンは軽くつまむ。
「ほら笑えよ、正々堂々と勝負したんだ。俺を倒して、お前は立派な戦士になったんだ。」
「そんな…。」
満面の笑みを浮かべるウルフィンに対し、レッドバイトゥースは涙が止まらなかった。他の皆もウルフィンの元に歩み寄る。
「あんた、本当に風布花ちゃんと戦いたかっただけだったんだ。」
林檎はウルフィンに話し掛ける。
「ここまで真剣勝負に拘った幹部は見たことが無いな。」
キルビーレオンもウルフィンに感心する。
「へへ、ありがとよ。」
ウルフィンは最期にホロテイルジュから褒められたことに喜んでしまう。そんなウルフィンとホロテイルジュの元に、ある怪物が空から降臨する。その怪物は、シンデレラの継母を彷彿とさせるような中年女性の姿をしていた。
「ウルフィン、よくやった。これでまた一人、ホロテイルジュの戦士が強くなったのだからな。」
「あなたは、ママーハハ!」
「ママーハハ?」
ウルフィンはその怪物をママーハハと呼ぶ。そしてまたそのママーハハという怪物はウルフィンに話し掛ける。
「さあ、お前も我の一部となるがよい。」
そう言ってママーハハはウルフィンを吸い込む。
「う、うわぁぁ!」
ウルフィンは黒いオーラと化し、ママーハハに吸い込まれるのだった。ホロテイルジュの一同はママーハハに警戒する。
「お前、何者だ!」
キルビーレオンの問い掛けに、ママーハハは答える。
「我が名はママーハハ。ダークストーリーズの中で最も強き幹部にして、全ての力を吸収する者。」
「全ての力を吸収?」
「まさか、今までの幹部はお前が取り込んだのか⁉」
「左様、お前達ホロテイルジュはどんどん強くなっている。いずれ強くなった我と戦うことだろう。」
ママーハハはそう言って天に昇り、姿を消してしまう。
「あれが、ダークストーリーズのトップ…。」
レッドバイトゥースはウルフィンが言っていた話を思い出し、ママーハハに警戒するのだった。そして皆はそれぞれ元の姿に戻る。すると風布花は皆の方を向いて頭を下げる。
「あの、何の連絡もせずにウルフィンに会ってしまい申し訳ありませんでした。」
皆に謝る風布花だったが、誰も風布花を責めはしなかった。
「別に、風布花ちゃんの事情もわかってたから。」
林檎は風布花がホロテイルジュに顔を出せなかった事情を察していた。
「それに、結果として風布花がおおかみ座の力を制御出来たんだ。」
桃井剣二も風布花がおおかみ座の力を使い新たな姿になったことを喜ぶ。
「まずは、あのママーハハについて他の人達にも報告しますか。」
夜衣魚がそう言うと、皆は一先ず洋館に戻ることにする。
一方、ダークストーリーズではパンドラスとバブルガスが神妙な面持ちで話し合っていた。
「ウルフィンの奴、やっぱり死にやがったか。」
「ここまで続けざまに幹部が死ぬなんてねぇ。」
パンドラスとバブルガスはウルフィンがホロテイルジュに敗れたことを知る。更に二体はもう一つ懸念していることがあった。
「それにあのお方、ママーハハ様がホロテイルジュに姿を見せたとはな。」
「今までホロテイルジュの前に現れなかったママーハハ様が動いたとなると、やっぱり今のホロテイルジュは今までと違うということかねぇ。」
二体はママーハハがホロテイルジュに姿を見せたことが気になっていた。ママーハハが本格的に動くとなると、自分達もいずれ捨て駒にされる可能性があるからだ。
「今はとにかく、ママーハハ様の様子を見るしかねぇ。」
「そうだねぇ。」
二体は今後の出方について話し合う。するとそこに、中国の皇帝を彷彿とさせる服を身に纏った怪物が現れる。
「ママーハハ様のお出ましに、何かご不満ですか?」
「げっ、お前はカイザード。」
パンドラスはその怪物をカイザードと呼ぶ。カイザードはパンドラスとバブルガスに不満を抱いているような表情を見せる。
「全く、あなた達は何をやっているのですか?デビルホーン、ギルベアー、ウィッチ・シスターズ、スーター、ウルフィン、これまでにダークストーリーズの精鋭とされて来た幹部が皆ホロテイルジュに敗れ命を落としているのです。これはダークストーリーズにとって由々しき事態です。」
