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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

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第7話「それでも、隣に」

火は、まだくすぶっていた。


焼け焦げた木の匂いと、湿った煙が村を覆っている。


「大丈夫ですか!こっちに!」


セリアが走り回る。


怪我人に声をかけ、簡単な治癒魔法を施していく。


「……ありがとう、助かった」


「まだ動かないで。ちゃんと休んで」


そのやり取りを、少し離れた場所からリオは見ていた。


何もしていないわけではない。


だが、前に出ることもない。


(……この距離が一番いい)


関わりすぎれば、歪む。


それを知っている。


「リオ!」


セリアが駆け寄ってくる。


額に汗を浮かべ、少し息を切らしている。


「手、貸して。あっちに重傷の人がいる」


「……俺はいい」


「よくない」


即答だった。


リオはわずかに眉をひそめる。


「目立つ」


「もう十分目立ってる」


「……」


言い返せなかった。


「さっき、あんなの見せておいて今さら隠れるの?」


「……一理ある」


「でしょ。ほら、来て」


セリアが手を引く。


その手は温かくて、少し強引だった。


リオは一瞬だけ抵抗しかけて——やめた。


「……分かった」


小さく呟く。


二人は倒れた家屋の方へ向かう。


そこには、瓦礫に押し潰されかけた男がいた。


「意識はある。でも出血がひどい」


セリアが説明する。


「骨も……折れてるかも」


リオはしゃがみ込む。


男を見る。


苦しそうに息をしている。


(この程度なら)


手をかざす。


一瞬、黒い魔力が滲む。


「ちょっと待って」


セリアが止める。


「それ、何するの?」


「治す」


「それ……普通の魔法じゃないよね」


「まあね」


「危なくない?」


「さっきのよりは安全」


「比較対象がおかしい」


小さく息を吐くセリア。


少しだけ迷って——頷いた。


「……やって」


「了解」


リオは手を下ろす。


黒い糸のようなものが伸び、男の傷口に触れる。


侵食するように入り込み、そして——


再構成する。


肉が、骨が、静かに戻っていく。


「……え」


セリアが息を呑む。


これは治癒ではない。


“作り直している”。


数秒後。


男の呼吸が安定する。


「……終わり」


リオが手を離す。


「すごい……」


セリアが呟く。


だがその声には、純粋な驚きと同時に、少しの怖さも混じっていた。


「これも、“使い方次第”?」


「そう」


短い肯定。


セリアは少し黙ってから、リオを見る。


「ねぇ」


「なに」


「あなたさ」


言葉を選ぶように、ゆっくり続ける。


「さっき、“見捨てる”って言ってたよね」


「……言った」


「でも来た」


「来たね」


「なんで?」


単純な問い。


でも、本質を突いている。


リオは少しだけ視線を逸らした。


(合理的な理由なら、いくらでもある)


長期的利益。


情報収集。


影響の調整。


でも——


「……うるさかったから」


「え?」


「君が」


セリアが一瞬固まる。


「ちょ、それ理由!?」


「十分でしょ」


「十分じゃないよ!」


思わず声が大きくなる。


だがそのあと、ふっと力が抜ける。


「……そっか」


小さく笑う。


「じゃあ私のおかげだね」


「半分くらいは」


「じゃあ残り半分は?」


少しの沈黙。


リオは村を見た。


壊れた景色。


助かった人、助からなかった人。


「……気が変わった」


「それだけ?」


「それだけ」


嘘ではない。


でも、それだけでもない。


セリアはじっと見つめて——やがて言った。


「ねぇリオ」


「なに」


「あなた、怖いよ」


「知ってる」


「でも」


一歩近づく。


距離が縮まる。


「思ってたより、ちゃんとしてる」


「それ褒めてる?」


「一応」


少しだけ笑う。


その表情は、最初に会ったときよりずっと柔らかい。


「私ね」


セリアは言う。


「あなたが何なのか、まだ分からない」


「うん」


「でも、分かったことが一つある」


「なに」


まっすぐに、目を見て言う。


「完全に危ないやつじゃない」


「それはどうも」


「だから——」


一瞬、間を置いて。


「もう少し、一緒にいていい?」


風が吹く。


煙が流れる。


リオは、少しだけ考えてから——


「好きにすれば」


そう答えた。


突き放しているようで、拒絶ではない言い方。


セリアは小さく頷いた。


「うん、そうする」


その距離は、まだ不安定だ。


信頼でも、友情でもない。


けれど——


確実に、“ただの他人”ではなくなっていた。

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