第十二話 それぞれの想い
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はダークストーリーズの幹部スーターが産み出したマリスに苦戦してしまう。しかしわざわざ授業を抜け出して助太刀してくれた三浦竹月の助けによって無事に倒すことが出来る。そして美姫は小学生のメンバー、赤園風布花が戦わない理由を小学生だからということ以外にもあると気になっていたが、桃井剣二に尋ねても何も答えない。そんな中、新たな幹部ウルフィンの出現により苦戦を強いられる美姫。それを見た風布花はレッドバイトゥースへとその姿を変える。そして暴走した彼女の姿を見て美姫は彼女が戦わない本当の理由を知る。それを教えてくれなかった剣二に対し、美姫は信用を失いかけるのだった。
桜名美姫は眠っている赤園風布花を抱きかかえたまま、彼女の家まで運ぶ。そしてインターホンを押すと、母親が現れる。
「あら、どちら様?」
「あ、えっと…。」
美姫は風布花の母親に尋ねられ、言葉に詰まってしまう。恐らく風布花はホロテイルジュのことなど家族に話している訳もないので、風布花との関係性をどう説明すればいいのかわからなかった。
「えっとこの子がたまたま倒れているのを見かけて、鞄に住所とか書いてあったので取り敢えず家まで運ぼうかなと思いまして。」
美姫は自分でもこの説明が少し無理があることをわかっていた。しかし母親は飲み込んでくれる。
「あらそうなの、折角だから上がって行って。」
「あ、ありがとうございます…。」
こうして美姫は、風布花が目を覚ますまで付き添うことにするのだった。
美姫は風布花の部屋に入り、風布花をベッドに寝かせる。
「もうすぐ二時間か…。」
美姫は風布花が目を覚ますためにはキスをしなければならないことを思い出し、精神を整えようとする。
「こんな小さい子の唇を奪うなんて…。」
美姫は風布花にキスをすることにどうしても抵抗を拭えない。そして風布花の顔をじっと見つめてしまう。
「はぁ…、やっぱり風布花ちゃん可愛いな。」
美姫は風布花の小さくもぽってりした唇に見蕩れてしまう。そしてゆっくりと風布花の顔に近付く。
「これはあくまで目を覚ますためだから…。」
そしてキスをしようとすると、突然ドアがガチャっと開く。そして風布花の母親が入って来る。
「あら、大丈夫?」
「あっお母さん、大丈夫です!」
美姫は風布花にキスをしようとしていることが母親に知られそうになり、咄嗟に離れて何事もなかったかのように振る舞う。そして母親はお菓子とジュースをお盆に乗せてテーブルに置く。
「あの、ちょっとお尋ねして宜しいかしら?」
「は、はい…。」
風布花の母親はふと美姫に尋ねようとする。美姫は何を聞かれるのかと思い警戒する。
「もしかしてあなた、風布花のボランティアの方?」
「え?」
「いや、風布花って大人の方々とボランティア活動をしていて、もしかしたらあなたもその方なのかなと。違ったら良いんです。」
「あ、いや、私も風布花ちゃんとはボランティアで一緒なんです。」
美姫は風布花がホロテイルジュをボランティアの組織と言っていることを理解し、咄嗟に話を合わせる。
「そう、あなたみたいな人がいて良かったわ。」
風布花の母親は何故か胸を撫で下ろしていた。
「前にボランティアの方々が二人ほどご挨拶に来たことが会ったんですけど、少し心配な方ばかりだったので…。」
「そうなんですか?」
「はい。無愛想な男性の方と、挨拶中なのにずっとパフェばかり食べている女性の方でしたので…。」
「あ。」
美姫は風布花の母親の話で、挨拶に来たのが剣二とアラモードであることを察する。
「まあ、少し変な人も居ますが楽しくやってしまう。」
