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天上人  作者: 鬼木 有葉
第四章 人形の館
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八.約束③

グロリオはゆっくりと部屋を見回した。

屋根は(くず)れ、壁も所々に大きな穴が開いている。


アイリスが寝息を立てて眠る子どもたちの(そば)(ひざ)をついて子守唄を口ずさんでいた。

その(かたわ)らには(こわ)れかけたおもちゃが寄り添うように横たわっていた。


「グロリオ」


ライオネルが声を掛けてきた。


「恐らく子どもたちの記憶はアイリスが今見せている夢に置き換えられるだろう。それから、ここ数日間の親たちの記憶は消してきた。彼らは不自然なく元の生活に(もど)れるはずだ」


グロリオは安堵(あんど)の息を()らした。


流石(さすが)ライ、仕事が早いな。じゃあ、後は夜明けまでにこの子たちを家へ送り届けるだけで良いってことか」


「ああ」


ライオネルが(うなず)いた時、ザレジオが声を上げた。


「おい! 良い加減に私を離せ! 私の脚本をめちゃめちゃにして……生きて帰れると思うなよ!」


(わめ)くザレジオの頭をフォセが(たた)いた。


「うるさいっ! 子どもたちが起きちゃうでしょうがっ!」


「ザレジオさん」


アキレアに支えられ、チニが足を引きずりながらやってきた。


「おもちゃっていうのはね、大事にされた分だけ、その人の気持ちが宿(やど)るものなんです。きっとここにいる子たちも昔はそのおもちゃを大切にしていたんだと思いますよ。だって、どれも自分の持ち主が()み込まれないように守ろうとしていたんだもの」


チニは首を回して、後ろに立つフォセとその腕に抱かれたクマのぬいぐるみを見て微笑(ほほえ)んだ。


「ボロボロになったって、つぎはぎになったって良いんです……確かにおもちゃはいずれ忘れられて捨てられてしまうかもしれない。でも、共に過ごした時間、思い出は決して消えることはないし、消してはいけないんです。きっとそれは、おもちゃと子どもとの間だけに言えることだけじゃない。ギルナードさんはあなたに気づいてほしかったんだと思います。歩む道は(たが)えど、幼少期に過ごした時間は同じ。それがお金や珍しい調度品(ちょうどひん)よりもずっと価値のある宝だと……人やおもちゃを単なる物としてしか見られないあなたに人形劇の監督(かんとく)は務まりません」


ザレジオは(うつ)いたままチニの言葉を()みしめるように聞いていた。

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