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1-3 鈴木祐介、「9月の友だち」になる

私の小説『ひきこもりのおうじさま』の後日譚のようなお話です。


・『ひきこもりのおうじさま』を未読でも読めるようにはなっています。


・ただし、第五話で『ひきこもりのおうじさま』のネタバレが少し含まれます。

「あんた、何すんのさー!」と、あたしはイェシュアを突き飛ばす、「あんたはキスで人の子を裏切るのか?」


「あっはっはっ!」とイェシュアは大笑いする、「それは、そなたの世界で私が言おうとしていた言葉、だね」


 ……ん?


「ひょっとして、話す言葉が、通じて……いる?」


「うむ、私の、この世界の言葉がそなたに通じているように、そなたのこの世界の言葉は充分に通じている」とイェシュアは真顔に少し微笑を混ぜて言う。すると、ケファが真顔で頷いた。


「じゃあ……今のキスって、あんたが捕えられようとしたとき、ケファが刀で襲って兵士の耳を切り落とした際、あんたが引っ付けなおしたようなワザってこと?」


「うむ」とイェシュアは頷くとケファがすまなさそうにうなだれたけれど、イェシュアは真顔であたしに尋ねる、「そろそろ、そなたの名前を教えてはくれぬか?」


「鈴木祐介」


 だけれども、あたしの言葉に、二人は考え込んでいる。ので、もう一度、言ってみる。


「鈴木……」

 

「待て」とイエシュアは右手を上げて、指三つをくっつけた(こんなことを書くと怒られるかもだけれど、それは「パントクラトル」の「右手の祝福」のポーズ、だ)。「その言葉だけ、もう一度繰り返してもらえぬか?」


 あたしは、もう一度「鈴木」と言った。すると、虚空から、あたしの言った言葉が再生された


「……え?」


 イェシュアは紙を取り出し、この世界のこの国の文字で書いた、「こう聞こえた、のではないかね?」

 元の世界の文字で書くと、こうなる、"syyskuu"(スースクー)。不思議なことに、もう、あたしはロスマン語の読み書きもできるようになったみたいだ。


「ど、どうして?」

「おそらく」とケファがイェシュアに進言する、「この世界の言葉に近い発音に寄せられたのでは?」

「うむ」とイェシュアがうなずく、「それは、われわれのときでもあったことだ」

 ふと、イェシュアが私を見る、「いま、そなたの恐れを感じて知ったのであるが、そなたの世界のそなたの国では、まず家の名前を名乗り、そして親からもらった名前を名乗る、のだね? そして父親の名前は名乗らない、のだね?」

「あ、はい」と言って、気付いた、「そういや、あんた、『母親の名前はマリアと言い』とか言われて苦労していたみたいだね」

「で、次の名は?」とケファが私に聞く。イェシュアはまた、「パントクラトル・右手の祝福」のポーズを取った。


「祐介」


 イェシュアは、あたしの言った言葉を再生し、聞こえた言葉を紙に書いた: "ystävä(aの上にウムラウトの文字が二つ"(ユスタヴァ)


 あたしは、二つの言葉を見て、震えながら、ロスマン語で言う。


「……え? 『9月の友だち』って何よそれ、意味わかんない」

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