第十一話 可愛いあの娘は戦闘禁止?
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫はお酒に酔った勢いでホロテイルジュの仲間である水原夜衣魚と関係を持ってしまう。一方父親との関係に壁を感じている高校生の三浦竹月は父親に参観日に来て欲しいと頼むが、父親はそれを断る。寂しさを感じる中、ダークストーリーズの幹部であるスーターが新たなマリスを産み出しホロテイルジュの一同は苦戦する。そしてマリスとの決闘の日、竹月は参観日の特別授業を抜け出して皆の元に駆けつけ、フルムーンハイヤーへとその姿を変えるのだった。
フルムーンハイヤーの荘厳で華麗な出で立ちに、シンデレーザーは見蕩れてしまう。
「綺麗…。」
「参ります。」
皆が見守る中、フルムーンハイヤーはそう言ってマリスに立ち向かう。
「はぁぁ!」
フルムーンハイヤーは本を開いて無数の月を召喚し、空間に散りばめる。そして散りばめられた月をジャンプ台にして飛び回り、マリスを攪乱する。
「何ですかあなたは!ちゃんと地に足をつけて戦いなさい。」
スーターはフルムーンハイヤーの戦い方に腹を立てる。しかしフルムーンハイヤーは尚も攻撃の手を休めない。
「申し訳ありませんが、これが私の戦い方ですので。」
フルムーンハイヤーはそう言うとマリスの真上から突撃し、マリスを踏みつける。
「ねぇ、竹月ちゃんってあんなに強かったの?」
シンデレーザーはフルムーンハイヤーの強さに驚き、キルビーレオンに尋ねる。
「ああ、フルムーンハイヤーはかぐや姫の戦士だ。月の姫に因んで月のような幻想的な戦い方が出来る。トリッキーだから真正面に強い相手には有利だ。」
キルビーレオンはフルムーンハイヤーについてシンデレーザーに説明する。そしてフルムーンハイヤーは地面にゆっくりと着地し、マリスに向かって不敵に、且つ優雅に立つ。
「止めです!」
フルムーンハイヤーはそう言うとマリスをゆっくりと浮かび上がらせる。
「ケッコン…シテクダサイ…。」
マリスは苦しむようにそう言って唸る。しかしフルムーンハイヤーは決して情けを掛けることはなかった。
「結婚など致しません。ここで倒します。」
そしてフルムーンハイヤーは浮かべたマリスの真下に無数の竹を生やす。
「堕ちなさい!」
そしてフルムーンハイヤーはマリスを一気に落とし、竹で串刺しにする。そしてマリスは消滅してしまう。
「おのれホロテイルジュめ…。」
スーターはマリスを倒され、怒りを隠せない。そんなスーターをフルムーンハイヤーは睨み付ける。
「さあ、人質を解放しなさい!」
「ああわかりましたよ!今はあなたに牙を剥くのも分が悪い。」
スーターはそう言って拉致した人達を召喚し、その場を去るのだった。
「皆さん、もう大丈夫ですよ。」
フルムーンハイヤーはそれまでの真剣な表情から一転して柔らかい表情になり、拉致された人達に縛られるロープを解く。
「ありがとうございます。」
「助かりました。」
拉致された人達は解放された喜びを感じながら感謝し、その場を後にする。そして皆は元の姿に戻る。
「剣二さん、美姫さん、夜衣魚さん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だよ、竹月ちゃん。」
「私もね。」
竹月は桃井剣二の元に駆け寄って庇う。美姫と夜衣魚は大丈夫と答えるが、剣二は竹月に対し一つ気掛かりなことがあった。
「それよりも竹月、学校は大丈夫なのか?今日授業だったんだろ?」
「あ。」
「そう言えば。」
剣二は竹月の授業のことが気に掛かっていた。美姫と夜衣魚もはっと思い出す。
「申し訳ございません。皆さんのことを思ったら、居ても立っても居られませんでした。」
「そんな、高校生に授業をサボるような真似をさせるなんて。」
「お気になさらないで下さい、美姫さん。」
美姫は竹月に授業を抜けさせてしまったことで自分を責めるが、竹月はそんな美姫を庇う。
「それでは、私は先生に怒られて参りますので。」
竹月はそう言って皆の元を後にするのだった。
竹月が家に帰ると、父親が竹月を睨み付けていた。
「竹月、今日担任の先生から連絡があってな。」
「…はい。」
