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1話 憶えてないんだ 後

さて、前回に続き第1話の続きです。いったいどんな旅があるのか気になりますね。

それでは、どうぞお楽しみください。

1話 


▼▼▼ 6


酒場。木造で中は広く数十人のお客さんがいた。メニューは豊富で魚料理や肉料理などいろいろあってどれも魅力的だった。ただ、お酒だけは気が進まなかった


「さて、それじゃあ騎士団の説明に入るわよ!」


そう言いシルシィさんは胸を張った


「まず騎士団を説明するには冒険者協会の「ギルド」って言うのについて説明しなくちゃいけないのよね。うーん、よしタストお願いするわ」


「俺に振ってくんのかよ! まぁ良いけどさ。うーん、ギルドってのは簡単に言えばチームの集まりだ。冒険者ってのは大抵チームを組む、一人じゃ異世界は危険だからな。チームってのは二人以上の冒険者で組まれて、その場合の報酬はチーム内で分け合うんだ」


「なるほど。ん?そういえばタストくんはヤナミさんの事を「俺のチームの専属受付嬢さん」って言ってたよね、もしかしてチームって解散できないの?それとも解散できるけど受付嬢さんが変わるって事?」


そう聞くとタストくんはチッチッチッと言い指を振った


「解散自体はできる、んでその場合、受付嬢さんはチームリーダー専属の受付嬢さんになるわけだ。そこで、チームリーダー同士がチームを組んだらどうなると思う?」


「えっと、受付嬢さんが二人になるって事だよね。え?それだけ?あ、でも待てよその場合受付嬢さんの仕事ってどっちが担当するんだ?その場合の報酬って......」


「そう!そこだぜアオイ!要はな、これはカレーなんだ、カレーってのは一つの食材の味だけでできてるわけじゃねぇ、ニンジンっていうチーム、ジャガイモっていうチーム、牛肉っていうチーム、それぞれの味が合わさって濃厚な」


そう言いかけた時、シルシィさんが席に運ばれてきたパンをタストくんの口に突っ込んだ


「はーい、わけわかんない説明は終了ね。まぁ騎士団は元はギルドだったのよ。でも初代騎士団長が騎士団の方針と食い違った事やロードシェイドを討伐するために、冒険者協会から抜けて、自警団としてその時のメンバーを連れて騎士団を立ち上げたのよ」


なるほど、そうだったのか。でも冒険者協会から抜けてって、そこにメリットはあるのか? いや、こういうのはメリット云々じゃないんだろうな、たぶん


「ん?まってシルシィさん、今言った「ロードシェイド」ってなに?」


「あぁ、その組織ね。別名「戦艦」って言われてる悪逆非道の組織よ。私はまだ会った事ないけど、冒険者や渡航者を襲って金品を盗んでいく奴らよ。手口も卑怯で現地の世界の人を人質にしたり、平気で他人を傷つけるような奴らよ」


「まぁ、そういうのから騎士団は俺たち冒険者を守ってくれてんだけどな。そこは本当に感謝してるぜ」


「あらタスト、アンタ感謝ってのを覚えたのね、やるじゃない」


「もとから覚えてるわ!バカにすんなよ!」


ほんとこの二人は仲良しだなぁ


ふとあたりを見回すと、二人の女店員さんがこっちを見てひそひそ話していた


「ねぇ二人とも、あの人達、なんかこっち見て話してない?」


「ん? ホントだな、さすがに俺たち騒ぎすぎか? 迷惑かけちまったかな」


「あら、ちょっと悪いことしちゃったわね、少し声量抑え目で話しましょうか」


そうだねと返そうとした時、その店員さんたちは店の奥に行った


「あ、なんか奥に行っちゃった。まぁ声は抑え目では無そうか。ってそうだ、あと一つ聞きたいことあって、聖騎士ってなに?」


「あら、その事ね。聖騎士っていうのは簡単に言えば騎士団の隊長であり騎士団でも指折りの騎士って所よ。第七大隊まであって、騎士団長様を含めて八人の聖騎士様がいるわね。聖騎士様たちはとても強くてね、さっき言ったロードシェイドの幹部にも引けを取らないのよ!」


