表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/62

第6話「守る理由」

「……戻った方がいい」


リオが言った。


半魔族の亡骸から視線を外し、森の外を見る。


「え?」


「嫌な流れだ」


「流れって……」


説明はなかった。


だが、その表情を見てセリアは何も言わず頷いた。


二人は村へ向かって走る。


風を切る音。


胸の奥に残る、さっきの戦闘の感覚。


そして——


「……煙?」


セリアが立ち止まる。


遠く。


村の方角から、黒い煙が上がっていた。


「っ……!」


次の瞬間、リオは一気に加速した。


「ちょ、待って!」


セリアも追う。


木々を抜け、視界が開ける。


そこにあったのは——


見慣れたはずの村の、変わり果てた姿だった。


家の一部が崩れ、火が上がっている。


悲鳴。


怒号。


そして。


「グオオオオッ!!」


人ではない声。


「……そんな」


セリアが息を呑む。


村の中を、数体の異形が暴れていた。


半魔族。


それも、さっきの個体より明らかに“出来がいい”。


動きが速い。


力も強い。


「数が……多い」


三体。


いや、四体。


「どうしてこんな……」


「偶然じゃない」


リオは即座に言った。


「誰かが意図的に作ってる」


「え……?」


その言葉の意味を考える暇はなかった。


「逃げろ!」


村人の叫び。


一人の男が、半魔族に追われている。


転ぶ。


立てない。


「……っ!」


セリアが動こうとする。


だが——


その前に、リオがいた。


「——行くな」


低い声。


「え?」


「今出れば、全部バレる」


現実的な判断だった。


ここで力を使えば、隠しきれない。


討伐対象になる。


村にもいられなくなる。


「でも……!」


男が、腕を掴まれる。


引きずられる。


「……あの人、死ぬよ」


「分かってる」


リオの声は、冷静だった。


あまりにも。


「じゃあなんで止めるの!?」


セリアが叫ぶ。


リオは答えない。


ただ、村の光景を見ている。


炎。


悲鳴。


壊れる日常。


(……何度も見た)


同じ光景を。


何度も。


違う場所で、違う形で。


そして——その多くに、自分が関わっていた。


「……関わらなければ、もっと大きな流れを変えられるかもしれない」


ぽつりと呟く。


「え?」


「ここで目立てば、動きに制限が出る」


合理的な選択。


正しい判断。


長期的には、より多くを救える可能性。


「でもそれって!」


セリアの声が震える。


「今を見捨てるってことでしょ!」


言葉が刺さる。


まっすぐで、単純で——だからこそ強い。


「……」


リオは黙る。


男の叫びが、響く。


助けを求める声。


それが——


ふっと途切れた。


静かになる。


「……っ」


セリアが言葉を失う。


一歩、後ずさる。


「……遅い」


リオが呟いた。


その声には、ほんのわずかに感情が混じっていた。


後悔か。


苛立ちか。


それとも——


「……もういい」


一歩、前に出る。


「リオ?」


「計算、終わり」


その目が変わる。


完全に、決まった。


「全部潰す」


次の瞬間。


地面が、震えた。


リオの周囲に落ちていた髪と爪が、一斉に浮かび上がる。


「な……に……」


セリアが息を呑む。


数が違う。


さっきとは比べ物にならない。


「展開」


低く呟く。


それらが一気に形を成す。


三体。


四体。


いや、それ以上。


「命令は一つ」


リオの声が、静かに響く。


「——排除」


ゴーレムたちが一斉に動いた。


圧倒的な速度で。


半魔族へと突撃する。


衝突。


破壊。


悲鳴すら、長くは続かない。


一方的な戦いだった。


「……すごい」


セリアは呆然と呟く。


だが、その視線はゴーレムではなく——


リオに向いていた。


その背中。


その在り方。


(この人は——)


ただ強いだけじゃない。


“何かを背負っている”。


そう感じていた。


戦いは、すぐに終わった。


静寂。


炎の音だけが残る。


リオはゆっくりと歩き出す。


壊れた村の中へ。


その姿を見ながら、セリアは小さく呟いた。


「……結局、来たんだね」


助けに。


リオは少しだけ立ち止まり、言った。


「……今回は、な」


その言葉は——


過去の積み重ねを、確かに感じさせるものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