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天上人  作者: 鬼木 有葉
第四章 人形の館
64/196

三. 調査

「子どもの失踪事件(しっそうじけん)?」


フォセが首を(かし)げた。

グロリオは腕を組むとソファに背を(あず)け、机の上に広げた任務通達書(にんむつうたつしょ)(にら)んだ。


「あぁ。地上界(ちじょうかい)で子どもが突然(とつぜん)消える事件が相次(あいつ)いでいる。アキレア、概要(がいよう)を説明してもらっても良いか?」


「えぇ。これまでに失踪(しっそう)している子どもの数は10を超えているわ」


「そんなに?!」


「年齢は5歳から8歳。いずれのケースも、深夜から明け方にかけて起きている……部屋を(あら)らされた形跡(けいせき)はなく、(とびら)や窓が(やぶ)られたりしていることも無いようね」


「何か不気味(ぶきみ)で嫌だな……」


「そうね、チニ。しかも今回は困ったことに、契約主(けいやくぬし)の声は(いま)だに特定(とくてい)されていないの」


「どういうこと?」


「通常、声には契約主(けいやくぬし)を特定できる資質(ししつ)が含まれているわ。だけど、今回の場合はそれを持たない音のみが発されているだけ……いわゆる信号と同じよ」


「つまり、任務遂行(にんむすいこう)の時は契約主(けいやくぬし)を見つけ出すのが最優先ということになるわけだ」


グロリオは任務通達書(にんむつうたつしょ)を部屋の明かりに()かした。


()かし文字とか使ってんじゃねぇよな?」


アキレアは溜め息を吐いた。


「何で連絡塔(れんらくとう)がそんな手のかかることするのよ。単なる子どもの失踪事件(しっそうじけん)なら地上界(ちじょうかい)で解決できるわ。でも、この件が天上界(こちら)に届けられたということは……」


「人間には解決できない問題ということか」


ライオネルの言葉にアキレアが(うなず)いた。


「ええ」


「明日の早朝、いつもの場所に集合してくれ。では解散!」


グロリオの言葉にスラウは緊張感(きんちょうかん)を持って(うなず)いた。


***


黄緑色の壁紙に明るい木目(もくめ)の床。

タンスやベッドは小さく、赤や緑など色鮮(いろあざ)やかだ。

ふとカーテンが()れ、黄金色(こがねいろ)の毛並の動物が音もなく室内に降り立った。

鼻を高く上げて(にお)いを()ぐ。


「誰も居ないな……」


ラナンは低く(つぶや)くと、今しがた入ってきた窓に近づいた。


「良いぞ」


再びカーテンが()れて、グロリオとランジアが入ってきた。


「へぇ、随分(ずいぶん)立派(りっぱ)なもんだな」


グロリオは興味深そうに部屋を見回し、手袋をはめてベッドに近づいた。

丁寧(ていねい)に毛布を(めく)るとシーツにシワがついていた。

失踪(しっそう)する前にベッドに1度は入っていたようだ。


「何か見つけたか?」


グロリオはランジアに声をかけた。

彼女はドアノブに手をかけたまま考え込んでいた。


「……まだ分からないわ。(だれ)かがこの部屋に入ってきて子どもを連れ去ったのだとしたら、窓や(とびら)がそれを記憶しているはずだけど……今のところは手がかりなしね」


「そうか……」


グロリオは外を(なが)めた。

調べれば調べるほど、(なぞ)は深まるばかりだ。

今ごろハイドとアイリス、チニが他の子どもの家を探している。

彼らの方で何か見つかっていれば良いのだが……

(あわ)い期待を胸に通信機(つうしんき)を手に取る。


『もしもし』


チニの声だ。


「こちらグロリオ。そっちは何か分かったか?」


チニはしばらく通信機(つうしんき)の向こうで考え込んでいた。


『うーん……ハイドに出来るだけ時間を(さかのぼ)って部屋の様子を再現してもらったけど、部屋に(だれ)かが侵入(しんにゅう)したような痕跡(こんせき)は無かったよ』