「へぇ、でも僕、まだあんまり強さの基準がわかってなくて。それにロードシェイドっていうものの説明も欲しいんだけど......」


「なー、俺説明ばっかで飽きてきたんだけどーメシ食おうぜ!メシ!」


「......たしかにタストくんの言う通りだな、僕もお腹空いたし、ゴハン食べよっか!」


「ま、それもそうね。時間ならいくらでもあるんだし、あとはタストが説明してくれるわ!たぶん」


「また俺かよ!まぁ良いけど」


そうしてゴハンを食べながら少しずつ時間が経っていった。


食事が終わりお金を払って店を出ようとした時、さっきの二人の店員さんがピンク髪の少女を押して歩くように連れてきた


何かの用かな? もしかして記憶を失う前の知り合いかな? だったら傷つけないように早めに記憶が消えたこと言わなきゃな


そう思った時、彼女はうつむきながら顔を赤くして口を開いた


「あの、その......ひ、久しぶり......べつに、アタシはもう怒ってないからさ。その、そろそろ帰って来なよ、みんな待ってるから......ね?」


「あー、その、うん。ごめん......」


「はぁ?なにそのウジウジした態度、いつものアオイらしくないね」


そう言い彼女は呆れたような顔をして僕を見て、鼻をふんと鳴らした


僕は、彼女とどんな関係だったんだろう。このまま隠し通して良いんだろうか、でもわざわざ言って傷つけてしまったら......でも、後から知る方が辛いんじゃないかな、なら


「その、ごめん。僕さ、記憶なくなっちゃって、君の事憶えてなくて......できたら、教えてほしいなって」


僕がそう言うと彼女はきょとんとしていた


「はぁ? 何言ってんのアンタ、もしかして記憶消えたから家出したことも忘れましたーなんて都合の良い話にできると思ってるわけ? 怒ってないとは言ったけど許したわけじゃないからね?」


「あの、ほんとに忘れてて......信じられないかもだけど。そうだ、君が最後に僕に会った時さ、僕なにか言ってなかった?」


「......い、いやいや、冗談に決まってるって。そんなわけないじゃん、だって......」


彼女は目を見開き少し震えていた。

冷や汗が出て嫌な予感が現実になる


「ほんとに、消えちゃったの......?」


「あの、僕......」


どうにか慰めようとてを伸ばしたが振り払われた


「もう、アタシにかまわなくていいから......変なこと言ってごめん、忘れていいから......それじゃ」


そう言い彼女は店の中に戻っていった

その日の夜。少しだけ心がズキッとした


▼▼▼ 7


あれから二週間。ナインスさんに鍛えてやると言われたので冒険者協会本部の裏手の空き地で組み手をしたり、ナイフの使い方を教えてもらった

僕は元々、討神をワイヤーや銃にして飛び回って戦っていたらしい、今はワイヤーとナイフを作る所で手いっぱいだけど


休憩時間、ナインスさんに僕の過去を聞くついでに酒場で出会った女の子について教えてもらった。


「あー、そりゃあたぶんアカシのことだろうなぁ」


「アカシ? あの子の名前、だよね?」


ナインスさんに慣れてきたというか、敬語はキモイからやめろと言われたので少しフランクに接している、でもなんかこっちの方がしっくり来ている気がする


「そーそー、アカシ・トギノなぁ、ちなみにテメェの元お仲間だぜぇ......待て、もしかして記憶消えた事言ったんじゃあねぇよな?」


「あ、言っちゃった。ごめん」


「あーしに謝ってどーすんだよぉ。まったく......女心のわからねぇクズがよぉ」


「言い過ぎでは?」


「テメェにはこんぐらいがちょーど良いだろぉ」 


さっきまで作っていたナイフが形を崩し塵になって消える


「まぁ僕だって多少は葛藤したよ、けど知らないままなんて、かわいそうだって思わない?」


「......その「かわいそう」はよぉオメェ、何様のつもりで言ってんだぁ?」


何様って、僕は......いや、確かにそうだ。「かわいそう」なんて言葉は何も解決しない、ただ人を哀れんで動こうとしてないだけじゃないか。

なら、僕のすべきことはなんだ。今の僕に何ができる


「ナインスさ........ナインス、僕は記憶を取り戻したい、いや、取り戻す。誰かに教えてもらった僕の過去じゃなくて、そこに生きた僕の証を取り戻す、だから手伝ってほしい。お願い、できるかな?」