美姫はなんとかフォローするようにそう言ってやり過ごす。
「そう、なら良かったわ。じゃあゆっくりして行って下さいね。もう遅いし泊まって行ってもいいですし…。」
「いえ、もう少ししたら帰るので。」
美姫がそう言うと、母親は部屋を出る。
「さて、もう二時間経ったし。」
美姫は覚悟を決めてゆっくりと風布花の唇に自身の唇を重ねる。すると風布花が目を覚ます。
「ん⁉」
風布花の声で美姫は咄嗟に離れる。
「あ、ごめん風布花ちゃん…。」
美姫と風布花はお互いに照れてしまう。
「あの美姫さん、やっぱり私はまた暴走したんですか?」
「う…、うん。」
風布花はまた自身が暴走した事実を知り、罪悪感を感じる。
「風布花ちゃんが戦わない理由って、暴走するからだったんだね。」
「はい、ご心配を掛けたくなかったのであまり言いたくはなかったんですけど…。」
美姫は改めて風布花の暴走の件に触れる。そして風布花は言いたくなかったことを告げると、ゆっくりと説明を始める。
「あの、書庫で複数の星座や童話の力を使うことが出来る戦士がいたって話がありましたよね?」
「ああ、あれのことね。」
「私、実は二つの星座に選ばれているみたいなんです。」
「二つの星座、もしかしてやぎ座とおおかみ座のこと?」
「はい、やぎ座だけなら私でも扱えるんですけどおおかみ座の力は制御出来なくて…。」
「そっか、だから今まで戦わなかったんだね。」
「…はい。」
美姫はそれから何も言わなかった。美姫は風布花が今までこのことをずっと胸の内にしまっていたことを察していたからだ。
「じゃあ私、もう帰るね。」
「はい、付き添ってくれてありがとうございました。」
そして美姫は荷物を持って風布花の部屋を出る。風布花は美姫が部屋を出たことを確認すると、美姫にキスをされたことを思い出して顔を赤らめてしまう。
「美姫さんの唇が、私に~!」
風布花はそう言って枕を抱き締め、横たわってのたうち回ってしまうのであった。
そして数日が経ち、美姫は洋館に赴いて剣二に会う。この日、美姫は剣二に言いたいことがあった。
「桃井、何で風布花ちゃんのことを言ってくれなかったの?」
「はぁ…、またその話か。」
剣二は美姫の言葉で嫌な顔をしてしまうが、美姫は引き下がらない。
「私達、仲間なんだよ。そのくらい言ってくれても良かったんじゃないの?」
美姫が反論する中、風布花以外のメンバーが全員部屋に入る。
「美姫さん、どうしたんですか?」
水原夜衣魚は美姫の様子が気になり尋ねる。
「いや、この前の風布花ちゃんのことで。」
美姫は少し怒りを込めたような口調で話す。
「あ、この前のことですか。」
夜衣魚は少し怯えながらも美姫が怒っている理由を察する。そして美姫と剣二は更に口論になる。
「お前に風布花のことを言ったところでどうだって言うんだ。」
「そもそも!何で暴走のことをわかってて風布花ちゃんをここに置いておく訳?」
「お前が知る必要はない。」
「またそれ⁉」
美姫は何も答えずのらりくらりと話を逸らす剣二に腹を立てる。そして美姫は剣二にあることを言う。
「風布花ちゃんを脱退させて!」
「え?」
「嘘!」
美姫の言葉に、皆は驚いてしまう。そして剣二は美姫の言葉に尋ねる。
「断ると言ったら?」
「私も風布花ちゃんを連れて出て行く。もうこれ以上、風布花ちゃんを危険なところに置いておけないから!」
そう言って美姫は洋館を出て行くのであった。その光景に、洋館にいた皆は静まり返ざるを得なかった。
「どうするんだよ剣二、美姫さん組織抜けちゃうよ。」
浦賀輝弓は剣二に美姫のことについて尋ねる。しかし剣二は触れられたくないように答える。
「知るか、俺には関係のないことだ。」
