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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

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第4話「嘘と真実のあいだ」

「あなた、何者なの?」


森の中、静寂の中でその問いが落ちた。


リオはすぐには答えなかった。


足元では、未完成のゴーレムがかすかに揺れている。


崩れる寸前の、不安定な存在。


(……さて)


どう答えるか。


すべてを話す意味はない。


だが、完全に誤魔化すのも難しい。


目の前の少女は、それを見抜く。


「黙ってるってことは、普通じゃないのは認めるんだ」


セリアが一歩踏み込む。


「否定はしない」


リオはあっさり言った。


「……じゃあ、あれは何?」


視線がゴーレムに向く。


「魔法?」


「似たようなもの」


「“似たような”ってなに」


「言葉の違い」


「ごまかしてる」


即答だった。


リオはわずかに目を細める。


「細かいな」


「重要だから」


セリアは一切引かない。


その態度に、リオは少しだけ思考を変えた。


(……ある程度は開示した方がいいか)


「それは、“作ったもの”だ」


「作った?」


「そう。自然に生まれたものじゃない」


セリアの表情が変わる。


理解が一段深まる。


「……じゃあ、あなたが?」


「そうなる」


短く肯定する。


沈黙。


風が木々を揺らす音だけが響く。


「……そんなの、聞いたことない」


「だろうね」


「普通の魔法じゃないよ、それ」


「普通じゃないから」


また、淡々とした返答。


だがその中に、ほんのわずかに“線引き”が見える。


これ以上は踏み込むな、という。


セリアはそれを感じ取る。


「……じゃあもう一つ」


「なに」


「危険なの?」


核心だった。


リオは少しだけ視線を落とす。


足元のゴーレムを見る。


未完成で、歪で、それでも確かに“命のようなもの”。


(危険かどうか、か)


過去の記憶がよぎる。


街を壊したこと。


命を奪ったこと。


裏切られたこと。


そして——自分がそれを作ったという事実。


「——使い方次第」


そう答えた。


嘘ではない。


だが、真実のすべてでもない。


セリアはじっと見つめる。


「それって、一番信用できない答えだよ」


「そう?」


「うん。“どうにでもなる”ってことだから」


鋭い。


リオはわずかに息を吐いた。


「じゃあ聞くけど」


「なに?」


「君は、自分の力が誰かを傷つける可能性があったら、それを捨てる?」


セリアが言葉に詰まる。


「それは……」


「治癒魔法、使えるんでしょ」


「え、なんで」


「雰囲気で分かる」


「なにそれ……」


少しだけ空気が緩む。


だがリオは続ける。


「その力で救える命もあれば、戦場に立てば誰かを見殺しにするかもしれない」


「……」


「それでも、使うでしょ」


セリアはしばらく黙ったあと、小さく頷いた。


「……使う」


「なら同じだ」


リオは言った。


「力に意味はない。意味を持つのは使う側だ」


セリアは目を細める。


「それ、正しいこと言ってる風で逃げてるよね」


「否定はしない」


「やっぱり」


小さくため息をつく。


だがその顔には、わずかに笑みが混じっていた。


「でも」


セリアは言う。


「完全に嘘は言ってない」


「さっきからそうしてる」


「中途半端だね」


「全部本当を言うよりはマシ」


また沈黙。


だが先ほどまでの緊張は、少しだけ変わっていた。


敵意ではない。


警戒と、興味。


「ねぇリオ」


「なに」


「もう一つだけ聞いていい?」


「内容による」


「それ、名前あるの?」


セリアがゴーレムを見る。


リオもそれを見る。


少し考えてから、答えた。


「……まだない」


「そっか」


セリアはしゃがみ込み、壊れかけのそれをじっと見つめた。


「じゃあさ」


ふと、顔を上げる。


「ちゃんと作れたら、見せてよ」


「……は?」


「危険かどうか、自分の目で確かめたい」


真っ直ぐな目だった。


疑いもある。


でもそれ以上に、“知ろうとしている目”。


リオは少しだけ驚いた。


(逃げないのか)


普通なら、距離を取る。


恐れる。


関わらない。


だがこの少女は違う。


「……物好きだね」


「よく言われる」


「後悔するかもよ」


「そのときはそのとき」


即答だった。


リオはわずかに笑う。


本当に、わずかに。


「……分かった」


その約束が、どんな意味を持つのか。


まだ誰も知らない。


だが確実に。


二人の距離は、ほんの少しだけ近づいていた。

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