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第12章 裏切りの軌道

【第12章 裏切りの軌道】ーーーーーーーーーーーー


 ブリッジに銃声が響いた。

 だが引き金は引かれなかった。

 シア司令官の副官──ラドが銃口を向けたまま、冷ややかな声を発する。


 「司令、あなたは現場に情を移しすぎた。上層部の意志に従わぬなら、ここで排除します」

 「ラド……やはり、そういうことか」


 周囲のクルーたちが動揺し、各々の視線が揺れる。

 彼らの間にも「本部への忠誠」と「司令への信頼」が交錯していた。


 玲奈は欠片を抱きしめながら息を呑んだ。

 欠片は脈動を強め、まるで不安に呼応するように青白い光を放っている。





 その緊張を破ったのは海斗だった。

 「玲奈、今だ!」

 彼は玲奈の手を掴み、ブリッジの非常扉へと駆け出す。


 「待て!」

 ラドの銃撃が放たれるが、シアが素早く割り込み、腕を弾き飛ばした。

 「行け! 欠片を絶対に渡すな!」


 玲奈は振り返り、シアの瞳に力強い覚悟を見た。

 「司令……!」

 しかし言葉を交わす暇もなく、二人は艦の通路へと逃げ出した。





 艦内はすでに混乱していた。

 ラド派の兵士たちが各区画を制圧し、欠片を奪おうと動いている。

 一方、シアに忠誠を誓う兵士たちも応戦し、艦内は小規模な内乱の様相を呈していた。


 玲奈と海斗はその混乱をすり抜け、格納庫へとたどり着いた。

 フェルシア改が待機している。

 「乗るぞ! ここから脱出する!」


 玲奈は躊躇した。

 「でも……司令を置いていくなんて!」

 「俺たちが捕まったら、あの人の犠牲も無駄になる! 行くしかない!」


 その瞬間、格納庫のシャッターが開き、冷たい闇が覗いた。





 そこに立っていたのは、黒い機体──ノワール・ヴァリアント。

 怜司の姿だった。


 「……やはり来たか」

 海斗が臨戦態勢を取る。だが怜司は武器を構えず、通信を開いた。


 『玲奈……今のお前なら分かるはずだ。プレアデスもマルドゥークも、同じだ。

  星核を「兵器」としてしか見ていない。人間を器としか思っていない』


 玲奈は言葉を失った。怜司の瞳には憎しみではなく、痛みが浮かんでいた。


 『俺は……お前を敵にしたくない。だが選択の時は近い。

  欠片が揃えば、星核は目覚める。地球も、宇宙も変わる。

  それが救いか、破滅かは……継承者の意志に委ねられる』


 「兄さん……」

 玲奈の胸に、夢で見た光景──三つの光が昇る幻影がよみがえる。





 しかし、ノワール・ヴァリアントの背後にマルドゥーク艦が迫った。

 怜司は一瞬だけ玲奈を見つめると、機体を翻し迎撃へと飛び立った。


 『行け、玲奈! 今は……まだ戦う時じゃない!』


 玲奈は伸ばした手を空に残し、フェルシア改のコクピットに飛び込んだ。

 海斗がすぐに発進し、二人は混乱の艦を離脱した。





 静かな宇宙に漂いながら、玲奈は涙をこらえきれなかった。

 兄の言葉、シアの覚悟、そして自分の胸に宿る星核の鼓動。


 「海斗……私、本当に選べるのかな」

 「選ぶしかないんだ、玲奈。お前しかいない」


 フェルシア改の航跡が、暗い宇宙を裂いて進んでいく。

 だがその先には、まだ見ぬ敵も、そして答えも待っていた。




#宇宙SF


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