八.約束③
グロリオはゆっくりと部屋を見回した。
屋根は崩れ、壁も所々に大きな穴が開いている。
アイリスが寝息を立てて眠る子どもたちの傍に膝をついて子守唄を口ずさんでいた。
その傍らには壊れかけたおもちゃが寄り添うように横たわっていた。
「グロリオ」
ライオネルが声を掛けてきた。
「恐らく子どもたちの記憶はアイリスが今見せている夢に置き換えられるだろう。それから、ここ数日間の親たちの記憶は消してきた。彼らは不自然なく元の生活に戻れるはずだ」
グロリオは安堵の息を漏らした。
「流石ライ、仕事が早いな。じゃあ、後は夜明けまでにこの子たちを家へ送り届けるだけで良いってことか」
「ああ」
ライオネルが頷いた時、ザレジオが声を上げた。
「おい! 良い加減に私を離せ! 私の脚本をめちゃめちゃにして……生きて帰れると思うなよ!」
喚くザレジオの頭をフォセが叩いた。
「うるさいっ! 子どもたちが起きちゃうでしょうがっ!」
「ザレジオさん」
アキレアに支えられ、チニが足を引きずりながらやってきた。
「おもちゃっていうのはね、大事にされた分だけ、その人の気持ちが宿るものなんです。きっとここにいる子たちも昔はそのおもちゃを大切にしていたんだと思いますよ。だって、どれも自分の持ち主が呑み込まれないように守ろうとしていたんだもの」
チニは首を回して、後ろに立つフォセとその腕に抱かれたクマのぬいぐるみを見て微笑んだ。
「ボロボロになったって、つぎはぎになったって良いんです……確かにおもちゃはいずれ忘れられて捨てられてしまうかもしれない。でも、共に過ごした時間、思い出は決して消えることはないし、消してはいけないんです。きっとそれは、おもちゃと子どもとの間だけに言えることだけじゃない。ギルナードさんはあなたに気づいてほしかったんだと思います。歩む道は違えど、幼少期に過ごした時間は同じ。それがお金や珍しい調度品よりもずっと価値のある宝だと……人やおもちゃを単なる物としてしか見られないあなたに人形劇の監督は務まりません」
ザレジオは俯いたままチニの言葉を噛みしめるように聞いていた。