竹月は結局担任の先生から怒られてしまった。授業を抜けて保健室に行ったことになっていたが、当然保健室にいないことが明らかとなり、怒られてしまったのだ。
「いつもは成績も優秀で、学校でも大人しく態度が素晴らしいと聞く。今日授業を怠けたと聞いた時は驚いた。」
父親は暗い口調でそう話す。竹月も父親に怒られることを覚悟していた。
「まあ、お前にも遊び心があったんだな。」
「え…?」
竹月は父親の言葉に耳を疑ってしまう。
「まあ、これからはこんなことをするな。」
父親はそう言って竹月の元を後にする。
「わかりました…。」
竹月は呆然としながらも父親を見届けるのだった。
スーターはダークストーリーズの本拠地へと戻る。するとパンドラス達から冷たい視線を浴びる。
「これが、作戦失敗した後の幹部という訳ですか。」
冷たい視線を浴びながらスーターはそう言う。
「お前には最初から期待なんかしてねぇよ。」
パンドラスはそう言ってスーターを横切って立ち去る。
「残念だけど、私もね。」
バブルガスもそう言って立ち去る。それがスーターにとって、この上ない屈辱だった。
「くそ、次こそは…。」
リベンジを心に誓うスーターの前に、また新たな怪物が現れる。その怪物は狼の獣人のような出で立ちをしていた。
「よぉスーター、お前もやっちまったか。」
「ウルフィン、あなたですか。」
スーターはその怪物をウルフィンと呼ぶ。ウルフィンは荒々しい口調で話す。
「今度は俺に任せてくれねぇか、久し振りに人間界で暴れてぇからよ。」
「ええどうぞ、ご勝手に。」
スーターはウルフィンの相手をするのが面倒臭くなり、適当にあしらう。
「決まりだな。じゃあ行くぜ。」
そう言うとウルフィンは人間界へと赴くのだった。
そしてある日、洋館に集まるホロテイルジュ一同。剣二はスーターを産み出した人間、持内九頭人について話す。
「あの持内とかいう男だが、俺がなんとか説得してまた一から結婚相談所に登録してやり直すことになった。」
「良かったですね。」
「ブラックリストに登録されてるけどね…。」
一同は一応、今回の事件の解決に安堵の気持ちを覚えていた。そして美姫はふと竹月に問い掛ける。
「竹月ちゃん、学校は大丈夫だったの?」
「はい、怒られましたけど。」
竹月は少し笑いながら答える。
「竹月、お前は無理をするな。なるべくなら俺達が戦うからな。」
「はい…。」
剣二は竹月に、学業の優先をするよう指摘する。すると双見アラモードが剣二に不満をぶつける。
「ちょっと剣二さん、それなら私も大学生なので学業を優先して良いですよね⁉」
「講義中でもパフェを食っているであろうお前が言うな。」
しかし剣二はアラモードを一喝して一掃する。
「剣二さんのいけず…。」
アラモードはそう言ってまたパフェを食べようとするが、剣二が取り上げる。
「お前は日頃の行いが悪いから罰として書庫の掃除だ。それまでパフェはお預けとする。」
剣二はそう言ってパフェを冷蔵庫にしまう。
「えぇ~⁉」
アラモードは不満を言いながら書庫に向かう。
「待ってアラモードちゃん、私も手伝うから。」
美姫はアラモードを思って手伝おうと後を追いかける。
「よし、あとのみんなは解散だな。」
剣二はみんなを帰らそうとするが、突然小学生の赤園風布花が声を出す。
「あの剣二さん、私も書庫の掃除して良いですか?」
「どうした風布花?」
「あの、私も全然戦ってないので…。」
風布花は日頃戦っていないことに罪悪感を感じていた。それ故に書庫の掃除を自らやろうとしていたのだ。
「お前は小学生なんだから、別にいいんだぞ。」
「いえ、私も何かお役に立ちたいのでやらせて下さい。」
「じゃあ、宜しく頼む。」
勿論剣二は風布花が戦わないことを咎めてはいなかった。しかしそれでも自らの良心が痛む風布花は黙って帰ることが出来なかった。そして剣二は風布花にも書庫の掃除を頼むのであった。
そして書庫の掃除をする美姫とアラモードと風布花。美姫は初めて訪れる書庫に新鮮な気持ちでいた。
「書庫なんてあったんだね。」
「私もあまり来たことはないです。」
美姫とアラモードはそんな会話を交わしながら箒で掃く。そんな中、風布花がある本を取り出す。
「でも結構ためになる本があるんです、この本とか。」
「へぇ、そうなんだ。」
