表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/62

第8話「討伐隊」

村の空気は、まだ重かった。


火は消えたが、焦げた匂いと不安は残っている。


「……静かすぎる」


リオが呟いた。


「そう?」


セリアは首を傾げる。


「みんな疲れてるだけじゃない?」


「それもある」


だが違う、とリオは感じていた。


(“間”がある)


嵐の後ではなく——前の静けさ。


そのときだった。


「——誰だ」


低い声が響いた。


村の入口。


そこに、数人の武装した人影が立っていた。


統一された装備。


無駄のない動き。


ただの兵士ではない。


「……来たか」


リオが小さく呟く。


「え?」


セリアが振り向く。


その集団の中から、一人の男が前に出た。


長身。


鋭い目。


無駄のない佇まい。


「我々は王都直属、対魔族討伐隊だ」


静かだが、よく通る声。


「この村で異常があったと報告を受けた」


ざわめきが広がる。


村人たちが顔を見合わせる。


「もう……終わりました」


一人が言う。


「魔物みたいなのが出て……でも、なんとか」


「“なんとか”?誰がやった」


男——ガルドの目が細まる。


空気が張り詰める。


誰も答えない。


答えられない。


その沈黙を、ガルドは見逃さない。


「……隠すな」


一歩、踏み込む。


「ここに“何か”がいるな?」


その言葉に、セリアの肩がわずかに揺れる。


リオは動かない。


ただ、観察している。


(速いな)


想定より早い介入。


そして、この男。


(強い)


直感で分かる。


今までの人間とは違う。


「ねぇリオ……」


セリアが小さく囁く。


「これって……」


「討伐隊」


「やっぱり……」


「しかも当たり」


「当たりってなに……」


軽口のようでいて、視線は鋭いまま。


ガルドが周囲を見渡す。


焼け跡。


倒れた半魔族の痕跡。


そして——


「……妙だな」


しゃがみ込み、地面に触れる。


「この破壊、統一されすぎている」


指でなぞる。


「複数の個体が、同時に制御されていた形跡」


セリアの心臓が跳ねる。


(そこまで分かるの……?)


「自然発生の魔物じゃない」


ガルドは立ち上がる。


「“使役者”がいる」


その言葉が、重く落ちる。


空気が凍る。


村人たちの視線が、無意識にさまよう。


疑い。


恐れ。


そして——


「……お前」


ガルドの視線が、止まる。


リオに。


「子供にしては、落ち着きすぎている」


「そう?」


リオは平然と返す。


「怖くないのか」


「怖いよ」


「そうは見えない」


「表に出さないだけ」


淡々としたやり取り。


だが、その裏で探り合いが続いている。


「名前は」


「リオ」


「……そうか」


ガルドは一歩近づく。


距離が縮まる。


圧が強い。


普通の人間なら、目を逸らす。


だがリオは逸らさない。


「——お前」


その瞬間。


セリアが間に入った。


「待って!」


ガルドの動きが止まる。


「その子は関係ない!」


「ほう」


ガルドの目がセリアに向く。


「なぜそう言い切れる」


「ずっと一緒にいたから!」


「戦闘の瞬間もか?」


「それは……」


言葉に詰まる。


完全には否定できない。


「ならば可能性はある」


冷静な判断。


正論。


「違う!」


セリアが食い下がる。


「この子は、そんなことしない!」


沈黙。


ガルドはしばらくセリアを見て——


そして、リオに視線を戻す。


「……いいだろう」


一歩、下がる。


「今はな」


完全に疑いが消えたわけではない。


ただ、“保留”にしただけ。


「だが覚えておけ」


低く言う。


「もし貴様が“それ”なら」


その視線は鋭い。


刃のように。


「次は斬る」


空気が張り詰める。


リオは、ほんのわずかに笑った。


「怖いね」


「そう思うなら、祈れ」


ガルドは背を向ける。


「人間であることをな」


討伐隊が動き出す。


村の調査。


残骸の確認。


そして、証拠の収集。


セリアはその場に立ち尽くしていた。


「……大丈夫?」


リオが言う。


「え?」


「顔、固まってる」


「そりゃそうだよ……」


小さく息を吐く。


「ねぇ」


「なに」


「バレてた?」


「半分くらい」


「半分ってなに!?」


「確信はない。でも疑いは強い」


「最悪じゃん……」


頭を抱えるセリア。


リオは少しだけ空を見上げた。


(……面白くなってきた)


追われる側と、追う側。


その構図が、はっきりした。


そしてそれは——


過去にも何度も繰り返してきた形。


「リオ」


「なに」


「これから、どうするの?」


静かな問い。


リオは少しだけ考えてから——


「さてね」


そう答えた。


だがその目は、すでに次を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