剣二の言い分に、夜衣魚達は腹を立てる。
「ちょっと剣二さん、そんな言い方はないんじゃないですか?」
「それに剣二さん、確かに私達に言ってないことがまだありますよね?」
夜衣魚、そして鈴木林檎も剣二に異議を唱える。しかし剣二は何も答えなかった。
「もういいです。林檎、美姫さんを連れ戻しに行こう。」
「わかった。」
夜衣魚と林檎は剣二に呆れ、美姫を連れ戻しに洋館を出る。
「私もお供します。」
「俺も行きます。」
三浦竹月と金山依斧も、美姫を連れ戻しに洋館を出る。そして洋館には剣二と輝弓、そして気にせずずっとパフェを食べていた双見アラモードだけとなっていた。
「一気にバラバラになっちゃったって感じだよね、剣二。」
「…ああ。」
剣二は元気を失くしたようにそう答える。剣二もこの事態に責任を感じざるを得なかった。
「まあでも剣二の気持ちもわかるよ。」
輝弓は剣二を励ますように答える。しかしアラモードはその輝弓の言葉が引っ掛かってしまう。
「輝弓さん、それってどういうことですか?」
「あ、アラモード聞いてた?」
輝弓はアラモードがすっかりパフェに夢中になって話を聞いていないものだと思っていたため、驚いてしまう。そして輝弓はアラモードにゆっくりと話すのであった。
一方、洋館を出た美姫は風布花の元を訪れていた。風布花は部屋のベッドで休んでいた。
「美姫さん、その感じってもしかして剣二さんと喧嘩しました?」
「あ、バレた?」
風布花は美姫の元気のなさから剣二と喧嘩したことを察する。風布花はそのことに責任を感じる。
「ごめんなさい、私のせいで…。」
「気にしないで。でも、やっぱり風布花ちゃんはホロテイルジュにいるべきじゃないよ。」
「え?」
美姫は風布花を励ますが、同時にホロテイルジュからの脱退を勧める。
「元々私、小学生がこんな危険な戦いをするなんて気が引けてたんだ。それに力をコントロール出来ないなら、いてもしょうがないよ。」
「そう…、ですか…。」
風布花は美姫の言葉に、少し寂しそうな様子を見せる。
「風布花ちゃん?」
美姫は風布花の様子に違和感を覚える。そんな時、風布花の家のインターホンが鳴る。
「は~い。」
風布花の母親がドアを開けると、そこには夜衣魚、林檎、竹月、依斧の四人がいた。
「あの、風布花ちゃんと一緒にボランティアを行っている者です!」
夜衣魚は必死な感じで風布花の母親に嘘を吐く。
「あら、ボランティアの方なら一人いらしてますよ。皆さんもどうぞ上がって下さい。」
「はい、お邪魔します。」
そして皆は風布花の部屋に行くのだった。
「美姫さん、やっぱりここにいた。」
「夜衣魚ちゃん、みんな。」
美姫は皆を見て、少し顔を合わせづらかった。
「美姫さん、私達も剣二さんと喧嘩しちゃいました。」
「そういうことで、美姫さんを探そうってなって。」
「そうなの?」
夜衣魚と林檎は美姫に経緯を説明し、美姫は驚く。
「大体剣二さん、教えてくれないことが多いんですよ~。」
そして夜衣魚は剣二の愚痴を溢し始める。
「そうですね、ホロテイルジュ自体も秘密が多いですし。」
「私達もたまたま力に選ばれたというだけであって、詳しいことは未だによくわかっていません。」
林檎と竹月も、自分達がホロテイルジュについて何も知らないことを明かす。
「やっぱり桃井の奴、大事なことを隠したまま私達を戦わせてるんだよ。」
美姫は皆も自分と同じく剣二への鬱憤があるのだと感じ、安堵の気持ちを覚える。しかし、依斧だけは剣二のフォローをするように口を開く。
「でも、剣二さんもホロテイルジュのことをあまり知らないまま戦っているんです。」
「それどういうこと?依斧君。」