美姫はそう言って風布花が取り出した本に目を通す。するとそこには興味深い内容が書かれていた。
「へぇ、出来る人は別の星座とか童話の力が使えるんだ。」
「そうなんです。私達の中ではいないんですけど…。」
「ホロテイルジュって、結構古い組織なのね。」
美姫は風布花にホロテイルジュのことを教えられ、興味が湧いていた。するとアラモードは風布花にふと尋ねる。
「ていうか風布花ちゃんって、戦ったことあるの?見たことないけど。」
「まあ、一回だけあります。その時ちょっと他の皆さんに迷惑を掛けてしまって、それから戦ってないんですけど…。」
「そうなんだ。」
美姫とアラモードは風布花が一回だけしか戦ったことがないことを知る。
「そもそも、何で風布花ちゃんはこの組織に入ったの?」
美姫はふと、風布花のホロテイルジュに入った経緯について気になり尋ねる。
「美姫さんと殆ど同じです。指輪と本を持った剣二さんに会って、そのまま興味本位で指輪と本を手にしたら…、って感じで。」
「まあ、そんなところだよね。」
そんな会話を交わしながら三人は掃除を終えるのだった。
「桃井、掃除終わったよ。」
「ああ、すまないな。」
美姫は剣二に掃除が終わったことを伝える。
「…ってアラモードが伝えに来るだろ普通。元々あいつの役目だったからな。あいつはどうした?」
「帰ったけど。」
「あいつに反省の文字はないのか…。」
剣二はそそくさと帰ったアラモードに呆れてしまう。
「ところで、風布花ちゃんのことなんだけど…。」
「何だ?」
美姫は剣二に、ふと風布花のことを尋ねる。
「あのさ、風布花ちゃんが初めて戦った時、何があったの?」
美姫は風布花が初めて戦った時に迷惑を掛けたというのが気になっていた。しかし美姫の言葉を受けた瞬間、剣二は目の色を変えてしまう。
「お前は知らなくていい。それより絶対に風布花を戦わせるな。」
「は?答えになってないけど。」
「いいから絶対に戦わせるな。」
剣二は強くそう言って美姫を帰らせる。美姫は剣二の態度に疑問を感じながらも風布花を連れて洋館を出るのだった。そして剣二はふと冷蔵庫を開ける。するとそこにはアラモードから没収したパフェがなくなっていた。
「あいつ、気配を消して持って行きやがった…。」
剣二はアラモードに呆れを通り越して一種の執念に感心していた。
「すっかり遅くなっちゃったね風布花ちゃん。」
「ごめんなさい美姫さん。」
洋館を出るとすっかり外は暗くなっていた。なので美姫が風布花を家まで送ることにした。二人は手を繋いで歩く。
「ねぇ風布花ちゃん、桃井が風布花ちゃんが前に戦った時のこと聞いたんだけど答えてくれなくて。」
「美姫さんは知らない方がいいですよ。」
「やっぱりそうなの?」
美姫は風布花のことが気になっていたが、剣二と同じようなことを風布花にも言われてしまう。
「そう言われると、気になるなぁ…。」
美姫は風布花に何があったのかどうしても気になってしまう。そして美姫はふと、手を繋いで歩く親子連れが目に入る。
「ねぇ風布花ちゃん、私達も親子に見えるのかな?」
美姫は風布花と19歳も年が離れているので、親子としてもおかしくない年齢差であることにふと気が付いたのだ。
「いや、美姫さんはまだお若いですし全然そんなことないです。」
「うっそ~、もう私アラサーだよ。」
美姫は風布花の言葉に少し照れてしまう。二人はそんな会話を交わしながら歩を進めていた。
しかしそんな中、ウルフィンが姿を現わす。
「へへ、ここで暴れてやるか。」
ウルフィンは人が多く通る街で暴れようと企む。
「あれ、ダークストーリーズ?」
「そうですね。」
二人はウルフィンに警戒する。
「風布花ちゃん、他のみんなに連絡して。」
「わかりました。」
美姫は風布花を逃がし、ウルフィンの前に立つ。
「ちょっとそこの幹部!」
「何だ?まさかお前がホロテイルジュの戦士か?」
ウルフィンは美姫を物珍しそうに見る。
「それがどうか、今見せてあげる。」
美姫はそう言って本を開く。
「おとめ座!ダイヤモンド!シンデレラ!」
そう叫ぶとシンデレーザーへとその姿を変え、ウルフィンに立ち向かう。
「マリスを産み出してなくて良かったよ。ありがとう。」
「感謝されるくらいなら産み出したいところだけど、面倒だからいいや。」