「そうか……力の反応は?」


『それもゼロ。どんなに小さくても力を使えば、その空間には新たに痕跡(こんせき)が書き加えられるはずなんだけどね……』


「ちょっと待て! 今、何て言った?!」


『え? え、えっと……力の反応は無かった……』


「そうだ! その後は?!」


勢いづくグロリオにチニはやや泣きそうな声になった。


『ち、力を使えばその痕跡(こんせき)が書き加えられる……』


「それだよ! ()()()()()()()んだ!」


『そ、それはどういう……?』


「つまり、俺たちは新しく加わったものばかりに気を取られていないか、ってことだ! この部屋から子どもが居なくなったのは事実だ。つまり何か変化があるはず……だが、新しく加わったものは何もなかった。だとすれば、無くなったものは? この部屋から無くなったものは子どもだけか? もし他にも無くなっているものがあれば、そいつが手がかりになるんじゃねぇか?!」


後ろで聞いていたラナンとランジアは互いの顔を見合わせた。


『無くなったものか……分かった! 調べてみるよ!』


チニはそう返すと急いで通信を切った。


***


「スラウ、何か分かった?」


屋根の上に立つスラウの(となり)にフォセが降り立った。

アキレアとライオネルが町の人に聞き込み調査をしている間に、2人は上空から子どもの失踪(しっそう)した家の位置関係を確認していた。

スラウは手元の紙に視線を落とした。

紙が凹凸(おうとつ)を作って、目の前に広がる町と同じ風景を作り出していた。

何軒(なんげん)かの家の上に赤い丸印が浮かんでいる。


「ううん。家の位置もバラバラだね。フォセは?」


フォセも首を振った。


「あたしも同じ。それよりスラウ、それ何?」


スラウの空いている手の中で光の粒子(りゅうし)が集まったり離れたりを繰り返していた。

スラウは顔をしかめた。


「練習……」


***


「良いか、スラウ。よく見るのじゃ」


光の長コウルはそう言うと手を前に出した。

次の瞬間、彼の手には白く(かがや)く剣が(にぎ)られていた。


「え? え?!」


呆気(あっけ)に取られているスラウに彼は微笑(ほほえ)んだ。


「驚いたじゃろう。じゃが、君にはこれを習得(しゅうとく)してもらわねばならぬ。例えば、持っていた武器を何らかの理由により手放さなくてはならなくなったとしよう……そして困ったことにその状態の君を敵が(おそ)ってきた。この場合、君ならどうするかね?」


ふとゾルダークの要塞に行った時のことを思い出した。

幽鬼(ゆうき)に殺されそうになったフィリップを助けようとして、(おそ)いかかってきた闇狼(あんろう)に剣を投げつけて……


「そのままの状態で()()みました……」


コウルは楽しそうに笑い声を上げた。


「もう経験済みじゃったか……じゃが、いつもその方法でいけるとは限らん。その時に使えるのがこれじゃ」


彼は手にした剣の(やいば)()れた。

小さな白い光が粉雪(こなゆき)のように舞い上がった。


「この剣は(おのれ)()によって存在している」


「気?」


「「気」とはそうじゃな……我々が力を引き出す原動力(げんどうりょく)とも言えよう。スラウ、光を出してごらん」


(うなず)いたスラウの手から金色(こんじき)の光が(こぼ)(はじ)めた。


「今、君が出している光のひとつひとつには「気」が込められている。これを剣や弓矢の形に具現化(ぐげんか)する。これが今回、伝えたい術じゃ。やり方は君が今していることとそう変わらん。「気」を集めて(おのれ)に見合った武器を具現化(ぐげんか)しなさい」


