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第10章 継承者の影

【第10章 継承者の影】ーーーーーーーーーーーーー


 月面からの脱出を果たしたプレアデス艦隊は、地球周回軌道に拠点を築いた。

 しかし安堵の時間は与えられなかった。

 マルドゥーク艦隊が執拗に追撃を続け、各国の衛星網も次々に破壊されていた。


 地球圏は、もはや安全ではなかった。





 玲奈の手には、今も青白い光を放つ星核の欠片が握られている。

 船内医療区画で休む彼女の周囲には、常に低い共鳴音が漂っていた。

 近づく者は頭痛や幻覚を訴え、やがて彼女の居室は隔離区画に指定された。


 「玲奈、調子は?」

 訪ねてきた海斗に、玲奈はかすかに笑ってみせた。

 「大丈夫。……でも、この欠片、私の心に語りかけてくるの」

 「語りかける?」

 「うん。『継承者』って……何度も」


 海斗は眉をひそめた。

 あの月面で星核が直接、玲奈に干渉したことを思い出す。

 それは偶然ではなく、彼女自身に選ばれた証なのかもしれなかった。





 一方、ブリッジではシア司令官が密かにプレアデス上層部と通信を交わしていた。

 「星核の欠片は確保した。しかし、完全な回収には至らず」

 『構わん。欠片だけでも十分だ。実験を急げ』


 シアの瞳に、一瞬揺らぎが走る。

 「……実験、か。やはり人類を巻き込むつもりか」

 『それが我らの使命だ。地球人は器に過ぎない』


 通信が途切れた後、シアは深く息を吐き、拳を握りしめた。

 彼女の表情には、明らかな迷いが刻まれていた。





 その頃、玲奈は夢の中で奇妙な光景を見ていた。

 果てしない砂漠の中、三つの光が天に昇っていく。

 一つは青、一つは赤、そして最後は白。


 その中央に怜司が立っていた。

 「玲奈……俺たちは、同じ血を継いでいる。お前もすぐに分かる」

 彼の声は優しく、しかし背後にはマルドゥークの影が揺らめいていた。


 玲奈は手を伸ばした。だが触れようとした瞬間、夢は途切れた。





 目覚めた玲奈の枕元には、欠片が脈動を続けていた。

 だがその光は以前よりも強く、まるで呼応する何かが近づいているようだった。


 「……兄さん」

 玲奈は呟いた。彼がまだ生きているという直感が、胸を締めつける。





 数日後、地球圏防衛線を突破してきたマルドゥーク艦隊との交戦が始まった。

 戦場に現れた新型の黒い機体。その操縦席から発せられる波動に、玲奈の欠片が強烈に反応する。


 「この反応……まさか!」

 海斗が驚きの声を上げた瞬間、通信が割り込んできた。


 『……玲奈、聞こえるか』


 スクリーンに映し出されたのは、やはり怜司だった。

 その瞳には、もはや完全な敵の色はなく、複雑な迷いが宿っていた。


 『星核は……俺とお前でなければ制御できない。

  だが選ぶのは一人だ。玲奈……その時が来る』


 通信は一瞬で途絶えた。





 戦火の中、玲奈の心には決して消えない問いが刻まれた。

 ──兄を討つのか、それとも救うのか。

 ──そして「継承者」として、自分が本当に選ばれるべき存在なのか。


 彼女の決断が、地球と宇宙の未来を左右しようとしていた。




#宇宙SF



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