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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

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第3話「森で出会った少女」

「待てってリオー!」


「遅い」


「お前が速すぎるんだよ!」


鬼ごっこは、予想外の展開になっていた。


“足が遅そう”と言われたリオは、誰よりも正確に、無駄なく動いていた。


「そっち行ったぞ!」


「読めてる」


「なんでだよ!?」


相手の動きを先読みするような動き。


それは経験によるものだった。


戦場で培われた、“予測”の技術。


(……やりすぎか)


リオはわざと足を緩めた。


そのまま森の方へと入り込む。


「おい!そっちはダメだって!」


後ろから声が飛ぶ。


「森の奥、危ないんだぞ!」


「すぐ戻る」


そう返して、リオは木々の中へと進んだ。


静かになる。


風の音と、葉の揺れる音だけが残る。


(……気配がある)


足を止める。


人ではない。


魔物とも違う。


もっと——近い。


そのときだった。


「あなた、何してるの?」


背後から声。


振り向くと、そこにいたのは一人の少女だった。


淡い銀色の髪。


透き通るような瞳。


人間とは違う、整いすぎた存在感。


(エルフ……)


「こっちの台詞」


リオは淡々と返す。


「ここ、危ないよ。人間の子供が来る場所じゃない」


「君も子供に見えるけど」


「私は大丈夫」


即答だった。


少女は一歩近づく。


じっとリオを見つめる。


「……変な感じ」


「なにが」


「うまく言えないけど、普通の人間じゃない感じがする」


核心に近い言葉だった。


だがリオは表情を変えない。


「それ、初対面で言うこと?」


「うん。でも当たってるでしょ?」


沈黙が落ちる。


少女はじっと見ている。


試すような目。


(鋭いな)


「……ただの村人だよ」


「ふーん」


明らかに信じていない返事。


「じゃあ質問。さっきの動き、何?」


「鬼ごっこ」


「そういう意味じゃない」


少女は少しだけ眉をひそめた。


「無駄がなさすぎる。あれ、訓練された動きだよ」


「よく見てるね」


「エルフだから」


軽く言い切る。


その自信が、妙に自然だった。


「……君は?」


「セリア。セリア・エルフィン」


「リオ」


「それ、本当の名前?」


「本当の名前って何」


「うーん……“後からつけた名前”じゃなくて、“元から持ってる名前”って感じ」


一瞬。


ほんのわずかに、リオの思考が止まる。


(……そこまで踏み込むか)


だが次の瞬間。


地面が、微かに震えた。


「っ——!」


セリアが息を呑む。


リオの足元。


落ちていた髪の毛と、削れた爪の欠片。


それらが、ゆっくりと動き始めていた。


「なに、これ……」


集まり、絡み合い、形を成す。


小さな——人型。


「……やっぱり」


セリアが呟く。


恐怖ではない。


確信だった。


「あなた、“普通じゃない”」


ゴーレムはまだ未完成だった。


不安定に揺れている。


(制御が甘い……)


リオはそれを見下ろす。


そして、小さく息を吐いた。


「見られたなら、仕方ないか」


隠す段階は、終わった。


そう判断した。


セリアは一歩も引かない。


ただ、まっすぐに見ている。


「ねぇ」


静かに言った。


「あなた、何者なの?」


森の空気が、張り詰める。


その問いに——


リオは、初めて少しだけ考えた。


どう答えるべきかを。

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