美姫は依斧の言葉が引っ掛かり、ふと尋ねる。そして依斧はゆっくりと話す。
「実は、ホロテイルジュは俺達を入れて12人いるんです。」
「12人!?」
美姫はその12人という人数に驚く。そしてそれは夜衣魚、林檎、竹月、風布花も初耳だった。そして依斧は説明を続ける。
「はい。俺達の他にあと三人、皆さんが会っていないメンバーがいるんです。」
「その人達は、何で私達の前に現れない訳?」
夜衣魚は依斧に尋ねる。
「剣二さんと輝弓と俺は前に一度謁見したのですが、来るべき日のために力を溜めていると仰っていました。」
「何それ?」
美姫はその説得力に欠ける理由に納得出来なかったが、剣二もその抽象的なものに振り回されているのかと思うと、少しだけ同情するところがあった。
「桃井が言っていた上って、その人達のことなんだね…。」
そして依斧に続くように、夜衣魚も口を開く。
「風布花ちゃんの件は前に風布花ちゃんが暴走した時が結構悲惨で、隠していたというよりみんな口に出しづらかったんです。」
「そういうことだったんだ…。」
美姫は剣二も悩んでいたことを理解し、剣二少しに申し訳なさを感じてしまう。
「じゃあ美姫さん、私達もう行きますね。落ち着いたらまた洋館に来て下さい。」
「わかった、みんなも気をつけてね。」
そして夜衣魚、林檎、竹月、依斧の四人は美姫に見送られながら風布花の家を後にするのだった。
「へぇ、ホロテイルジュにあと三人ですか…。」
「そういうこと。」
一方のアラモードも、輝弓からホロテイルジュの残り三人のことを聞いていた。
「それにしても、ホロテイルジュも結構底が知れない組織なんですね。」
「まあな。」
アラモードの言葉に、剣二も同情する。
「私達、その人達に良いように遣われているだけなんですかね?」
「それは、どうなんだろうな…。」
「まあ、何かそれっぽい感じはしたけどな~。」
アラモードの問いに、剣二と輝弓はそれぞれそう答える。剣二も輝弓も、ホロテイルジュの真意というものはわからなかった。
洋館に向かう夜衣魚、林檎、竹月、依斧。
「ま、これで一件落着かな?」
「そうかもね。」
夜衣魚と林檎は安堵の気持ちに浸りながら言葉を交わす。しかしそんな皆の前にマリスが現れる。
「嘘、マリス?」
マリスが現れて一同は驚いてしまう。しかもマリスは一体ではなく、四体もいた。
「何でこんなに?」
「とにかく行こう!」
四体もいるマリスに驚きが隠せない一同だが、取り敢えず一斉に本を開く。
「おうし座!シトリン!金太郎!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
四人が一斉に叫ぶと空が暗くなり、それぞれの星座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来るんだ!」
「来ちゃって!」
「来なさい!」
「おいでなさい!」
四人が空にそう叫ぶと、それぞれの星座の最輝星が光を放ち、それぞれの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、それぞれの体を包む。やがて四人の体は光を放ち、戦士へとその姿を変える。
「アックシトリナー!」
「マーメイデスト!」
「ポイズノーム!」
「フルムーンハイヤー!」
四人はそれぞれ名乗り、マリスに立ち向かう。
「わかった、すぐ行く。」
剣二は戦っている皆から連絡を受け、すぐに支度を整える。
「行くぞ輝弓、アラモード。」
「オッケー。」
「え、私もですか?」
「いいから来い。」
剣二からそう言われアラモードは面倒臭がるが、剣二は無理矢理引っ張って行く。
「うわぁぁぁ!」