僕は少し弱気に聞いた、こんな自分勝手な事を頼むのは申し訳ないと思った、でも彼女は笑顔で応えてくれた


「オッケー、んじゃ、その依頼を受けてくれる「冒険者」が必要だな」


「へ?」


「オイオイ、なに呆けてんだぁ? ここは冒険者協会だぜぇ? あーしに頼んだっつーことはよぉ、そりゃ依頼って事だぜぇ? それによぉ、今のテメェにゃ丁度良い仲間が居んだろぉがよ」


「タストくんのことか、でもなんでわざわざ......」


「そりゃあ、こうでもしなきゃテメェは一人で旅に出ちまいそうだからなぁ。かと言って知らねー奴に預けんのも怖ぇしよ、それに戦い方は覚えてるみてぇだし」


ナインスは、本当に僕のことを考えてくれてるんだな。なおさら記憶を取り戻さないといけない理由が増えた。でも


「ありがとう。って言っても、どうやって記憶を取り戻すかは考えてないんだけどね」


「あー、その事ならあーしは知ってるぜぇ」


「え! ほんと!?」


「でもタダで教えんのはなぁ。あそうだ、一つゲームしようぜぇ」


そう言いナインスは立ちあがり、木の剣を取り出して足元の芝生を円形に削った


「制限時間は3分、この円からあーし出すかあーしの足を一歩でも動かしたらテメェの勝ちだぜぇ、テメェが勝ったらその方法教えてやらぁ、ただあーしが勝ったらその話はナシだ。良いな?」


「え、まって理不尽」


「よーいスタートだぁ!」


唐突に始まったゲーム。なんでこんなことになったのかわからない、でも、記憶を取り戻すためにも、もう誰も悲しませないためにも。ここで勝つんだ!


僕は討神をワイヤーにしてナインスに投げる、上手いこと操ってナインスを捕えようとしたが上手く操れずワイヤーがからめとられる


「どうしたぁ! んなへなちょこな射出じゃ届きすらしねぇぞ!」


ナインスはワイヤーを掴み思い切り引っ張る。ワイヤーを掴んでいた僕は空に放り出されワイヤーを離す


「アオイぃ! テメェの力はそんなもんかぁ?」


ナインスは僕から奪ったワイヤーを弾丸のような早さで投げる


待て、ナインスはさっき「射出」って言ってたよな、もしかして僕は今ナインスがやったようにワイヤーを射出していた?いや、僕にそんな力ない、なら


「こういう事、かな?」


右腕に簡単な射出機を討神で作りワイヤーを射出する。ほとんど想像で作ったから内部の構造が甘く威力は弱い、しかし手で投げるよりは早い


僕は左腕にも射出機を作り両腕のワイヤーを二階部分の柵に絡め、地面への衝突を防ぎ着地した


「やればできるじゃねぇか、けど、もう1分使っちまったぜぇ?」


「策なら......ある!」


僕は壁を縦横無尽に飛び回り大きな蜘蛛の巣のようにワイヤーを張った。作戦としてはこのワイヤーを足場にしてもっと飛び回って死角をつく


「ほー、疑似的に「叛逆の王手リベリオン・チェックメイト」を作るたぁな、記憶が消えても、テメェはテメェだな!」


知ってるのか? だとしたら効かない可能性も......でも、やるしかない!

足に力を込め、両腕の射出機をナイフにする


「そんな名前知らない、でも、それが僕の技だって言うんなら「叛逆の王......あ、れ」


視界がかすむ、頭がふわふわして、体が落ちていく感覚がある、僕は......どうなって....


「アオイ!」


顔を青白くしたナインスが飛んでくる。あれ、時間制限は? 僕は、勝ったのか? それとも...


▼▼▼ 8


体が熱い、頭が痛い、頬が痛い......僕は......


目を開けると、真っ黒な顔をして怒号を発している人間がいた。僕に何かを喚いているが内容が聞き取れない。その人からは強いお酒の臭いを感じた


この声、昨日目覚める前に見た記憶と同じ、あの時の男の声だ。じゃあここは記憶の中?


「聞いてるのか!」


途端に頬を殴られる。痛い。記憶なのに? なんでこんなに痛い、目の奥が熱くなってくる、この感覚は、涙だ


「ご、ごめんなさ」


僕がそう言おうとした時、また殴られた。いや、今僕は何かを言おうとしたか? もしかして、記憶の世界では行動を変えられない?


