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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

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第5話「半魔族」

「——来る」


リオが呟いた。


その声は、先ほどまでとは明らかに違っていた。


空気が変わる。


セリアもすぐに気づいた。


「……なに、この感じ」


肌が粟立つ。


森の奥から、じわじわと“何か”が近づいてくる。


魔力。


だが、歪んでいる。


「魔物じゃない……?」


「違う」


リオは短く否定した。


その目は、すでに“戦場のそれ”に変わっている。


「もっと厄介だ」


次の瞬間。


ガサリ、と茂みが大きく揺れた。


現れたのは——


人の形をしていた。


だが、人ではない。


皮膚はところどころ黒く変質し、片腕は異様に肥大化している。


目は濁り、理性の光がほとんど残っていない。


「……あれ、は」


セリアの声が震える。


「半魔族」


リオが答えた。


「なり損ない、か」


その存在を、知っている口ぶりだった。


半魔族は二人を見つけると、喉の奥から低い唸り声を漏らす。


「グ……ァ……」


一歩、踏み出す。


地面がわずかに沈む。


「下がって」


セリアが前に出る。


「私が——」


「無理」


即座にリオが遮る。


「え?」


「君の魔法じゃ、あれは止めきれない」


「でも!」


「来るぞ」


言葉を遮るように、半魔族が跳んだ。


速い。


巨体に似合わない速度。


一直線に、セリアへ。


「っ!」


反応が一瞬遅れる。


間に合わない。


その瞬間——


ゴッ!!


鈍い音が響いた。


半魔族の身体が、横から吹き飛ばされる。


地面を転がり、木に叩きつけられる。


「な……に……?」


セリアが目を見開く。


そこにいたのは、小さな人型。


だが先ほどとは違う。


明らかに“完成度”が高い。


「さっきの……」


「調整した」


リオが淡々と言う。


「簡易強化型」


ゴーレムがゆっくりと構えを取る。


半魔族も立ち上がる。


その目が、リオを捉えた。


——その瞬間。


動きが止まった。


「……え?」


セリアが息を呑む。


半魔族の表情が、変わる。


恐怖。


本能的な、圧倒的な“格の差”への反応。


「グ……ッ……!」


後ずさる。


明らかに、怯えている。


「やっぱり、か」


リオは小さく呟いた。


「……どういうこと?」


「血が反応してる」


「血?」


「簡単に言えば——」


リオは半魔族を見ながら言う。


「“上位存在”って認識してる」


セリアの背筋に、冷たいものが走る。


「それって……」


言葉の続きを、言えない。


だが理解してしまう。


目の前の少年が、何なのか。


完全ではないにせよ——


その輪郭を。


「下がってて」


リオが一歩前に出る。


ゴーレムが動く。


一瞬で距離を詰める。


打撃。


半魔族の腕が砕ける。


「ギャアアアアッ!!」


悲鳴。


だがリオの表情は変わらない。


「……弱いな」


ぽつりと漏れる。


その言葉に、セリアは思わず振り向いた。


そこにいたのは、さっきまで一緒に話していた少年とは、少し違う存在だった。


感情が、薄い。


ただ“処理”している。


そんな空気。


「終わり」


リオが指をわずかに動かす。


ゴーレムが首元を捉える。


——そのとき。


「待って!」


セリアの声。


動きが止まる。


「……なに」


「まだ……助かるかもしれない」


「無理」


即答だった。


「でも!」


「それはもう“壊れてる”」


リオは冷静に言う。


「戻らない」


セリアは言葉を失う。


それでも、目を逸らさない。


半魔族は苦しげに息をしている。


かつては、人だったもの。


「……せめて」


セリアが呟く。


「苦しまないように」


その言葉に、リオはほんの一瞬だけ考えた。


そして——


「……それなら」


ゴーレムが、一撃で終わらせた。


静寂が戻る。


風の音だけが残る。


セリアはしばらく動かなかった。


やがて、小さく息を吐く。


「……ありがとう」


「どっちに対して?」


「両方」


リオは答えない。


ただ、倒れたそれを見下ろす。


(……始まってるな)


確信していた。


これは偶然じゃない。


世界が、また動き出している。


そして。


セリアが、ゆっくりと口を開く。


「ねぇ、リオ」


「なに」


「あなた——」


一度、言葉を止める。


それでも、逃げない。


「普通じゃないどころじゃないよね」


「今さら?」


「うん。今さら」


少しだけ、苦笑する。


だがその目は真剣だった。


「でも」


続ける。


「さっきより、少し分かった」


「なにが」


「あなたが“何をする存在か”」


リオはわずかに目を細めた。


それは——


この先を大きく左右する理解だった。

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