猛攻するマリスに苦戦するアックシトリナー、マーメイデスト、ポイズノーム、フルムーンハイヤーの四人。そこに剣二、輝弓、アラモードの三人が本を開きながら駆け付ける。
「しし座!ルビー!桃太郎!」
「みずがめ座!サファイア!浦島太郎!」
「ふたご座!オパール!ヘンゼルとグレーテル!」
三人がそう叫ぶと、戦士の姿に変わる。
「キルビーレオン!」
「サファイアロード!」
「ツインスウィーテス!」
三人はそれぞれ名乗り、マーメイデスト達に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「すみません、大丈夫じゃないかもです。」
キルビーレオンは皆の様子を見て、マリスに警戒する。
「俺に任せてよ。」
サファイアロードはキルビーレオンにそう言うと、本を開く。すると、沢山の魚が出て来る。
「必殺、鯛や鮃の舞い踊り!」
サファイアロードがそう言うと、魚達はマリスを取り囲んで一斉に踊り始める。しかし、マリスには通用せず攻撃を受けて消滅してしまう。
「くそっ、ダメか。」
攻撃が通用せず、悔やんでしまうサファイアロード。しかしキルビーレオンには少し疑問に思うことがあった。
「おい、今のはどういう技だったんだ。」
「え?」
キルビーレオンには魚達がただ踊っているようにしか見えなかった。
「ここからが見物だったんだよ。あぁ~惜しい!」
「お前なぁ…。」
キルビーレオンはサファイアロードに呆れてしまう。
「こうなったら、全員で正面突破だ。」
「「「「「はい。」」」」」
キルビーレオンがそう言うと、七人は立ち上がってそれぞれ武器を召喚し、マリスに立ち向かう。
一方、風布花は美姫にホロテイルジュへの思いを語っていた。
「私、この組織に出会って良かったと思ってるんです。」
「そうなの?」
美姫は風布花がホロテイルジュに恩義を感じていると知り驚く。
「はい。私、学校でもあまり目立つ方じゃなくて自分が誰かに必要とされているって感じたことがなかったんです。でもホロテイルジュの皆さんはこんな私でも必要としてくれて、それが嬉しかったんです。」
「そうなんだ…。」
美姫は風布花の並々ならぬ思いを感じると共に、風布花のためを思って脱退させようとしたことを恥じていた。
「ごめん風布花ちゃん、私風布花の気持ちを考えてなかった。」
「いえ、美姫さんの気持ちも嬉しかったですよ。」
「そう、ありがとう。」
美姫はそう言って風布花を抱き締める。そんな時、美姫の携帯電話に着信が入る。
「もしもし?」
美姫がその電話に出ると、夜衣魚の声が聞こえる。
「もしもし美姫さん?今マリスが四体も出てるんです。今みんなで戦ってるんですけど、全然敵わなくて。」
「わかった。」
美姫は皆の状況を知り、向かおうとする。
「行くんですか?美姫さん。」
「…うん、やっぱり訳わかんない組織にいたとしても見過ごせないものがあるから。」
美姫は風布花にそう言うと立ち上がって部屋を出ようとする。
「あ、待ってください美姫さん。」
「何?」
風布花はふと美姫を呼び止める。言われるがまま立ち止まる美姫の頬に、風布花はキスをする。
「え⁉」
美姫は突然の出来事に驚いてしまう。
「あの、この前私にキスしてくれたので、そのお返しです。」
「いや、あれはしょうがなかったっていうか…。」
美姫は動揺しながら先日のことを弁解しようとするが、風布花はそんな美姫の言葉を遮るように抱き着く。
「私も、ホロテイルジュの一員として皆さんの勝利を信じてますから。」
「風布花ちゃん…。」
美姫は風布花の言葉と温もりに、純粋で真っ直ぐな気持ちを感じる。
「大丈夫、必ずみんなで勝って来るから。」
美姫は風布花を抱き締めてそう答える。そして皆の元に向かうのだった。