僕はそのまま胸ぐらをつかまれ引きずられる。そして外にある倉庫に閉じ込められた。

泣いても助けは来ない、足元を見た時、クモやムカデといった虫がいた。ただ寒くて、怖くて怯えてうずくまっていた。


また、体が重くなっていく。たしか、小学校でクラスメイトを殴った時......でも、たしかあれは...


▽▽▽


まだ少し頭が痛い、でもさっきまでの頬の痛みはない。恐怖感もなくなっていた


「アオイぃ? 起きたかぁ?」


目を開けるとナインスの顔が半分だけ見えた。正確には僕の顔の半分がナインスの胸で隠れているから見えなかった


「あ、膝枕されてるのか」


僕がそう言うとナインスは安堵した表情を浮かべた


「良かったぁ。ごめんなぁ、あーしが討神の特性と弱点を教えんの忘れててよぉ」


「特性と弱点?」


僕がそう言い起き上がろうとしたらナインスは僕の頭を抑え動けないようにした


「あぁ。討神の特性はなぁ、使用者の血液と体力を消費して物質を錬成できんだよぉ、テメェにはもともといくつかの能力があったけどそれが今はねぇからこうなっちまったんだよなぁ」


「あー、なるほど。元々はほぼノーリスクで使ってたから血や体力がなくなることが無かったけど今は能力がないからこうなったっていう。っていうか能力って何!?」


「あ、それも言い忘れてたなぁ。まぁ丁度良いかぁ。討神の説明と一緒に教えてやらぁ」


そう言いナインスは僕を離して説明を始めた


まず、討神は分裂させた状態で他の世界に行ったり距離をとると数分で塵になって消えてしまうらしい、ただ分裂させた討神の中に核となるものを入れることでその形状や状態を保つ事ができるんだとか


そしてここからはナインスの憶測だが「過去の僕が記憶と能力を討神に封じていろんな世界にばらまいた」という事らしい。

ちなみに全く根拠がないわけでもなく。僕と最後に会った時に「これがあればまた僕を見つけられる」と言って指輪型の討神と冒険者証明書をナインスに渡したらしい


「まぁ、なんとなくわかったけど。でもいくつに分かれてるのかもどの世界にあるのかもわからないんでしょ? それじゃあやりようが無いんじゃ......」


「んーや? どの世界かって候補はあるぜぇ。候補は九つあんだけどそれのどこかまではわからねぇな。アオイ、テメェには元々七つの能力があった、そのうち一つはテメェん中にあるみてぇだけどなぁ......」


「七つもあったの? 絶対どれか腐るでしょ」


「あーしも同感だぜぇ」


それにしても七つか。討神は能力じゃなくて武器らしいし......そういえば、この指輪を僕の中に取り込むことってできるのかな、元は血とかでできてるんだし


「ぱくっ」


そう思い指輪を飲み込んで見た


「...は? え、ちょま、アオイおま何やってんだぶっ殺すぞ!」


「え、急な悪口、酷い!」


「だ、だってその指輪、あ、あーしの指に......はめたやつ、だぞ?」


ナインスは顔を赤くしてモジモジしながら言っていた


……どの指だったんだろう。っていう疑問は置いといて、僕はまたやらかしたな、これは女心のわからないクズと言われても仕方ない。


「ごめんってナインス。なら、また指輪をはめに来るよ、今度はちゃんと記憶を持ってね」


「はぁ、マジでよぉ、今度はちゃんと帰って来いよ。明日出るんだろぉ、今日は早く帰って寝るんだなぁ」


そう言いナインスは僕を冒険者協会の外に押し出した


「うん、それと、僕は負けたのにいろいろ教えてくれてありがとう! じゃあまたね!」


アオイはそう言い走って行った。


「ルール的にゃあ、テメェの勝ちなんだけどなぁ」


ナインスは微笑み冒険者協会の扉を閉じた


▽▽▽


アオイはまたあの居酒屋に来ていた。あのピンク髪の少女を、アカシを探して謝罪とこれからすることを伝えたかったから


「すいません、アカシちゃんは今買出しに行ってて。あ、言伝があるなら伝えておきますよ?」


「あ、すいません。自分で、言いたくて......明日の朝また来てもいいですか? その、アカシさんに僕が明日の朝来るって言っておいてもらえたら嬉しいんですけど......良いですか?」