ここで話が終わればまだ良かったのだが。


***


「サギリが今回の任務の中で身につけてこいって」


半分に大きく()けたスラウのローブを見たサギリはカンカンだった。

二度と同じことを繰り返さぬように、という意図も分からなくもないが、無茶振(むちゃぶ)りにもほどがある。


大きく息を()くスラウの横でフォセは笑いを必死に(こら)えている。


「ぷ……くくくくっ……」


「もう……笑い事じゃないんだよ?」


「でも(すご)いじゃん。これできる人、限られているんだよ。うちの隊じゃ、グロリオ、ハイド、ライ、アキレアくらいだもん」


「そうだけどさぁ……」


スラウが口を開きかけた時、胸元のポケットに入れていた通信機(つうしんき)が震えた。


「あ、アキレアからだ。もしもし……」


『スラウ、フォセはいる?』


「うん」


『良かった! 2人とも聞いてちょうだい。グロリオたちが手がかりを見つけたわ!』


「何、何?」


『子どもたちと一緒に無くなっているものがあるの。それは……おもちゃよ』


「おもちゃ?!」


『ええ。今からそのリストを送るわ。同じものが町で売られているか、確認してちょうだい』


「任せて!」


通信が切れ、2人は顔を見合わせた。

フォセは地図に指を走らせた。


「この町のおもちゃ屋は1軒だけ……行こう!」


「うん!」


「こっちだよ、スラウ! 右の建物の先!」


フォセが言うが早いか、()()した。


「待ってよ!」


人ごみをものともせず走る彼女を見失(みうしな)わないようにするのは至難(しなん)(わざ)だ。

スラウは徐々(じょじょ)に小さくなる金髪(きんぱつ)の少女の姿を追った。


やっとのことで人ごみを抜け、フォセと並んだスラウは目の前の建物に思わず目を見張った。

赤い屋根に白い壁、青い窓枠に緑のカーテン。

屋根についた煉瓦(れんが)煙突(えんとつ)から赤い鼻のピエロが飛び出している。

鐘が鳴る音と共に時計からハトが飛び出した。

文字盤(もじばん)が回転して中から小さな人形が現われ、音楽に合わせてくるくると踊り始めた。

まるで建物そのものが小さなおもちゃ箱だ。

いつの間にか子どもたちが店の前に集まってきて、目を(かがや)かせながら時計を見つめていた。

そこに()じって見入っていたスラウはふと(そで)を引っ張られて振り向いた。

フォセが手招(てまね)きしていた。


カランカラン――

上につけられた銀色の(すず)が軽やかな音を立て、(とびら)が開いた。


「いらっしゃーい」


陽気(ようき)な店主の声と共に中から子どものはしゃぐ声やオルゴールの音が(あふ)()した。

鮮やかなピンク色に()られた壁と色とりどりの棚。

そこにおもちゃが(あふ)れんばかりに()()められていた。

おもちゃを手に取って夢中で遊んでいる子どもの(わき)をすり抜け、スラウは適当(てきとう)に店内をぶらついた。


耳に()けた通信機(つうしんき)にさりげなく()れると、目の前に細かい文字とイラストが表示された。

それを確認しながら店内を見て回る。

ウサギのぬいぐるみ、ブリキのロボット、ネジ巻き仕掛(じか)けの蜘蛛(くも)、タンバリンを持ったサル……

スラウは首を傾げた。

どれも色や形が少しずつ(ちが)う。


「気に入ったものはあるかい、お(じょう)さん?」


不意に店主が近寄ってきた。

縮れ毛の赤い髪にふくよかな身体つきの店主は張ち切れそうな白いウサギのワッペンのついた真っ赤なエプロンをつけていた。

スラウは手に(にぎ)っていた紙を広げ、今しがた書き写したリストを店主に見せた。


「これを探しているんですが」


紙を受け取った店主はエプロンのポケットに毛むくじゃらの丸い手を突っ込み、小さな丸い眼鏡(めがね)を取り出して鼻にかけた。


「えっと、どれどれ……茶色い毛に丸い耳のウサギのぬいぐるみ。ねじまき付きのブリキのロボット。胴体は緑色で手足には銀色のバネ……大分(だいぶ)細かいけれど、こだわりがあるのかい?」