「秘剣・桃の舞!」
一方、キルビーレオン達は未だマリスに苦戦を強いられていた。キルビーレオンが必殺剣を放ってもマリスには一体も通じない。
「こうなったら…!」
そう言ってマーメイデスト、ポイズノーム、アックシトリナーは同時に跳び上がる。
「トライデントクロス!」
「ポイズンストラングル!」
「タウラスブレイク!」
三人は同時に武器を振り下ろすが、マリスはいとも簡単に跳ね除けてしまう。
「「「うわぁぁ!」」」
三人はそのまま飛ばされてしまう。
「次は私達が参ります。」
そう言ってフルムーンハイヤーが立ち上がる。
「ほら、俺達が行くんだよ。」
「えぇ~。」
サファイアロードは消極的なツインスウィーテスの腕を引っ張って立ち上がる。
「満月ラッシュ!」
「お菓子の家ラッシュ!」
フルムーンハイヤーとツインスウィーテスはそれぞれ満月とお菓子の家を無数に召喚し、マリスにぶつける。
「秘弓・水の一射!」
サファイアロードは止めを刺すように弓を射る。しかしそれでもマリスには通用しない。
「そんな…。」
フルムーンハイヤー達は落胆してしまう。そして四体のマリスは一斉に攻撃する。
「うわぁぁぁ!」
マリスの攻撃によって吹き飛ばされてしまう七人。
「くそ、ここまでか…。」
キルビーレオンが諦めかけようとしていたその時、突然一筋のレーザー光線が一体のマリスの胸を貫く。
「これ、もしかして!」
皆が希望の眼差しを浮かべながら後ろを振り返ると、シンデレーザーがレーザー銃を構えたまま歩いて来ていた。そして胸を貫かれたマリスは消滅してしまう。
「シンデレーザー。」
シンデレーザーは名乗りながら歩き、ホロテイルジュの皆とマリスの間に立つ。キルビーレオンも立ち上がり、シンデレーザーの隣に立つ。
「俺を、信用してくれる気になったか?」
「偉そうに言わないで。私はホロテイルジュのためじゃなくて、守りたいものがあるから戦うだけ。」
キルビーレオンの問いに、シンデレーザーは少し怒ったような口調で答える。
「はぁぁぁ!」
そしてシンデレーザーは残った三体のマリスに立ち向かう最初は三体のマリスに優勢に立つマリスだったが、一体のマリスがシンデレーザーの肩を攻撃してしまう。
「くっ…!」
シンデレーザーは肩に強い衝撃を受けてしまう。先日暴走したレッドバイトゥースの攻撃によって負傷した肩が、まだ痛んでいたのだ。そしてシンデレーザーは膝をついてしまう。
「うがぁぁぁ!」
マリスはシンデレーザーの隙を突いて攻撃しようとするが、その瞬間シンデレーザーはレーザー銃で攻撃する。
「負ける訳に行かないの。風布花ちゃんと約束したんだから。必ずみんなで勝って来るって。」
シンデレーザーは風布花との約束を思い出し、真剣な眼差しを浮かべる。その時、シンデレーザーの持っている本が眩い光を発する。その光を浴びてたじろぐ三体のマリス。
「これって…。」
シンデレーザーが本を開くと、白紙だったページに文字が刻み込まれる。
「この話、知ってる…。」
シンデレーザーはその文字を読み、自身の知っている童話であることに気付く。そして空が暗くなり、やまねこ座が浮かぶ。
「やまねこ座…。」
新しい童話と星座に、ホロテイルジュの他の戦士はあることに気が付く。
「そうか、あれが新しい童話と星座…。」
キルビーレオンはシンデレーザーに新しい力が宿っていることを察する。
「その力を使え!」
「わかった。」
キルビーレオンの叫びに応えるようにシンデレーザーは立ち上がる。
「やまねこ座!ダイヤモンド!マレーン姫!」