カイザードはダークストーリーズの幹部が立て続けに敗れている事態に腹を立てていた。
「けど、ホロテイルジュの強化はママーハハ様にとって嬉しいことみたいだぜ。ママーハハ様が本気を出せば、ホロテイルジュなんざいちころじゃねぇの?」
パンドラスは呑気に答える。しかしそれがカイザードにとって腹立たしかった。
「問題はあなた達がホロテイルジュを早急に叩かなかったという事実です。何故ホロテイルジュで六人も新たな姿を得ているのですか⁉」
カイザードは怒り狂ったように問い詰めるが、バブルガスがフォローするように割って入る。
「今のホロテイルジュは少し違うんだよ。今までもあのくらい強い奴には何度か会ったけど、あんなに立て続けに強くなっているのは初めてのパターンさ。それに人数自体も多い。」
「それは、あなた達の怠慢が招いた結果なのではないのですか?」
カイザードはあくまでもホロテイルジュの強化がパンドラス達の怠慢によるものだと言い張る。しかしパンドラス達には今のホロテイルジュにある決定的な違いが感じられていた。
「いや、絶対何かが変わっている。今のホロテイルジュは各段に強くなっている。」
「…何が違うというのですか?」
「上手く言葉には出来ねぇ。でもただ一つ言えるのは、シンデレーザーって戦士が現れてからってことだ。」
「シンデレーザー?」
パンドラスが感じていたのはシンデレーザーが現れてから強くなったということだった。カイザードはシンデレーザーが気になる。
「それでは私が、今のホロテイルジュに会いに参りましょう。」
カイザードは今のホロテイルジュが気になり、人間界へと赴く。
一方その頃、洋館ではホロテイルジュが全員揃っていた。
「風布花ちゃんが暴走を克服しておおかみ座の力を制御した⁉」
「そしてダークストーリーズのトップが現れた⁉」
戦闘に参加していなかったホロテイルジュのメンバーである浦賀輝弓と金山依斧は先程起きたことの情報量の多さに圧倒されていた。
「何だよ剣二、喜べば良いのかビビれば良いのかどっちなんだよ⁉」
「…勝手にしろ。」
輝弓は驚き過ぎて感情が複雑になるが、剣二は冷たく突き放す。
「ママーハハ、多分そいつが親玉になると思う。ママーハハは私達が強くなったら自分も強くなってまた現れると言っていた。」
林檎はママーハハについて話す。
「それじゃあ、俺達は引き続き新たな力を引き出せばいいということか。」
依斧は改めて新たな力を引き出すことに意気込む。そして一同は話を聞かずにパフェを食べているアラモードと竹月に目を運ぶ。
「アラモードさん、あ~ん。」
「あ~ん。」
「アラモードさんのためにパフェを作ってみました。お味の方はどうですか?」
「う~ん、いまいち。」
「ひどいです~、せっかく作りましたのに。」
「冗談、美味しいよ。」
「アラモードさん♡」
二人は恋人らしく和気藹々と体を寄せ合いながらパフェを食べていた。その光景を見た一同は唖然とする。
「まあ、一番の驚きはこの二人が付き合ってるってことだけどな。」
輝弓は気の抜けたトーンで言う。一方の風布花は羨ましそうに二人を眺めていた。
「いいなぁ…、私も美姫さんとあんな感じに…。」
風布花が羨ましそうに見ていることに気付かず林檎はアラモードと竹月の元に歩み寄る。
「ほらバカップル、いい加減にしなさい。」
林檎は二人を引っ張って立ち上がらせる。
「は~い。」
「いいところでしたのに…。」
二人は不満げな顔で渋々立ち上がる。
「まあとにかくだ、俺達がもっと強くなればママーハハと戦うチャンスが訪れる。今は各々また新たな力を引き出すことに専念するんだ。」
「「「「「「はい。」」」」」」
剣二の言葉で、皆は今後の方針を固める。そしてこの日は解散するのだった。
美姫も洋館を出ようとするが、それを風布花が呼び止める。
「あの、美姫さん。」