シンデレーザーとウルフィンはおどけた会話を交わしながら戦う。一方の風布花は皆に連絡を取っていた。
「剣二さん、幹部です。」
「わかった風布花、今行く。」
「夜衣魚さん、幹部です。」
「わかった、待ってて。」
「林檎さん、幹部です。」
「わかった、気をつけてね。」
「アラモードさん、幹部です。」
「ごめん、今パフェ食べてるから。」
風布花はなんとか皆に連絡を取り、来られることが出来る剣二、夜衣魚、林檎を待ちながらシンデレーザーの戦いを見守っていた。
連絡を受けた剣二は慌てて洋館を出る。
「持ちこたえろ美姫、絶対に戦うなよ風布花!」
剣二はそう思いながら必死に走っていた。
必死に走る剣二の思いとは裏腹に、シンデレーザーはウルフィンに苦戦を強いられてしまう。
「くっ…!」
「ほらほら、倒せるものなら倒して見せろよ。」
ウルフィンは肉弾戦に強く、シンデレーザーは劣勢に立たされてしまう。
「そんな、美姫さん…。」
風布花は不安を抱きながらシンデレーザーを見守る。
「うわぁぁぁ!」
「おいおいどうした?そんなものかホロテイルジュってのは。」
ウルフィンは高らかにそう言いながら拳と蹴りを入り乱れるように打ち込む。しかし誰もまだ駆けつけて来ない。
「やっぱり、私が行かないと…。」
風布花は次第に美姫を助けなければならないという責任感に追われる。
「こうなったら…。」
そして風布花は決断をし、前線に立つ。
「あの、待って下さい!」
「あ?誰だお前。」
「風布花ちゃん…。」
ウルフィンは突然現れた風布花を邪魔に感じるが、風布花は引き下がらなかった。そして倒れながらも風布花を心配するシンデレーザー。
「美姫さん、やっぱり私行きます。後のことは、よろしくお願いします。」
「え…?」
シンデレーザーは風布花の言葉が気になるが、風布花はそんな美姫を他所にポケットから金色のフレームで縁取られた真珠の指輪を取り出し左手の中指に嵌める。
「一か八か、私の戦い。」
風布花はそう言って本を開く。
「やぎ座!パール!赤ずきんちゃん!」
風布花がそう叫ぶと空にやぎ座が現れる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来て下さい!」
風布花がそう叫ぶとやぎ座の最輝星が光を放ち、風布花の真珠の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、風布花の体を包む。やがて風布花の体が光を放ち、戦士へとその姿を変える。
その戦士は赤ずきんちゃんを彷彿とさせる赤い服と頭巾に、頭巾からは山羊の角のようなものが生えていた。
「レッドバイトゥース!」
その戦士はレッドバイトゥースと名乗る。そしてレッドバイトゥースはウルフィンに立ち向かう。
「はぁぁ!」
レッドバイトゥースは精一杯の力でウルフィンに拳を入れ込む。しかしウルフィンにダメージを負っている様子はなかった。
「何だこのちんけな攻撃は?笑いものだな。」
ウルフィンはそう言ってレッドバイトゥースを蹴り飛ばす。
「うわぁぁ!」
レッドバイトゥースは地面に転がってしまう。
「風布花ちゃん…。」
シンデレーザーはレッドバイトゥースを心配する。
「早く倒さないと…。」
そう言ってレッドバイトゥースは焦ってしまう。すると空におおかみ座が現れる。
「おおかみ座?こんなところで見られる星座じゃないけど…。」
「来ちゃった…。」
レッドバイトゥースはおおかみ座を見て落胆してしまう。そしておおかみ座の最輝星が光を放ち、真珠の指輪に届いてしまう。そしてレッドバイトゥースの瞳は一瞬、赤く輝く。
「グルルルル…!」
レッドバイトゥースは唸りを挙げる。すると犬歯が鋭く伸びてしまう。
「何、何が起きてるの…?」
シンデレーザーはその光景が理解出来なかった。そしてレッドバイトゥースは咆哮を上げる。
「うがぁぁぁぁ!」
レッドバイトゥースは腰を深く落とし、四つん這いになってウルフィンを睨み付ける。
「お前、俺と同じ匂いがするなぁ。」
ウルフィンはそう言うが、レッドバイトゥースは構わずウルフィンに飛び掛かる。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