「ええ、まぁ……」


店主にしげしげと見つめられてスラウは気まずそうに目を()らした。

もう1度リストに目を向けた店主はしばらく考え込んでいたが、突然(とつぜん)ポンと手を(たた)いた。


「思い出したよ! これはギルナードさんのおもちゃ工房で人気だったものだね」


店主は鐘の鳴るような笑い声を上げた。


「良いところに目をつけたじゃないか。全ておすすめだよ。でも、残念ながらこれは俺の店では扱っていないな。勿論(もちろん)、他の店でも手に入らないだろうが」


「え?!」


「おや、知らないのかい? あの人のおもちゃはもう作られていないんだ」


***


「ここが、おもちゃ工房(こうぼう)跡地(あとち)か」


ライオネルが(つぶや)いた。

目の前には(こけ)むした白い石が積まれているだけだった。

辺りは有名な工房(こうぼう)があったとは考えられないくらい(さび)れた雰囲気に包まれていた。


「ここに何か御用(ごよう)ですか?」


不意に見知らぬ紳士(しんし)が話しかけてきた。


「いいえ、少し散策(さんさく)していたところです」


彼は(かぶ)っていた帽子(ぼうし)に手をやると、目の合ったスラウにも会釈(えしゃく)した。

反対の手には黒光りするステッキを(にぎ)っている。


「そうですか……私もよくここに来るんですよ。何せ、ここはあのローク(きょう)のゆかりの地ですから」


「ローク(きょう)?」


フォセが首を(かし)げた。


「えぇ、ここらでは大変有名な方でね、ある事業が盛況(せいきょう)して膨大(ぼうだい)な資産を手に入れた資産家ですよ」


「あ! ギルナードさんでしょ?!」


フォセが思わず大きな声を出した。


「そうです。よくご存知ですね、お(じょう)さん」


紳士(しんし)微笑(ほほえ)むと、胸元から黒い革の手帳を取り出した。


「彼はここで本当に多くのおもちゃを作っていたんですよ。だが晩年(ばんねん)、彼はこの工房(こうぼう)を取り壊してしまったんです。美しいものが好きでね、外見にもこだわっていました。それはそれは見事でね。本当に非常に残念なことでしたよ。しかも、こんなつまらないものを建てて……」


スラウは不恰好(ぶかっこう)に積まれた石に目を向けた。

傍には使い古された木の(おけ)が転がっていた。

いびつだが(やわ)らかい曲線を(えが)いている。


「町が(さか)えるにつれて水が必要になったんです。それでローク(きょう)工房(こうぼう)を取り壊した時に皆が水を手に入れられるように、と溜池(ためいけ)を作ったんですよ。本当にお人よしの方でね…こんな話もありますよ」


紳士は手帳に目を下ろした。

神経質そうな細かい文字がびっしり書き込まれている。


「彼は趣味で世界各地の貴重な調度品(ちょうどひん)を集めていたんです。彼の死期(しき)が近いことを知った世界中の貴族は巨額(きょがく)の金を積んでそれらを(ゆず)()けようとしました。皆が(のど)から手が出るほど欲しいと思うものばかりだったそうですよ。でも、彼はどれも断って(しち)に出し、ここに住む貧しい町民が必要としているものを(のこ)したのです。良い話でしょう?」


彼は言葉を切って愉快(ゆかい)そうに笑った。


「ですが、詮索好(せんさくず)きな者も居てね……調度品(ちょうどひん)大半(たいはん)愛娘(まなむすめ)のイサベラ様にお(ゆず)りになっていたのではないか、と言うんですよ。他の遺族に遺産を横取りされないように、と。まあ、真実は分かりませんがね」


男は手帳を閉じると首を振った。

そして、(だま)って彼の話に耳を(かたむ)けている隊員たちに微笑(ほほえ)んでみせた。


「見ず知らずのあなた方にこんなことまで話したことに驚いています。今日は工房(こうぼう)(つぶ)されてから、ちょうど7年なんです。彼の思い出を話すことで少しでも思いを共有したかったのかもしれません。では。素敵な1日を」