「風布花ちゃん。」
美姫は風布花に呼び止められた理由がなんとなくわかっていた。
「えっと、あの、私美姫さんのこと…。」
赤くなって上手く話せない風布花を美姫は優しく抱き締める。
「私、美姫さんのことが好きです。」
「ごめんね、気付いてあげられなくて。」
風布花は美姫の温もりを感じ、漸く告白することが出来る。そして美姫は風布花を離し、真っ直ぐ目を見つめる。
「私、風布花ちゃんを傷つけるから恋人には出来ない。でも、また一緒に遊びに行こうね。」
「はい。」
風布花は美姫に振られてしまう。しかし風布花は今までの心に詰まっていた物が除かれてすっきりしたような気分だった。そして風布花は家に帰る。
「美姫さん。」
風布花を見送った美姫に、夜衣魚が話し掛ける。
「夜衣魚ちゃん。」
美姫は夜衣魚に、寂しそうな表情を見せる。夜衣魚はそれが心配だった。
「美姫さん、大丈夫ですか?」
「夜衣魚ちゃん、今日家に来ない?」
「え?いいですけど…。」
美姫は突然、夜衣魚を家に誘う。夜衣魚は珍しく感じるが、特に予定もないので美姫の家に行くことにする。
その夜、美姫と夜衣魚はベッドで激しく抱き合う。夜衣魚はお酒に酔っている訳でもない美姫が誘ってくれたことが意外だったが、美姫の激しさはどこか寂しさを埋めているようだと感じていた。美姫は夜衣魚を抱き終えると、夜衣魚に背を向けて横たわる。
「美姫さん、やっぱり風布花ちゃんのこと好きなんですか?」
夜衣魚はふと美姫に尋ねる。
「どうして?」
「何か、凄くやけになっている気がしたので。」
「別にそんなこと、ないけど…。」
夜衣魚は、美姫が風布花のことを好きだと感じていた。しかし美姫は意地になって否定する。
「無理しなくていいですよ、風布花ちゃんもまだ幼いんですから。」
夜衣魚はそう言って美姫を上に向かせ、覆い被さるようにキスをする。
「夜衣魚ちゃん…。」
美姫は夜衣魚の優しさに触れながら、一夜を過ごすのだった。
一方その頃、カイザードはある男性に会っていた。暗く狭い部屋で、ただパソコンの画面だけに照らされていた。
「興味深いですね、あなたはかなり人間の悪意の近くにいる。」
「ま、これが人間の本性って奴だ。」
カイザードとその男性は不気味に会話を交わす。そしてカイザードはパソコンに向かって黒いオーラを流し込むのだった。
その翌日、ホロテイルジュの皆はいつものように仕事や学校に励んでいた。
「ふぅ…。」
美姫は最近ホロテイルジュやダークストーリーズのこと、更には風布花のことで頭がいっぱいなため仕事をするのに一層疲れてしまっていた。そして黙々と仕事をこなす中、突然オフィスにいる中の半数の人が倒れるように机に突っ伏してしまう。
「あれ、みんなも激務?」
美姫は周りの皆の様子に驚くが、更に皆は黒いオーラを出してしまう。そしてそこからマリスが産まれる。
「嘘、マリス⁉」
マリスは倒れた人の分だけ産まれていた。
「きゃぁぁ!」
オフィスの皆もマリスに慌てふためいてしまう。
「何でこんなにマリスが?」
美姫は困惑しながらもオフィスの皆を庇いながらマリスの相手をする。
「どうすればいいの?」
美姫はオフィスでシンデレーザーに変わる訳にも行かず、苦戦を強いられてしまう。
一方、夜衣魚もアパレルショップで働いている時に店員や客の何人かが突然倒れマリスを産み出す現象に遭遇してしまう。
「何これ、幹部も現れてないのに⁉」
夜衣魚も姿を変えることが出来ない中なんとかマリスを牽制する。
アラモードも大学の講義中、同じような状況に陥っていた。
「マリスだらけじゃん!どうなってる訳⁉」
アラモードは講義室の皆を庇いながらマリスの相手をする。
林檎もカフェで働いている時に客の半分が突然倒れ、マリスを産み出す状況に遭う。
「林檎ちゃん、あの怪物は何?」
「落ち着いて下さい店長、私がなんとかします。」
林檎はカフェの店長を庇いながらマリスの相手をする。
「それにしても多いな…。」