レッドバイトゥースは野性的な動きで飛び掛かると、鋭い爪でウルフィンを切り裂く。その戦い方を見たシンデレーザーは、全てを察する。
「そっか、懸念していたのはこれだったんだ。」
剣二が絶対に風布花を戦わせなかった本当の理由は、おおかみ座による暴走だった。シンデレーザーは暴走するレッドバイトゥースに呆然としてしまう。
「ちょ、お前理性がねぇな。」
ウルフィンはレッドバイトゥースの猛攻に、次第に反撃する隙を奪われてしまう。
「ちっ、ここは退散するしかないか。じゃあな!」
そう言ってウルフィンは無理矢理レッドバイトゥースを引き剥がし、その場を去る。
「良かった。風布花ちゃん、もういいよ。」
シンデレーザーは安堵の気持ちを覚え、レッドバイトゥースに元に戻るよう言う。しかしレッドバイトゥースは様子が変わらなかった。
「もしかして、意識を元に戻せない訳?」
シンデレーザーはもしやと思い慌てて警戒する。そしてレッドバイトゥースはそのままシンデレーザーを睨み付け、襲い掛かる。
「ガルルルル!」
レッドバイトゥースはシンデレーザーに噛みつく。その鋭い犬歯はシンデレーザーの肩を貫いてしまう。
「う、うわぁぁぁぁ!」
シンデレーザーは深い傷を負ってしまう。そこに夜衣魚と林檎がなんとか駆けつける。
「あれ、風布花ちゃん?」
「まずい!」
夜衣魚と林檎はレッドバイトゥースの様子を見て、慌てて本を開く。
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
二人はそれぞれマーメイデストとポイズノームになってレッドバイトゥースを攻撃する。
「トライデントアタック!」
マーメイデストは三又の槍でレッドバイトゥースを攻撃し、注意を引く。
「ガルルルルル!」
「ポイズノーム!」
「わかった!」
レッドバイトゥースが咆哮を挙げる中、マーメイデストはポイズノームにバトンタッチし、ポイズノームはレッドバイトゥースの前に立つ。そしてポイズノームは本を開き、リンゴを召喚する。
「これでも喰らえ!」
ポイズノームはレッドバイトゥースの口にリンゴを放り込む。するとレッドバイトゥースは風布花の姿に戻り、そのまま眠ってしまう。
「なんとか治まったね…。」
「うん…。」
取り敢えず状況をなんとか治めたマーメイデストとポイズノームはそれぞれ夜衣魚と林檎の姿に戻る。
「何したの?」
シンデレーザーも美姫の姿に戻り、林檎に何をしたのか尋ねる。
「眠り毒の毒リンゴを食べさせました。」
「大丈夫なの?」
「毒は少量なので二時間程眠れば分解されます。」
「そう、なら良かった。」
美姫は風布花が眠っているだけだとわかり胸を撫で下ろす。しかし林檎は少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ただ…。」
「ただ?」
「白雪姫に因んで、眠りを覚ますためにはキスをしなきゃいけないんです。」
「嘘…?」
林檎の言葉に、美姫は唖然としてしまう。そして皆の元に、やっと剣二も駆けつける。
「みんな、大丈夫か?」
剣二は皆に尋ねるが、眠っている風布花を見つけて目の色を変える。
「美姫、風布花を戦わせたのか?」
「ごめん、私が不甲斐ないばかりに…。」
美姫は風布花を戦わせたことに責任を感じる。しかし美姫は剣二にも言いたいことがあった。
「でも風布花ちゃんが暴走しちゃうなんて、言ってくれても良かったんじゃないの?」
「組織に危険な戦士がいることは、あまり話すことじゃない。」
「私が知ってたら、もっとちゃんと風布花ちゃんを止められた!」
「だったらお前がもう少し持ちこたえろ!」
「大幅に遅れたのに何言ってんの⁉」
「ちょっと二人共、取り敢えず落ち着いたんだからいいじゃないですか。」
激しく口論する二人を、夜衣魚が間に入って止める。
「まあいいや、風布花ちゃんは私が家まで送るから。」
美姫はそう言って風布花を抱え、その場を後にする。
「剣二さん、美姫さんに言ってなかったんですか?風布花ちゃんのこと。」
夜衣魚の問いに、剣二は何も答えずその場を後にする。
「夜衣魚、私達も帰ろう?」
「…うん。」
夜衣魚と林檎も帰ることにする。この日、ホロテイルジュの信頼関係が崩れる音が少しだけしたのだった。




