第11章 起源の幻影
【第11章 起源の幻影】ーーーーーーーーーーーーー
地球周回軌道上、戦火が火花のように散っていた。
プレアデス艦隊とマルドゥーク艦隊が衝突し、無数の機動兵が交錯する。
その中心に、漆黒の機体が舞っていた。
怜司が操る新型機──「ノワール・ヴァリアント」。
その動きは人間を超え、星核の力に同調したかのように鋭く速い。
「なんて反応速度だ……!」
海斗がフェルシア改を操縦しながら歯を食いしばる。
対する玲奈は副操縦席で必死にセンサーを追い、欠片の脈動に気づいた。
「この波動……兄さんの機体と共鳴してる!」
「共鳴……? じゃあ、お前の欠片と同じ星核由来ってことか!」
両機の衝突は、まるで稲妻のようだった。
ノワール・ヴァリアントの黒刃がフェルシア改の装甲をかすめ、火花を散らす。
だが海斗は恐怖を押し殺し、逆に食らいつくように機体を押し込んだ。
「怜司ッ! 玲奈を苦しめるな!」
その叫びに、怜司の瞳が一瞬だけ揺らぐ。
『海斗……お前は分かっていない。星核は人類を超える力だ。
選ばれた者が使わなければ、地球ごと焼き尽くすぞ!』
戦闘の最中、玲奈の視界が突然白く染まった。
欠片が強烈に輝き、意識を別の世界へ引き込んだのだ。
──そこは、荒廃した惑星の記憶。
プレアデスとマルドゥーク、二つの種族がまだ同じ「起源種」であった頃の光景だった。
彼らはかつて一つの文明を築き、星核を「恒星の心臓」と呼び、調和に用いていた。
だが内部抗争が起こり、星核の利用を巡って対立。
やがて二つに分かれ、終わりなき戦争を始めたのだ。
『……我らは同じ始まりを持つ。争いは選択の果てに生まれた』
幻影の声が、玲奈の胸に響く。
『継承者よ。お前は同じ過ちを繰り返すのか、それとも……』
玲奈は震える唇で答えた。
「私は……兄さんも、海斗も、誰も失いたくない!」
意識が現実に戻ると、欠片の光はフェルシア改を包み込んでいた。
その瞬間、ノワール・ヴァリアントの刃が迫る。
だが光の障壁が割り込み、衝撃を無効化する。
怜司の瞳に驚愕が走った。
『……玲奈、お前も星核に選ばれたのか』
戦闘は膠着したまま両軍が退き、戦場は一時の静寂を取り戻した。
だが艦内に戻った玲奈と海斗を待っていたのは、冷たい現実だった。
ブリッジに響いたのは、プレアデス本部からの命令。
「欠片を直ちに引き渡せ。継承者の意思は不要だ」
玲奈は愕然とする。
「意思は不要……? それじゃまるで……!」
海斗が歯を食いしばる。
「まるでマルドゥークと同じじゃないか……!」
そして──シア司令官が静かに口を開いた。
「……私は命令に従えない。玲奈、欠片を守れ。必ずお前自身の選択で」
その言葉と同時に、背後の副官が銃を抜いた。
「司令……あなた、裏切るつもりですか」
ブリッジに緊張が走る。
プレアデス内部の亀裂が、ついに表面化した瞬間だった。
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