林檎も多数のマリスに苦戦を強いられていた。
竹月も授業中に生徒や先生が突然倒れ、マリスを産み出す状況に遭っていた。
「皆さん、どうされたのですか?」
竹月は倒れた皆を心配するが、それよりも多数のマリスに困惑する。
「この数、人に直接会ってマリスを産み出したとは思えません!」
竹月はいつもと違うマリスの産み出し方に勘付きながらも、マリスの対処に追われる。
そして風布花も授業中に同じ状況に陥っていた。
「そんな、こんなにも大量のマリスが…。」
風布花も不可解な状況にかなり苦戦を強いられていた。
多数のマリスになんとか相手をする美姫。そんな時、剣二から連絡が入る。
「おい、そっちにマリスはいるか?」
「生憎ね。」
「だったら意識がある人は建物の中に避難させて、マリスを外に誘き出せ!」
「了解!」
美姫は剣二から指示を仰ぐ。
「皆さん、ここでじっとしていて下さい!」
美姫はオフィスにいる人達に指示をしてマリスを連れてビルの外へ向かう。
外に出ると街には大量のマリスが溢れかえっていた。
「何なのこれ…。」
美姫はその光景に唖然としながらも、大量のマリスを掻き分けて洋館へ急ぐのだった。
美姫が洋館に着くと、全員が集まっていた。
「あのマリスの集団は何?一体何が起こっている訳?」
美姫は少し苛立ちを覚えながら剣二に問い詰める。
「そのことなんだが、もしかしたらこれが原因かも知れない。」
剣二はそう答えてパソコンの画面を見せる。そこには掲示板サイトが示し出されていた。
「これは?」
美姫が尋ねると、今度は輝弓が答える。
「これは、今めきめきとアクセス数を伸ばしている掲示板サイトです。社会や時事問題に対しての内容に誹謗中傷や鬱憤など何でもありの書き込みばかりで多くの人が見ています。恐らくこれにアクセスした人が回線からダークストーリーズの力を送り込まれて、マリスを産み出したのかもしれません。」
輝弓の考えは合点が行くものだった。ダークストーリーズの幹部といえど短期間で大量のマリスを産み出せるとは思えなかったからだ。しかし、依斧が一つだけ合点の行かないことを話す。
「しかし、このマリスが一体どの幹部が仕組んだものなのでしょう?」
「確かに、こんなに頭の回る幹部なんているかなぁ…。」
皆は今回の事件が誰の手によるものなのかわからず、考えあぐねてしまう。するとパソコンの画面に突然、カイザードの姿が映る。
「やあやあホロテイルジュの皆さん、街は大変なことになっていますねぇ。」
「この現状を起こしたのはこいつか!」
皆はカイザードの姿を見て全てを察する。そしてカイザードは一同に向かって話し続ける。
「私の名はカイザード。あなた達の近くにマリスを集めておきました。さあ存分に戦って下さい。」
カイザードがそう言うと画面が切れる。
「カイザード、結構本気だよね…。」
美姫はカイザードに今までの幹部とは違う気迫を感じていた。
「とにかく行くぞ。」
剣二がそう言うと、皆は洋館を出て街へ急ぐのだった。
街へ急ぐと、大量のマリスが街を徘徊していた。
「うわぁ、こんなにいっぱい…。」
皆はマリスの多さに圧倒されてしまう。そして後ろを振り返ると大量のマリスに包囲されてしまう。
「こっちにもマリスが⁉」
皆は大量のマリスに包囲され、背中合わせで円陣を組む。
「ねぇ桃井、初めて九人で戦うよね。」
「ああ、俺達ならこの状況を打破出来る。」
美姫と剣二はそんな言葉を交わした後、深呼吸をする。
「…行くぞ!」
剣二の掛け声で、皆は一斉に本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
「しし座!ルビー!桃太郎!」
「みずがめ座!サファイア!浦島太郎!」
「おうし座!シトリン!金太郎!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「ふたご座!オパール!ヘンゼルとグレーテル!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