「はいっ! わかりました! まっかせてください!」


それから僕は明日なにを彼女に伝えるか考えながら帰った。明日、彼女には出会えない事を知らずに


▼▼▼ 9


次の日。タストくんに案内されたのは船が多く点在する港だった。

ちなみに僕の服や荷物はナインスが揃えてくれた。そんなに量が多くないから持ち運びやすくて助かる


「うっし、そんじゃまぁ行きますか!」


「待って待って、なにここ」


「なにって、港だよ」


だよなぁ。いやまぁ船があるからそれはわかってるけど。船の種類がおかしい

めちゃくちゃデカい豪華客船にクルーズ船もあれば空中に浮かんでる宇宙船みたいなのもあるし、奥には船じゃなくて列車や新幹線、さらに奥には車や飛行機のようなものまで見える


「そういや言ってなかったな。渡航者はな、この「舟」で異世界を渡るんだ!舟の形は様々、いろいろあってな。持ち込みオーケーだし自作の舟でも行けるんだよ。まぁ舟の見た目してねぇやつもあるけど」


「なるほど、うん、なんとなーくわかった」


「じゃあ俺たちの舟行くかー、マジですげぇから驚いて腰抜かすなよ?」


そう言われ着いたところにあったものは、帆のついた海賊船のような形をしているのに、それを構成している材質が機械的でSF映画に出てくるような宇宙船のような見た目だった


「わぁ、凄い頭混乱するなぁこれ。形は海賊船みたいなのに色とか材質が完全に機械なんだもんなぁ」


「な? すげーだろ!」


「うん、確かに凄すぎてびっくりしたよ」


まぁ眺めていても仕方ないので、中をタストくんに案内されて僕の部屋と言われた場所に荷物を置いた。部屋の中は結構広くふかふかのベッドも置いてあった


「旅に......出るんだ、今から。実感わかないなぁ」


でも、無性にワクワクする、それだけは強く感じた


「アオイー! テラスまで来いよー!」


タストくんの大きな声がした。部屋の扉を開けて外に出た時、何か近くで物音がした


「ん? 何の音だ...」


「アオイー! ふぅ、迷子になってるんかと思ったぜ」


タストくんが小走りでこっちに来た。心配かけちゃったかな


「あ、ごめんごめん。今行くよ」


それから、テラスに出ると周りの景色がさっきよりも多く見えた。空の色や街を行き交う人々、空を飛ぶ鳥。ふと視線を落とすと、舟の近くにナインスがいて手を振ってくれた


「あ...ナインス! また、絶対帰ってくるから!」


僕は大きく手を振った。舟が出航して、ナインスが見えなくなるまで僕は手を振り続けた



▼▼▼ 10


暗く大きな部屋。中央には円卓があり十一個の椅子が連なっていた、そこには七人の人が座り談合をしていた


「さてと、今日の議題に入りたいんだけど......「旅人」はべつに良いとして「覇者」と「香姫」は欠席なのかな? それにあの「鉄人」が遅れてるみたいだけど」


金髪の白と黒の半々仮面をつけた男がそう言うと、今度は包帯が巻かれた仮面を被った女性が言葉を発する


「あら、「香姫」は今任務にあたってるのよ? 忘れちゃったかしら「演者」クン。まぁ「鉄人」さんの方は知らないけれど」


それから少しの間、沈黙の時が過ぎる。我慢できなくなったのか龍の形をした仮面をつけた男が机をたたく


「なぁボス! 早く会議しようぜ! 俺のトレーニングの時間が過ぎちまう!」


それをなだめるように高身長の本の形をした仮面をつけた女が言う


「はぁ「勇者」少し落ちついたらどうだい? ボスだってレディなんだ、怖がってしまうよ?」


その時、扉から一番奥の席に座っていた女性が口を開く


「構わないわ「詩人」あの子たちには後から説明するから......それでは、これからロードシェイド定例会議を行うわ」


その女性がそう言った瞬間、騒いでいた者たちの背筋がピンと立つ


「今日の議題は......」


これは、アオイたちがいずれ対峙する組織、ロードシェイド別名「渡航者狩り」の一部に過ぎない。旅の行方は、記憶はどうなるのか。


それは、まだ誰にもわからない。



第一話。終



第1話を読んでいただきありがとうございます。

長すぎたので、前・後編に分けてお送りしました。わかりにくくてすみません


それでは、また次の旅でお会いしましょう。

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