シンデレーザーは勢いよく叫ぶ。そしてやまねこ座の最輝星が光を放ち、ダイヤモンドの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、シンデレーザーの体を包む。やがてシンデレーザーの体が光を放ち、シンデレーザーは新たな姿に変わる。
その戦士はスカートが少し短くなり、ドレスは灰色となって脇腹のところにはやまねこのような模様が刻み込まれ、頭には猫耳が生え、鋭い牙と爪が備わっていた。
「シンデレーザー・ワイルドタイプ。」
シンデレーザーはそう言って腰を低く落とし、野生動物のような荒々しい構えを取る。
「あれ、風布花ちゃんの時と同じ構え!」
「もしかして、暴走が…?」
その構えに、ホロテイルジュの皆は心配してしまう。しかしシンデレーザーは的確にマリスに飛び掛かり、攻撃する。
「ガルルルル!」
その咆哮こそ暴走したレッドバイトゥースと同じものだったが、シンデレーザーはその鋭い爪と牙でマリスを荒々しく攻め立てる。その姿に暴走している様子はなかった。
「力を、使いこなしている…。」
キルビーレオンはそのシンデレーザーの戦い方に感心する。
「止め、行くよ!」
シンデレーザーはそう言うと本を開き、巨大な塔を召喚する。そしてその塔に三体のマリスを閉じ込める。
「はぁぁ!」
そして鋭い爪でマリスごと塔を破壊するのだった。
「勝った…。」
「勝った~!」
皆はシンデレーザーがマリスを倒したことに歓喜し、元の姿に戻って美姫に駆け寄る。
「みんな…。」
シンデレーザーも美姫の姿に戻る。そして夜衣魚、林檎、竹月は一斉に美姫に抱き着く。
「やりましたね、美姫さん。」
「まさか本当に、新しい力を引き出すなんて。」
「美姫さんの戦うお姿、とても麗しかったです。」
「ありがとう、みんな。」
そして皆は勝利に浸るのだった。
そして数日後、ホロテイルジュの皆は洋館に集まる。美姫は剣二を睨み付けていた。
「桃井、あんたも組織のことをよく知らずにいたんだって?」
「ああ、それがどうした?」
剣二も美姫を睨み付けて返す。
「まあ、私も言い過ぎたかな?」
「ああ、俺も言い過ぎた。」
二人は睨み合いながらもなんとか和解する。そして緩和された雰囲気の中、夜衣魚が勢いよく口を開く。
「それじゃあ!美姫さんと剣二さんが無事に和解したことと美姫さんのパワーアップを記念して、どこか食べに行きましょう!」
夜衣魚は皆でパーティをしようと提案する。そしてアラモードが続けて話す。
「じゃあスイーツバイキング!」
「また?」
アラモードがまたしてもスイーツバイキングを提案し夜衣魚は呆れてしまうが、美姫はアラモードを庇うように言う。
「いや、今日は甘い物でもいいんじゃない?風布花ちゃんはどう?」
「はい、私は甘い物食べたいです。」
「じゃあ今日はみんなでスイーツバイキングってことで。」
美姫は風布花に尋ね、スイーツバイキングに行くことを決める。
「ま、まあたまには甘い物でも…。」
「じゃあしゅっぱ~つ!」
アラモードは夜衣魚が賛同したと思ったらすぐに背中を押して行こうとする。他の皆も後に続いて洋館を出るのだった。
「じゃあ俺達も行くか、輝弓。」
「ちょい待ち剣二。」
剣二も輝弓を連れて行こうとするが、輝弓が引き留める。
「ホロテイルジュの創設者、つまり美姫さんのお祖母さんのことを言わなくて良いの?」
「…また今度だ。」
輝弓は未だ美姫の祖母の秘密を言わないことが引っ掛かっていた。しかし剣二は輝弓の問いをはぐらかす。そして自身の祖母の秘密を知らぬまま、パーティに向かう美姫であった。
こんばんは、本作を書いておりますロマンス王子と申します。
今回にて第一章は完結となります。第二章以降も完成し次第順次公開して行きますのでご期待くださいますようよろしくお願いいたします。