「やぎ座!パール!赤ずきんちゃん!」
九人が一斉に叫ぶと空が暗くなり、九つの星座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来て!」
「来い!」
「来な!」
「来るんだ!」
「来ちゃって!」
「カモン!」
「来なさい!」
「おいでなさい!」
「来て下さい!」
九人がまた叫ぶと九つの星座の最輝星が光を放ち、九人の指輪にそれぞれ届く。そして本から文字が飛び出し、九人の体を包む。やがて九人の体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「シンデレーザー!」
「キルビーレオン!」
「サファイアロード!」
「アックシトリナー!」
「マーメイデスト!」
「ツインスウィーテス!」
「ポイズノーム!」
「フルムーンハイヤー!」
「レッドバイトゥース!」
九人はそれぞれ名乗り、マリスに立ち向かう。マリスは見渡す限りでも数十体ほど確認できるほど多かったが、それでも九人が屈することはなかった。
「レーザーストライク乱射!」
シンデレーザーは必殺技のレーザー光線を乱射してマリスを数十体程一掃する。
「出てこい!」
キルビーレオンは本を開いて犬、猿、雉を召喚する。そして自身は腰を落として野性的な構えを取り、そして体にライオンの幻影が浮かぶ。
「必殺、獅子とお供の舞!」
キルビーレオンはライオンのように走りながら犬、猿、雉と共に突進し、マリスを数十体程一掃する。
「よ~し、今度こそこの技を使う時!」
サファイアロードは意気込んで本を開く。すると本から鯛や鮃などの魚が現れる。
「必殺、鯛や鮃の舞い踊り!」
サファイアロードがそう言うと魚達はマリスと共に踊り出す。魚達との踊りに酔いしれたマリス達は何故か一列に並ぶ。
「秘弓・水の一射!」
サファイアロードは一列に並んだマリスに弓矢を放ち、マリスを数十体程一掃する。
「はぁぁ!」
アックシトリナーは斧を振るい、マリスを攻め立てる。
「必殺、アルデバラッシュ!」
アックシトリナーは牛のように突進し、マリスを数十体程一掃する。
「マーメイトライデント!」
マーメイデストは三又の槍を振り回してマリスを攻め立てる。
「よし、ここで大きな技を!」
マーメイデストはそう言うと槍を華麗に振り回す。
「トライデントクロス・オーシャンパニック!」
マーメイデストはX字型の斬撃と共に大きな津波を起こし、マリスを数十体程一掃する。
「ツインデスナイフ!」
ツインスウィーテスは二人に分身し、機敏な動きでマリスを翻弄する。
「必殺、お菓子の家!」
そして一人に戻ったツインスウィーテスは本を開いてお菓子の家をマリスの頭上に召喚して落とし、マリスを数十体程一掃する。
「スコーピオンウィップ!」
ポイズノームは毒針のついた鞭を振り回してマリスを攻め立てる。そしてポイズノームは本を開いて無数のリンゴを召喚する。
「ポイズンストラングル・カバードアップル!」
ポイズノームはそう叫んでマリスに毒リンゴを放り、マリスを数十体程一掃する。
「参ります!」
フルムーンハイヤーはそう言って本を開き、無数の満月を空間に散りばめる。そして満月を四方八方に飛び回り、マリスを翻弄する。
「満月ラッシュ!」
地面に着地したフルムーンハイヤーは無数の満月をマリスにぶつけ、マリスを数十体程一掃する。
「え、えっと…、きゃあ!!」
レッドバイトゥースは理性を保ったまま戦えるようになって間もないせいか、逆にマリスに翻弄されていた。しかしレッドバイトゥースは諦めずに指輪を嵌めた左手を高く挙げる。
「やぎ座!」
レッドバイトゥースがそう言うと空にやぎ座が浮かび上がり、無数の山羊が出てきてマリスに突進する。そしてレッドバイトゥースは本を開く。
「小石マジック!」
レッドバイトゥースがそう言って指を鳴らすと、マリスのお腹に小石が溜まりマリスはマリスを数十体程倒れてしまうのだった。