紳士(しんし)は穏やかな笑顔を向けると、再び会釈(えしゃく)をして去っていった。

その時、アキレアの通信機(つうしんき)が鳴った。

グロリオからだった。


『アキレア! 俺、(すご)いかもしれない! 犯人がわかったんだ!』


「犯人?」


『部屋から無くなったものは子どもだけじゃなかっただろ?! おもちゃも1つずつなくなっていた。しかも、それが全部1つの場所で作られたもので……』


「だから?」


アキレアが(いぶか)()(たず)ねた。


『もう答えは出ているようなものだろ?! その経営者が犯人だよ! 名前も調べたんだ、ギルナード・ローク! 通称、ローク(きょう)だ! そいつを捕まえて子どもたちの居場所を()かせれば、任務完了だ!』


「だから、何でその人が犯人なのよ?」


『ローク(きょう)調度品(ちょうどひん)を集めていたらしい。恐らく彼はおもちゃを作った時に、恐らくそれらも誤って入れてしまったんだろう。それに気づいた彼は一刻も早く()(もど)したかった。だから、おもちゃが部屋から消えたのさ!』


「……」


『……あれ? 通信、切れていないよな?』


自信たっぷりな自論に反応が無いので不安なのか、グロリオの声が小さくなった。

フォセが言葉も出ないアキレアの手から通信機(つうしんき)をひったくった。


「グロリオ、ばっかじゃないの?!」


『へ?』


「何でおもちゃに自分の大事なものを間違えて入れるわけ?! しかも10個以上も!」


『え、えっと……それはだな……』


「しかも調度品(ちょうどひん)を取り返したいからって、何で子どもまで居なくなんなきゃいけないの?!」


『うぐ……』


グロリオが()(よど)んでもフォセの攻撃は止まらない。


「大体ね、ギルナードさんは7年前に亡くなっているんだよ? どうやって誘拐(ゆうかい)するわけ?」


幽霊(ゆうれい)がこんな手の込んだするわけないな』


通信機(つうしんき)の向こうでラナンの声が聞こえた。


『だから相手にする必要ないって言ったでしょ』


ランジアの声も冷たく刺さる。


『わーっ! もう良いから! もう良いから!』


グロリオが(あわ)てて2人を止めている。


『俺が間違ってた! 訂正(ていせい)するよ!』


『そうか? さっきまであんなに「むっつりバカが居なくても俺はこれくらい推理できる」って自信たっぷりで……』


『あー、違う違う! アキレア、そっちにアイツはいないよな?! こんなの、聞かれていたら……』


アキレアはやれやれと首を振った。


「……(たわ)けが」


「あ、ハイド」


フォセが振り返った。

ハイドは彼女の手から通信機(つうしんき)を取り上げると口元に持って行った。


「……阿呆(あほう)


『え?! 今、アホって……? ちょ、ちょっと待てよ! お、お前、まさか聞いてっ……!』


ハイドは問答無用(もんどうむよう)で通信を切ると通信機(つうしんき)を地面に(たた)きつけた。


「何すんのよ?!」


アキレアが驚いて声を上げた。


「耳が(くさ)る」


「そうじゃないわよ! 通信機(それ)、壊れちゃったじゃない?! どうしてくれんのよ?!」


アキレアが悲鳴を上げて粉々になった銀色の金属を拾い始めた。


「ハイドォ……」


アキレアがゆらりと立ち上がった。

粉々になった金属片(きんぞくへん)(にぎ)る手が小刻(こきざ)みに(ふる)えている。

ハイドの片眉(かたまゆ)がぴくりと動いた。


弁償(べんしょう)しなさいよ! 絶対許さないんだからぁぁ!」


彼女の怒号(どごう)閑静(かんせい)な町に響いた。

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