皆がマリスを一気に倒しても、マリスは一向に減らない。シンデレーザーとキルビーレオンはマリスに追い詰められ、背中合わせになる。
「これ厄介じゃない?」
「ああ。所詮は雑魚の群れだが、それにしても数が多い。」
二人は倒しても切りがないマリスの多さに圧倒されていた。
「これは、やるしかないよね。」
シンデレーザーはそう言うと本を開く。
「やまねこ座!ダイヤモンド!マレーン姫!」
シンデレーザーはそう叫ぶとワイルドタイプになり、野性的な動きでマリスを攻め立てる。
「みんな、私達も行くよ!」
マーメイデストの掛け声でマーメイデスト、ポイズノーム、ツインスウィーテス、フルムーンハイヤー、レッドバイトゥースは背中合わせになる。そして各々左手を挙げたり本を開いたりする。
「いるか座!」
「三枚の蛇の葉!」
「七羽のカラス!」
「うさぎ座!」
「おおかみ座!」
五人は一斉に叫び、それぞれフロートタイプ、スネークタイプ、クロウタイプ、ジャンパータイプ、クリムゾンタイプに姿を変える。
「はぁぁ!」
マーメイデストは地面を海のように泳ぎながらマリスを翻弄する。そして三又の槍でマリスを一掃する。
「「出て来なさい!」」
ポイズノームとツインスウィーテスは本を開き、それぞれ蛇とカラスを召喚してマリスに攻撃をする。流石のマリスも蛇とカラスの動きが読めず翻弄されてしまう。
「参りますよ、風布花ちゃん。」
「はい!」
フルムーンハイヤーはレッドバイトゥースを抱えて空高く跳び上がる。
「ひゃあ!高い。」
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。」
レッドバイトゥースはあまりの高さに困惑してしまうが、なんとか攻撃の構えを取る。そして二人は一気に急降下してマリスを一掃する。
「行くよ!」
シンデレーザーは本を開いて塔を何本も召喚し、マリスをその中に閉じ込める。
「ワイルドネイルスラッシュ!」
シンデレーザーがそう言うと、鋭い爪から斬撃が繰り出され、マリスを閉じ込めた塔は次々と破壊される。皆の奮闘の甲斐あってかなりのマリスを殲滅したが、それでもかなりの数のマリスがいた。
「もう!何体いる訳⁉」
シンデレーザーはあまりのマリスの多さに苛立ってしまう。そこにサファイアロードが駆け寄る。
「そりゃあのサイトは水面下で人気があったみたいですから、恐らく十万体のマリスを産み出せるはずです。」
「「「「そんなに⁉」」」」
皆はマリスの数に狼狽えてしまう。
「ああもう!こういう時こそ平常心だ、平常心平常心…。」
シンデレーザーは苦戦を強いられる時こそ落ち着きを持とうとする。そんな時、空が暗くなってシンデレーザーの本が光り出す。
「え…?」
シンデレーザーが恐る恐る本を開くと、新しいページに文字が刻まれる。その文字を読むとまたシンデレーザーの知る童話が書かれていた。
「この童話…、知ってる!」
そしてシンデレーザーが空を見上げると、つる座が現れていた。
「あれは…、つる座!」
そして希望を見出したシンデレーザーは思い切り叫ぶ。
「つる座!ダイヤモンド!いばら姫!」
そしてつる座の最輝星が光を放ち、ダイヤモンドの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、シンデレーザーの体を包む。やがてシンデレーザーの体は光を放ち、新たな戦士へとその姿を変える。
その戦士はデザインの違う純白のドレスに茨のようなものが巻き付き、脇からは鶴の翼のような物が生えていた。
「シンデレーザー・エレガントタイプ。」
新たな姿となったシンデレーザーは名乗り、マリス達を睨み付ける。
「また、新たな姿が…。」
「美姫さん、やっぱり凄い…。」
皆は新たな姿となったシンデレーザーに圧倒されていた。
「ここからは、優雅に行くよ!」
シンデレーザーは真っ直ぐな眼差しでそう言い、マリス達に立ち向かうのだった。




